そんな本作で監督を務めるのは、過去に『賭ケグルイ双(ツイン)』や『囀る鳥は羽ばたかない』を手掛けた牧田佳織。キャラクターの表情を通して繊細な心理描写を感じさせる、牧田監督のアニメーション作品。『地獄楽』を制作する上でこだわったポイントや、第二期で新たに挑戦したことなど、インタビューでたっぷりと語ってもらった。
[取材・文=米田果織]
■第二期はよりキャラクターに没入― 第一期では描かれなかった一面も
――第一期を振り返っていただき、監督自身の印象深かったシーンを伺えますか?
第1話と第13話、第一期の最初と最後です。第1話はやはり世界観を組み立てていく作業があるので、作るのにとても時間がかかったのと、全体的に「どんな作品にしようか?」と考えながら作っていたこともあり、とても印象に残っています。
第13話に関しては、第二期へ続くことが決まっていたので、その種を蒔く必要がありました。画眉丸が記憶を失ったことで、妻との関係性をリセットしたような描写を入れたり。またほかのキャラクター同士の関係性も見せたくて、シナリオの段階から悩んでいました。
――とくに作るのが難しかったり、時間をかけたところはどこだったのでしょうか?
第1話で、神仙郷をどう見せるかというところです。第1話では少ししか登場しませんでしたが、やはりこの描写が今後の視聴のフックになると感じていました。島のビジュアルが視聴者の期待を煽ると思ったので、本土の色味との差別化はとくに意識した部分です。
――キャラクターの描写に関してはいかがでしょうか?
目的がはっきりしている人たちばかりなので、キャラクター性は掴みやすかったです。感じたままの魅力を素直に描写しました。
――本作は死罪人と執行人のバディ関係が魅力ですが、それに関しては?
画眉丸と佐切が物語の主軸となるバディなので、第1話と第2話をたっぷり使って、それぞれが信頼していくにあたっての流れを丁寧に描きました。普通に生きていたら絶対に出会わないであろう2人だし、また画眉丸にはすでに妻がいます。絶対に恋愛には発展しない、単純な男女の関係性ではない信頼関係を感じてもらえたらいいなと思いながら描いていました。
第一期ではそんなに描かれなかった亜左弔兵衛と桐馬の兄弟については、今後出てくる関係性の“きっかけ”みたいなものを匂わせたり。本当に毛色の違うバディばかりですよね。巌鉄斎と付知は、描いていてちょっとほんわかするペアでした。
――アニメ第二期を描く上で新たに意識したことがあれば教えてください。
第二期を制作する上でのテーマを考えたときに、多くのスタッフと一致した意見が「団結」でした。
――確かに、第一期はキャラクターの掘り下げよりも、島でのバトルロワイヤル要素のほうが強かったかもしれないですね。
そうですね。第一期でかなり謎の提示はしたので、その曖昧なところがクリアになっていき、タッグバトルもさらに本格化するのが第二期になります。よりキャラクターに没入して作れたというか、話数ごとで主人公のようなタッグがいるので、「この話はこのキャラクターをかっこよく描いてね!」とスタッフに伝えやすかったですね。
――第二期を制作していてあらためて感じた『地獄楽』の魅力は?
敵である天仙も人間味があって、敵味方関係なく魅力的なキャラクターだなと、第二期を描いていてあらためて感じました。だからこそ、第一期よりもキャラクターに寄り添って、丁寧に描写できたらいいなと思いながら作っています。天仙もただ敵としてではなく、好きになってもらえるように描けたらなと。実は色々なシーンで、その後の話に向けた種蒔きをしているんです。表情1つに「あ、このキャラクターは今なにか考えているな」と視聴者に疑問を与えられるように作っているので、細かい描写にも注目してほしいです。
■キャラクターが“生きていると感じてほしい” 牧田監督のこだわり
――第二期を作る際に、新たに挑戦したことはありますか?
第一期では森や花畑など、自然物が多い背景だったのですが、第二期から天仙の城の中での戦いになってきます。場面転換が多くなるので、パッと見て誰がどこにいるのかわかりやすいように色味などを工夫しています。
演出面では、表情の芝居を細かく作りたいと思いました。原作だけでは読み取れなかった細かいニュアンスを拾ったり、「自分だったらこの場合、どんな顔をするだろう」「どこが歪んでどこにシワが入るだろう」と自分に当てはめて考えたりしています。
――原作の賀来先生とは、制作にあたってどういったお話をされているのでしょうか?
先生とお話しさせていただいた際に、「佐切は難しい人だ」とおっしゃっていました。何を考えているのか、マンガでも表現するのが難しいと。先生が難しいということで、我々も当然悩みました。ほかのキャラクターに関しても、私や作画さんたちの解釈を踏まえつつ、物語の流れを汲んで話し合いながら作っています。
――これまで『賭ケグルイ双(ツイン)』や『囀る鳥は羽ばたかない』で監督を務められていますが、原作のある作品をアニメ化する上で大事にしていることは?
面白みがないと言われるかもしれないですが、やはり「原作が何を伝えたいか」ということと、「キャラクターを好きになってくれたらいいな」ということです。なので、まず私が好きになります。そして、全キャラクターの魅力をプレゼンできる状態になってからアニメ制作に入るようにしています。
――制作に入る前からかなり準備が必要ですね。
そうですね。でも決して努力して好きになっているわけではなく、幸運なことに私が「面白い!」「好き!」だと思う作品を担当させていただけているので、本当に幸せ者ですね。
――その2作品と『地獄楽』に共通して、キャラクターの表情を通して繊細な心理描写を感じるのですが、それは意図的にそうしているのでしょうか。
人に言われて気付いたのですが、私は表情芝居が好きで、描きたいんでしょうね。『地獄楽』のキャラクターデザインを担当されている久木晃嗣さんから言われたのですが、「一言で言い表せないような表情を作りたがるよね」と。やはりアニメなので、絵になると表情描写が記号として捉えられることもあると思うのですが、そこに少しの人間味を加えたいんです。あまりにリアルすぎると、実写の表現になってしまうので、そうではないギリギリのラインで、「アニメのキャラクターにその顔をさせる」ということが上手くできればいいなと。感覚なので、言葉で説明するのは難しいですね。その表情を作るために何度も原作を読んで、キャラクター1人1人に感情移入をして……と繰り返していたら、どのキャラクターも好きになっちゃいますね。
――苦手なキャラクターなどはいないのですか?
「なんで苦手なんだろう?」とか「ここでなんでこんな考えになるのだろう?」と考えると、いつの間にか皆好きになっています。アニメーションの監督という立場でそのキャラクターを描く以上、苦手を苦手で終わらせてはいけないと思っています。
――先ほど「描くのが難しい」と言っていた佐切について、リアルで考えてみると一番の常識人です。
あまりにリアルに寄りすぎると作品の中の置き所が難しいと賀来先生がおっしゃっていて、私もそれに「なるほど!」と納得しました。読者目線すぎるので、登場人物として描く置き所がなかなか見つからないんです。ある程度大きな感情を持っている人のほうが描きやすいというのはありますね。
そしておそらく、私は人がむき出しになるところを描くのが好きなんでしょうね。自分はむき出しになりたくないし、なれないので、代わりにキャラクターの強烈な感情を描くことで、そのキャラクターが「生きている」という風に感じてもらえたらいいなと思いながらアニメを作っています。
――貴重なお話ありがとうございます。最後に、第一期から約2年半が経ち、続編を待ち望んでいた方が多くいます。そんな方々へメッセージお願いします。
第一期から待ってくれていた方はもちろん、第二期から見ようと思ってくれている方にも楽しめるように作っているつもりです。画眉丸と妻の行く末を見守ってほしいというのを第一に、ほかのキャラクターたちの後悔や決意が第二期で掘り下げられていきますので、お気に入りのキャラクターに寄り添って見てもらえたらうれしいです。
TV アニメ『地獄楽』作品情報
■スタッフ
原作:賀来ゆうじ 『地獄楽』(集英社 ジャンプ コミックス刊)
監督:牧田佳織
シリーズ構成:金田一 明
キャラクターデザイン:久木晃嗣
美術監督:東 潤一
色彩設計:末永絢子
撮影監督:十田知香
音楽:出羽良彰
アニメーションプロデューサー:川越 恒
制作:MAPPA
企画:ツインエンジン
原作協力:少年ジャンプ+編集部
■キャスト
画眉丸 :小林千晃
山田浅ェ門佐切 :花守ゆみり
亜左弔兵衛 :木村良平
山田浅ェ門桐馬 :小野賢章
杠 :高橋李依
山田浅ェ門士遠 :小林親弘
ヌルガイ :小市眞琴
民谷巌鉄斎 :稲田 徹
山田浅ェ門付知 :市川 蒼
山田浅ェ門殊現 :鈴木崚汰
山田浅ェ門十禾 :遊佐浩二
山田浅ェ門清丸 :内田真礼
山田浅ェ門威鈴 :大原さやか
メイ :小原好美
天仙 :諏訪部順一/甲斐田裕子
(C)賀来ゆうじ/集英社・ツインエンジン・MAPPA
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