『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が現在公開中だ。このたび本作より、その制作の舞台裏を紹介するメイキング映像が公開された。
全てのフレームを1から描き続ける、ufotableの「圧倒的非効率」な制作姿勢の一端を垣間見ることができる。

『鬼滅の刃』は、集英社「ジャンプコミックス」より全23巻が刊行され累計発行部数は2億2000万部を突破する、吾峠呼世晴によるマンガを原作とするアニメだ。家族を鬼に殺された少年・竈門炭治郎が、鬼になった妹の禰豆子を人間に戻すべく<鬼殺隊>へと入隊し、鬼との戦いに身を投じる物語を描く。人と鬼の切ない物語に鬼気迫る剣戟、魅力的なキャラクター、そして時折描かれるコミカルなシーンが人気を呼ぶ。

ufotableがアニメーション制作を手掛けており、2019年4月の『テレビアニメ「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編』を皮切りにシリーズ展開してきた。鬼の根城「無限城」を舞台に、”鬼殺隊”と”鬼”の最終決戦が繰り広げられる『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』は三部作として制作されることが決定しており、「第一章 猗窩座再来」は2025年7月18日に公開を迎えた。惜しくも受賞は逃したが、“アカデミー賞の前哨戦”とも称される「第83回ゴールデングローブ賞」の「アニメ映画賞」に日本作品で唯一ノミネートされたことでも注目を集めた。

「Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Infinity Castle | Scene At The Academy」と題されたこのたびのメイキング映像は、「アカデミー賞(Oscars)」の公式YouTubeチャンネルにて公開されたもの。

冨岡義勇役を務める櫻井孝宏のナレーションで、ufotableの「圧倒的非効率」な制作姿勢に着目し、本作の総監督を務めたufotable代表・近藤光が語るところの「不安定だからこそ魅力的な手描きの力」と、ufotableが突き詰めてきた作画とマッチした3DCGの在り方が合わさった、「無限城編」の映画化の意味に迫っていく。

世界のアニメーション作品が3DCGへと移行する中で、ufotableは手描きの線を引き続けている。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』では、3DCGに携わる数の5倍以上もの作画スタッフを社内に抱え、2,200ものカットに挑み描き上げたという。

では、そのバラバラの個性の集合体によるカットは、いかに個々を活かしつつも統一され、1本の映画にまとめられたのか。
これについてはまず、総監督の近藤が「いつ、どこで、誰が、どんなものを作るか」というフレームを作り、脚本を書いた。そして作画にあたり、監督の外崎春雄と総作画監督の松島晃が全ての原画を見ていくという工程を担った。劇中には、「この人にしか描けない」というシーンがいくつもある。歴戦の制作陣が、適材適所で一筆入魂の筆を重ねたのだ。非効率だが、しかし内製率を極限まで高めたこの制作姿勢が、「誰かの線が、他の誰かに火をつける」ならではの「熱」を生み出したのだそうだ。

そして、そんな手描きの熱を包み込んだのがデジタルによる制作過程だ。フィニッシング演出監督の寺尾優一によると、決戦の舞台となる「無限城」のビジュアル構築は、最初のレンダリング計算時には「10年かかる」と算出された。重力や遠近法を超える建築的空間が広がる「無限城」を、映像として創造する苦労は計り知れない。

しかしデジタル映像部は、熱のこもった作画にパワフルな3Dのカメラワークによる「無限城」の背景を合わせてみせた。携わったスタッフのひとりは、これを「描いても描いても終わらない」と表現している。壮絶な最終決戦が繰り広げられる本編を念頭に置いた、ナレーションの「作品とアニメーションの現場がリンク」したとの表現は、まさに言い得て妙なのだろう。

その異様な気迫を、どうすれば映像に定着させられるのか。
メイキング映像の終盤、制作陣はこの問いに常に向かい合っているとして、寺尾はそれこそが「リアルさを持ちながら、現実そのものではない。線と光で感情を描くような絵作り」であると述べている。これに加えて、総監督の近藤いわく「作品の肝」であるという音楽とのマッチングまで突き詰めたうえで生まれたのが本作なのだ。

Ufotableにとって、劇中の宿敵・鬼舞辻無惨よろしく「地獄」、と表現するのは大げさにせよ、困難な作業を要する「戦場」として、その制作が立ちふさがったのは間違いなさそうだ。しかし、その戦いに挑んだ結果が、作品としてここに存在しているのである。
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