学業とバイトの両立で多忙な日々をおくる女子高生・酒寄彩葉は、ある日、電柱から生まれた赤ん坊を拾う。
多数のボーカロイドPを音楽に起用し、仮想空間でのステージパフォーマンスと派手なアクションシーンを配置した山下監督の持ち味が存分に発揮された1作となっている。
『呪術廻戦 第1期』『チェンソーマン』『うる星やつら』など、多くのテレビアニメのオープニング映像の演出を手掛けてた山下監督は長尺の映画にどう挑んだのか、話を聞いた。
[取材・文=杉本穂高]
◆デジタル×「竹取物語」のミックス! 新発想の原点
――まずはじめに、本作の企画はどこから始まったのですか?
僕が監督した『ポケットモンスターソード・シールド「薄明の翼」』が好評だったので、ツインエンジンの山本幸治社長からオリジナルをやってみないかと持ち掛けられたことです。僕はずっと短尺の作品を作ってきましたが、キャラもの、ストーリーものを作りたいとずっと言ってきたので、お話をもらったときは本当にうれしかったです。
それで、企画をいろいろと出していたんですけど、なかなか通らず1年が過ぎた頃、弊社のフジヤマルリという社員が出したプロットが面白くて、それが通ったんです。フジヤマとは好みも近くて、自分がやりたいことを常に汲み取って考えてくれて、かつ売りやすいパッケージになっている企画だったので、これで行こうと思いました。
――本作は、デジタル仮想空間と竹取物語をミックスしているところに特徴がありますが、この発想はどこから出てきたのでしょうか。
これもフジヤマの発案ですが、自分としてもストーリーの構造が複雑なものよりもキャラクターの感情や関係性をメインに据えた作品がよかったんです。それと得意なアクションを合わせるとなると、少年マンガ的な展開を要するものを1本の映画でやるのは難しい。そこからゲームを舞台にしたらいいんじゃないかと。
例えば『サマーウォーズ』が公開された当時は、仮想空間のゲームの説明が必要だったでしょうが、今ならそこを詳しく説明しなくても世の中に浸透しているし、すごい動きをするアクションも作れるわけです。
さらに、『竹取物語』という古典も説明せずとも日本人なら皆知っていますから、その分説明に尺を割く必要がない。そういうバランスを考え抜いて作った企画です。
――ゲームもそうですが、ボーカロイドPの楽曲が多数起用されているなど、2000年代に青春をおくった人には懐かしい要素が満載ですね。
最初からボーカロイドPの楽曲をたくさん使おうという発想ではありませんでした。あくまでメタバースとアイドル、配信者などを組み合わせるので、当然歌の要素は必要だと考えたとき、ヤチヨとかぐやという存在は初音ミクを連想させたんです。それと自分自身にとって、90年代後半から2000年代の文化が青春だったので、その時代の要素はどうしても出ちゃったという感じですね。
――BUMP OF CHICKENの楽曲をエンディングに起用しているのはどうしてですか?
自分は昔からBUMPの大ファンでしたが、だからこそ自分の作品に起用しようという風に思ったことはありませんでした。ですが、プロデュースサイドからrayという曲がこの作品に合うのではとご提案いただきました。そうか、ボカロで、BUMPでと考えるとこの作品にとって納得感もあって。
あらためて聞いてみると、作品にすごく合っているなと思いました。内包されているメッセージが同じだなって。そのことに自分でも驚いています。
◆短尺からの長編アニメ― 同じ姿勢で臨んだ
――作品時間が2時間20分と長いですね。
それは本当に怒られました(笑)。最初はプロデューサーから90分から100分くらいにしてくださいと言われていたんです。最初は全然いけると思ってたんですけど、無理でした……これ以上切れないと思います。このストーリーをやるならこれがギリギリです。
――脚本を担当された夏生さえりさんは、普段は実写作品や広告関係の仕事をすることが多い方で、アニメの脚本は初めてですよね。
映画に詳しいツインエンジンのプロデューサーから『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』の話が出てきて。これがすごい面白くて、脚本を担当した夏生さんにお願いしたいと思いました。
夏生さんは『MONDAYS』のときも監督と一緒に脚本を開発されたとのことで、googleドキュメントを使って共同で書き進めるというやり方をしていたそうで、今回もそのやり方で作っています。一般的な脚本開発からすると、びっくりするやり方ですけど、すごくやりやすくて、今後も共同執筆の際はこのやり方をしていきたいなと。
――監督としての作業についてもお伺いします。山下監督は短尺の作品を多く手掛けてこられて、演出や絵コンテだけでなく、作画に撮影までご自身でこなすことがあります。
短尺のときと全く同じスタンスでした。実際、自分でいろいろなところに手を入れています。直さないといけないカットについては、自分でプリビズ(※制作初期の簡単な映像)を出し直して、作画監督作業でも直して、撮影もかなり自分で見ています。作業の感覚としては短い作品を何十本も作ったような感じでした。
オリジナル作品原作が存在しないので、アニメーターの気持ちが乗り切らないまま制作期間が終わってしまうことも多いと思います。だから、率先してキャラクターのイメージを絵や動きで示していこうと思い進めていきました。
――エンドクレジットには載っていませんが、実際はかなり広範にわたって山下監督が自ら作業しているんですね。
そうですね。自分の名前がしょっちゅう出てくるのは、長編だとカッコ悪いかなと思い、クレジットしてません。監督は作品のためなら何でもやる仕事です(笑)。
◆作画と3Dクリエイターで異なる感性
――本作は音楽ものでもあるため、ライブパートもありますが作画で描写していますね。
基本的に、3Dフィニッシュまで行うノウハウが弊社にないので最初から作画でやるつもりでした。フル3Dでハイクオリティに仕上げようとすると予算やスケジュールも問題になりますし、僕はやっぱり手描きが好きなんです。フェイシャルの細かさも手描きのほうが早く伝えられるので、プリビズで3Dは使うけど、フィニッシュは全部手描きでいくと最初から決めていました。
――プリビズ、それに3Dレイアウトは全編に渡り多く使われています。山下監督は、3Dレイアウトを駆使したアクションの先駆者的な存在で、このやり方が業界に定着していますが、昨今のトレンドについてどう感じていますか。
『片田舎のおっさん、剣聖になる』は、自分と近いことをやっていてシンパシーを感じました。ただ全体的には、感性が3Dクリエイターのものだなという感じはしています。弊社の場合、作画の人間が3Dをいじるということに強みがあるので、そこに踏み切る会社が増えてくるとうれしいですが、結構難しいんです。普通に見ているとあまり差がわからないかもしれないですが、僕からすると、文脈が違うので結構差を感じるんです。
――確かに3Dレイアウトは3D専門の会社でやってもらって、というパターンが多いようですが、山下監督の会社では作画のアニメーターが自らやるわけですね。
プリビズについても、3Dクリエイターが作るものと我々が作るものとは、ちょっと違うんです。カメラの作法とか動きに対する認識の違いが出るんでしょうね。
――最後に、作品を待っているファンにメッセージをお願いします。
基本的には明るく楽しい作品にしています。でも、その下にはしっかりと積層した感情のレイヤーがあるので、結末を知った状態で見返すことでそういう部分が見えてくると思います。ですので、繰り返し見て、あえて描かなかった余白を想像していただけるとスルメのようにエモがれると思います! よろしくお願いいたします!
『超かぐや姫!』
■キャスト
かぐや:夏吉ゆうこ
酒寄彩葉:永瀬アンナ
月見ヤチヨ:早見沙織
帝アキラ:入野自由
駒沢雷:内田雄馬
駒沢乃依:松岡禎丞
綾紬芦花:青山吉能
諌山真実:小原好美
FUSHI:釘宮理恵
忠犬オタ公:ファイルーズあい
乙事照琴:花江夏樹
■メインテーマ
「Ex-Otogibanashi」月見ヤチヨ(cv.早見沙織)
■エンディングテーマ
「ray 超かぐや姫!Version」かぐや(cv.夏吉ゆうこ)、月見ヤチヨ(cv.早見沙織)
■劇中歌楽曲提供
ryo (supercell)/yuigot/Aqu3ra/HoneyWorks/40mP/kz(livetune)
■スタッフ
監督:山下清悟
脚本:夏生さえり/山下清悟
ツクヨミキャラクターデザイン:へちま
現実キャラクターデザイン:永江彰浩
ライブ演出 :中山直哉
美術監督:宍戸太一
色彩設計:広瀬いづみ
ツクヨミコンセプトデザイン:東みずたまり/フジモトゴールド(ゴキンジョ)
現実コンセプトデザイン:刈谷仁美
CG 監督:町田政彌(スティミュラスイメージ)
CG 背景:草間徹也(キューンプラント)
編集:木南涼太
撮影監督:千葉大輔(Folium)
音楽:コーニッシュ
音響監督:三好慶一郎
企画・プロデュース:山本幸治
製作:コロリド・ツインエンジンパートナーズ
アニメーション制作:スタジオコロリド/スタジオクロマト
(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ
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