2026年1月30日(金)より大ヒット上映中の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』(以下『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』)は、2021年に公開された『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(以下『閃光のハサウェイ』)に続く3部作の第2章。
そこで本稿では、第1章から音楽を担当する澤野弘之さんにインタビューを実施。『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』で表現した音楽の世界についてお話をうかがいました。
[取材・文=気賀沢昌志]
◆澤野さんが見た『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の印象
――さっそくですが、『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の映像をご覧になっていかがでしたか?
実は全部は見られていないんです(※取材時点)。ですので、作曲するうえで確認したいシーンを重点的に観たかたちです。
そこで感じたのは、人間ドラマを中心に見せ方を考えているなという印象です。元々本作のコンセプトは「大人向けのガンダム」です。今作でもより濃密に人間ドラマを描いているようで、前作のトーンや作画の質感が好きな僕としては期待できる映像でした。
――『閃光のハサウェイ』シリーズには、他の“ガンダム作品”にはない人物描写の丁寧さや落ち着いたトーン、リアルな描写があります。その部分はまるで実写映画の雰囲気でした。
まさに「大人向けのガンダム」ですよね。前作はハサウェイ、ギギ、ケネスが主軸になって物語を組み立てている印象でしたが、今回は群像劇ほどではないものの、より多くのキャラクターにスポットが当たっていると思います。
――個人的に好きだったのがモビルスーツの整備シーンです。あちこちから聞こえてくる打ち合わせのやり取りや、声かけなど、とてもリアルに感じました。あの“ザワザワ感”が臨場感ありますよね。
劇場で聞くと、音響の関係でまた違った臨場感が得られると思います。
――澤野さんは『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』でも音楽を担当。発注は前作と同様、監督から「こういう曲が欲しい」とオーダーがあったのですか?
基本的にどの現場でも、監督と音響監督で打ち合わせしたものをメニュー表にしていただきます。「この場面ではこういうイメージの音楽が必要」とか「これは挿入歌で欲しい」というリストですね。それを元に打ち合わせをして実作業に取りかかります。
――打ち合わせは絵コンテを見ながらやられるのでしょうか?
通常の制作現場では絵コンテの場合もありますが、僕の場合大半はメニュー表をもとに会話しながらイメージを擦り合わせていくことが多いです。今回はコンテを元に簡単な映像を作っていただいていたので、それも見ながらの打ち合わせでした。
――素朴な質問ですが、劇伴(BGM)はどのように作るものなのですか? 例えばオープニングテーマなら90秒という制約があったり、歌唱ありの楽曲ならAメロ・Bメロ・サビの流れがあったりします。
やり方はいろいろあります。
ただ僕の場合は、劇場作品でもテレビアニメと同じやり方をさせていただいています。シーンに必要な曲調を把握し、最低限の尺を満たしながら、ひとつの楽曲として成立する音楽を作ります。そのため必要とする尺よりも長くなることがあります。完成した曲は音響監督のほうで編集してもらったり、必要な部分を抜粋して使ってもらったりしています。あとはタイミング的に「ここは盛り上がって欲しい、ここは落ちてほしい」という指定があれば、秒数を教えてもらい、それに合わせて曲を制作することもあります。
――比較的、自由な部分が多いのですね。
音楽としてまず成立するものを作り、それを自由に使っていただいたほうがいいのかなと思っています。
――『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』は3部作の2作目ということで、前作の楽曲にプラスするかたちで作業されたのかと思います。どのような部分を意識して作業されたのですか?
前提として、主要な音楽は前作で十分揃っていましたから、今回はそれをどうアレンジするかという点を意識しました。
前作の音楽を作ったのは5、6年前です。
◆『閃光のハサウェイ』だからできたアプローチ
――『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』で新しく挑戦した音楽的な部分はありますか?
挿入歌ですね。ただ挑戦と言うほどのものではありません。今作では物語の演出上、挿入歌の重要性が前作から大幅に上がっていましたから、それをどう表現するのか、あらゆる角度から検討しました。
『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』本予告に使用されている[Alexandros]の川上洋平さんとSennaRinのデュエット曲「ENDROLL」は男女の心情を表現したバラードになっています。こうしたコラボができたのは、『閃光のハサウェイ』というシリーズだからだと思います。
――「ENDROLL」を収録したオリジナルサウンド・トラックが2月4日にリリースされます。CDだけではなくLPでも発売されるのですね。
実は前作でもLPをリリースしていたんですよ。音の部分での良さはもちろんのこと、LP盤はアナログレコードですから直径が30センチほどあり、コレクションとして飾るのにもいい大きさですよね。
――確かにおしゃれですね。
さすがに第2章の作業が終わったばかりですからね(笑)。あえて言うなら、第3章は3章で、これまで追っかけてくれた皆さんが「あの曲がこういうアレンジになるんだ」と、『閃光のハサウェイ』3部作をより深く音楽で感じられるようなアレンジをお届けしたいと思っています。
――実は今回の取材の前に、澤野さんが音楽担当として関わった『機動戦士ガンダムUC』を見返してみたんです。すると、『閃光のハサウェイ』シリーズとはまた少し違う音楽に聞こえたのですが、澤野さんとしては『閃光のハサウェイ』シリーズをどのように捉えているのですか?
そこはあまり差別化を意識しすぎないほうが良いのかなと思っています。それに差別化が必要なら、制作サイドは僕ではない誰かにオファーしたと思うんです。
――なるほど。
今回は『機動戦士ガンダムUC』と違って「大人のガンダムにする」という明確なコンセプトがありますから、そこで自然と表現の差別化ができたのではないでしょうか。『機動戦士ガンダムUC』では比較的どの曲もメロディを立たせていますが、『閃光のハサウェイ』シリーズでは、いわゆる「ハリウッド的」な音楽を意識しています。その部分は制作サイドからも求められていたイメージだったのですが、たとえばクリストファー・ノーラン監督の映画でおなじみのハンス・ジマーさんのような、メロディを排除してサウンドで押していくみたいなスタイルにしています。
ただしメインテーマに関してはメロディックなものが欲しいと制作サイドのオーダーがありましたから、そこはテーマ性が感じられるメロディにしました。
――それで「『ガンダムUC』とは違う」と感じたのですね。私もアメコミ映画やSF映画が好きで、劇場で「ハンス・ジマーっぽいな」と思うものはだいたいハンス・ジマーさんです。
前作の時点で「宇宙を感じさせる音楽を意識して欲しい」と制作サイドからオーダーがありましたから、その時に「宇宙」と「ハリウッド」を結び付け、思い浮かんだのが『インターステラー』や『ブレードランナー』でした。
あの、シンセサイザーの要素が散りばめられたようなサウンド感ならSF感が演出できますし、そこにオーケストラに加われば壮大さも表現できると思います。そこは前作でとくに意識した部分でした。
――すべてが「聴きどころ」かと思いますが、とくに注目してほしい音楽的なシーンは?
やはり挿入歌です。前作でも主題歌とオープニング用の歌唱曲を作りましたが、挿入歌はバトルを意識したもの、オープニング曲はミステリアスなボーカルでしたから、今作の挿入歌とはアプローチが絶対的に異なっています。今作の挿入歌が流れるシーンは映像とともにお客さんの心に残ってくれるとうれしいですね。
◆ガンダムの思い出は…武者Zガンダム
――先ほど、取材開始前にロビーの方から澤野さんの話し声が聞こえてきたのですが、ガンプラについてすごく楽しそうに話していらっしゃいましたね。
聞こえてましたか(笑)。 Ξ(クスィー)ガンダムの完成品のフィギュアが置いてあって、「こんなのあったっけ?」と思い、ついスタッフと話し込んでしまいました(笑)。
――ガンプラは作られるのですか?
最近はご無沙汰ですが、『機動戦士ガンダムUC』のときは久しぶりに買って組み立てたりしました。それとは別に、クシャトリアがめちゃめちゃかっこいいなと思ったのですが、作るのが大変そうだったのでプロの方に作ってもらいました(笑)。
――確かに難しそうですよね(笑)。世代的にはどのガンダム作品なのですか?
実はガンプラよりもBB戦士なんですよ。僕らの子どもの頃は、「武者ガンダム」や「騎士ガンダム」がスタートしたまさに“元年”でしたから、めちゃめちゃ流行っていました。とくに思い入れがあるのが武者頑駄無です。武者Zガンダムも作りましたし、とにかくいろいろと作りましたね。
――私もサムライや忍者が好きなので武者頑駄無も大好きでした。ただ本当に欲しかったのは、マンガの「プラモ狂四郎」に初めて登場した時のリアル頭身バージョンです。しかも「真武者頑駄無」ではなく元祖の方の。
リアル頭身のフィギュアは僕も完成品のナイトガンダムを持ってました。ガンダムに鎧を装着するギミックのやつです。
――ありましたね! それでは最後の質問になりますが、読者へ向けてメッセージをお願いします。
前作からすでに約5年が経過しました。だからこそ皆さんが待ち望んでいる気持ちはよく分かります。音楽の部分を含め、映画館で映像をめいっぱいお楽しみいただければと思います。どうかよろしくお願いします!
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』
2026年1月30日 全国ロードショー
【STAFF】
原作:富野由悠季、矢立 肇 監督:村瀬修功 脚本:むとうやすゆき キャラクターデザイン:pablo uchida、恩田尚之、工原しげき キャラクターデザイン原案:美樹本 晴彦 メカニカルデザイン:カトキハジメ、山根公利、中谷誠一、玄馬宣彦
メカニカルデザイン原案:森木靖泰、藤田一己 美術設定:岡田有章 美術監督:大久保錦一 色彩設計:すずきたかこ、久保木裕一 ディスプレイデザイン:佐山善則 CGディレクター:増尾隆幸 撮影監督:大山佳久 特技監督:上遠野学 編集:今井大介 音響演出:笠松広司 録音演出:木村絵理子 音楽:澤野弘之 企画・制作:サンライズ 製作:バンダイナムコフィルムワークス 配給:バンダイナムコフィルムワークス、松竹
【CAST】
ハサウェイ・ノア:小野 賢章、ギギ・アンダルシア:上田 麗奈、ケネス・スレッグ:諏訪部 順一、レーン・エイム:斉藤 壮馬
(C) 創通・サンライズ
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