2月13日より公開中の劇場版「僕の心のヤバイやつ」は、陰キャで中二病の中学生・市川京太郎と、天真爛漫な美少女・山田杏奈が織りなす青春初恋ラブコメディ。TVアニメは2023年4月に第1期、2024年1月に第2期が放送され、「第29回アジア・テレビジョン賞」2Dアニメ部門最優秀賞を受賞するなど、国内外で大きな反響を呼んだ。
劇場版では、市川視点でTVアニメシリーズを再編集し、TVでは描かれなかった第2期のその後、“姉・香菜のライブシーン”や、“山田との特別な瞬間”が完全新作映像として描かれる。

アニメ!アニメ!ではこのたび、市川京太郎役の堀江瞬、山田杏奈役の羊宮妃那にインタビュー。アニメシリーズを振り返り、2人が一番“キュン”としたシーンのほか、「堀江が演じた市川の魅力」「羊宮が演じた山田の魅力」をお互いから語ってもらった。

[取材・文=米田果織 撮影=You Ishii]

■堀江瞬、劇場版制作を知っていた!? サプライズの裏側を初告白
――第2期の“その後”の物語を描く本作。劇場版制作のお話を聞いたときにどう思いましたか?

羊宮:ビックリしました。とてもうれしい気持ちでいっぱいですし、大きな画面で、音響設備も整った中で思い入れのある世界観を最初から映画館で見られるのが楽しみになりました。制作決定を聞いたのが、ファンの皆さんと同じくイベント内だったので、どんな新規カットが追加されるんだろうと気になっていて。実際に見てみて「なんて素晴らしいシーンを大きな画面で観られるんだろう……!」とワクワクした気持ちで溢れました。

堀江:「劇場版制作決定!」とサプライズで発表されて、羊宮ちゃんがうれしさのあまり涙を流していたのがすごく印象的に残っているのですが。

羊宮:(照れ笑い)

堀江:僕、実は……。

羊宮:え? ちょっと待ってください(笑)。

堀江:結構前から知っていて……。


羊宮:結構前!? どのくらい前ですか……?

堀江:1ヵ月くらい前でしょうか。不慮の事故で、スタッフさんから「そういえば劇場版作りますもんね」と言われて、「え、そうなんですか!?」って。スタッフさんも僕らに秘密にしていることを知らなかったみたいで、「今のは知らなかったことに……」と言われました(笑)。

一同:(笑)

堀江:もうこうなったら、羊宮ちゃんの出方探って「テンション上がらせるしかない!」と思って。そうしたらすごくきれいな涙を流していたから、僕もウルっとしたような顔を作って、さもそこで知ったような演技をしました。実は知ってたことを、この場を借りてお詫びさせていただきたいです。

羊宮:思わず知ってしまったんですもんね。でも、その事実にはビックリしました(笑)。

堀江:羊宮ちゃんの涙や、来てくださったお客さんの反応を目の当たりにして「「僕ヤバ」はこれだけ愛されていたんだな」ということを再認識しました。そのあとに新規カットのアフレコがあったので、背筋が伸びるような思いでしたね。劇場版のことは知っていたとはいえ、新規カットの内容や総集編の構成までは知らなかったので、どういう風に組み合わさっていくんだろうというワクワクがありました。

――久しぶりに市川と山田を演じられましたが、事前に準備したことはありましたか?

羊宮:現場に入って市川くんと並び、声を聞いた瞬間に、杏奈ちゃんが出てきてくれました。
ずっと私の中に住んでくれているんだなと思いました。なのでこれといった準備はなかったと思います……。

堀江:僕も同じです。準備といってもシリーズをあらためて見返すぐらい。「今演じて、このときの声を出せるのか?」と少し不安だったのですが、山田の声が聞こえてくると、すぐに市川の感覚を取り戻せました。とてもスムーズに収録できた記憶があります。

――あらためて、市川と山田の関係性を振り返っていかがですか? この関係性の変化を、総集編として見られることへの思いを聞かせてください。

堀江:明らかにお互い想い合っているのに、ちょっとしたすれ違いで、いじらしいやりとりに発展していたじゃないですか。それが総集編としてまとめられ、これまでの歩みをスピーディーに俯瞰して観ることができるのは、すごく面白い内容になってるなと思いました。

そして思ったのは、どちらかの一方通行ではなく、市川と山田は想い合っているんだな、と。これまでキャラクターのフィルターを通して見ていたので、あまり実感できなかったところが、俯瞰してお客さんの目線で見たときに「人間ドラマが丁寧に描かれていたんだな」と再認識できました。

羊宮:シンプルに「初々しいなぁ」と思って見ました。
2人が恋心を抱いて、不器用ながらも一生懸命に向き合っていく姿がとても美しいものに見えて。2人が一歩ずつ進んでいくたびに見せてくれる景色が、「ああ、好きだなぁ」とあらためて思いました。

■新規カットの見どころ&2人が一番“キュン”としたシーンは?
――劇中で描かれなかった、京太郎の姉・香菜(CV:田村ゆかりさん)のライブシーンが描かれるのは、間違いなく見どころになると思います。それについての感想も聞かせてください。

羊宮:「いい曲だな、お姉の声いいな、表情もかわいくてステキだな」と思いました。そのシーンはPVで見ただけで、まだスクリーンで見られていないんですよね。劇場の大画面で観ることを、今すごく楽しみにしているんです。

堀江:おっしゃる通り、お姉がめちゃくちゃかわいくて! そんなステキな姉なのに、市川(京太郎)はすごくキモがっているじゃないですか。「なんで? こんなかわいいお姉ちゃんなのに?」「なんであんな汚物を扱うように……?」とつくづく疑問に思いました(笑)。あと、本当に田村ゆかりさんの歌声がステキですよね。僕自身が学生時代に田村さんのライブに行っていたので、まさか田村さんの担当するキャラクターが歌う作品に自分が出られるなんて! オタク心に「あ、なんかすげぇ……」となりました(笑)。

――しかも、自分の演じているキャラの歌詞で歌ってくれていますしね。


堀江:確かに! 後半に2人が疾走するシーンにとてもリンクしていて、そこにグッと惹きこまれて、なんだか泣けてきてしまうような。そんな絶妙な場面で流れるので、スクリーンでご覧いただく皆さんもきっと泣くと思います。

――お2人のとくにお気に入りのシーンは?

羊宮:ほぼ全部なんですけど、一つあげるなら自転車を投げるシーンでしょうか。

堀江:わかるなぁ。

羊宮:あの画角や勢いが、描写としてすごく好きです。何とも言えない2人の空間がすごく印象的でした。もう1つ、アニメを見て泣いてしまったシーンがあって、市川くんがサプライズでアクセサリーをプレゼントしてくれるところ。それをつけた杏奈ちゃんに「死ぬほどかわいい」と言ったところで、涙が止まりませんでした。めちゃくちゃステキなシーンでしたよね!

堀江:僕は第1話から映像美に圧倒されました。細かいところまで描き込まれていて、市川視点で見ると前髪がかかった景色になっていたり、図書室のカーテン越しの光の入り方で埃っぽさが伝わってきたり。いたるところから、そういった繊細な映像美は感じていました。牛尾憲輔さんの作る音楽も、とてもステキに2人の世界を彩っていて。
実際に牛尾さんが道を歩いたときの心拍を設定したと、何かの取材資料に書いてありました。

羊宮:地元の学校の近くを歩きながら聞こえてくる音を録って使った、みたいなことを聞いたことがあります。

堀江:もしかしたら気付かれないかもしれないようなところまで、細部にわたって力を入れていたんだと思うと、本当にありがたい作品に関わらせてもらったと思いました。第1期放送前に流れたPVで、普通だったらノイズとしてカットされるかもしれない音、歯の隙間から漏れる「キキィ」みたいな音のボリュームを上げて入れてくださっていたのがすごく印象的で。芝居が上手く聞こえるような役者の音の使い方をしてくださっていたところにも「ありがとうございます」という気持ちになりました。

――ネタバレにならない程度に、新規カットの見どころもお聞きできたら。

羊宮:劇場版ならではの時間の流れ方だなと思いました。絶対引き込まれること間違いなしのシーンなので、ぜひご覧いただけたらと思います。

堀江:総集編ということで、アニメを見ていた方の中には少し油断している人もいるかもしれないと思っていて。「アニメを見ていたし、総集編なら劇場に足を運ぶのはいいかな」と思っている人は、油断なきように。アニメにはない部分で、2人の微妙な関係性の進展がしっかり描かれているので、その部分を楽しみにしてほしいです。

――ちなみに、お2人が一番“キュン”としたシーンはどこでしょうか?

堀江:修学旅行や初詣のシーンでしょうか。
青春のきらめきみたいなものが詰め込まれていて、とても印象に残っています。僕は修学旅行も初詣も滞りなく経験しましたが、何も起きなさすぎて、好きな子との思い出も作れなかったので。「こんなことやってみたかったなぁ」が詰め込まれたシーンでもありました(笑)。

あと、第1期1話での、山田が市川に対して言う「市川って面白いね」というセリフ。あれは2人を象徴するというか、恋の始まりを予感させるセリフだったので、アフレコのときから「キュン!」となりました。

羊宮:私は、杏奈ちゃんが市川くんを看病しにいくところにドキドキキュンキュンしました。あのお話はどのシーンを切り取っても、息を飲んだり、「ワー!」となっちゃうじゃないですか(笑)。

堀江:ドキドキキュンキュン(笑)、確かに!

羊宮:ですよね!

――アニメシリーズからずっと2人は一緒にアフレコしてきたと伺いました。「堀江さんが演じた市川の魅力」「羊宮さんが演じた山田の魅力」を、お互いからお聞きしたいです。

堀江:山田は明るく天真爛漫だけど、裏で人一倍悩んでいたり、弱さもちゃんと持っている女の子です。その“弱さ”にフォーカスを当てたときに、羊宮ちゃんの繊細な声質がとてもマッチしていると強く感じます。お芝居の間の取り方、言葉の運び方に個性がある方だと思っていて、これは勝手な想像なのですが、多くの方が参加した山田のオーディションで彼女が選ばれた理由は、その個性にあったのではないかと。それだけでなく、遊び心が感じられる演技からも山田らしさがふんだんに感じられて、それが羊宮ちゃんの演じる山田の魅力なんじゃないかと思っています。

羊宮:堀江さん自身も「いやいや僕なんて」と謙遜されるタイプですが、市川くんもよく「僕なんて」と自信のなさが見える瞬間があるじゃないですか。そんなベースが共通していることももちろん、市川くんは杏奈ちゃんのことになると、急にいつもと性格が変わるんです。杏奈ちゃんのためなら行動できたり、言葉に厚みが出たりして。堀江さんは、その熱量がお芝居に向いている方だと思います。「もっとこうしたほうがよかったですか?」と監督に聞いたりして、作品やキャラクターをとても大事にされる方だなと。市川くんが杏奈ちゃんを大事に思って動く姿勢と似ていて、それが通じ合っているからこそ、等身大の市川くんが作り上げられたんじゃないかと思います。

堀江:いや、僕も必死だったんですよね。最初の頃は「(市川は中学生だから)女性が演じたほうが声質的に合っているんじゃないか」と悩んだりして。

羊宮:「イメージと違うって言われたらどうしよう」と悩んでいましたが、私からすると、第一声から市川くんがそこにいました。堀江さんだからこそ、等身大の市川くんが演じられたと思うんです。私も破天荒な杏奈ちゃんを表現するために破天荒な演技をするのですが、それにもちゃんと乗っかってくれるんですよね。本当に、市川くんが堀江さんでよかったと思います。

劇場版『僕の心のヤバイやつ』作品情報    
【公開日】
2026年2月13日(金)全国公開
【スタッフ】
原作:桜井のりお(秋田書店「チャンピオンクロス」連載)
総監督:赤城博昭
監督:陳達理
脚本:花田十輝
キャラクターデザイン:勝又聖人
色彩設計:柳澤久美子
美術監督:黛昌樹
CGディレクター:入川慶也
撮影監督:峰岸健太郎 竹沢裕一
編集:肥田文
音響監督:小沼則義
音響制作:ビットグルーヴプロモーション
音楽:牛尾憲輔
制作:シンエイ動画
製作:僕ヤバ製作委員会
配給:東映 エイベックス・ピクチャーズ
主題歌:ヨルシカ「茜」
挿入歌:こはならむ「神様の秒針を壊した」
挿入歌:あたらよ「春となり」
劇中歌:Primary COLOR「つづく -Movie Version-」
【キャスト】
市川京太郎:堀江瞬
山田杏奈:羊宮妃那
市川香菜:田村ゆかり
小林ちひろ:朝井彩加
関根萌子:潘めぐみ
吉田芹那:種崎敦美(崎は「たつさき」)
南条ハルヤ:島崎信長(崎は「たつさき」)
桃山晶:寺澤百花
(C)桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会 (C)桜井のりお(秋田書店)2018
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