大きいけどMINI
BMWになったMINIの実力は?
BMW版MINIが登場して約20年。いまだ「MINIなのに大きいとはこれいかに?」という声を耳にするし、正直なところ私もそう思ったり。ということもあって、どこかMINIを敬遠してしまっていたのですが、今回ご縁あってMINIを試乗する運びとなりました。



クラブマンはBMW版MINIの第二世代から登場したステーションワゴンタイプのクルマ。5ドアのMINIをベースに、ボディーをストレッチして荷室を拡張、観音開き式のバックドアを取り付けたモデルになります。完全なる新コンセプトのクルマかというと、そうではなくて、1969年に登場したMINIの派生モデルを源流に持つ1台です。ちなみにその昔、MINIをストレッチしたワゴンタイプには、トラベラーやカントリーマン、エステートと呼ばれるモデルもありました。ちなみにカントリーマンはSUVモデルとして現在販売されています。

MINIクラブマンが登場したのは2007年のこと。2015年に2代目へとチェンジし、2019年にデザインの小変更と運転支援システムのアップデート、そしてパワートレインを変更したマイナーチェンジを実施しています。ラインアップはガソリンモデルが、1.5リッター3気筒エンジンを搭載し、最高出力102PSの「バッキンガム」、同じ仕様のエンジンながら136PSを発する「クーパー」、2リッター4気筒ターボで192PSの「クーパーS」と四輪駆動モデルの「クーパーS ALL4」。さらにスポーツモデルで306馬力を発する「ジョン・クーパー・ワークス」と5車種をラインアップ。さらにクリーンディーゼルモデル2車種もあります。今回のレポートは、そのうちFFのクーパーSというモデルになります。




「身長185cmのオッサンが、丸みがかったMINIに乗るのは恥ずかしいなぁ」と、乗る前までは思っていたのですが、いざ現車を受け取ると、深みがかった藍色ということもあってか「意外といいかも」と。ボディーサイズは全長4275×全幅1800×全高1470mmと立派にCセグメント。私が借りている立体駐車場(全長5000×横幅1950×全高1550mm)に入庫したところ、前後と天井は余裕なのですが、ホイールをガリるのでは? とヒヤヒヤドキドキ。車幅1800mmなのに1950mmの車庫でギリギリとはこれいかに? とモノサシで測ってみると、車庫スペースがタイヤ外幅から外幅まで1850mmしかなく。つまり片側2.5cmしかマージンがないという、実にギリギリな入庫でした。筆者的に「このクルマを買うことになったら、ほかの駐車場を借りよう」と思った次第です。
オシャレさとやる気を両立させるデザイン



丸目のLEDヘッドライトが印象的なフロントマスク。よく見るとフロントボンネットにエアインテークを設けるあたり、どこかスポーティーな雰囲気を醸し出しています。








室内に目を向けると、上質なレザーの空間に「さすがBMW」と感嘆。そしてドイツのハイエンド製品であることを誇示するかのようなクロームメッキ調に光り輝くトグルスイッチが目に飛び込み、重厚さを感じさせるいっぽう、丸いセンターコンソールやシートの各所に小さなユニオンジャックのボタンとのギャップに戸惑います。ドイツ的な重厚さと英国的ロックというかポップアートが融合した、ほかにはない魅力に溢れた室内空間です。











丸いモニターの中は、BMW的なUIで様々な設定が可能。ナビはジョグダイアルで入力して利用します。ちょっと煩わしさはありますが、わかりやすいものです。
リアゲートは観音開きを採用
想像以上に荷物が載る!



後席は見た目以上に広く、さすが身長が高い人が多いドイツの設計といったところ。伝え聞く話によるとBMW Motorradの設計基準のひとつに180cmの男性が快適であること、があるとか。これはおそらくクルマにも当てはまりそうで、実際大男の筆者が乗っても後席は快適。案外Cセグメントでも狭いクルマは多いのです。USB Type-C端子を2個用意するあたりもイマドキ。









観音開きの荷室は360リッターとBセグSUVを凌ぐ容量。後席をたためば、なんと1250リットルというから恐れ入ります。観音開きは思ったよりも便利であり、不便でもありという感じ。というのも、大型バックドアを駐車場で開けようとすると、ポールや壁にぶつけたりしがちですが、観音開きドアではそのようなケースはほぼ皆無で使い勝手がイイ。一方、今回私用により長さ80cm超、重さ80kg近いフライトケースに入った荷物を積載したのですが、男性4名で車内に入れようとした際に、横のドアが思ったよりは開かず邪魔に。上は上で扉が開かない場合があり、横は横で荷物の積み込み時に厄介になりと、なかなか難しいものがあると思った次第。ちなみにバンパー下で足を動かせば開くことはできますが、閉める時は手動。しかも左側から閉めなければなりません。
【まとめ】見た目はカワイイが走りは硬派で骨太

あちらこちらに散りばめられたユニオンジャックや丸を基調としたデザインゆえ、軟派なクルマなのだろうと思った私。ですが少し動かした瞬間、それが大間違いであることに気づきました。ステアリングは重く、地に足がついた安定感。ズッシリとした乗り味は、一言で言えば硬派で骨太。

DCTは実にスムースでギクシャク感は皆無。SPORTモードに切り替えてシフトを固定すると、キビキビとした走りが楽しめます。その走りは俊足のスポーツワゴンそのもので、これまた見た目とのギャップに戸惑うこと間違いナシ。

高速道路の巡航で便利なアダプティブ・クルーズコントロールを備えており、こちらの完成度はさすがBMW。ストップ&ゴー付きなので、渋滞時でもバッチリ使うことができます。衝突低減ブレーキなどの機能も用意。普段使いで不満は皆無です。

ポップなエクステリアに上質な室内、そして安心感を覚える走り。今まで「この丸い形はオッサンには……」と食わず嫌いだったことを激しく後悔しました。触れれば触れるほど、MINIやるじゃないか! という気持ちになってきます。



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