連載再開一発目はやっぱりポルシェしかない!
約2年半ぶりの連載再開となった「スピーディー末岡のドライビングプレジャー!」。動画のほうも、筆者はともかく、メインナビゲーターのつばさが非常に忙しくなってしまい、2年近く放置プレー続行中なのが申し訳ないところ。
ここ数年、自動車記事を大量に投入しているものの、筆者の大好物であるスポーツカーやスーパーカーにほとんど触れておらず、これはイカンと奮起して当連載を再開させることにした。連載1回目はポルシェ 911 ターボ。だったら再開一発目もポルシェターボでしょう! ということで、今回は911(992型)のターボをお借りした。
ポルシェといえば「911 ターボ」
2020年の年末にも911ターボには乗っているのだが、あちらはターボカブリオレというオープンのグレード(ポルシェ 911 ターボS カブリオレで比叡山の風を感じる)。なにげに992型になってからクローズドボディーに乗るのは初めてだったりする。
そう、今回は911 ターボの中でもSでもカブリオレでもない、標準グレードをチョイスしたのだ。筆者はスペック厨なので911 ターボSにしようかと思ったのだが、ターボSカブリオレを乗っているし、ここは素のターボにしようと思い、今回はこのモデルをチョイスした。単純にパワーの数値だけで比較すると、911 ターボが580PS、911 ターボSは650PSと、約70PSの差がある(各カブリオレはクーペと同じ馬力)。911 ターボのラインナップをまとめると以下の4モデル。
- 911 ターボ:2500万円
- 911 ターボカブリオレ:2788万円
- 911 ターボS:2947万円
- 911 ターボSカブリオレ:3235万円

ポルシェ 911というブランド
ここで簡単にポルシェの911というモデルの説明をしたい。992型と呼ばれる現行911は、初代から数えて8代目にあたる。2018年にハイスペックモデルの「911 カレラS」「911 カレラ4S」が登場し、2019年にベースグレードの「カレラ」がリリースされるという、スマホでは考えられない発表の仕方だった。ターボモデルも、先にターボSから受注開始、数ヵ月後にターボが受注開始されていた。やっぱりポルシェを買う人は筆者と同じくスペック厨なのだろうか……。実際にターボSのほうが売れているらしいが。






911といえば、ベーシックグレードは水平対向の自然吸気(NA)エンジンというのがお約束だったが、現行モデルは全車ターボチャージャーを搭載するに至った。ではなぜ「ターボ」というグレードが残ったのか。タイカンもそうだが、「ターボ」はポルシェの中ではハイスペックモデルを意味するからだ。同じターボを積んでいても、ベーシックグレードの911 カレラは385PSまで抑えられている(価格も1429万円と、約1000万円も抑えられている)。このように、ポルシェは同社のシンボルでもある911に、幅広いグレードを用意し、あらゆるニーズに応えているのである。
911との間を補完する
911 ターボのスペック

911 ターボのスペックはエンジンが水平対向6気筒3.7リッターツインターボ。最大出力は580PS/6500rpm、最大トルク750Nm/2250~4500rpm。0-100km/hの加速が2.8秒、最高速度320km/h。もうこの数値だけで、ご飯がすすむ君である。なお、ターボSは最高速度が330km/h、0-100km/hの加速が2.7秒とちょっとだけ速い。サーキットでレースやタイムアタックをするのならともかく、街乗りしかしない筆者には誤差である。なお、911 ターボのトランスミッションは8速PDK(いわゆるAT)のみ。これくらいのパワーになると、MTで人が操作する領域を超えているのだろう。ちなみにターボモデルは991型からMT設定がなくなっている。


ボディーサイズは全長4535×全高1300×全幅1900mm、ホイールベース2450mm、重さは1640kg(ドイツのDIN規格準拠)。最大積載量は400kgで、ルーフの最大積載量は75kgとのことだが、911のルーフに何かを載せるなんてキアヌ・リーヴスくらいじゃなかろうか……。前モデル(991型)より全体的に若干大きくなっており、一番気になったのは全幅。991型が1880mmだったが、992型では1900mmと、ついに大台に達してしまった。スマホでいうならディスプレーが6型オーバーに! という感じだ。なお、911 カレラ(992型)は全幅が1850mm、全長が4520mmで全高とホイールベースは変わらない。911 ターボはお尻が大きいと昔から決まっているのである。
以下は911 ターボのエンジン始動音だ。セミの鳴き声をかき消す咆吼を堪能していただきたい。
911はカレラが385PS、カレラSが450PSで、ターボSがいきなり650PSと200PSもあがってしまう。しかし、ターボは580PSとラインナップで見ると非常にバランスがいい。カレラじゃ物足りないのでターボが欲しいけど、650PSあってもねえ……という人にはターボという選択がベストだろう。




なお、カラーバリエーションだが、スタンダード、メタリック、スペシャルを合わせると17色も用意されている。今回の試乗車は深い青の「ゲンチアン ブルー」になる。






タブレットのような感覚で操作できる
「PCM(ポルシェコミュニケーションマネージメント)」
非常に多機能になっているのが10.9型の大型ディスプレーと「PCM(ポルシェコミュニケーションマネージメント)」だ。SIMスロットがあり、そこにはソフトバンクのM2MのSIMが刺さっており、モバイル通信を常時しているので、スマホのテザリングなどをする必要がない。むしろ車内Wi-Fiとして使えるので、スマホを接続できる。もちろんApple CarPlayにも対応する(Android Autoは非対応だが今後使えるようになる予定)。なお、このモバイルネットワーク「Porsche Connect」は新車登録時から36ヵ月は無料で使用できる。




PSMでは車両の状態を確認したり、ワンタッチで設定を変えることも可能だ。車両のすべてがここに詰まっていると言ってもいいだろう。ドライブモードはステアリングのダイヤルでも変更できるが、PSMからでも変更可能だ。
音楽や動画などのエンターテインメント、カーナビや車両設定、前後のカメラの様子まで、もうこのディスプレーなしでは生きられないカラダにされてしまう。ステアリングの次に触る回数が多い部分だ。






見せてもらおうか! ポルシェの速さとやらを!
車内Wi-Fiを繋げられることは前述したが、だったらスピードテストをしたくなるのがガジェオタの宿命。さっそく、通信速度を測ってみた。え、クルマの速度は測らないのかって? だって危ないから……。






5回計測して一番速かったものを掲載した。5Gには非対応で4Gのみのため、速度はいたって普通であり、カーナビの検索や音楽や動画のストリーミングは問題なくできる。Amazon Prime VideoはHDの画質になったので、われわれが使っているスマホと何ら変わりはない。ポルシェに乗ったら車内のWi-Fiに繋いで存分にネットを楽しんでほしい。




凶悪なパワーだが安心感に包まれる
トルクのバケモノだ!
本題であるポルシェで速度テストが終わってしまったが、一応自動車レビューなので簡単に走行性能を語ってみたい。ただ、借りてた期間のほとんどが雨だったのでそんなに乗れていないのはご了承願いたい(それでも200km近く走ったが)。
まず、ポルシェは運動性能の前に車内空間がバツグンにイイ。昔の「職人の仕事場感」があるコクピットも良かったが、上質で居心地がよく、それでいてその気にさせてくれる今の911の車内もいい。










911 ターボは2500万円のクルマである。今回の試乗車には、さらに約500万円近いオプションが乗っている。3000万円もするクルマなんだから悪いワケがないでしょ、と若干ハードルあげて乗ったのだが、そのハードルを余裕で越えてきたのが911 ターボ。良いに決まってるとあまり感動しないかと思ったが、その走りの力強さに数百メートル運転しただけで大感動。もともとポルシェはトルクのあるクルマだが、580PSのおかげかアクセルペダルに足を乗せるだけでグググっと進んでいく。全幅が1900mmなので、道が狭いところでは大きさを感じてしまうが、高速道路などではむしろの全幅のおかげで安定感と安心感がある。


標準装備(モデルによってはオプション)の「スポーツクロノパッケージ」のおかげで、ドライビングモードはノーマル、スポーツ、スポーツ+、インディビデュアル、ウェットの5モードがある。ノーマルはコンフォート寄りで8速PDKは燃費のためにサクサク上のギアに変えていくし、エンジン音も控え目、足回りもマイルド(もともと硬いけど)。ノーマルでもターボのラグはほぼ感じず、信号多めの道でもスムーズな加速でストップ&ゴーがストレスにならない。スポーツモードに入れると、隠していたツメが出始める。PDKは回転数高めの変速になり、排気音も野太くなる。エンジンレスポンスが良くなるので、不用意にアクセルを踏み込むと自分が置いていかれるかのような加速をする。正直、心臓に悪い。スポーツ+はさらに車高が下がり、エンジンもシャーシもすべてサーキット仕様に変化。マフラーからはアンチラグの破裂音のようなものも聞こえる。直線だと矢のように走っていくのだ。一般道でこのモードはまったく必要ないと言えるだろう。ぜひ、サーキットで911 ターボの真の姿を解放してあげてほしい。
さらに恐ろしいのが、ダイヤルの中心についている「ポルシェ・スポーツレスポンスボタン」だ。通称「20秒間全開スイッチ」(筆者命名)。押したその瞬間から、エンジン、シャーシ、吸排気系などのパフォーマンスが最大限になる。そしてターボはフルブーストになるという、男の子ならときめいてしまうボタンだ。このボタンを押すか否かでスピードはだいぶ変わるようで、海外の動画だがR35 GT-Rと911 ターボの対決でボタンを押したら余裕でGT-Rに勝ってしまうというものを見かけた。当然ながら街中で押すものではない。走りながらでも「ポチっとな!」と押せてしまうのだが、突然クルマのキャラクターが変わるので、覚悟完了してからでないと混乱してしまうだろう。筆者も高速道路で押してみたのだが、背筋が凍るほどの加速になったので5秒ほどで戻してしまった(発動中に押せばいつでもキャンセルできる)。




とはいえ、ノーマルモードで乗っていれば、580PSとは思えないほどの大人しい走りで、ドライブが楽しい。背後から聞こえるエンジン音も心地いいし、ポルシェの様々な電子制御のおかげで「万が一事故っても守られる」という安心感がある。近所のコンビニやファミレスから、サーキットでスポーツ走行をして、そのまま家まで自走して帰ってこられる。このオールマイティーさがポルシェの魅力だ。
インテリアは前述のとおり高級感があり、シックな雰囲気。ステッチの色も周りと合っているので統一感がある。一見狭そうなリアシートも、しっかり大人が乗れる(頭をぶつけそうになるが)。筆者の子どもを乗せてみたところ、リアシートの窪みにすっぽりと納まって、乗り心地は良さそうだった(なお、乗せて運転はしていない)。ただ、スイッチ類が多いので、一瞬どのボタンがどの機能だっけ? と考えてしまうことがあった。ディスプレーはどうしても操作のときに注視してしまうので、物理ボタンがなくならないのは仕方ないことだ。これは慣れの問題だろう。




【まとめ】お金が許せば絶対乗りたいクルマ
それがポルシェ 911 ターボだ!
昨年末に911 ターボSカブリオレという、最上級グレードに乗っていたため、580PSのターボは物足りないかなと最初は思っていた。580PSが物足りないかもと思ってしまう時点で、すでにどこか基準がおかしいのだが、650PSに乗ったあとだとそうなってしまうのだ。


だが、580PSでまったく問題ナシ。とにかく懐が深いクルマなので、ドライバーを様々な電子制御で助けてくれるし、腕に自信があるドライバーならインディビデュアルモードで自分好みにカスタマイズして走れる。元々ポルシェは、クルマとはパワーだけにあらずという製品造りをしているだけに、580PSでも街中はコンフォートに、高速道路は快適に目的地まで運んでくれて、サーキットでは爆速、とシーンに合わせてパフォーマンスを発揮してくれるようになっている。高性能車が街中をファミリーカーのように走れることがどれだけスゴいことか。

筆者はポルシェ 911というクルマは高級車ではあるのだが、スポーツカーのさらに上のハイパフォーマンスカーだと思っている。ブランド料もあるが、この性能だからこの金額になっているのだと。それはスマホも同じ。良いCPU、良いカメラを搭載したスマホはどれも高いだろう。

そんな超高性能車のポルシェ 911 ターボはいつだって憧れの象徴だ。筆者もお金があればもちろん買いたいのだが、その前にポルシェが似合う男にならねば、と思うのだった。

■関連サイト