「100年に一度の大変革」といわれる自動車における電動化の流れ。その中、6月22日、2026年以降に発売する新型車をEVのみにすると発表したのが、ドイツのプレミアムブランド、アウディです。
アウディってどんなブランド?

過去、モデルさんに「乗ってみたいクルマは?」と尋ねると、必ずといってよいほど「レクサス、メルセデス、BMW」とともに、アウディの名が出てきます。ですが理由を尋ねても、ほぼ全員乗車経験がなく、明確な答えを聞いたことがありません。これは「彼氏に乗ってもらいたいクルマは?」というよく見かける記事でも同様。ブランドイメージで語られることが多く、「なぜアウディなのか?」という部分については明確に記されていない場合がほとんどです。舶来信仰なら、ほかにも素敵な輸入車がありますし、日本車だって素敵なクルマはいっぱいあります。

唯さんも乗ってみたいクルマの第一位にポルシェを挙げるものの、あとは御多分に漏れず。彼女的にアウディに乗るのは初めてとのことですので、実際に体験してもらいながら「アウディが女性を惹きつける魅力」を探ろうと思った次第です。ちなみに唯さんのアウディに対するイメージは「実家の近所にアウディのセダンに乗っている方がいらっしゃるのですが、その方が渋い人で。だから渋い男性に似合うクルマという」とのこと。つまり渋いオトナのブランドという印象のようです。




ですが、今回ご用意したのは渋さとは無縁の色鮮やかなキャラミグリーンに彩られたTT RS。


さらに唯さんのツボを刺激したのが「後ろに羽根がある! やっぱり羽根があるクルマってカッコイイ」とリアウイングにときめき。「彼氏に乗って欲しくないクルマ」という記事で、羽根のついたクルマを挙げられることが多いですが、唯さんには当てはまらないようです。ならばと、同じく釣り目で羽根を付けた不肖のS660はどうよ!? と尋ねたのですが、こちらについては「うーん……」とイマイチな反応。どうやらクルマ云々より、乗り手に問題があるようです。

そんなアウディTTですが、初代のデビューは1998年のこと。当時としては先進性を感じるエクステリアと高品位なインテリアで、一躍人気モデルとなりました。その後TTは2006年に2代目、2015年に現行の3代目へとチェンジ。2019年にマイナーチェンジを実施するものの、現行アウディラインアップでは最も設計の古いモデルで、冒頭に記した2026年以降の新車全EV化を考えると、今から新型TTを出すことは考えづらく、おそらくこのモデルが最後のガソリン仕様のTTになることでしょう。
アウディといえば「直5エンジン+クアトロ」
そんなTTのラインアップの中で、TT RSは最も高額で、最もアウディらしいモデルと言えます。というのも、駆動系にクワトロ機構と、最高出力400馬力を発する2.5L直列5気筒TFSI直噴ターボエンジンを採用しているから。「それが何でアウディらしいの?」という事をご紹介しましょう。


アウディは、1980年に世界で初めてフルタイム4WDシステム「クワトロ」を乗用車に組み込みました。当時は4WDといえば悪路走破の目的でパートタイム式を採用するのが一般的で、いかなる路面でもハイパワーを確実に路面に伝える目的でセンターデフを内蔵したフルタイム式の「クワトロ」システムは画期的な機構でした。このクワトロシステムを初めて搭載した2ドアクーペが、これまた「クワトロ」と名付けられたクルマ。混同を避けるため一般的には「Ur-クワトロ」とも呼ばれているのですが、この「Ur-クワトロ」に搭載したエンジンが、2144cc SOHC10バルブの直列5気筒ターボエンジンだったのです。スキーのジャンプ台をクルマが登坂するCMを見た事がある方も多いのではないでしょうか?

アウディは「Ur-クワトロ」をベースとしたマシンで、1981年から世界ラリー選手権(WRC)に参戦。初戦のモンテカルロ・ラリーはリタイアに終わるものの、6本のSSで2位以下に6分以上の大差をつける圧倒的なパフォーマンスで第2戦のスウェディッシュ・ラリーで初優勝。第8戦サンレモ・ラリーではミシェル・ムートンが女性初のWRC優勝者になるなど、輝かしい戦歴を残しました。
こうして「Ur-クワトロ」は、1982年と1984年のWRCマニュファクチャラーズタイトルとドライバーズタイトルを獲得、アウディの名を広く世に知らしめることに成功しました。ゆえに、直列5気筒エンジンとクワトロシステムのパッケージングが、もっともアウディ濃度が高い、といえるのです。特に直列5気筒は、かつてHondaやボルボ、そしてフォードから登場していましたが、現在はアウディのRSモデルのみが搭載するレアなユニットです。


人は、年を重ねると若い人に自分の知識や昔の話を披露したくなるもの。これを老害と呼ぶのですが、筆者もそういう年齢に達したようです。現車を目の前にした途端、つい唯さんに上記内容の説法をしてしまいました。ですが唯さんは「へー、すごいんですねー」と馬耳東風。会社の歴史やブランドの解説よりも、早く運転させろという表情です。ということで、早速コクピットに座ってもらいましょう。
ナビがないからこそシンプルでハイセンスなインテリア




「カッコいい!」と感嘆の声をあげる唯さん。「パッと見て必要なところに、必要なスイッチがある。だから直感的な操作ができますね」というように、まずは使いやすさ、わかりやすさに唯さんは注目した様子。その上で「シートに座った瞬間、ワクワクするような感じを受けますね。それにシンプルでハイセンス。日本車とは異なる上質感な雰囲気も感じますね」とのこと。



そして唯さんはあることに気づきます「ナビはどこにあるのですか?」。
「これ、凄く見やすくてわかりやすい! メーターパネルに方向を出す車種もありますけれど、こっちの方がイイですね」と絶賛する唯さん。「中央にナビがあるより視点の移動が少ないから、運転中に前方から目を離すことが少なくなりますし、何よりインテリアがスッキリしますね」と、実用性とインテリアの面から賛辞。さらにTTSおよびTT RSグレードではセンタータコメーター表示も可能。「これは気分が上がります!」とスポーツカー好きのツボを、またもや刺激されたようです。
ですが、そのナビの入力方法は少し面倒。というのも、タッチパネルではないため、シフトレバー付近のジョグシャトル(MMI)で1文字づつ入力しなければなりません。「これは……」と言葉を濁す唯さん。ちなみにMMIタッチで手書き入力もできますが、タッチ部分が左手側なので、右利きには少し面倒です。欧州は左ハンドルなので、右利きでも使い勝手がよいのでしょう。

使い勝手の点ということで、後席をチェックする唯さん。残念ながら狭く、4シーターというよりは「一応席はありますが……」といったところ。軽い荷物置き場だと思ったほうがいいかもしれません。


一方、リアのバックドアを開けると、広いラゲッジスペースが現れます。ほぼ座れない後席シートを倒すと、SUVも驚く700リットルの積載スペースが現れます。「これならタイヤ4本にヘルメットや工具も入りそう。サーキット走行できますね」と、走り屋魂をウズウズさせる唯さん。「ここまで広いなら車中泊ができるのでは?」と寝てもらったのですが……「さすがに無理です」。
400馬力を四輪駆動で路面に伝える安心感

では、お待ちかねの走りを楽しんでもらいましょう。まずはノーマルモードから。「意外と静かなクルマなのですね。カチッとした乗り味は、さすがスポーツカーという感じです」と唯さん。

アウディTT RSが搭載する直列5気筒エンジンは、排気量2.5リットルのターボ型で、最高出力400ps、最大トルクは480Nmと、WRC参戦時の最高出力360ps/最大トルク420Nmを上回る強力なもの。しかもそれが一般道で扱えるのですから、30年の技術進歩には驚くばかり。

「どんな場所でも、どんな事をしてもクルマが安定していて、ドライビング中に不安や怖さをかんじさせず、ただただ楽しいと思わせてくれるクルマですね。実にオトナの1台だと思います」と賛辞を送ります。オトナというのが女性に受ける要因なのでしょうか?



ですが、ヤンチャな部分も欲しいお年頃。クルマが良いと、ない物ねだりをしたくなるものです。そこで、ダイナミックモードに変更。野太い排気音が室内に響き渡り、一気にテンションが上がる唯さん。アクセルのツキがよくなり、足も一層引き締まります。「これ! これは凄く楽しいです!」と満面の笑みの唯さん。さらに喜ばせるのが、アクセルオフしてシフトダウンする際に、ヴォンヴォンとオートブリッピングすること。「ヤバい! これはヤバいです! テンション上がりますね」と、左シフトパドルを駆使する唯さん。そして「5気筒エンジンって、4気筒エンジンのトルクの立ち上がりと、6気筒エンジンの伸びやかさが両立しているように感じますね。このエンジンは凄く楽しい!」とアウディらしさを感じた様子。
「カッコいいエクステリアに、素敵なインテリア。力強く楽しいエンジンに、こわさを感じさせないドライブフィーリング。これがアウディの魅力なのかな」と唯さんは、アウディのブランドアイデンティティーを肌身をもって体験したのでした。

【まとめ】本気をこれ見よがしに見せない
大人の雰囲気がアウディTT RSにはある
こうして楽しんだアウディTT RS。帰り道は筆者がノーマルモードで大人しく運転していたのですが「普段乗る時は、こういうジェントルなところが凄くイイですね。スポーツモードのような走りができるけれど、普段はそのような面を見せない。そこにオトナのクルマという感じを受けますね。逆に誰かを乗せている時に、スポーツモードのような事をされると、大人げないなぁと思っちゃいます」と筆者をジロリ。筆者の愛車であるHonda S660は車高調を入れて足を硬めたり、スポーツマフラーで音を大きくするなど、実に大人げない仕様です。スミマセン。

「改めて、アウディは渋いオトナに似合うクルマだと感じた1日でした」と唯さんは笑顔で語って取材は終了しました。プレミアムブランドの片鱗を、クルマから感じたようです。ちなみにアウディは、ディーラーのサービスもすごいんですよ(それは別の機会に)。アウディの魅力は、テクノロジーもさることながら、それをひけらかさないオトナの余裕なのでしょう。少しだけ疑問が解消されたような気がします。

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モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

栃木県出身10月5日生まれ。2020年に小林唯叶としてモデルデビュー。2020年シーズンのSUPER GT「マッハ車検GAL」をはじめ、SUPER FORMULA、スーパー耐久シリーズのレースクイーンとして活躍。2021年4月の芸能事務所プラチナム・プロダクションへの移籍に伴い新唯に改名。現在ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技の勉強中。