昨年末からのジムニー欲は年が明けても治まる気配はなく、夜な夜なカタログやウェブを眺めては想像を巡らし、最終的には絶望して寝てしまう。
絶望の理由は長過ぎる納期だ。
そんな状況にあっても納期は短くできる。それは発注すること。発注しなければ納期さえ発生しないのだから。そのため、まずジムニーシエラかジムニーか。どちらにするかを決めなければならない。
だけど、どっちもいいから困るのよ。
ジムニーを買いたい情報2022、私は優柔不断を絵に描いたような四本淑三です。今回の話題の中心と致しますのは、ジムニーのグレード。

ただし、これは私の悩みを聞いてくれという話であって、北海道在住者がロードスターの行動範囲を補うための選択。一般的なバイヤーズガイドとしてはいささか偏りが大きいことをご了承ください。
そしてここから先は軽自動車版のJB64は「ジムニー」、登録車版のJB74は「シエラ」、両方を示す場合は「ジムニーシリーズ」と呼んで参りますのでよろしく。
ジムニーシリーズのグレードは上・中・下の三択

以上がいま買えるジムニーシリーズのすべて。これに有料色を含むボディカラー、メーカーオプションを加えたものが、我々に与えられた発注時の選択肢です。
ジムニーのグレードは上から「XC」「XL」「XG」の3つ。シエラのグレードは「JC」「JL」の2つ。シエラにはジムニーのXGに相当するグレードはありません。そして最上位グレードのシエラJCとジムニーXC、中間グレードのシエラJLとジムニーXLの装備は共通ですから、軽と登録車の規格の違いを除けばグレードは上・中・下の三択です。
「クラウンの一番高いやつ持ってこい!」の一声で格好が付いたのは昔の話。
そんなわけで各グレードの良いところを見ていきましょう。
最量販グレードはカラバリも豊富な「XC/JC」
ところが現代のジムニーシリーズでも売れ筋は一番高いヤツ。販売店によって持っているデータは違うでしょうが、私が聞いたところではXC・JCの受注が圧倒的なんだとか。ジムニーの客も昭和のクラウンおやじと変わらんのか。
いやいや。ジムニーシリーズの装備は今時のクルマとすれば簡素そのもの。車両価格が安く、グレード間の価格差も小さいですから、そうなるのも止むを得ません。それに最上位グレードが人気なのは、ボディカラーとの兼ね合いもあるでしょう。

カラーバリエーションは全13色。そのうちシエラのJCは11色、ジムニーのXCなら12色から選べます。2万2000円払うとピュアホワイトパール、4万4000円を払うとツートーンカラーが選べるのもこの最上位グレードの特権。
対して中間グレードのXL/JLは8色、最下位グレードのXGは白黒銀緑の4色しか選べません。カクカクした丸目のジムニーシリーズはかわいいと女子人気も高いですから、好きな色が選べるグレードから売れていくのも当然のことでしょう。
そしてこのカラバリがまた選択を難しくしているのですが、ここはひとまず装備の違いを最上位グレードに対する下位グレードの差分で見ていきましょう。
オプション化された安全装備を装着するか否か

グレードが下ると装備は容赦無くバシバシと削られていきます。
JCXCには標準だった安全装備が、下位グレードのXLJL/XGではまとめて削られ「スズキセーフティサポート」としてメーカーオプションに。必要であれば4万2900円のアップチャージとなりますが、これは特に理由がなければ装着しておいた方が良いものです。
その内容は「デュアルセンサーブレーキサポート」「標識認識機能」「車線逸脱警報機能」「ふらつき警報機能」「先行車発進お知らせ機能」「ハイビームアシスト」「誤発進抑制機能(ATのみ)」。発売当初このパッケージに含まれていた「オートライトシステム」「ライト自動消灯システム」は、法令対応のため昨年のマイナーチェンジから全グレード標準装備となっています。
自動ブレーキは2021年11月以降発売の新型車から装着が義務付けられていますが、継続生産車は2025年12月までお咎め無し。だから今はオプションですが、時期が来れば標準装備になります。リセールの点でも付けておいた方が良さそうですが、後退時確認装置や事故記録装置など、今後装着義務化予定の安全装置が控えている中、現状のシステムが将来の査定の足しになるかどうかは分かりません。
そして今なら「カメラを使った安全装置なんて雪が降ったら使えないじゃん」「そもそもオフロードだけを走り回るのだから安全装備なんて必要無し」そんな選択肢も下位グレードにはあるということです。
鐵鎮ホイールの方がジムニーらしい?
話を中間グレードのXL/JLに絞りましょう。上のグレードでは標準だった以下の装備が無くなるか、他のものに置き換わります。
アルミホイール > 鐵鎮ホイール
LEDサイドターンランプ付き電動格納式ドアミラー > LEDサイドターンランプ無し
本革巻きステアリングホイール > ウレタンステアリングホイール
クルーズコントロール > 無し
車内メッキ加飾 > 一部無し(ルーバー、ドアハンドル、パーキングブレーキボタン)
助手席バニティーミラー > 無し
LEDヘッドライト > ハロゲンヘッドライト
ヘッドライトウォッシャー > 無し

外観で大きなところはアルミホイールが鐵鎮ホイールになることでしょう。専用デザインのアルミホイールもカッコイイですが、やはりクロカンマシンといえば鐵鎮ホイールという方もいらっしゃるはずで、オプションで買うと鐵鎮も結構なお値段。ここはグレードダウンではなく好みの問題です。

そしてドアミラーのウインカーランプが無くなります。テールランプに雪が張り付いて何も見えない状態でも、こいつで何とか分かる場合もあるので惜しいですが、交差点のない田舎道ばかりなら重要度は低いかも知れません。
内装に目を移すと、革巻きだったステアリングホイールがウレタン剥き出しになります。革巻きホイールは最初のうちはいいんですが、手入れを怠るとペタペタテカテカしてきて劣化も目立つ。ウレタンなら汚れた手で握っても拭けばいいだけですから便利です。
助手席のバニティーミラーも無くなりますが、隣に乗る人がいなければ問題無し。メッキ加飾が減っても性能に関係無し。クルーズコントロールは速度固定式で高速を走るなら右足は楽になりますが、田舎の下道では用がないので無くても結構。
ハロゲンVSヘッドライトウォッシャー付きLEDヘッドライト
XC/JCを除く下位グレードの注目点は、やはりヘッドライトがハロゲンになることでしょう。
明るく白いLEDヘッドライトから、薄暗く赤みがかったハロゲンへの変更は、一見するとグレードダウンのように思えます。しかしハロゲンは発熱量が多く、それがレンズにへばりつく雪を融かしてくれる。
一方、エネルギー効率の良いLEDは熱も少なく雪も融けません。そこでヘッドライトウォッシャーが付きます。これは自車の視界確保だけでなく、付着物による光の拡散から対向車の幻惑を防ぐ目的もあります。

ただこのヘッドライトウォッシャー、小型の高圧洗浄機と見まごうばかりの勢いですから、霧状となったウォッシャー液は広い範囲に飛散します。こんなものを日本国内で無闇に使ったら「最低限の人様に対する配慮」がどうのと手前勝手なマナーを唱える謎の勢力が黙っていないでしょう。ハロゲンならそこも安心です。
そしてハロゲンの暗さに我慢できなくなったら、アフターマーケットのLEDバルブも着けられます。ヘッドライトウォッシャーがないので雪の付着で困るかも知れませんが、その場合は冬だけハロゲンに戻せばいいのです。雪が降ると周りも真っ白なので、多少暗くなるくらいは平気です。
つまり、どこに住んでいて、どんな道を走るかが評価の分かれ目。
最下位グレードにしかない魅力の鍵は「キー」
そして最下位グレードのXG。これはジムニーでしか選択できないグレード。すなわち軽自動車で始まったジムニーの魂。もはや助手席や後席の人への配慮も感じられなくなってきます。
助手席シートベルト警告灯 > 無し
助手席シートベルトリマインダー > 無し
後席シートベルト警告灯 > 無し
後席シートベルトリマインダー > 無し
リアシートリクライニング機構 > 無し
リアシートヘッドレスト > 無し
分割可倒式リアシート > 一体可倒式リアシート
防汚タイプラゲッジフロア > 無し
ラゲッジボックス > 無し
電動格納式ドアミラー > 手動格納式ドアミラー
カラードドアミラー > 無塗装樹脂色ドアミラー
ヒーテッドドアミラー > 無し
フロントフォグライト > 無し(ディーラーオプション有り)
カラードドアハンドル > 無塗装樹脂色ドアハンドル
フルオートエアコン > マニュアルエアコン
シートヒーター > 無し
撥水ファブリックシート > 撥水しないファブリックシート
リアルームランプ > 無し
リアスモークガラス > 無し
運転席バニティミラー > ついに無し
メッキ加飾 > 完全に無し
潔い!
助手席や後席は荷物を積むところ。ヘッドレストやリクライニングも要らなければ分割可倒式である必要も無し。リアのバックレスト裏に貼ってある防汚用の樹脂カバー、あれは荷物がツルツル滑って困るので、どうせシートを敷くのだから無くても構いません。リアのラゲッジボックスはサードパーティにカッコいいのが出ているから問題無し。

ドアミラーも樹脂剥き出しの無塗装、かつ手動格納式になります。狭い道で枝と擦れそうな時に電動は便利でしょうが、無塗装の樹脂なら傷が付いても私の心は痛まないのでそのまま行けてしまうから更に便利です。
ドアミラーからはヒーターも消えますが、今まで雪の付着で困った経験はありません。ジムニーのミラー形状でどうなるかは分かりませんが、何かあっても右側は手が届くし、左側もマジックハンドか何かでどうにかしましょう。
そして何よりXGグレードで素晴らしいのは、カタログにもただ「キー」としか書かれていないキー。無線式のスマートキーではなく、機械式の回すキー。今時の若い人は分からないかもしれませんが、これをステアリングコラム右のシリンダーに差し込んで回すとエンジンがかかるんですよ。

チャリチャリチャリ。カシャッ。きゅるるるるぶおーん。キーホルダーにぶら下がっているお守りやらチャームやらがジャラジャラジャラ。回すキー、最&高!
無線式が当たり前になり走行中はリモコンの置き場に困っていましたが、回すキーならシリンダーに挿しておけば問題無し。ACCやONのポジションも確実なクリック感があってボタンとインジケーターよりはるかに分かりやすい。スイッチが入っているのに気付かずドアを開けて「ピー」なんて警報音で焦ることもなし。にも関わらずキーレスエントリーなので、鍵穴が凍ってドアが開かないなんてこともない。素晴らしい。
なのに世間の評論家は「これだけ装備を削っているのに、上のグレードとの価格差が12万しかない。コスパを考えたら上のグレードがオススメ」などと言います。じゃあね、12万円払ったらXCやJCにメカニカルキーが付きますか? 付きません。決して付かないのです。世の中ゼニだけで解決するものばかりではないということを肝に銘じていただきたい。
と、無茶な強弁はこれくらいにして、このグレードには致命的な問題がひとつ。それはシートヒーターまで無くなること。あれなしで私、生きてゆけません。せめて運転席側だけは残しておいて欲しかった。でも悪いのは冷たさに弱い私。ああ、弱い私のばかばかばか。
こうした葛藤と演歌的自己否定を夜毎繰り返し、私は疲れ果てて眠るのです。