マツダの4代目ロードスター(ND)型が登場して、7年目を迎えようとしています。その間、リトラクタブルハードトップ機構を搭載したRF型の追加、運転支援技術の更新、そしてエンジンの改良など、細かなリファインを繰り返してきました。
そして今回、ND型としては操作安定性に新しい技術の導入とともに、軽量化を推し進めたグレード「990S」が追加されました。この990Sに熱い視線を送るのが、NDロードスター乗りのファッションモデル新 唯(あらた・ゆい)さん。「機会があれば、ぜひ乗らせてくださいお願いします」と懇願する彼女とともに、商品改良されたロードスターと990Sをリポートしたいと思います。

唯さんがロードスターと出会ったのは、今から3年前のこと。キリッとしたフロントマスクに一目惚れし、白いND型をお迎えしたそうです。慣らし運転に行った場所は栃木県の八方ヶ原。峠道でロードスターの良さに心底惚れるとともに、スポーツドライビングの楽しさを存分に開眼されたのだとか。その後もND型との蜜月は続いており、今もご実家で大切に保管。帰省した時にステアリングを握っているそうです。
ロードスターの魅力は「実用的で運転していて楽しい」こと。もう少し詳しく書くと「ハイパワーなスポーツカーよりも、ローパワーでも軽量なスポーツカーの方が扱いやすくて好きなんですよ。だからND型は私にピッタリで気に入っています」となのだとか。
中~高速域での挙動を制御する新技術を導入

今回の商品改良で最も大きなポイントは「KPC=キネマティック・ポスチャー・コントロール」という技術を搭載したこと。これは何かというと、中~高速域での挙動を落ち着かせるための、従来にはない新技術。もともとロードスターはNA型より低速時の軽快感やヒラヒラ感を大事にしつづけてきたクルマなのですが、その背反として高速時に不安定になりがちに。それゆえ高速でのコーナリング時に怖さを感じてきたというわけ。そこでコーナリング中の車体の内輪側を沈み込ませる(浮き上がりを防ぐ)ことで姿勢を安定化。結果、気持ちよくコーナリングができるようにしたというのです。
その仕組みはというと、コーナリング中に一定のGがかかった時に、内輪側をわずかにつまむというもの。イメージしやすいのは、バイクのフットブレーキの使い方で、浮き上がりそうになるところを、わずかにブレーキングすることで安定させる(抑制させる)という方法に似ているといえます。ちなみにブレーキ制御のプログラム変更で対応できるそうで重量増はないとのこと。新機構搭載したものの重量が増えてしまったら、何のためのライトウェイトスポーツなのかと言われちゃいますからね。
「それってブレーキをつまむタイプのLSD(リミテッド・スリップ・デフ)と何が違うの?」という疑問がわきます。




今回の仕様変更で、このKPCを全車に搭載。ということで、まずはKPCのアリナシを、2台のソフトトップのRSグレードで体験することになりました。RSは、より一層走りに特化したモデル。フロントとリアに大径ブレーキローターを標準装備したほか、ビルシュタイン社製のダンパーとフロントサスタワーバーを搭載。内装面でも、レカロ社製のセミバケットシートを搭載しています。

まずはKPCなしの車両から。「結構、乗り心地が硬いですね」と驚く唯さん。唯さんが所有されているのは、S スペシャルパッケージというグレード。
レカロのセミバケットシートは剛性感がしっかりしている上に、ホールディング性も◎。コーナリングでしっかり唯さんをサポートします。「私、以前怖い思いをしたことがあってから、山道のコーナリングって得意じゃないんですよ」と言いながら、3速と4速をこまめに扱う唯さん。「うーん、私のNDより足が硬いということはわかりました」ということで、KPC搭載車両にチェンジ。

最初のコーナーを抜けた瞬間「全然違う!」と驚きの声を上げる唯さん。「怖さがなくなったというか、運転がうまくなった感じです」というではありませんか。姿勢安定のためコーナリング中に落ちる車高は僅か1%前半なのですが、その効果は絶大! 「今までより気持ちよく、それでいて速くコーナリングできるんですよ。大げさじゃなくて! これすごいですって!」ということで、ステアリングを握ると、たしかに違う! とても同じクルマとは思えません。

特別な部品を一切つけずに、ブレーキの制御プログラムだけで、ここまで変わることに驚き。「電子制御を入れるだなんて軟弱だ」という声も聞こえそうですが、このKPCに触れたら、そんなことは言っていられないと思います。だってコーナリング中の気持ちよさが全然違うのですから。

「プログラムだけということは、私のロードスターでも対応できるのかしら?」と目をキラキラさせる唯さん。マツダでは既存ユーザーに対してアップグレードサービスを検討しているようです。「アップグレードできるなら絶対にやりますよ。やらない理由がありません!」と、唯さんは今からウズウズして仕方ないようです。

真のライトウェイトスポーツ「990S」



このKPC搭載に合わせ、より一層ライトウェイトな走りを追求したモデルが登場しました。それが「990S」です。990Sは、従来の軽量グレードであるSに、RAYS製の鍛造16インチアルミホイールやブレンボのブレーキキャリパー採用によるバネ下重量の低減。それに伴うダンパーやコイルの見直し、電動パワステのリセッティング、エンジンの制御マップを変更したもの。


徹底的に軽量化にこだわった990Sは相当ストイック。NDロードスターは、ATとMTで70kg近い重量差があるのですが、それを軽い方のMTのみに設定することで、サスペンションセッティングなどが、よりピンポイントで狙えるようになったのだとか。それゆえ990SはSRSサイドエアバッグ以外のメーカーオプションの設定がない潔さ! 当然ナビもありません! ちなみに990Sというグレード名は、もともとあった最軽量グレード「S」が車重990kgだそうで、それをベースに軽量化などを施したことに由来するそうです。







インテリアは他グレードと比べて随分質素なもの。いわゆるクロームメッキパーツなどはありません。その代わり990S専用装備として、エアコンの吹出口(ルーバーリング)やブレーキキャリパーに青を配色。これはNDのモデルの中で、最軽量であることを青で表現したのだそう。

さらに試乗車は新色の深い青「ディープブルーメタリックマイカ」で、幌の部分もブルー。「この色、とてもイイです!」と、もともと気に入っていって購入したクルマとはいえ、いっそうND型にゾッコンの様子。

「990Sが、どう違うのか気になって気になって、夜も眠れなかったですよ」と、早く乗りたくて仕方ない様子の唯さん。
足が柔らかいのに高速で旋回できる

唯さんが所有されているのは、S スペシャルパッケージというグレードは、Sと比べてスペシャル分として約40kgほど重い仕様。それに対してどう違うのかが、ライトウェイトスポーツ大好き女子の唯さんにとって最大の関心事です。その第一声は「なにこれ、ぜんぜん違う! めっちゃイイ!」と、大げさでも何でもなく驚嘆の声を挙げるではありませんか。「とても柔らかいんですよ。スタビライザーがないからロールもします。でも乗り心地がよいですし、なにより運転していてすごく楽しいです」と声を大にしての大絶賛。
スピードレンジはKPC搭載のRSグレードよりも上がって、高速コーナー完全克服といったところ。「まるで地面に吸い付いているかのように走るんですよ。柔らかいのに腰砕けにはならないんです。だから早く旋回できるんですよ。それにこの柔らかさだったら、街乗りだって快適。990Sグレード、マジでイイです! 最高!」というわけで、唯さんはパーティーモードに突入。

唯さんの言葉どおり、盛大にロールします。助手席に座っている方は、右へ左へと大騒ぎ。でもロールするのに早く旋回することに驚くほかありません。RSグレードに代表される速いクルマは足が硬い、という概念を覆しているのです。いや、極限状態ではRSの方が高速で旋回できるでしょう。ですが、990Sは誰でも1ランクアップの速さで回頭できる雰囲気なのです。しかも楽しく。このセッティングを作ったマツダに乾杯です!
「ホントこの990S、マジで欲しいです」と唯さん。最近愛読している「ジェイソン流 お金の増やし方」を真剣な面持ちで読み始めました。

速いクルマはいっぱいあります。でも楽しいクルマってそうはありません。その中で990Sは、おそらく頭ひとつ、いや2つ分くらい抜けた楽しい1台であることに違いありません。それはライトウェイトスポーツの原点でもある「操る楽しさ」を追求した結果なのかも。ガソリンエンジン搭載ロードスターの最終形として、マツダが最高傑作を世に送り出したことを、唯さんの笑顔を見ながら確信しました。
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モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

栃木県出身10月5日生まれ。2020年に小林唯叶としてモデルデビュー。2020年シーズンのSUPER GT「マッハ車検GAL」をはじめ、SUPER FORMULA、スーパー耐久シリーズのレースクイーンとして活躍。2021年4月の芸能事務所プラチナム・プロダクションへの移籍に伴い新 唯に改名。現在ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技の勉強中。