1月14日から3日間開催された「東京オートサロン2022」で、HondaのSUV「VEZEL」のコンプリートカーのコンセプトモデル、「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」がお披露目されました。今回はその詳細をご紹介しましょう!


VEZEL e:HEV Modulo Xのコンセプトとは
何をもって「Moludo X」なのか

 「まずフロントグリルは……」とパーツごとに説明したところで、コンセプトという名のとおり、このクルマは現在開発中の1台。詳細が変更されることは多いにあり得る話ですし、ほかの専門媒体が詳細に書かれることは想像に難しくありません。

同じ記事を書いても面白くありませんので、ここではVEZEL e:HEV Modulo Xのコンセプトについてご紹介したいと思います。詳細はクルマができ上がってから改めて紹介します。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
S660 Modulo X Version Z

 まずModulo Xとは何かについて。Modulo Xとは、ホンダアクセスが手がけるコンプリートカーブランド。2013年に登場した「N-BOX Modulo X」を皮切りに、過去7車種が世に送り出されました。そんなModulo Xのホームページを見ると「Honda車を知り尽くした熟練のエンジニアが、ベースとなる車両に、さらなるこだわりと、時間と、情熱をかけて磨き上げた、コンプリートカー。」と書かれています。ですが“何をもってしてModulo Xと名乗れるのか”という事については、イマイチよくわからないところがあります。


 個人的な所感を申し上げると、Modulo Xは乗るたびに嫉妬するほどのデキのよさ。特に筆者が所有するS660のModulo Xに対しては、怒りに似た感情さえ湧きました。以来Modulo Xの新作に触れる度に、ホンダアクセスの広報担当やエンジニアに対して「なぜHondaは最初からコレで売らないんだ。Honda車を知り尽くしているエンジニアはHondaにはいないのか? あと、後出しでイイクルマを出してくるなんてズルい」と、彼らの耳がオクトパスになるほどに伝えて続けてきました。彼らはその言葉を聞いた後、いつも笑っていたことを告白します。

まったくもって人の悪い方々です……。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
左から竹腰さん、坂本さん、湯沢さん

 話を戻して、今回のコンセプトモデルを担当したエンジニアに「Modulo Xとは何か」という質問をぶつけてみることにしましょう。答えていただくのは、VEZEL e:HEV Modulo X Conceptの完成車性能担当、つまりModulo Xの「乗り味を作った人」であるホンダアクセス開発部の湯沢チーフエンジニア。ウェブサイトにも登場する熟練のエンジニアさんです。


 湯沢さんは優しい口調で「Modulo Xは、ホンダファンに対する贈り物だと思いながら開発しています」と、予想外のひと言から切り出してきました。「よく昔のシビックは……というお話をされる方がいらっしゃいますよね。もちろん、NA VTECエンジンの良さとかもありますが、足だってよかったですよね」。確かにその通り。EK9のシビックは、「ンバァァァァァァァ!」という熱きHonda Musicとパワーも魅力だけれど、操る楽しさに溢れていました。「ですが、量販車を作る際、どうしても最大公約数といいますか、多くの方にご満足いただける乗り味にしなければならない事情があります。ですが、それは長年Hondaのクルマに触れてきた方からすると、昔のHondaは楽しかったんだけど、今はちょっと物足りないなぁと感じられる部分であったりもします。私たちはそんなHondaらしい走りの気持ちよさを目指しています」とおっしゃるではありませんか。


 実際、具体的な数字を申し上げることはできませんが、量販車とModulo Xの購入者の年齢を比較すると、価格的に最上級に位置するというのもあるでしょうけれど、年齢の高い方がModulo Xを選ばれるのだとか。それはきっと「若い頃にHondaに乗って楽しかった日々を、もう一度味わいたい」というものなのかもしれません。つまり「Hondaのクルマを操る楽しさが提供できて初めてModulo Xと名乗れる」わけで、量販車では尖ったクルマにできないのは、最大公約数に合わせたクルマ作りをせざるをえないから、という事情があるというのです。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
Honda VEZEL e:HEV(純正アクセサリー装着車)

 次なる疑問はVEZEL e:HEVをどう料理するのかという点です。というのも不肖は昨年、何度もVEZEL e:HEVを試乗したのですが、乗る度に「これ、パワーユニット以外にいじる場所はないんじゃないか? もしModulo Xを出すとしたら相当ハードルが高いんじゃないか?」と思うほど、よくできたクルマだから。


 そしてVEZEL e:HEVはSUV。SUVはスポーツ・ユーティリティ・ビーグルというものの、他車も含めて直線番長的なクルマや、SUVとしてはイイというのはあっても、心の底からハンドリングが楽しめる車種に出会ったことがないから。極言すれば、操る楽しさを求めてはイケナイものだと思っていたり……。


 それゆえに、湯沢さんにベースとなるVEZEL e:HEVを最初に乗った時の印象を伺いました。湯沢さんは「クセのないクルマだなぁ」と一言。同じ質問を同席されたエアロパーツの設計を担当した阪本さんと、デザイン領域を担当した竹腰さんにもぶつけてみると、異口同音で「そうですね。普通にイイと思いました」と仰います。

イイんだったらModulo Xを出す必要はないんじゃないか? と思った不肖の表情を察したのか、湯沢さんから「ですので、クセを与えようと思いました」と、再び驚くべき一言が飛び出すではありませんか。


 クセと言葉尻で捉えると悪い意味で受け取れそうですが、ここでいうクセは操る楽しさという意味であることは言うまでもありません。そして「SUVでスポーツドライビングができますよ」と笑顔を魅せるではありませんか。その言葉、しかと受け止めました。楽しみに待ちたいと思います。


クセのないクルマだからクセを与えた

 では、クセを与えるためにどの場所を変更したのでしょう。「今までのModulo Xシリーズと同じなのですが、エアロとホイールを含めた足回り、そして内装です」と湯沢さん。残念ながら、パワーユニットはオトナの事情により一切手が加えられないのだとか。「手を入れてほしいという声は重々存じております」ということ、私が言うより前に、湯沢さんの耳はオクトパス状態でした。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた

 気になるエアロはどのようなものなのでしょう。エアロはスタイリング面で竹腰さんが作った物を、湯沢さんが徹底的に走り込み、その後、設計である阪本さんに引き渡すというのがおおまかな開発のワークフローなのですが、全員でテストコースで走りながらスタイリングを作りあげていったのだとか。竹腰さんが「今回は都市型スポーツというイメージで作り上げました」というそのエアロを大まかに見てみましょう。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた

 まず目に飛び込むのは、VEZEL e:HEVのエクステリア最大の特徴である「インテグレーテッドグリル」を空力的な配慮から廃し、先代VEZELのような形へと変更してしまったこと。

イマドキのSUVはドヤ感のある大型グリルがもてはやされているのに真逆の行為ではありませんか。そこで同色グリルを廃したことに抵抗はないのかと尋ねたところ「ありません!」とキッパリ。同社からは純正アクセサリーとして、よりフロントマスクを強調する存在感のあるフロントグリルを(4万4550円~)販売しており、装着率も高いとのこと。それもまた、彼女をそうさせたのでしょう。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
フロントバンパーにはフィンが設けられている
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
底面にもフィンを配置
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
今までのModulo Xでは見たことがないエアロボトムフィン
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
このフィンが効くんです! と阪本さん

 そんなエアロを細かくみると、あちらこちらにフィンが付いていたり、風の流れを意識したフード先端形状にするなど、コダワリがありそう。「私たちは、日常の速度域でも体感できる空力効果を実効空力と呼び、長年開発してきました」と湯沢さん。実効空力とは、走行中の前後リフト値を均等に近づけ、すべてのタイヤに加重を等しくかけることで、外乱に強く、ヨーの発生を抑えるという考え。そのために、実走を繰り返しながら作るという実践的なエアロ開発をしているのだとか。


 「今回はより走り込みをして、走っては形を変えて、を繰り返しながら作成しました」という自信作。確かに見た目だけで、インテグレーテッドグリルのフロントマスクに比べ、より空気が綺麗に流れるように見えます。コダワリは見えないところにも。フロントリップスポイラーの下部には、見たことないような空力デバイス「エアロボトムフィン」の姿が。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
テールゲートスポイラー
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
ディフューザー形状を設けた新設計バンパー
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
リアバンパーにもエアロボトムフィン
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
これが効くんです! と湯沢さん

 今回エアロパーツとして取り付けられたのは、フロントだけでなく、リア回りにもあります。テールゲートスポイラーは純正アクセサリー流用ですが、これも純正アクセサリー開発時からModulo Xに採用することを考慮して空力効果を狙った造形。さらにリアバンパーもサイドやディフューザー形状などは新規。しかも下を見ると、これまた空力デバイスがチラリ。こうした実践的エアロというのは、ほかのサードパーティーとは一線を画するもの。さらにHondaの看板を背負っていますから、衝突安全の面とかでもバッチリ問題ナシです。Hondaクオリティーで実践エアロ。ここにファクトリー・コンプリートカーの価値があるのです。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
タイヤまわりのフェンダーガーニッシュが同色に塗装されている
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
これがオシャレなんです! と竹腰さん

 ほかにないか、と横を見てみると、SUVではおなじみのプラスチック製フェンダーガーニッシュがボディと同色塗装されているではありませんか。竹腰さんは「SUVは力強い印象を与えるために別素材のフェンダーガーニッシュを取り付ける傾向があります。今回はオフロードよりは都市などの走行をメインとしているので、同色にしました」と、ここでもキッパリ。竹腰さんから、竹を割ったような潔さを感じたのは不肖だけでしょうか?


デザインはしなやかに駆け抜ける黒豹をイメージ

 湯沢さんによると、デザイン面でも走行性能面でも道なき道をしなやかな身のこなしで駆け抜ける黒豹をイメージしてクルマを仕上げているのだとか。

しなやかな身のこなしの要といえる足回りを見てみましょう。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
専用ホイールを開発!
SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
専用ホイールにも空力デバイスが!

 「私たちはホイールそのものをサスペンションの一部として考えています。ですので、Modulo Xでは純正アルミホイールと比べて、あえて剛性を落とした専用品を採用することがあります。ホイールのたわみを活かすことで、タイヤの接地面圧を最適化しています」とのこと。これは「S660 Modulo X」や先代「VEZEL Modulo X」「FIT e:HEV Modulo X」から続くModulo Xの特徴のひとつ。以前、S660でホイールだけをModulo Xに採用された純正アクセサリーホイールに交換してみたことがあるのですが、路面の突き上げが柔らかく感じるなど想像以上の効果でした。


 今回のVEZEL e:HEVは1350kgを超える車体。はたして剛性を落として平気なのか? というと「今までの知見を得ていますので。また試作回数は減っていますよ」ということで問題なさそう。「それに合わせた専用サスペンションを開発しています」というわけ。ホイールも含めたセッティング、それにともなう乗り味が楽しめるのがファクトリー・コンプリートカーの魅力。しかも、Hondaのテストコースで徹底的に走り込みをしているわけだから、私たちが車高調を買っていじって……とは、レベルが違います!


 「SUVでスポーツドライビングができますよ」と笑顔を魅せる湯沢さん。今までSUVで心の底からコーナリングを楽しめたSUVに乗ったことがない不肖は、その言葉を期待して待ち望みたいと思います。やっぱりコーナリングが楽しめてこそのスポーツドライビングですからね。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた

 最後に、「Modulo XはHondaファンへの贈り物」と湯沢さんはおっしゃっていましたが、Hondaファンだけが、Modulo Xを楽しむのは実にもったいない話。Hondaファンでなくても、Modulo Xに触れてみてもらいたいです。「コレ、マジでイイ!」と思わず心の声がダダ漏れること間違いありません。そして「こんなにイイなら、VEZEL e:HEV Modulo Xに期待しちゃおうかな」と思うことでしょう。


SUVでも走りを! Honda「VEZEL e:HEV Modulo X Concept」はあえてクセをつけた
開発中のバンパーたち

■関連サイト


編集部おすすめ