クルマ好き女子の矢田部明子です。今回は、EVトラック「FUSO eCanter」についてレポートしていきたいと思います。実は私、幼少期は石灰石やセメントの原料が採れる炭鉱の街に住んでいました。大きくて重い石灰石をグイグイ引っ張っていく、その勇ましい働く姿が大好きで、石灰工場の前に張り込んでトラックの運転手さんに手をふったものです(今考えると迷惑)。いつか憧れの車であるトラックを取材したい! と思っていたのですが、念願叶ってやっと記事化することができました。


 ただ今回紹介するのは、私が幼少期に見ていたトラックとは少し毛色の違う「EVトラック」です。ディーゼルエンジンのトラックとはどう違うのか? をお伝えできればと思います。


「FUSO eCanter」はこんなクルマ

EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界

 「FUSO eCanter」は三菱ふそうから販売されている車両総重量7.5トントラックで、国内初の量産EVトラックとなっています。日本のみに留まらず、ヨーロッパ圏やオーストラリアなど、世界中で実際に荷物を運んで活躍しているのです。ちなみに日本では、IKEAやセブンイレブンが家具や食料品を運ぶのに使っているのだとか。ディーゼルエンジンではなくEVなので、CO2や汚染物質を排出しないゼロ・エミッション輸送&騒音問題にも一躍買っている働く車です。


EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界

eCanterの良いところ その1
とにかく音が静か!

 トラックの「ブロロローン」「プシュー」という音を想像していると、良い意味で期待を裏切ってくれるのがeCanterでした。エンジンをかけた時も「ピー」という電子音のみで、「あれ? これでエンジンはかかったということで良いんですよね?」と聞いてしまうほど。前の日に、ハイブリッド車の試乗をしていたのですが、その車よりも車内はかなり静かでした。 外からはどうなのかということで、一般道を走るトラックの走行音もチェック。「キューン」という蚊の鳴くような電子音はするものの、ディーゼルトラックよりも格段に静かですし、後ろを走っていたミニバンのエンジン音の方がうるさかったほどです。


 EV車独特の静かさは、深夜にコンビニへ食料品を運送する時に「とても助かっている」という声が多く届いているそうです。というのも、閑静な住宅地にあるコンビニは、運送トラックの騒音が問題になっているからです。eCanterの場合は、こんなに静かならクレームはなさそうです。


eCanterの良いところ その2
走行性能&乗り心地

 私がトラックの免許を持っていないため(準中型自動車免許以上が必要)、助手席に乗って走りを体感&運転してくださった三菱ふそうでeCanterの商品計画を担当されているマネージャーの小倉重敬さんにインタビューしつつ、走行性能をお伝えしていきます。


EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界

 まず驚くべきは、アイポイントの高さです! 2~3台前、いや、前を走っているのが軽自動車だった場合、視力の限り遠くまで見えます(笑)。逆に、真下などが見えずらいなと感じました。乗り心地としては、ガタガタした揺れ&突き上げ感は感じられず、とても快適でした。路面の凹凸を越えても、ストンと衝撃を吸収していく感じです。トラックの運転手さんは1日中運転するため、ディーゼルエンジンのトラックだとガタガタという振動でお尻がムズかゆくなる人もいるのだそうです。eCanterはそのトラック独特の振動がないため、疲れない&乗りやすいという声を多くもらっているとのことでした。


 アクセルを踏むと、直ぐに発進&加速してくれるので高速道路もストレスなく運転できるそうです。ボディーが長いので、右左折や駐車の時は大変とのこと。


EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
アルミ製の箱型荷台を持つバンボディーのトラックは、後方が見えません。そんな時に役立つのがバックモニター。車体が長いので、窓からどんなに身を乗り出しても見えない真後ろの確認には、非常に助かるそうです
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
サイドミラーは大きな車体を見るために大きく、ニョキっとせり出しています。2つ付いているサイドミラーの役割は、サイドを見るため&死界となりやすい左前方右前方を見るためです

 走行性能ですが、乗り心地は◎! 私が幼少期に見ていた、ガタガタとボディーを軋ませながら、大きなエンジン音を立てて走っていく面影はまったくありませんでした。EVトラックってすごい!


eCanterの良いところ その3
居住性&使い勝手

 ピラーを前に出すことで開放感UP&軽トラックナンバーワンの室内幅で車内は広々です。また、シートが厚く座りやすいので長時間座っていてもお尻が痛くなりません。


EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
窓ガラスが大きいので、自然光が差し込んで車内はとても開放的
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
シートは薄いですが、弾力性があり座り心地はGoodでした。長時間運転するドライバーのことを考え、このシートにしているそうです
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
普通車のハンドルの角度よりもトラックのハンドルが寝ているのは、荷室のスペースを確保するために運転席を少しでも前に置きたいからです。いつか私も、このハンドルを運転してみたいです(大型免許を取らねば!)
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
トラックの収納で大事なのは、書類を収納できる場所です。運ぶ荷物によって付随する書類があり、その書類を搬入先に届けなくてはいけないからです
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
ドリンクホルダーには、ペットボトルや四角い紙パックも置けるようになっています。他にも、USBソケットや小物入れなども搭載されています
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
灰皿&タバコが置ける収納場所があることにビックリ! 仕事柄、新車に乗ることが多いですが、喫煙者に優しい車は今までなかったので驚きました。トラックの運転手の方は、タバコを吸う方が多いのかも!
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
トラックならではのアイテムは、リアタイヤの後方部についた車止めです。停車時にトラックが動いてしまわないようにしっかりと固定し、事故を防ぐアイテムです
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
ドアハンドルは開けやすいように、縦向きではなく下向きに付いています
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
車高の高いトラックでも乗り降りがしやすいように、サイドステップが付いています。愛車のランクルよりも乗り降りしやすいという……

eCanterの良いところ その4
充電機能

 リーフやHonda eのような電気自動車と充電方法は同じで、右フロントタイヤの後ろに付いている充電コネクターに充電ケーブルを差すだけです。急速充電だと最長1.5時間でフル充電できますが、普通充電器200V(ケーブルあり)だと、最長11時間の充電が必要です。フル充電での航続距離は100kmで、この航続距離にはかなりこだわりがあるそうです。というのも、7.5tトラックの1日の走行距離は大体60~80kmが一般的。途中、充電切れで止まってしまったということがないように、80km+20kmの100kmに航続距離を設定したそうです。トラックが止まって荷物が届かない! ということがないようにという、メーカーの思いが詰まった航続距離です。


EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
370V・13.5kWhのリチウムイオンバッテリーを、フロア下に6個搭載しています(三菱ふそうのサイトより)
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
時間はかかるけど汎用性が便利なノーマル充電(三菱ふそうのサイトより)
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
充電施設が限られるかわりに1.5時間でフル充電が可能な急速充電ポート(三菱ふそうのサイトより)
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
メーター類は非常にシンプルですね(三菱ふそうのサイトより)
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
電気自動車らしく、車内からバッテリーの状態を確認できます(三菱ふそうのサイトより)

eCanterの良いところ その5
荷室の広さ

 

 食品、家具、洋服、コンテナ……。多種多様な荷物が積載できるように、かなり広々しています。車中泊どころか、布団を敷いて家具を置けば家として充分活躍してくれるくらいの広さです。


EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
158cmの私が立つとこのようになります
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
寝てみました
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
コンテナにはレールが付いていて、このレールに紐を通して細かく荷物を固定するのだそうです
EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界
「その大きさからは、想像もつかないくらい軽く開けやすいリアドア。開けたリアドアは、サイドに固定できるので荷物を積み込む時も邪魔になりません

 ということで、今回は「FUSO eCanter」をレビューをしてみました! この記事では最低限押さえておきたいポイントを、動画では重箱の隅をつつくように詳しく解説&若干辛口コメントもしているので、よろしければご覧になってみて下さい↓



■関連サイト


筆者紹介:矢田部明子

 中学生の頃、クルマのメカニズムに興味を持ち工業高等専門学校に入学。専門的な知識を学んできました。もちろん、クルマに乗るのも大好きで「ランドクルーザー60→ランドクルーザー76」と乗りついでいます。最近の唯一の癒しは、週末にオフロードに出かけることです!


 クルマのメンテナンスなど工業高等専門学校で学んだ知識と経験を活かして、様々な角度からお役立ち情報をお届けしていきたいと思います。


EVトラック「eCanter」を初体験!  素晴らしきゼロエミッショントラックの世界

■関連サイト


編集部おすすめ