メルセデス・ベンツの新型「Cクラス」に試乗してきました。どんなクルマであったのか。

魅力はどこにあるのかをレポートします。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

メルセデス・ベンツにおける
Cクラスの立ち位置とは?

 まず、「Cクラス」のポジショニングから説明しましょう。メルセデス・ベンツは、コンパクトなハッチバックから、中型、大型のセダン、クーペ、SUVと幅広い車種を揃えています。でも、その内容を吟味すれば、大きく2つに分けることができます。ひとつは、大昔からある中型・大型のセダンをベースにしたモデル。特徴はエンジンをフロントに縦置きする後輪駆動がベースということ。いわゆるFRのクルマです。具体的には「Cクラス」「Eクラス」「Sクラス」のセダンを中心に、そのステーションワゴンとクーペの派生モデル、そしてSUVの「GLC」「GLE」「GLS」と、それらSUVの派生モデルです。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力
最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

 もうひとつのメルセデス・ベンツが、1990年代後半から追加された、エンジンを横置きするFFベースのコンパクトなモデルたち。「Aクラス」「Bクラス」「CLAクーペ」とその派生モデル、そしてSUVの「GLA」「GLB」といった面々です。


 ざっくり言えば、小さなFFと、大きなFRという区分けです。


 そんな中で「Cクラス」は、最も小さなFRモデルとなります。もちろん価格もFRで最もお安いこともあり、販売数も多く、長年「日本で一番に売れているメルセデス・ベンツ」というポジションを守り続けてきました。


 その「Cクラス」が、第5世代にフルモデルチェンジをはたし、昨年の6月から日本で発売を開始。まずはセダンとステーションワゴンを、9月に4ドアクーペの「CLS」、そして2022年1月より、ステーションワゴンをベースにしたクロスオーバーの「C220d 4MATICオールテレイン」が発売となっています。


新型Cクラスの特徴は電動化と最先端技術

 今回登場した最新の「Cクラス」の特長は、主にふたつあります。ひとつは電動化、そしてもうひとつがフラッグシップたる「Sクラス」譲りの最先端技術を数多く採用したことです。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力
最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

 電動化の内容は、全車に48VマイルドハイブリッドのISG(インテリジェント・スターター・ジェネレーター)を採用。さらに、プラグインハイブリッド・モデルの日本導入も予定されています。ISGとは、エンジンとトランスミッションの間に挟み込んだモーターで、駆動アシスト/減速エネルギーの回収/エンジン始動/発電などを行ないます。ISGの出力は15kW(20馬力)・208Nm。馬力こそ小さいものの、トルクは大きく、また、エンジンに直接つながっているので、効率よくスムーズな作動が可能となっています。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

 ISGを組み込んだエンジンは3種。最高出力125kW(170馬力)・最大トルク250Nmと最高出力150kW(204馬力)・最大トルク300Nmのチューニング違いの2種の1.5リッター・ガソリン・ターボと、最高出力147kW(200馬力)・最大トルク440Nmの2リッター・ディーゼル。組み合わされるトランスミッションは、すべて9速ATとなります。


 そして、「Sクラス」譲りの最先端技術とは、最先端の運転支援システム、縦型11.9インチのセンターディスプレイを中心とする直感的な操作設定、AR(拡張現実)ナビゲーション、生体認証(指紋・声)による車両設定、片側130万画素の超高機能ヘッドライト、リア・アクスルステアリング(半導体不足のため、現在は注文できないとか)など。

FRモデルのエントリーというポジションですが、最新技術は惜しみなく投入されているのが特徴です。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

 そして、今回試乗したのはセダンの「C200アバンギャルド(654万円)」、ステーションワゴンの「C220d ステーションワゴン アバンギャルド(705万円)」、そしてクロスオーバーの「C220d 4MATIC オールテレイン(796万円)」の3モデル。セダンが、150kW(204馬力)のガソリン・エンジンで、ほか2モデルが147kW(200馬力)・最大トルク440Nmのディーゼルです。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

操作系の洗練度の高さが光る新型Cクラス

 今回の試乗で最も印象深かったのは、操作系の洗練度の高さです。新型「Cクラス」は、運転支援系やオーディオ、メーターの操作などのスイッチをステアリングのスポークに集約してあるのが特徴です。縦型の大きなセンターディスプレイはタッチパネルとなっており、そこで操作するのは、カーナビやエアコンの設定などで、運転中にとっさに使うものではありません。


 一方、昨今のメルセデス・ベンツはフロアシフトではなく、ハンドル右にあるコラムシフトを採用しています。つまり、シフト操作をはじめ、運転中にとっさに行なうほとんどの操作が、ハンドルから手を離さないでできるようになっているのです。また、運転手の左側、フロアトンネルの上には操作系がなにもなく、あるのは収納だけ。つまり、運転中の視線移動が少なく、よそ見をしなくてよいようなレイアウトになっているのです。運転支援やコネクテッドなど、機能が増え続ける最新のクルマのインターフェースとして、使いやすくて安全。なんとも洗練された操作系となっているのです。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力
オフロードモード
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エコモード
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コンフォートモード
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スポーツモード
最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力
インディビデュアルモード

 また、インテリアの先進性と上質感も新型「Cクラス」の大きな魅力でしょう。

メーターとセンターコンソールにある大きな2つのディスプレイを中心に、レザーとクローム、カーボンを使ってモダンさと若々しさ、上質さを上手に表現しています。トンネルなどで室内が暗くなると、メーターの裏などでアンビエントライトがほのかに光り出すという演出も見事なもの。ワクワクした気分にさせてくれます。


 走り出すと、低速から力強く、そして非常にスムーズ。9速ATのシフトチェンジの息継ぎは感じられません。とても巧みにISGのモーターアシストを使っているのでしょう。これは、ディーゼルでもガソリンエンジンでも同じ。もちろん、低速の力強さはディーゼルがひとつふたつ上だし、ガソリンエンジンは高回転の伸びの良さが上という違いはあります。でも、どちらのエンジンも存在感をあまり主張せず、ジェントルな振舞いを見せます。速い! というのではなく、力強くてスムーズというパワートレインです。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力
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最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力
最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

 新たに追加されたクロスオーバーの「C220d 4MATIC オールテレイン」は、車高が高められていることもあり、若干、上下の動きが大きく感じられました。きれいな舗装路の走りだけで比べれば、やはり普通のセダンやステーションワゴン方が、フラットでスムーズな乗り心地です。

ですが、足元の悪い場所や段差を超えるときの「C220d 4MATIC オールテレイン」の気安さも捨てがたい魅力。カジュアルな雰囲気もありますので、スキーやキャンプなど、アクティブにクルマを使いたい人にはオススメです。


 新型「Cクラス」の試乗を振り返れば、「メルセデス・ベンツらしさ」をあちこちに見つけることができます。力強く、安定感と安心感たっぷりの走りは、いかにもメルセデス・ベンツらしい部分。運転支援システムも充実しているので、長距離ドライブでの疲労は、非常に小さなものになるはず。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

 そして、運転席に座ったときに、先進と上質感、そしてプレミアム感がひしひしと感じられ、「最新のプレミアムカーに乗っている」ことを強く印象づけられます。こうした印象が残ることこそ、世界有数のプレミアム・ブランドであるメルセデス・ベンツならでは。長く、メルセデス・ベンツのベストセラーの座を守っていた「Cクラス」の底力を感じる試乗となりました。


最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

最新「Cクラス」で感じるメルセデス・ベンツのプレミアムの底力

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。

28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。


 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


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