4月15~17日の3日間、幕張メッセにてヒストリックカーの祭典「オートモビル カウンシル2022」が開催されました。オートモビルカウンシルは、時代を超え国内外問わず希少価値の高い名車が集まり、ゆったりとした雰囲気の中で、それらの車を展示および販売が行なわれるイベントで、今回で7回目の開催となります。
クルマ文化の奥深さを知る
「主催者テーマ展示」コーナー
オートモビルカウンシルは毎年、自動車史を飾る名車から文化を知る「主催者テーマ展示」という企画が行なわれています。今年は2つのテーマで行なわれました。

1つ目は「DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)の主役たち」。1984年に始まった市販車をベースにしたレースカーで争われるドイツ独自のシリーズ戦「DTM」(Deutsche Tourenwagen Meisterschaft)は、名門メーカーが威信をかけて開発したハイテクマシンを、F1経験者を含むドライバーたちが毎戦、毎ラップ熱い戦いを演じて人気を集めるとともに、国際ツーリングカー選手権や、我が国のSUPER GTに大きな影響を与えました。ですが熾烈な戦いはコスト急騰を呼びメーカー撤退が相次ぎ、1996年シーズンで一旦終了。3年後の2000年にレギュレーションを見直したDeutsche Tourenwagen Masters(DTM)がスタートしました。オートモビルカウンシルの会場にはDTM第1期と呼ばれる90年代に凌ぎを削った3台のワークスマシンが展示されていました。
メルセデス・ベンツ
190E 2.5 16 Evo.II AMG(1990年)


90年からDTMに参戦したメルセデスの戦闘機。ラグジュアリーブランドのセダンに、大胆なエアロキットとコスワースの手による2.5リットル直4エンジンがおごられ、92年にはドライバーズタイトルの1位から3位を独占する圧倒的な強さを誇りました。また500台が製造されたホモロゲーションモデルは、今でも高い人気を誇っています。
アルファ・ロメオ
155 V6 Ti アルファ・コルセ(1993年)


レギュレーションが大きく変わり、より改造範囲が広くなった93年シーズンに、イタリアから送り込まれた刺客が、このアルファ・ロメオです。エンジンはハイチューンされた2.5リットルV6ユニットを採用。注目すべきは駆動系で、なんとアバルトがWRC仕様のランチア/デルタ・インテグラーレ用に開発したフルタイム4WDを搭載! さらにドライバーもニコラ・ラニーニ、アレッサンドロ・ナニーニといった元F1ドライバーという豪華ラインアップで、デビューイヤーでありながら22戦13勝と圧倒的な強さを見せつけたのでした。そのうち11勝はラニーニでチャンピオンを戴冠。
BMW
M3 シュニッツァー(1987年)


DTMが始まる前から、ツーリングカーレースの代表選手だったBMW。その彼らがDTM初年度に投入したマシンが、このM3です。クランクシャフトの短いエンジンの方が高回転/高出力が得られると考えた名将パウル・ロシェは、伝統のシルキーシックスではなく、4気筒2.3リットルエンジンをチョイス。これが大当たりし、デビューイヤーにして10戦5勝を挙げたほか、88年、89年とシリーズ3連覇を達成。無敵ともいえる強さとともに、ライバルたちにとってDTMマシンの見本にもなりました。
もう一つの主催者テーマ展示は「スーパーカードリーム」。レーシングカー譲りのミドシップ・レイアウト、マルチシリンダーのパワフルなエンジン、それらを包み込む有名カロッツェリアの優美なボディーは、クルマ好きにとっては永遠のアイドルです。今回は4台のスーパーカーが美を競っていました。
フェラーリ/365GT4BB(1973年)



名車365GTB/4(通称:デイトナ)の後継モデルとして開発された1台。フェラーリの市販車としては初めて12気筒エンジンをミッドシップレイアウトした記念すべきマシンです(フェラーリ初のミッドシップ車はディーノ206GT)。運転席後方に縦置きされた4390cc 180度V型12気筒エンジンから出力されるパワーは、当時としては夢の385馬力。最高速度も302㎞/hを公称し、まさに夢のスーパーカーそのもの。
ですが自動車排出ガス規制などにより、512BBにマイナーチェンジする形で1976年に生産完了。
デ・トマソ/パンテーラ(1971年)



イタリアの自動車メーカーであるアウトモービリ・デ・トマソの3作目となるスーパーカー。優美なイタリアンボディーに、フォード製5.8リットルV型8気筒OHVユニットを組み合わせたモデルです。当時フォードの副社長を務めていたリー・アイアコッカが「フォード・GT40のイメージを踏襲するスポーツカーを、安価な価格で売り出す」ことを目標として開発されました。
ランボルギーニをはじめとするライバルと比べ半額で販売されていたことと、そしてスーパーカーとしては異例ともいえる23年間(!)も作り続けられたこともあり、生産台数は7260台を記録しました。ちなみにパンテーラとはイタリア語で豹を意味するそうです。
ランボルギーニ/ミウラ P400(1966年)



トリプルチョーク・ウェーバーを4連装した4リットルV型12気筒エンジンを運転席後方に横置きレイアウトしたランボルギーニ初のミッドシップエンジン車。シャシー設計はジャンパオロ・ダラーラ、ボディーラインはマルチェロ・ガンディーニという当時27歳のコンビが担当しました。当時大排気量12気筒エンジンをミッドシップレイアウトしたクルマの前例がなかっただけに話題を集めるとともに、1966~1973年までに約747台が生産されました。ミウラとはスペイン闘牛飼育家ドン・アントニオ・ミウラにちなんで命名されたもので、これ以降のランボルギーニ社のクルマの多くに、闘牛関連の名前がつけられるようになりました。
ランボルギーニ/カウンタックLP400(1974年)



「ザ・スーパーカー」といえば、カウンタックでしょう。イタリア北西部ピエモンテ地方の方言で「驚いた」を表す「Contacc」(驚異、驚きの感嘆詞)のつづりを一部改変した名の通り、一度見たら忘れられない驚きのスタイリングは、今でも人々の心を惹きつけています。ミウラの後継であるカウンタックですが、最大の違いはエンジンが横置きから縦置きへと変更したこと。
設計はダラーラに師事し、のちのランボルギーニ社の要職を務めることになるパオロ・スタンツァーニ。
新車だけじゃなく
過去のクルマも展示する自動車メーカーブース
一般的に展示会においては新型車を置くことが多い、自動車メーカー/インポーターの出展エリア。ですがオートモビルカウンシルでは、歴史のあるクルマを展示する会社もあります。それがまた新車以上に興味深かったりするので、見ていて飽きません。では各社の展示ブースをご紹介しましょう。
CIVICも誕生50周年!
Honda


まずはHondaブース。同ブースでは、今年シリーズ誕生50周年を迎えるCIVICの初代が展示されていました。CIVICの誕生は1972年のこと。世界市民のベーシックカーというコンセプトで開発されました。エンジンは水冷1169㏄の直列4気筒OHCで、最高出力は60馬力。1973年にマスキー法などの厳しい排ガス規制をクリアしたCVCCエンジンを搭載したモデルが登場し、世界的にヒット。発売5年で生産累計100万台を達成しました。

そしてHondaといえばモータースポーツ。CIVICもまた、モータースポーツには切ってもきれないクルマです。会場には1978~1984年まで活躍した富士GCマイナーツーリング仕様車両が展示されていました。ちなみにエンジンは1298㏄直4OHCで、最高出力は150馬力とのこと。

そして、なんとブースの外にはF1マシン・RB16Bが鎮座。しかも「ありがとう号」として親しまれている昨年の第16戦トルコGP仕様ではないですか! 見ているこちらがありがとうという感謝の気持ちでいっぱいになりました。
フェアレディZ歴代モデルがずらり
日産

特別展示として、日本のスポーツカーの代表選手であるフェアレディZの歴代モデルが勢ぞろいしました!

まずは初代のS30型Z-L。1970年nに登場した伝説の始まりとなる1台です。

次に2代目のHS130型280Z。こちらはTバールーフと呼ばれる、天井の屋根が取り外せるタイプのモデルです。

こちらは4代目GCZ32型300ZX。展示車は2by2ツインターボと呼ばれるモデルで、エンジンは当時としては規制値いっぱいの280馬力を発生していました。

そしてマフラーやホイール、フロントバンパーや色まで初代Z432をオマージュしたRZ34型カスタマイズプロト。
レースカーから電気自動車まで
ポルシェ・ジャパン

ヒストリックカーの歴史、そしてモータースポーツ史の中で、ポルシェの名は外すことはできません。ブースにはビンテージから最新のBEVまで幅広く展示されていました。

タイカン ターボSはタイカンシリーズで俊足の1台。その速さは0-100km/h加速がわずか2.8秒というから驚きです。ちなみにお値段は2454万1000円(税込)。

ポルシェのすごいところは、昔の車種のパーツを今でも作っていたり、保管していたりしているところ。いい物を長く使うという文化が根付いているのですね。

写真のモデルは911 SC(Super Carrera)。1980年のモデルです。ポルシェ・ジャパンの所有車両で、オリジナルの状態に戻すプロジェクトを遂行中とのこと。またメカニック育成トレーニングとして使われているそうです。

1973年に誕生した911 Carrera RS 2.7。
ルマンの奇蹟をもう一度!
マツダ

オートモビルカウンシルで驚き発表をしたのがマツダ。なんとモータースポーツに力を入れるというではありませんか! トークショーでは2021年11月にMAZDA SPIRIT RACINGを立ち上げたこととともに、「倶楽部MAZDA SPIRIT RACING」という活動を実施することを発表しました。これは夏以降にオンラインコミュニティー機能を有したアプリを配信して、オリジナルグッズやカスタマイズカーのアイデアを募集するようです。



さっそくグッズがつくられていました。以前取材したMIZUNOと共同開発し、即完売したドライビングシューズの色違いも検討しているようです! そしてなんとコンセプトモデルとして自転車まで作っているからスゴイ! ひょっとしたらグッズ展開しちゃうのかも?

クルマももちろん展示。まずは1968年のマラソン・デ・ラ・ルートというニュルブルクリンク北コース84時間耐久レースで4位になったマシンの仕様をレプリカ再現したコスモスポーツ。

次に1969年の全日本鈴鹿自動車レース大会シリーズⅡグランドカップ仕様のファミリア・ロータリークーペ(レストアモデル)。片山義美さんがドライブして、国内レース初参戦初優勝をはたした名車です。

そして注目が、マツダがサポートする参加型モータースポーツを楽しむドライバーのステップアップ用として、スーパー耐久ST-5クラス参戦用ロードスターを準備しているというではありませんか! このマシンは7月のスーパー耐久第3戦(スポーツランドSUGO)から参戦する予定とのことで、ステップアップのシステムは2023年から実施する計画とのことです!
フランスの国民車といえば
プジョー

数多くのコンパクトハッチを輩出しているプジョーも出展していました。プジョーのコンパクトカーは「猫足」と呼ばれる乗り心地の良さと、刺激的な走りが楽しめることもあって、我が国でも人気ですよね。ブースでは新旧モデルを並べて展示されていました。

まずは1993年に誕生した306シリーズからホットモデルのS16。3ドアのホットハッチで、エンジンは163馬力を発生する2リットル直4。これを6速MTで走らせるのですから、楽しくないわけがないですよね!

そんな306シリーズの最新モデルが308。写真のモデルはGT HYBRIDになります。エンジンは1.6リットルのガソリンターボで180馬力を発生。これにモーター110馬力が載りますから期待できそうです!

Cセグメントはちょっと大きいんだよな、という方にはBセグメントの208はいかがでしょう? 208 GTは5ドアのコンパクトホットハッチです。こちらはエンジン車で1.2リットルターボエンジンから100馬力を発生。1170㎏という軽量ボディーによって闊達な走りが期待できそうです。

そのご先祖様が205 GTI。我が国でプジョーブランドを一気に押し上げた1台です。というのも、120馬力に940㎏の軽量ボディーからなる走りは過激そのもの! ボディーサイズも一回り小さくなりまして、全長は3.7m、全幅も1.59mということで、ハンドリングも良好。今でも高い人気を誇っています。
今年ホテルなどがオープン予定
富士スピードウェイ

今年秋にサーキット周辺にホテルとミュージアムがオープンする予定の富士スピードウェイ。ブースにはミュージアムに展示する予定の2台が置かれていました。

アルファ・ロメオ 6C 1750グランスポルトは、1930年の作品。おそらく展示されていたクルマの中で、もっとも古いモデルでしょう。最高出力82馬力を発する1752cc直列6気筒エンジンをフロントに縦置きし、その優れた性能と、高い信頼性、ならびにメンテナンスのしやすさから人気を博したそうです。ちなみに生産台数は60台。

トヨタ7ターボは、1970年に誕生したレース専用車両。国産初のターボチャージドエンジンを搭載したレーシングカーです。5リットルV型8気筒のツインターボエンジンは800馬力/74mkg・mを発生! しかも800馬力は嘘八百ということわざになぞらえて控えめに発表した数値で、実際は850馬力以上を出していたのだとか。600㎏台という軽量ボディーと相まって、最高速度は363km/hを記録。しかし燃費が800m/リットルしかなく250リットルの燃料タンクを搭載していたそうです。そんな国産モンスターマシンですが、不幸が続いてレース参戦は叶いませんでした。
伝統のトライデントが光る
マセラティ


イタリアの名門、マセラティも出展していました。まずは1971年に誕生したBora 4.9。このマシンは同ブランド初のミッドシップエンジン搭載車で、1978年までの間に564台が生産されました。エンジンは当初4700㏄V8でしたが、2年後に4900㏄仕様が追加。写真はその4900㏄仕様で、最高出量は330馬力を誇ります。またボーラは同社初の4輪独立懸架サスペンションを採用したクルマでもあり、パワフルなエンジンと相まってドライビングの楽しさを存分に味わうことができたそうです。


そんなボーラの現代版がともいえるのが、スーパースポーツのMC20です。MCとはマセラティ・コルセ、20はマセラティが新時代の幕開けと位置づけた2020年を意味しているとのこと。マセラティとしては22年ぶりとなる自社製3リットルV6ターボでエンジンは630馬力の高出力を発生。もちろんミッドシップマウントされています。ちなみに「100% メイド・イン・モデナ」「100%メイド・イン・イタリー」なのだそうです。
F1でもおなじみ
マクラーレン

英国マクラーレンは2台のスポーツカーを展示していました。720S SPIDERは720PSの大パワーとオープンエアドライブが同時に楽しめる贅沢な1台。ちなみにお値段は3930万円だとか!

そしてARTURAは、新世代ハイブリッドスーパーカーとして昨年2月に発表された同社の最新車種。マクラーレンは過去P1、スピードテールという2台のハイブリッドカーを輩出してますが、本気は初のシリーズ生産ハイパフォーマンス・ハイブリッドスーパーカーなのだとか。パワーユニットは3リットルV6 ツインターボエンジンとアクシャルフラックス・モーターの組み合わせで、最高出力は680馬力を実現したとのこと。
久々に日本にカムバック!
ヒョンデ

12年ぶりに日本市場に戻ってきた韓国ブランドのヒョンデ。その第1弾はSUVでBEVのアイオニック5です。かなり未来的なデザインのアイオニック5は、72.6kWhという大容量バッテリーによりWLTCモードで618kmという航続距離を実現した1台です。気になるモーター出力は217馬力で、後輪駆動とのこと。
あまりの価格に驚き!
でも手に入れたいクルマがいっぱい
オートモビルカウンシルは、ビンテージ車の販売も行なわれています。多くは「応相談」だったり「参考出品」だったりしますが、もちろん値札がついているものも。ここでは主に価格がつけられたクルマをご紹介します。なお表記はすべて税込み価格です。

トライアンフ・TR3A(1959)/550万円。ブリティッシュグリーンが美しいオープン2シーターです。TR3Aは5万8286台生産されたそうで、販売されている個体は2020年にフルレストアしているとのことです。

マツダ・ロードスター(1995)/600万円。現在に続くロードスター伝説の始まりといえるNA型。販売されていた個体は、まばゆい位に、まるで新車のような美しさでした。エンジンは1.8リットルということですから、NA8C型とよばれるマイナーチェンジ後のモデルになります。

シトロエン・ID19(1961年)/600万円。街中で走っていたら絶対に2度見すること間違いナシの、いかにもフランスらしいデザインの1台。ベンチシートもまた素敵です。もちろん自慢のハイドロリックシステムにより乗り心地も上々とのことです。

ポルシェ・911T(1973年)/1750万円。ここからは空冷ポルシェを一気にご紹介しましょう。最初はナローポルシェの愛称で親しまれている901型から911T。Tは初期のシリーズで最もチューンの低い、廉価グレードという設定でつけられていました。ですが、それゆえまたベーシックな味が楽しめる1台といえるでしょう。

ポルシェ・911S(1972年)/2800万円。ナローポルシェの中で、スポーツ走行に特化したグレードが911Sです。その中でもシリーズ最高の運動性能を誇ると言われているのが72年型になります。その理由はオイルタンクの位置が他のモデルと異なり、フロント側に移設され重量配分が良くなったから。ですが73年型からは従来のリア側配置に戻されています。それゆえ希少性はとても高いとのこと。

ポルシェ・911 カレラRS(1992年)/4600万円。“73カレラ”の呼び名で知られる伝説のRS=Renn Sport(レンシュポルト)の名を復活させたスペシャルモデルとして、1992年に964型の911シリーズに追加ラインナップされた1台です。その名の通り、エアコン・オーディオ・パワステ・パワーウィンドウ、リアシート等といった装備が省かれ、代わりに2脚のレカロ製フルバケットシート、軽量なマグネシウムホイールが標準装備されています。2051台限定生産という希少性もあり人気の1台です。

ポルシェ・911 カレラ 2 ターボルック カブリオレ(1993年)/1980万円。964型ポルシェでオープンエアを楽しみたい方にはこちら。ターボルックの名のとおり、大きく張り出した迫力あるリアフェンダーが魅力の1台です。ちなみにターボルックカブリオレは正規輸入が50台程度と言われている貴重なクルマだそうです。

ポルシェ・356B Coupe Race Car(1963)/1980万円。911が続いたので、そのご先祖様でポルシェの名を初めて冠した356を探したところありました。しかもレース仕様車が! 中に張り巡らされたロールゲージを見ると、なるほどレーシングカーなのかと感心しきり。ヘッドライトがふさがっていますので、そのままでは公道を走らせることはできないのが残念です。

フェラーリ・ディーノ 208 GT4(1975)/1300万円。続いてイタリアの跳ね馬、フェラーリを見てみたいと思います。まずはDino 208 GT4。246GTの後継として登場したためディーノの名前が与えられましたが、1976年にフェラーリ208GT4に改名したモデルで、ディーノ・ブランド最後のモデルになります。フェラーリのエクステリアといえば、ピニンファリーナによる優美な曲線のデザインですが、このモデルは当時のベルトーネのチーフデザイナーであったマルチェロ・ガンディーニによるもの。それゆえランボルギーニのような角ばったデザインが特徴です。

そして現代のフェラーリと言えばV型8気筒エンジンが当たり前ですが、実はこのモデルが初めてV8エンジンを搭載した市販車になります。そのV8エンジンの排気量は1991㏄で、最高出力は170馬力。後部に横置きにマウントされています。同年代のスポーツクーペ308GTBなどと比べて地味な存在ゆえ中古価格も割安傾向だったのですが、7年間で約2800台という生産台数と一応4人乗りという実用性、そして乗り心地の良さなどから評価が高まりつつあるようです。

フェラーリ・ディーノ 246GT Type L(1970年)/6875万円。ディーノといえば、やはりこの形でしょう! ディーノはフェラーリ史上初のミッドシップ2シータースポーツになります。エンジンはV型6気筒エンジン(これもフェラーリ史上初)で横置きに配置。このV型6気筒エンジンのアイデアは、創業者エンツォ・フェラーリの長男で1965年に夭折したアルフレード・フェラーリ(愛称:ディーノ)によるもの。それゆえ既存の12気筒エンジン搭載車をフェラーリ、6気筒エンジン搭載車をディーノと分けて売り出すことにしたそうです。

気になるお値段ですが、なんと6875万円! ちなみにType L(またはティーポL)は1969年から1970年につくられた仕様で、センターロックホイールが特徴。ディーノは通算3700台近くが生産されたそうですが、Type Lはそのうち350台強と少ないため希少なのだそうです(最も多いのはTYPE E)。

ランチア・デルタ インテグラーレ 8V(1988年)/980万円。イタリアの自動車ブランドで忘れてはいけないのがランチアでしょう。その中でもランチア・デルタはWRCを6連覇したマシンとして歴史に名を残す名車として広く知られています。デルタのバリエーションは多いのですが、インテグラーレ8Vは比較的初期のモデル。エンジンは2000㏄4気筒DOHCターボの8バルブで、最高出力は185馬力を達成しました。ブリスターフェンダーと呼ばれる、張り出したフェンダーが魅力的です!

アストンマーティン/DB5(1965年)/8380万円。ドーバー海峡を渡って英国からアストンマーティンの美しいクルマをご紹介しましょう。DB5は1963年から1965年にかけて製造されたスポーツカーです。その生産台数はとても少なく、わずか1023台のみ。ですが映画007シリーズの3作目(ゴールドフィンガー)と4作目(サンダーボール大作戦)に登場したことから、ボンドカーの代表車種として知られることになりました。エンジンは4000㏄ストレート・シックスで、最高出力は300馬力前後と言われています。それにしても8000万円超えとは……。

プジョー・306スタイル(1999年)/132万円。オートモビルカウンシルは、高いクルマばかり展示販売されていると思いきや、そうではありません。プジョー306スタイルは、世界的人気を博した306の廉価グレードにあたります。306は1997年にマイナーチェンジをし、フロントマスクが大幅に変更。また全長も10cm伸長されました。

プジョー・205 CTI(1991年)/275万円。80年代から90年代にかけて世界を席巻した、ピニンファリーナとプジョーによる大傑作コンパクト205。その生産台数は約530万台と言われています。その中で人気が高いのはホットモデルの205 GTIと、カブリオレの205 CTIです。当初手動だった幌の開閉は、後期には電動式となりました。

フォルクスワーゲン・ゴルフⅠ カブリオ(1991年)/275万円。コンパクトカーのカブリオレといえば、フォルクスワーゲン・ゴルフを見過ごすわけにはいきません。ELTの持田香織さんの愛車としても知られているゴルフIは、初期型はヘッドライトが2灯でしたが、後期型からはⅡ型に合わせて4灯になりました。持田さんが所有されているのは、この後期型のモスグリーンのボディーにベージュの内装だそうです。


スバル・360コマーシャル(1961年)/1500万円。日本のコンパクトなカブリオレもありました。スバル360の初期型、通称デメキンのオープンカーです。スバル・360には、シトロエン・2CVのような巻取り式の幌のコンバーチブルモデル(いわゆるキャンパストップ)があったのですが、このコマーシャルはセダンボディーのレイアウトのまま屋根は幌としたほか、後席を取り払ってべニア張りの荷室スペースへと変更。さらに側面の後席窓回りのパネルを外側に倒すことができるようにした商用車。

ですが短命に終わったモデルで、結果的に希少価値が生まれ値段は驚きの1500万円! この価格には、いくつかの出展企業から「見ました? 1500万円のてんとう虫」と話題になっていました。

メルセデス・ベンツ・190E 2.5-16 Evolution I(1989年)/1980万円。メルセデスがツーリングカーレースのホモロゲーションを獲得するために500台生産されたモデル。89年に登場したエボリューションIと、90年に登場したエボリューションⅡの2種類があります。エボリューションIとⅡの違いはエアロパーツ(Ⅱの方が派手)とエンジン出力(Iは231馬力、Ⅱは235馬力)で、一般的にはⅡの方に目が移りがち。ですが、Ⅰは日本に正式輸入された台数がたったの3台なのです! もっとも、その後並行輸入されたクルマもあるようですが、とはいえエボリューションⅡよりも日本にある台数は少ないだろう、とのこと。

トヨタ・2000GT(1970年)/1億30万円。日本が誇るスーパーカー、トヨタの2000GTが販売されていました! 当時としては最上級の高性能車ゆえ、生産台数はわずか300台強と希少性の高いクルマ。その一方で007シリーズで日本を舞台にした「007は二度死ぬ」(1967年)にボンドカーとしてオープンカー仕様車が登場するなど、知名度は大変に高いクルマです。販売されていたモデルはフォグランプとフォグランプリムが共に小型化され、グリルと一体化した後期型。

そのお値段、なんと大台の1億円を突破! 近づくこともおこがましい、というより傷をつけたら大変ですので、サッサとその場から立ち去ったのは言うまでもありません。
金額を見ると「自分には縁遠い、まさに高嶺(高値)の華」なのですが、見ているとやっかみな気持ちよりも、幸せな気分になるのが不思議。クルマって、本当に奥が深いんだなぁと改めた思いながら、会場を後にしました。
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