大人気スポーツカーの後継車種として昨年デビューした「GR86」。そのクルマを、全日本ラリー選手権にトヨタ 86で参戦した経験のあるプロドライバーの水原さんにはどう映るのでしょう?(S13&S15シルビアに乗る女性ドライバーはなぜラリーやドリフトを始めたのか?) さっそく試乗してもらいました。
大きさそのままにエンジンパワーが増した



「GR86には発表時から興味があったんですよ。ですから今回試乗できるというので、すごく楽しみだったんです」という水原さん。まずはエクステリアからチェックです。「大きさはほとんど変わらない、というのがいいですよね」というように、モデルチェンジを受けても車両寸法が新型のほうが25mm長く、40mm低い程度。「この位の大きさが、ステージを選ばずに楽しめるんですよね」という水原さんの意見に全面同意です。「エクステリアデザインもいいですね。近未来的で」というように、その場にいた誰もが好印象。


一方、大きくなったのは排気量。フロントに積んだ2387cc水平対向4気筒エンジンは、最高出力235PS/7000rpm、最大トルク250N・m/3700rpmのスペックを誇ります。従来は207PSと212N・mでしたから、389ccの排気量アップによって、最高出力で28PS、最大トルクで38N・mの増大ということになります。ですが水原さんの見るところはちょっと違っていて「ボンネットが軽いですね!」「ここにタワーバーを入れて」「エアフロ―的には、前作に似たレイアウトに見えますね。ですから、ここにキノコ(HKSのエアーフィルター)が入るでしょうね」とチェック項目がクルマ好きそのもの。クルマ談義に華が咲きます。








インテリアはかなり変更されています。「センターコンソールのナビの位置が下がったのはいいですね。もともと視界は広いクルマでしたが、さらに広がったように見えますし、なによりスッキリしていいですね」と、ドライビングに集中できる環境になったようです。「コクピット感が高いのはスポーツカーらしくてイイですし、操作系のスイッチが大きいのも好印象です」。
面白いのはナビの位置が下がった分、電源を入れるとチルトする機構が設けられていること。カーナビが登場した頃、エアコンダクトの下にナビを設置するのが当たり前で、このような機構を取り付けたモデルがありました。いつしかナビ画面は上へと上がり、この手の機構を見かけることはなくなったのですが、再び時代が戻ってきたのでしょう。

アクセル、ブレーキ、クラッチのペダルは吊り下げ式で、レイアウトは十分に幅が広いもの。近年、踏み間違え防止のためかアクセルペダルを思いっきり右端に置くクルマをみかけますが、それではヒール&トゥがやりづらいことに。このくらいのレイアウトが良いでしょう。




「メーターがLCDになったんですね。視認性は高そうです」と水原さん。


ASCII.jpですのでUSB端子をチェック。アームレストの中にTYPE-Aが2つ用意されています。これは今までの86ではなかったもの。出力は2.1Aですので、充電速度は比較的早いでしょう。ただスマホを置く場所がドリンクホルダーを兼ねた設計なうえ、ケーブルをつなげた状態で冷たい飲み物を置いた場合、Lightning端子のような接点部が外に露出したケーブルだと水滴に触れてしまいそうで心配です。
MTの設定があるのはありがたい

今回試乗したのはMT仕様車。AT車との違いはトランスミッションだけでなく、前走車に追従する高機能型のクルーズコントロールやプリクラッシュブレーキ、後退時ブレーキアシストといった運転支援の類は一切搭載していないことでしょう。このご時世、MT設定があるだけでもありがたいので、アダプティブクルーズを取り付けろという贅沢は言ってはイケマセン。


ドアは肉厚でありながら、サイズから考えると適度な重さ。閉めたときに質量を感じ、高級感があります。



運転席は広く快適ですが、後席は狭い4座なのは従来と同様。座れないことはないのですが、基本的に2シーターと思った方がいいようです。



荷室の広さは前モデル同様で、後席シートを倒せばタイヤ4本は積めそう。GR86の後席は実質ラゲッジスペースと言えるでしょう。ラゲッジの底板を取り外すと、タイや修理キットなどが姿を現します。
足回りの良さは特筆モノ
「全然違う! パワーがある!」というのが水原さんの第一声。「前モデルは結構踏まないとトルクが立ち上がらなかったのですが、今回はかなり下から出ていますね。だから出足がイイし、街乗りでも踏まなくていいですね」ということで調べてみると、2700rpmも低い3700rpmで最大トルクを発生するようになった様子。さすがプロドライバー! 「それでいて、回せばリニアにパワーが上がってくるのはNAらしくてイイですね。音とかフィールは先代に似ていると思います」とのこと。「とにかく速いですよ、このクルマ。とても同じ86とは思えないですね」


足回りの良さも特筆すべき点と水原さん。

「魅力度は相当高いですね。お買い得とさえ思えます」というGR86。「前のモデルもイイですが、GR86に乗ってしまったら嫉妬するでしょうね。でも86からGR86に乗り換える方がいらっしゃれば、それだけ86が市場に流通するわけで、多くの人がスポーツカーを手に入れやすくなるのではないでしょうか」。確かにその流れはありそうです。
筆者がGR86に乗りながら思ったのは、スープラの2リットルターボ車の存在。

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モデル紹介──水原亜利沙

11月15日生まれ。高校時代をイギリス・ロンドンで過ごす。学生時代に見た映画がきっかけでドリフトに興味を持ち、ドリフトを始め、2018年よりラリーを始め2019年全日本ラリーデビュー。初クラス優勝も経験し、2020年からドリフト競技にも参戦。トーキョードリフトガールとしてYouTubeでも活動。