マセラティ/ギブリ トロフェオ(1801万円)

 人間知らない方が幸せなことは多々あります。イタリアの名門、マセラティのクルマもその1台。

今回、縁あってV8ツインターボエンジンを搭載したギブリ トロフェオ(1801万円)に触れる機会をいただいたのですが、あまりの素晴らしさに「乗らなければよかった」と心底後悔しています。


マセラティ ギブリってこんなクルマ

イタリアの名門・マセラティの最速セダン「ギブリ トロフェオ」の速さは芸術的だ
マセラティといえば三叉の槍「トライデント」のエンブレムが有名。これは本社のあるボローニャ市のマッジョーレ広場のネプチューン像が抱える槍をモチーフにしているのだとか

 マセラティは100年以上の歴史を有する高級スポーツカーブランド。にも関わらず、我が国においてその知名度は低いように感じます。恥ずかしながら不肖もマセラティのことはよくわかりません。正直申し上げると、たまに街で見かける高そうに見えるクルマという程度。ですが、多くの人はギブリを見てこう思うでしょう。「なんてカッコいいんだろうクルマなんだろう」「よくわからないけれど、他のクルマとは違う」と。そう、伝統という名のオーラを纏っているのです。そういうクルマ、ありそうでありません。


イタリアの名門・マセラティの最速セダン「ギブリ トロフェオ」の速さは芸術的だ
スリーサイズは全長4971×全幅1945×全高1461mm
イタリアの名門・マセラティの最速セダン「ギブリ トロフェオ」の速さは芸術的だ
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 ギブリはマセラティ初の4ドア・ミドルクラススポーツセダンとして2013年に誕生しました。ライバルはメルセデスEクラス、BMW 5シリーズ、アウディA6あたりで、価格も現行モデルで1035万円(GT Hybrid)からとジャーマン3のアッパーグレードとほぼ同じといったところです。ボディーサイズは全長4971×全幅1945×全高1461mmと、堂々たる風格。

特に2m近い全幅は他車と比べかなり広く、日本の道には持て余し気味のサイズです。


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最高出力580PSを発するV8ツインターボエンジン

 ギブリ トロフェオは、そんなギブリに最高出力580PSのV8ツインターボエンジンを与えた、いわばマセラティ史上最速のセダン。赤く塗装されたヘッドを覆うようにカーボンのカバーが被されている姿は、見るからに「ただモノではない」ことを思わせます。ちなみに最大トルクは730N・mで、0-100km/h加速は4.3秒、最高速度は326km/h。こちらもまた、日本の道には持て余し気味のパワーなのですが、さらに後輪駆動(FR)というから驚き。ジャーマン3のハイパフォーマンスモデルはすべて4WDですから、貴重な存在といえそうです。


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サイドエアベントに赤い加飾とトロフェオのエンブレム
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トライデントに赤いライン
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ボンネットにエアダクトを用意

 スポーツモデルというと、レギュラーモデルと外観上の差別化がお約束。マセラティの場合は控えめで、フロントフェンダーの3連エアベントに赤の差し色、そしてトロフェオのバッジをあしらい、Cピラーのトライデントには赤いラインを2本。そしてボンネットにエアーダクトを配した程度。


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バンパー下などにカーボンパーツを配置
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リアディフューザーもカーボン製

 試乗車にはオプションのエクステリアカーボンキット(33万円)が取り付けられていたのですが、それとてバンパー下やリアディフューザーなどがカーボン化されている程度。端正で調和のとれた流麗なボディーはそのままに、知る人が見たら「お!」と思う程度。これがイイのです。


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 タイヤは21インチの245/35R。銘柄はピレリのP ZEROです。3本1組の5本スポークのデザインから、ドリルドローターと赤いキャリパーが顔をのぞかせます。ここら辺もまたスポーティーグレードらしい演出ですが、主張はさり気なく。


座り心地抜群の車内空間

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 トランクリッドを開けると容量500リットルのスペースが姿を現します。トランクリッドは拍子抜けするほど軽い感触で、この価格のクルマでは当たり前といえるパワーテールゲート機能はありません。ちなみに、シフトをPレンジに入れないと開かないようです。リアシートの背もたれを倒したトランクスルーにも対応しますがフルフラットにはならず。これを是とするか否とするかは、リアシートに座ってから判断しましょう。ラゲッジスペースには12Vのアクセサリーソケットが用意されており、走行中に大型のポータブルバッテリーを充電可能。何気にうれしいアクセサリーだったりします。


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 リアシートは、このクラスとしては足元が狭め。さらに言えばセンターコンソールにUSB端子の姿がないのが残念なところです。

ですがシートの座り心地は極上! レザーの質がいいだけでなく、シートそのものの形状が実に見事。またサイドシルが比較的低めなのも好印象。これが意外と乗降時に大きな影響を与えます。イタリア大使館がギブリを公用車として使っているというのも納得です。


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 イタリア車で、まして登場したのが2013年と約10年前。色々と古さを覚えることを覚悟しながらドライバーズシートへ。するとインフォテインメントディスプレイは実に高精細だし、運転支援もバッチリ用意されているではありませんか。機能面でのエクスキューズは一切なく、嘘偽りなくジャーマン3のミドルクラスと遜色ないのです。いやそれどころか、それらのミドルクラスよりも上質な室内空間。特に何か加飾があるわけでもなく、コンサバティブなデザインなのですが、素材の味を十分に引き出したシンプルな高級イタリアンといった雰囲気。つまり飽きないうえに「やっぱりイタリア車はイイナ」と陶酔の境地へといざなわせてくれるのです。


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 ペダルレイアウトは一般的。

ですが、フットレストがブレーキペダルに寄り過ぎている印象で、慣れるまでに少し時間がかかりそう。フットレストとブレーキペダルにはトライデントエンブレムが入っており、カッコいいと思いつつ「不肖のような者が、伝統のエンブレムを踏んでいいのか?」とも。


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 ステアリングホイールはかなり大きめ。シフトパドルはステアリングホイール側ではなく、ステアリングコラム側に取り付けられています。ステアリングホイールの裏側には、オーディオコントロール系のボタンが取り付けられていました。そのステアリングコラムですが、なんとワイパーの操作レバーがない! というのもウインカーと一体化されているのです。おかげで「ウインカーをつけようとしたらワイパーが動いた」という、輸入車あるあるは回避されました。個人的にこの仕様はスッキリしていてイイと思った次第です。ちなみにライトは右手下側にあります。


しっかりとローカライズされたインフォテイメント
シンプルだが実用性のある収納

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 速度計と回転計は指針式。速度計にはV8というロゴがさりげなく入っています。メーターの間にはインフォテインメントディスプレイが配されており、各種インフォメーションを呼び出すことができます。スタートアップ時に「Trofio」の表示が出てきて、それがまた所有感、特別感をくすぐります。


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 カーナビはどうやらAISIN製の模様。実に高精細で動きも早く文句ナシ! 車両設定などもココから呼び出します。もちろんバックギアに入れれば、バックモニターが映し出されます。驚いたのは360度モニターにも対応していたこと! あわててドアミラーの下側を見たら、確かにカメラがありました。イタリアブランドで、ここまでローカライズをはたし、かつ親切なクルマは初めてかも……。


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 ASCII.jp的に気になるのはUSB周り。シフトレバーの先にあるリッドを開けるとUSB Type-CとUSB Type-Aの姿をみつけることができます。その隣にはQi充電器。トレイを引き出してスマホを置くという、他車ではみかけない仕様です。iPhone Pro Max系の大きさ(6.7型)にも対応しており、サイズと使い勝手に問題ナシ。ただ、入れる時にサイドボタンを押してしまうことはありました。


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 センターコンソールにはいくつか収納スペースがあります。

アームレストを開けると、SIMカードの姿がある程度。他に何かないかと探したのですが、特に見当たりませんでした。ドリンクホルダーの間にアクセサリーソケット、というよりシガーライターがあって驚き。イタリアは喫煙率が高いのでしょうか?


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 シフトレバーはプレイスティック型。その横には、ドライブモード切替ボタンとサスペンションの硬さ設定ボタンを用意。ドライブモードはノーマル、スポーツ、CORSA、I.C.E.の4種類。スポーツにすると排気音の高まりとともに、アクセルレスポンスが向上。さらにブースト圧が上がる様子。スポーツモードを長押しするとCORSAに変わるのですが、こちらはさらにESCが解除されたガチモード。一応試しましたが、ちょっと怖い思いをしたので一般道での使用はオススメしません。I.C.Eは低μ路面用で、効率重視の制御が入る様子。一種のエコモードといえそうです。


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 天井をみると電動サンルーフの姿が。こちらはオプションなのですが、ジャーマン3のこのクラスで電動サンルーフを取り付けると40万円近い値段がするのですが、マセラティは17万円とのこと。全体的にオプションの料金が、想像よりリーズナブルな価格設定に驚きました。


V8ならではの太いトルクで
シーンを選ばずグングン進む

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 「マセラティ史上最強のスポーツセダン」「500馬力超えのFR」「車幅2メートル」ということで、乗る前から完全に怖気づいている不肖。恐る恐るエンジンに火を入れたところ、これが実にジェントル。ハイパワーなスポーツセダンの中には、自らを誇示するからのごとくドロドロと排気音を鳴り響かせるモデルもありますが、そのような野暮なことはしません。走り出しもジェントルで、変速時のギクシャク感は皆無。もちろんターボラグもなく、実にナチュラルで滑らかで呆気にとられるほど。ハイパワーで緊張しきっていた肩の力はスーッと抜けて、極上のシートとフィールに身を委ねます。


 ギクシャクしがちなのはブレーキ。というのも初期制動がかなり高く、日本車に慣れた身には、スムーズなコントロールが難しいのです。もっともこれはクルマ云々ではなく、自分の運転技術の話なのですが……。


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 停止時にわずかにV8の鼓動を感じる以外、静粛性や乗り味に不満はまったくなく。イマドキの高剛性ボディーに動く足という方向とは異なり、サスペンションとシャーシ全体で振動をいなすという乗り味は、実にコンサバティブで心地よいもの。ハンドリングも2トン近いボディーサイズからは想像できないほど軽快。「いつまでもこのクルマに乗っていたい」と思わせるのです。


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 もちろん踏めば怒涛の加速が楽しめるのですが、むしろ余裕の心でゆったり走りたい気分。高速道路でアダプティブクルーズコントロールに車線監視機能を使ってみると、これがちゃんと動くではありませんか(当たり前)。


 さすがに首都高のような場所では外れてしまうのですが(これは日本車でも難しい)、直線メインなら安心して任せられます。クルーズコントロールを使いながら、極上の空間にいると「このまま遠くに行きたい」と逃避行したくなるもの。こういう気持ちになるクルマは、個人的「クルマの終着駅」だと思っている「アルピナ B5」以来のこと。そういえば値段も最高出力も近いなと。この価格まで出さないと、極上のクルマ体験は難しいのでしょう。とはいえ、この価格の他のクルマに乗ったことはありますが、こういう体験はしてこなかった……。


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 スポーツモードにして、首都高をちょっと頑張ってみることに。アルピナ B5にはない「操る楽しさ」に、なるほどスポーツセダンの完成形はコレかも! とも。調子に乗ってサスペンションを硬くしてみたら、当然ながら乗り心地は悪化するし、段差で横っ飛びしそうになって冷や汗。ですが、よい意味でレトロフィットな乗り味に、どこかホッとするところも。今のクルマでは薄くなりつつある手応え・感覚が、マセラティには色濃く残っているのです。これが長年の経験で積み重ねられた技術と伝統なのでしょう。


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三叉の槍が心に深く突き刺さる
真の大人のための1台

 よい意味でコンサバティブでありながら、先進の安全装備など現代的にアップデートされたところもあるギブリ・トロフェオ。経験と歳を重ねた人ほど、この良さがわかるような真の大人に相応しい1台といえそう。以前、アルピナ B5を「クルマ道楽の終着駅」と表現しましたが、このマセラティ ギブリ トロフェオもそんな1台と言えそう。試乗後、マセラティの三叉の槍が、私の心に深く刺さったのは語るまでもありません。


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 最後に燃費について。もちろんハイオク専用です。ですが、ハイパフォーマンスカーの割にはリッター7km近くをマーク。これもまたすごい! 同じようなクルマだとリッター5kmとか下回りますからね。


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