Honda/シビック e:HEVのデキの良さに感服した筆者。「となると、その上のグレードはもっといいのかな?」と考えるのは不思議ではありません。
Hondaの最上位セダン
10代目のアコードの実力は!?
シビックがミドルクラスセダンに格上げしている現在、アコードはアッパークラスセダンに位置するクルマです。ライバルはトヨタ・カムリであったり、マツダ・MAZDA 6あたりでしょうか。現行モデルは10代目で、2017年に北米市場で販売開始。2018年の北米カーオブザイヤーを受賞するなど、海外では高い評価を得ています。ですが日本ではちょっと遅れて2020年からの販売となりました。


ボディーサイズは全長4900×全幅1860×全高1450mm。15代目クラウンが全長4910×全幅1800×全高1455mmですので、クラウンと同等、もしくはちょっと大きなクルマだったりします。

グレードはサンルーフや電子制御サスペンションといった装備を全部載せたEXグレード一種類で、気になるお値段は465万円。シビック e:HEVが399万円ですので、プラス70万円弱で室内が広くて充実装備満載の上位車種が手に入ると考えると、お買い得感が実に高い1台なのです。

ところで「アッパーミドルクラスがHondaのフラグシップなの?」「旗艦モデルのレジェンドはどこにいった?」という疑問が頭をもたげます。残念なことにレジェンドは2022年1月に販売終了しているのです。もっとも、レジェンドが登場する以前は、アコードがHondaの最上位セダンでしたから、昔に戻ったといえなくもありません。

エクステリアは、開口は大きめながらもイマドキのような加飾によって強調・威圧するのではなく、スマートな印象。鋭い印象を与えるLEDヘッドライトは先代シビックの流れを組みますが、メッキパーツによって、シビックとは違うというところをアピールしている雰囲気です。





サイドラインはセダンらしさが薄く、ファストバックっぽい形状。ラゲッジスペースを開けると、これが実に広くて573L。SUVのVEZELよりも容量が多かったりします。一方、VEZELにあった電動でバックドアが閉まる機構がないのはちょっと残念です。もちろんリアシートの背もたれを倒せば、さらに拡大するのですが、うれしいのはトランクスペース側からリアシートがワンタッチで簡単に倒れるというところ。この装備は新型シビックにはありませんので、やっぱり格の違いを感じるわけです。ただ、分割シートではないところは注意が必要です。
リアシートは広めで快適!
運転しないなら後部座席に座りたい









後席はさすがアッパークラスという広さ。





さらに驚いたのは、運転席側から助手席のシートの前後と背もたれを倒せるところ。ハイヤーで見かける「助手席を倒して後席の足元を広げる」という「お客様モード」が簡単にできます。リアガラスにはプライバシーシェードも用意されており、夏の強い日差しから肌を守ります。同席したモデルの新 唯(あらた・ゆい)さんも「これは広いですね。めちゃくちゃ快適です!」と笑顔。唯お嬢様はロケの最中、後席から動こうとしなかったことを正直に告白します。運転する当方は、まさに運転手の気分……。

天井にはサンルーフを用意。より開放的な雰囲気が味わえます。ですがそのリッドは手動で、しかもチープな印象を受ける操作感。もともとアコードはノンプレミアムのクルマ。フラグシップだからとハイエンドの質感を求めるのはHondaとしても本意ではないでしょうし、酷というものでしょう。
コクピットはHondaらしくスポーティー
だがデザインはちょっと古臭さを感じる









わかってはいても、運転席に座ると「ちょっと……」と思ったりしたのも事実。というのも、最近のHondaで感じる「モダンリビング」のような雰囲気からは程遠く、かなりオヤジ臭い印象。デザインそのものがちょっと古くさい上に、プラスチックシートの木質調パネルがチープさに拍車をかけるのです。ノンプレミアムとはいえ、でもアッパーミドルのセダンだし……。ですが、シートはイイ感じに気持ちよく、さすがアッパーミドルといったところ。
カーナビの精度は高いがUIが前時代っぽい





純正カーナビも、ちょっと前の世代という印象。それは画面が小さいという話ではなく、UIに古さを感じ、動作がモッサリしているから。スマホをつなげればApple CarPlayやAndroid Autoが利用可能なのはイマドキです。
走行モードの切り替えで自分に合った走りを楽しめる






シフトレバーはスイッチ式なので、センターコンソールは広々とした印象を与えます。その近くには走行モード切り替えのスイッチ。ボタンを押すとNORMAL、CONFORT、SPORTの3種類が選択可能。スロットルレスポンスとシフトタイミングだけと思いきや、画面を見る限りサスペンションの減衰力も変わるようです。ほかにECON(エコモード)、EVモードといったボタンが並びます。走行モードはイグニッションを切る度に、最後の状態を保持せずノーマルモードに戻ります。
スマホの充電は優先と無線の両方に対応




内装の装備面を観ましょう。まずはUSBまわり。運転席側に1個、アームレストに1個の2つです。Qi充電にも対応しており、iPhone XS Maxもラクラク収納できます。ただ、このリッドが思いっきりプラスチックのフタで、チープなのが残念。




折角なので、ルームミラーまわりもチェック。サンルーフの操作スイッチや室内灯のスイッチが並びます。そしてサングラスケースもあったりします。バイザー裏には照明付きのミラーがありました。
エンジンとモーターを切り替えて走る
走り方にもよるが燃費は微妙……




パワーユニットは2リットル直列4気筒と2モーターの組み合わせ。と書くと、シビック e:HEVと同じように思えますが、こちらは一世代古いもの。エンジン最高出力145PS、エンジン最大トルク17.8kgf・m、モーター最高出力184PS、モーター最大トルク32.1kgf・mで、街乗りはモーター、高速道路はエンジンというように、それぞれの得意分野で切り替えながら動きます。ちなみに燃費は22.8km/L(WLTCモード)とのことですが、街乗りメインで走ったところ14.4km/Lでした。ちなみにガソリンはレギュラーです。

18インチのアルミ鍛造ホイールに装着したタイヤはブリヂストンのコンフォート・レグノ。ホイールには「ノイズリデューシング」と呼ばれる中空構造の消音機能を有しているそうで、それによってノイズ低減効果を高めているのだとか。

さらにフロントガラスに貼り合わせガラスを採用。ホイールとガラスで室内の静粛性を高めようというわけです。
走りの良さはさすがアコード!
値段を考えれば安くも感じる

まず驚いたのは、足の良さです。アクティブサスによって、しっとりとした乗り心地。とても500万円以下のクルマとは思えない上質さには、ただただ感心しきりです。シビックがスポーツ志向のやや堅めの足とすると、こちらは硬さを感じなくもないのですが、国産車トップレベルといいたくなるほどの上質感。目を閉じたらプレミアムセダンと言われてもわからないかもしれません。
ただ、静粛性に関しては、それなりというのが正直なところ。プレミアムと同じレベルを求めるのは酷と思いつつも、足がよいだけに、もう一段階静粛性を求めたくなってしまいます。とはいえ、後席に座る唯お嬢様は極上の乗り心地に「いいではありませんか。これで500万円以下はお値打ちではありませんこと?」と、なぜか普段とは異なる言葉遣いで賛辞。
では、走りはイマイチなのか? というと、きちんと走りが楽しめるあたりがHonda車の魅力。見た目と異なり、ステアリングを切った時などでボディーそのものに適度な軽量感と低重心感を覚えます。これにe:HEVユニットのリニアな加速が加わって、街乗りを楽しくさせてくれるのです。もちろんシビックほどキビキビしているわけではないのですが、落ち着いたオトナの余裕、みたいなものでしょうか。もちろん、もっとパワーがあれば、とか欲は出てくるのですが、普段使いには十分すぎる加速力があります。

ワインディングなどでSPORTモードを選択すると、その楽しさはさらにアップ。ここでおてんばお嬢様の唯さんに運転をチェンジ。「あ、思ったより楽しいクルマですね。それに運転しやすいですね。ボディーの大きさをあまり感じません」というわけで、唯お嬢様から合格点をいただいた次第。

ノンプレミアムだけどフラグシップ。その難しい立ち位置にいるアコードですが、装備と乗り味、そしてシビックの値段を考えると安い! と言いたくなってしまうほど、デキのよい1台でした。これは思わぬ掘り出し物です。
そして、このアコードもですが、Hondaは新型シビック TYPE R、電気自動車のHonda eと、500万円弱の価格帯に個性的で魅力的な車種が多いなぁとも。ちなみにおてんばの唯お嬢様は「私ならTYPE Rですね」と一択の様子ですが、筆者は「街乗りならHonda:eが一番だけれど、仕事で使うことを考えるならアコード。でもラストガソリンエンジンかも、ということを考えるとTYPE Rだよなぁ」と、買えぬ狸の皮算用。
車選びって、こういう時が一番楽しいんですよね。そんな楽しい思いをさせてくれるHondaはやっぱりクルマ好きの心をキチンとつかんでいるな、と思いながら、お買い得感たっぷりの魅力あふれるアコードの試乗を終えました。
■関連サイト
モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添える。