グローバル化が進んだ現代において、製品から“お国柄”を感じることは少なくなりました。それはクルマも同じなのですが、その中においても強い個性を放つ国があります。
プジョーのラインナップの中でも大柄な3008シリーズ
フランス車というと、ルノー、プジョー、DS、シトロエンあたりが日本では知られているのではないでしょうか。そのうち、ルノーを除く3ブランドは、ステランティスN.V.という多国籍自動車製造企業の1部門だったりします(本社はオランダ)。ステランティスN.V.は現在、アバルト、アルファロメオ、クライスラー、シトロエン、ダッジ、DS、フィアット、ジープ、ランチア、マセラティ、オペル、プジョー、ラム・トラックス、ボクスホールという14ブランドを抱えています。その中でプジョーは、フランス系の中では最もスポーティー路線という位置づけ。ちなみにシトロエンがコンフォート寄りで、中間がDSなのだとか。



それでは今回試乗したモデル、3008 GT HYBRID 4について。プジョーのラインアップではミドルクラス(Cセグメント)に位置する3008が登場したのは2017年のこと。当初はガソリンエンジン車のみでしたが、ディーゼルが加わり、ガソリンエンジン車も仕様変更をするなど、こまかなラインアップの組み換えが行なわれました。2020年にマイナーチェンジされ、現在の外観に。翌年の1月に、今回ご紹介するハイブリッドモデルが加わりました。
3008 GT HYBRID 4は、ガソリンエンジンと2基のモーター、走行用バッテリー、外部からの充電システムを組み合わせたPHEV。PHEVということは、つまり補助金を受けることができます。その額は国から45万円、地方自治体から45万円の計90万円! さらに自動車重量税100%減税、環境性能割は非課税、グリーン化特例として翌年度の自動車税75%減税というおまけ付き。よって補助金を使った場合のガソリン車(3008 GT、515万8000円)との差額は40万円ちょっと高い程度となります。



パワーユニットは1.6リッターガソリンターボエンジンをベースに、高回転・高出力化を図ったもので、最高出力200PS、最大トルク300N・mを発生。組み合わされるトランスミッションは8段ATで、そこに最高出力110PS、最大トルク320N・mのモーターを内蔵しています。さらにリアにも、後輪用として最高出力112PS、最大トルク166N・mのモーターを搭載。システム全体での最高出力は300PS、同最大トルクは520N・m、0-100km/h加速5.9秒という俊足ぶり!
バッテリー容量は13.2kWhで、EVだけで64km(WLTCモード)の走行が可能。充電は急速充電には対応しておらず、200Vで約6時間とのこと。ちなみにチャージモードの類はないようで、減速時の回生も弱め。ですので、バッテリーのインジケータは減ることはあっても増えることはほぼありません。





走行モードは「ハイブリッドモード」のほか、積極的に電気走行する「エレクトリックモード」、リアモーターを積極的に作動させる「4WDモード」「スポーツモード」という4種類。そのうちスポーツモードはモーターよりもエンジンを主としますが、ほかのモードは電気が主となっているようです。
プジョーならではのデザインが個性的


グリルと一体化したヘッドライトが印象的がフロントマスクに、フェンダーがかなり張り出していてボリューミーなサイドビュー。ライバルたちとは趣がかなり異なった個性的な意匠なのですが、これがカッコよくまとまっているところがオシャレの国、フランスらしいところ。なるほど14ブランドあるステランティスの中にいるからこそ、個性を全面に出さないと生き残れないのかなと思ったり。ともあれカッコいいです。



バックドアはパワーゲートに対応。鍵を持った状態なら、足の出し入れでのドアオープンにも対応しています。装備面で不満はまったくありません。



ラゲッジ容量は520リッター。荷室にバッテリーを積載する都合上、荷室容量が減るハイブリッド車が多い中、リアシート使用時はガソリンエンジン車と変わらないのは立派です。ですが、シートを倒すとガソリンエンジン車ではフラットになったものが、ちょっと傾斜してしまうのは、リアシート付近にバッテリーを積載しているから。



ただ広いだけではなく、使い勝手も良好。後席側に回らずとも、荷室側からワンタッチでシートを倒すことができます。さらにアクセサリーソケットもあります。たとえばポータブル電源を載せて、走行中に充電することもできます。これはとても便利!





SUVということもあって、後席は広く文句ナシ。質感も高く、エアコン送風口には温度調整機能はないものの、アクセサリーソケットと2つのUSB Type-A端子を用意と、アメニティー関連も不足ナシです。と、ここまでは普通だったのですが、運転席のドアを開けた途端、ほかとは異なる世界観が目の前に広がります。






どこか近未来SF映画にでてくるようなコクピット感あふれる車内。とりわけ目を惹くのがハンドルです。その径が小さく、形も上下が直線上でイマドキ珍しい2スポーク。
ハンドル径の感覚的にはHonda「S660」と同等といった感じで、どこかゴーカート的。あちらはクルマそのものが小さいので「ゴーカートみたいで楽しい!」だったのですが、こちらはソコソコに大きなクルマ。なんかギャップを感じて慣れるまでにちょっと時間がかかりました。また、ペダルまわりも日本車に慣れた身からすると「なんか左に寄っているような?」という印象で、ちょっと違和感を覚えました。
インフォテインメントはややクセがあるが
USBだけでなくQi充電もあるので便利





次に驚いたのは、インフォテインメントシステムを含む車両のアメニティーコントロール系。基本的にタッチディスプレイで操作します。たとえばエアコンの温度を変える時は、画面の下にあるエアコンのボタンを押してから、タッチディスプレイで調整するという具合。これが何が問題になるのか、というと、ナビの画面が一時的に出ないのです。「音楽選択だって、一時的に画面が出ないじゃないか」と言われるとごもっともなのですが。
で、これが何で困るのかというと「エンジンスタート時に起動しない時がある」から。個体差なのかは不明ですが、取材中2回、車両は動くけれどインフォテインメントシステムが起動しないという状態になったのです。結果「夏なのにエアコンが動かせない状態」になり……。




Apple CarPlay、Android Autoにも対応。スマホとはBluetoothで簡単につながります。スマホトレイはQi充電に対応しています。スマホは横に置きますが、ケーブルをつなげるとやや長さが足りない様子です。


車内で驚くのはサンルーフの大きさ。後席近くまでガラスルーフな上に大きく開くことに驚きます。さすが人生を楽しむお国柄から生まれたクルマといえるでしょう。
ハンドル経の小ささに驚き
メーターはハンドルの上から見るスタイル

そんなプジョー3008を、ドライブ大好きのモデル・女優の新 唯さんに触れてもらいましょう。まずはコクピットに座ってハンドルを握った唯さん。違和感を覚えるかと思いきや「ハンドルが小さくて運転しやすそう」と意外と好印象。実際に運転すると、「確かに最初は違和感を覚えましたけど、すぐに慣れました。結構クイックな感じですが、これは面白いですね」とニコニコ。

プジョーというと猫足とたとえられる乗り味が特徴。「ちょっと硬めなんですね。でもタイヤが地面に吸い付いているような感覚で、低重心さと相まって安心感は高いですね。ややクイックなステアも運転していて楽しいです」というように、その乗り心地はかなり気に入られたご様子です。

ですが、それ以上に気に入ったのはパワートレイン。特にハイブリッドモードがお気に入りで「とにかくパワフルで楽しい! 静かでなめらか。それでいて欲しい時に背中を押されるかのように加速するんです。しかも、結構アクセルペダルとリニアに反応するんですよ」というように、イマドキのエコなクルマではなく、走りの楽しさも十分に伝えてくれます。ですが景気よく踏みまくってしまうと、相応に電力は消費してしまい、気づけば「もう終わり?」みたいなことに。

試乗取材ということもあり「エレクトリックモード」「4WDモード」を使ったということもありますが、取材開始時はほぼ8割あった電力も、2時間近く走行していたらゼロに……。バッテリー残量が底を尽くと、基本はガソリンエンジン、時折モーターが時折アシストするという感じに変わってきます。すると4WD的な走りと力強さは影を潜めて、走り出しはFRっぽく、巡航時はFFという、個性的というか今まで味わったことないフィールに。
また、エンジンが積極的に動くことから静粛性も少し悪くなってしまいます。とはいえ、他のハイブリッド車とくらべて劣るというわけではないのでご安心を。

「ハイブリッドモードのフィーリングがいつまでも続くといいなと思いました。急速充電ができたらいいなと思うんですけれど」というように、ハイブリッドモードが素晴らしい1台。SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビーグル)といいながら、走りはあまり楽しめないクルマがある中で、プジョー3008 GT HYBRID 4は走りが楽しめる1台であると断言したいと思います。それに現在のプジョー輸入車ラインアップでは唯一の4WD車でもあり、雪道などでも活躍できそうです。
最後に唯さんは「インテリアもエクステリアも、さすがファッションの国・フランスという感じで素敵でした」とニコニコ。「走りも含めて、独特の魅力がありますね。面白かったです」と、帰り際にクルマを惜しむように見ていたのが印象的でした。

■関連サイト
モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添える。