ドレスアップ効果だけでなく、ちゃんと効果を体験できるエアロパーツを手掛けるホンダアクセス。その開発の一端を知る体験会に参加しました。
1996年から実効性のあるエアロを作り続ける
ホンダアクセス


ホンダアクセスが、初めて空力を意識したエアロパーツの提供を始めたのは1996年に登場した5代目プレリュードから。そこから実効性のあるエアロパーツの研究・開発が始まりました。




1999年には、初めて「車両の性能をさらに引き出す」という実効性のあるエアロパーツとしてS2000用をリリースしました。ちなみに2020年にはS2000 20thアニバーサリーとして新規でエアロを開発、期間限定販売しました。

そのうちホンダアクセスは一般道でも「しっかりと効果を感じとれる」「気持ちよく走ることができる」という開発キーワード「実効空力」という考えを取り入れるようになります。その第1弾が2008年に登場したFD2型シビック TYPE R用エアロでした。ですが「効果はあるけれど、見た目がね」という評価だったのだとか。

転機となったのは2013年から始まった同社のコンプリートカーブランド「Modulo X」シリーズ。スタイリングと空力性能の両立が実現していきました。それは世代を重ねるごとにアップデート。今ではS660 Modulo XやFIT Modulo Xのオーナーから「運転が上手くなったみたい」という声が多く寄せられているようになったのだそうです。
不肖は過去、いく度となくModulo Xのコンプリートカーを試乗しましたが、乗る度にオーナーの声である「運転がラクになった」「乗っていて楽しい」という気分になります。でもそれらは「エアロ」だけでなく、サスペンションやアルミホイールなどといった部分にも手が加えられたもの。エアロだけでこうなるのか? という体験をしたことはありません。
実効空力とは何かをお勉強しましょう
そこで今回は、実効空力デバイスでエアロ効果を体験してみましょう、という機会をいただいた次第です。せっかくなので、ASCII.jpではおなじみの運転大好き、栃木が生んだ奇跡のショートカットビーナス、モデルでタレントの新 唯(あらた・ゆい)さんにも体験してもらいます。

まずはModuloの開発を統括する福田正剛さんにご挨拶。すると福田さんは、白いノコギリ歯のようなパーツを持ってこられました。簡単にボディーに取り付けられるよう磁石でできています。「これは飛行機とかにも使われている技術で、シェブロン形状といいます。風が当たると、三角形の断面部分に小さな渦がたくさんでき、大きな渦を細かくする。それが走行性能に影響するんですよ」と福田さん。
クルマが走ると、ボディー後部で空気の渦ができるですが、これが走行抵抗になってしまうのだとか。この空気の渦が大きくならないよう、渦ができる直前に突起物をつけて、わざと小さな乱流を発生させる。すると乱流によって、渦が小さくなり、空気抵抗も小さくなるとのこと。

「こんな小さな物で変わるんですか?」と唯さん。福田さんに「たとえばコンピューター解析(CFD)などで、数字は現れるのですか?」と素朴な疑問をぶつけます。ですが「それが出ないんですよ」とのこと。ですが「風洞で高速カメラを使うと、この三角形の断面に小さな渦ができていることが確認できます」というように視認はできるみたいです。

さて、この手の空力パーツとして、いわゆるフィン(ボルテックス・ジェネレーター)があります。最近ではFK8型シビック TYPE Rの天井にも取り付けられていましたし、最近のModulo Xではフロントバンパー下部にエアロボトムフィンとして取り付けられています。それとはどう違うのでしょう? 福田さんによると「渦の大きさと発生場所が異なる」とのこと。フィンの場合は後端に長く渦ができるのだそうです。


ということで、論より証拠。N-BOXの天井に、この白いノコギリ歯のパーツを取り付けたり外したりして、試すことになりました。マグネット製なのは、このためだったのです。

最初は取り外した状態で運転。コースは高速コーナーと低速コーナー、そしてパイロンスラロームを組み合わせたもので、1周2分ほど。雨の中がんばって走る唯さん。


そして取り付けて運転。写真では、違いがわかりません。で、運転を終えた唯さんに感想を尋ねると「全然違う!」というではありませんか。「またまた~、わかったフリをしていませんか?」と聞くと「私が嘘を言っていると思っているんですか!」と逆ギレされてしまいました。その様子をみたホンダアクセス関係者はニヤニヤ。
「全然違うんですよ。コーナー中にハンドルを切り増しするなどの修正舵をする必要がないんですよ。あと、視界が安定しているように感じます。一言でいえば運転がラクで楽しいんですよ」と唯さん。折角なので同行スタッフも挑戦することに。結果は「確かに違う! 唯さんの言う通りだ」と驚いた次第。
今日はホンダアクセスさんの実行空力の実験に参加してきました✨
このギザギザをつけると…
これだけで??と疑っていましたが、安定感がアップする上にコーナーもすごく曲がりやすくなりましたビックリ( °_° )
私は速度30kmくらいから実感できました#Modulopic.twitter.com/u5GtNuLGW9
— 新唯 (@arata_yui_) October 7, 2022
効果の感じ方は人それぞれで、唯さんは「30km/hでも違いは体験できました」とおっしゃいますが、不肖は低速域では正直よくわかりませんでした。それを聞いた福田さんは「唯さんは鋭い感性をお持ちですね」とニヤニヤスマイル。褒められた唯さんは満面のModuloスマイル。
「でも、こんな種明かしをしていいんですか?」と福田さんは続けます。「別に特許を取得している話ではありませんからね。こういうものがある、ということを、広く知っていただきたいんです」と、実にエンジニアらしいお答え。もちろん、このシェブロン形状以外にもネタがあるから、種明かしをされたのでしょう。
この記事を読んで「俺も自作してクルマに取り付けよう」と思われる方。自作で取り付けることはオススメできません。確かに変わるのですが、万が一にも走行中に外れたりしたら「自己責任」では済まないことになる場合があります。今回はクローズドコースだからこういう実験ができた、というわけです。よって「実効空力を感じたければホンダアクセスのパーツを買ってディーラーで取り付けてもらうか、コンプリートカーを買いましょう」と唯さん。はい……、頑張って働きます。

「解析技術などが進化しても、画面や図面で終わらせることなく、自分たちで走り、人の感性でいいと感じたものを採用していく」という、ホンダアクセスの開発手法には感服した次第。その最新作が前回紹介したシビック TYPE R用のテールゲートスポイラーになります(街乗りでも本当に効く? シビック TYPE Rの純正アクセサリーを群サイで試す!)。ということで、今回の記事と併せて読んでいただけけると、より実効空力への理解が深まるかと思います。
■関連サイト
モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添えた。