今年は3年ぶりにCES2023へ出掛けた。出展内容を見るのが最大の目的だが、実はそれとは別に楽しみにしていたことがある。

それが今回紹介する「Vegas LOOP」である。


ラスベガスの地下トンネルをテスラ車で快適に移動! 「Vega...の画像はこちら >>
地下に作られた「LVCC Central Station」の乗り場。この時は南館へは1ヵ所のみで、ほとんどが西館への乗り場となっていた

CESの会場はとんでもなく広いので
移動時間を短縮できるサービスはうれしい

 CES会場となるラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)はとにかく広い。しかも、2022年には新たに西館(West Hall)がオープンして、その規模はさらに巨大化した。そこで問題になるのがその移動だ。LVCCの端にある南館(South Hall)から西館までを歩くのだが、信号待ちを含めると軽く15分以上はかかる。せめて動く歩道でもあればいいのだが、それもなし。正直言って、ここを何度も往復すると「歩きたくない!」と誰もが思うだろう。


ラスベガスの地下トンネルをテスラ車で快適に移動! 「Vegas LOOP」が便利すぎる!
LVCC中央館近くにある「Vegas LOOP」の入口。ここからエスカレータで下がると「LVCC Central Station」
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混雑状況に応じて乗り場は変化していた

 そうした状況に報いてくれるのがVegas LOOPなのだ。これはLVCCの南館と中央館(Central Hall)、西館を結ぶ地下トンネルのことで、ここをテスラ車が走って数分で南館や西館へと無料で乗せていってくれるというもの。どうしてテスラ車が使われているのかというと、実はこのトンネルを掘った会社「Boring Company」に、テスラ社のCEOであるイーロン・マスク氏が投資したことが影響している。


 ラスベガスへ着いた初日(1月3日だった)にLVCCへ向かうと、中央館の前にエスカレータで地下へ向かう入口が見えた。

これがVegas LOOPへの入口だ。エスカレーターに乗って降りていくと、そこは「LVCC Central Station」となっており、10台ほどが止まれる車寄せがあって、そこからテスラ車が次々と発着している様子が見えた。乗り場は混雑状況に応じて西館行き/南館行きへと変化するようだ。


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到着した「LVCC West Station」は地上にあった。背後に見えるのがLVCC West Hall
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どのテスラ車に乗れるかは運次第。「モデルX」も用意されていたので乗りたいクルマが来るまで待つ方法もある

 係員に行き先を告げると番号が振られ、そこで乗車するよう指示された。テスラ車はモデル3やモデルX、モデルYなど様々。基本的に車種を選ぶことはできず、到着したクルマにランダムに相乗りで乗車していく仕組みだ。乗車するとシートベルトを着用するよう促され、装着が終わるとすぐに発進した。


 目的地を西館としたため、一旦は車寄せの周囲をグルッと回ってUターン。そしていよいよトンネル内へと入っていく。トンネルは想像していたよりもかなり狭く、クルマ1台がやっと通れるほどの幅しかない。

そこを次々とテスラ車が走って行くのだ。緩やかなカーブがある上に、トンネル内は照明で様々な色に変化して岩肌を見せる箇所もあったりと、もはや、どこかのテーマパークのアトラクションにでも乗っているかのような気分になる。


 そして、西館の「LVCC West Station」に到着。所要時間は乗車してから下車するまでおよそ5分だった。これはトンネルに入る際、少し混雑したためで、トンネル内を走ったのは2分程度だったように思う。とにかく中央館から西館へは、あっという間に到着した印象だ。下車したWest Hall Stationにはトンネルの内側から支えるリング状のコンクリート壁がモニュメントとして展示され、その背景にはLVCCの西館の姿がドーンと広がる。まさにアメリカならではの風景を見た感じがした。


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西館へ向かうルートはどうしても混雑しがちだが、それも少し待てばすぐに走行可能となる
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西館へ向かう最後の部分では、岩肌が見えるような造りとなっていた。ここだけが対向車とすれ違う場所

自動運転ではなくドライバーの運転

 ところで、このテスラ車の運行について、狭いトンネル内をあまりにスムーズに走行していくので、もしやADASを使って走行しているのかと思ったが、実は普通のマニュアル運転だった。


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トンネルは思ったよりも狭かった。クルマ1台がやっと通れる幅しかないが、そこをドライバーはスムーズに走行していった
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トンネル内は道路の端から照明で照らされていて、その都度、色が変化していった

 ドライバーにその辺りを聞いてみると、一言で「慣れれば早く走れるよ」とのこと。

最高速度も35マイル(約56km/h)までと制限されているとも教えてくれた。対向車は一部区間を除いてほぼいない状態なので、自動運転化しても不安はないと思うが、混雑時の制御などを踏まえると現状はこの方がスムーズに処理できるということだろう。


 また、今回はLVCCをつなぐルートだけを体験したが、聞くところでは西館の先にある「Resort World Station」まで、有料で乗ることはできるようだ。さらに将来的にトンネルは、ラスベガスのダウンタウンからストリップ通りを経由して空港まで延伸される計画になっているとも伝えられている。


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LVCC West Stationにはトンネル内部に使われたリング状のコンクリート壁がモニュメントとして置かれていた
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現在、運航しているVegas LOOPの経路図。LVCC間は無料で乗れるが、それ以外のルートは有料となる

 明らかになっている計画書によれば、ダウンタウンのフリーモントストリートから空港までわずか8分で結ばれるという。その際は16人乗りのシャトルが投入されるそうで、もしかしたらこの時にこそ完全自動運転が実現されるのかもしれない


 いずれにしろ、Vegas LOOPを活用することで、CESでの移動は格段に楽になった。西館と中央館から発着している、各ホテルへのバスを併用すれば驚くほどスムーズに移動できるようにもなったからだ。この実現により、個人的にも身体的に厳しかったCESの会場巡りが今まで以上に楽しく過ごせたのは間違いない。


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