毎春、“モータースポーツの聖地”鈴鹿サーキットで開催される「モータースポーツファン感謝デー」。ファン感の名で親しまれるイベントは、2輪(バイク)と4輪(クルマ)を同時に楽しめるのが大きな特徴。

さらに、本格的なモータースポーツシーズンの開幕前ということで、さまざまなレースに今年参戦するチーム体制もチェックでき、ファンにとってはお披露目の場という一面もある。


 一流のドライバー、ライダーも多数登場して盛り上げた鈴鹿サーキットでの一大イベントをレポートしていこう。


真夏の祭典、鈴鹿8耐
スタート&ゴールを再現

 3月5日(日)、「SUPER FORMULAフリー走行」のあと、「ファン感」の本格的なプログラムスタートとばかりに行なわれた「鈴鹿8耐~最速の耐久レース~」。鈴鹿サーキットで毎夏に開催されるバイクレース、「ハチタイ」の愛称で知られる8時間にも及ぶ耐久レースの魅力を届けるプログラムだ。


 まずは鈴鹿8耐に出場経験のあるライダーの亀井雄大選手、水野涼選手、名越哲平選手の3人がトークショーを展開した。トークショーが終わると、舞台はサーキットのホームストレートへ移り、鈴鹿8耐のスタート&ゴールシーンを再現。ル・マン式スタートを経てバイクにまたがったライダーが次々にスタートすると、最後に8時間後をイメージして全車がチェッカーを受けてフィニッシュした。


モータースポーツ好きが集結! 鈴鹿サーキットで開催の「ファン感謝デー」レポート
3月5日は17時からプログラムが行われた。夕方の走行とあって8耐でも見られるライトオンでの走りが見られた
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ホームストレートのピット側に並べられたバイクへ、ライダーは走って向かいスタートを切るル・マン方式の鈴鹿8耐スタートシーン

ドライバーがゲームに挑戦
レースと異なる素顔が見られた

 2輪のあと、今度は4輪のプログラムが始まるのがファン感ならでは。「ファン感 スペシャルバトル 2023」は、ドライバーがドライビングテクニックで競うもので、TOYOTA GAZOO Racing、Honda Racing、NISMOのドライバー混合によるチーム戦形式のバトルだ。


 ドライバーの動体視力を競う「PIT SIGN CHALLENGE」は、掲示するボードを見て内容を当てるもので、ボード掲示役は会場にいる子どもから選ばれるなど、観客を巻き込んでプログラムは進んだ。設置されたパイロンをすり抜けてタイムを競ったり、中にはクルマの左後輪を使い風船を割る難易度が高いものも。いつものレースでは見られない、ドライバーたちのリラックスした姿が印象的だった。


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TOYOTA GAZOO Racing、Honda Racing、NISMOのドライバーたちが混合でチームを結成した
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ラストゲームの「BALLOON ATTACK CHALLENGE」。
設置された5個の風船を左リアタイヤで割っていく難易度の高いゲーム
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CIVIC TYPE-Rを使い、急制動技術を競うゲーム。僅差が多く、会場も盛り上がった

耐久レースの世界選手権
昨年の2輪・4輪の王者が凱旋

 「凱旋! WEC&EWC 2022耐久チャンピオン」は、プログラム名の通り、2022年に耐久レースの世界選手権を制した2輪、4輪のチャンピオンが鈴鹿サーキットに凱旋した。2輪はEWC(FIM世界耐久選手権)のチャンピオン「Honda CBR1000RR-R」とライダーのジョシュ・フック選手、さらにWEC(FIA世界耐久選手権)でチャンピオンに輝いた「TOYOTA GR010」とドライバーの平川 亮選手がそろって登場。


 2輪、4輪の耐久チャンピオンはその後、サーキット上でデモ走行を披露。同時にそれぞれのチャンピオンが走るシーンは豪華そのもの。グランドスタンドの観客からは凱旋走行に大きな拍手が贈られた。


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2022年のチャンピオンとして鈴鹿に凱旋した平川亮選手(左)とジョシュ・フック選手
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ファン感で走行シーンを披露したジョシュ・フック選手(F.C.C. TSR Honda France)
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2022年のル・マンのウィナー、TOYOTA GR010とドライバーの平川 亮選手

ル・マン24時間が100周年!
ファン感涙のお祝いを届けた

 フランスで開催されるル・マン24時間耐久レースは、世界の自動車3大レースに数えられるほどで、その名を聞いたことがある人も多いだろう。今年のファン感において、目玉プログラムのひとつに数えられたのが「100周年記念 ル・マン24時間レース Legends」だ。


 100周年というメモリアルイヤーをお祝いしようと、これまでにル・マンを戦った約20台のクルマが鈴鹿に集結。年代ごとに区切った3部制で、それぞれのマシンがデモ走行を披露した。今から50年以上も前、1950~60年代のマシンが走ったかと思えば、2022年の優勝車「トヨタ GR010」は、昨年ル・マンを走ったままの外装とカラーリングでデモ走行。


 ほかにもGTカーの「ホンダNSX GT2」、そして3月5日限定で1991年の優勝車「マツダ 787B」が登場。マツダ787Bは4ローターのロータリーエンジンサウンドを響かせてホームストレートを疾走。最後は2023年のル・マンに挑むTOYOTA GAZOO Racingのドライバー兼チーム代表である小林可夢偉選手によるウイニングランで幕を閉じた。


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歴代のル・マンカーが鈴鹿サーキットをデモラン。鈴鹿の地から100周年のお祝いを届けた
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TOYOTA GAZOO Racingとして2023年のル・マンに挑む小林可夢偉氏(左)と平川亮選手は、観客を前に抱負を語った
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マツダの767Bや787Bが、ロータリーエンジンのサウンドを響かせた

「MiNiGP」にチャレンジする
若手ライダーが登場!

 2021年に誕生したバイクレース「FIM MiniGP World Series」。バイクレースの最高峰であるMotoGPを目指す若手ライダーにとって最初のステップとなるレースにあたり、2022年には「Japan Series」が初開催された。「MiniGP~目指せ!世界チャンピオン~」は、「プロライダーとして成功したい」という夢を抱き、MiniGPにチャレンジする10~14歳の若手ライダーを知ってもらおうというプログラム。


 昨年のJapan Seriesでチャンピオンに輝き世界総合3位に輝いた池上聖竜選手など、若手ライダーたちはそれぞれマイク片手に自己紹介を終えると、バイクを巧みにライディングしてのスラローム走行を披露した。


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「MiniGP~目指せ!世界チャンピオン~」に登場した若手ライダーとコーチの皆さん。大人顔負けのバトルが見られるレースの魅力をPRした

昨年の日本GPに出場した
長島哲太選手がMotoGPについてトーク

 「MotoGP 王座奪還へ Honda RC213V」では、昨年の鈴鹿8耐優勝者であり昨年、日本GPにワイルドカードで参戦した長島哲太選手が登場。MotoGPの今シーズンの見どころについてトーク。また、レースで実際にまたがるHonda RC213Vについての話題も。HondaのMotoGPマシンなだけに「どんな走り、音を響かせるのか」という観客からの期待を感じ取った長島哲太選手からは「1周目はタイヤがまだ温まってないし、いきなり期待しないで(笑)」と軽妙なトークを披露する場面も。


 トーク後のデモ走行では、Honda RC213Vの雄姿を見せてくれた長島哲太選手。デモ走行3周目、最後のホームストレートではアクセルを存分にあけて、MotoGPマシンのサウンドを聞かせてくれた。


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トークからデモ走行までと、大忙しだった長島哲太選手。今年のMotoGPの見どころもわかりやすく解説してくれた
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MotoGPマシンの走行シーンが見られるのは貴重。
マシンが持つ高いポテンシャルの片鱗を披露した

SUPER FORMULAに参戦する
22台のマシンとドライバーが集結!

 ファン感で、注目度が高かったプログラムのひとつが「2023 SUPER FORMULA Presentation」だろう。2023年のシーズンに参戦する、22人のドライバーと22台のマシン(22チーム)が登場。新しいエアロパーツを装着した、今年から導入された新型車両SF23が見られることはもちろん、ファンにとっては今シーズンのチーム体制も知ることができるお披露目の場でもある。


 プログラムではチームごとにコースを走行。最後には全車22台がコースインして、華やかにプログラムを終えた。各チームが参戦する「2023年 全日本スーパーフォーミュラ選手権 第1戦/第2戦」は、4月8~9日に富士スピードウェイで行なわれる。


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新型車両SF23を初めてサーキットで走らせるシェイクダウンセッションに臨む野尻智紀選手

高木虎之助氏の参戦により
新・永遠のライバル対決に新展開!?

 星野一義vs中嶋 悟による「永遠のライバル対決」を引き継ぐ形で、2019年から始まったのが道上 龍、脇阪寿一、本山 哲による「新・永遠のライバル対決」だ。


 気心しれた3人のドライバーによるトーク、さらには笑いあり!? のガチンコドライビング対決は、今ではファン感を盛り上げる人気プログラムに定着した。だが、今年そのライバル対決に割って入ったのが元F1ドライバーの高木虎之介選手だ。3人から4人になって争われた新・永遠のライバル対決は、HONDA CIVIC TYPE Rに乗り、鈴鹿サーキットで速さを競った。


 3月4日の予選、5日に決勝戦を開催。脇阪選手が2年連続で勝利を収め、特製のチャンピオンベルトを再び腰に巻いた。


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3月5日の予選はGR 86を使ってのガチンコ対決
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熱戦!?を繰り広げた4人。左から高木虎之介、脇阪寿一、道上 龍、本山 哲
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決勝はHONDA CIVIC TYPE Rで競われた

GT500マシン13台が
本番さながらのデモ走行

 3月5日、プログラムの大トリを担ったのが「SUPER GT GT500 プレシーズンマッチ」だ。

今シーズンのSUPER GTを走るGT500マシン13台によるデモ走行が行なわれ、2022年シーズン王者「TEAM IMPUL」の平峰一貴選手もNissan Z GT500で走行した。


 デモ走行は、昨年のチャンピオンの証であるゼッケン1をつけた平峰一貴選手がポールポジションからスタート。セーフティカーによる先導を終えると、本番さながらにローリングラップが開始。SUPER GTのGT500クラスに参戦する一流ドライバーのデモ走行に、詰めかけたファンは推しのチームの旗を振り、拍手を届けてエールを贈った。


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レース本番かのごとく、緊張感があったSUPER GT500クラスのデモ走行

 5日のプレシーズンマッチでポールtoウィンを決めた昨年王者「TEAM IMPUL」の平峰一貴選手


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「TEAM KUNIMITSU」のホンダ NSX-GT
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au TOM'S GR Supra
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カルソニックから名前が変わったMARELLI IMPUL Z

 3月4日、5日の2日間にわたって行なわれた今年のファン感。1988年に始まった歴史の長いこのイベントは、2輪・4輪のモータースポーツファンに向けたお祭りとして定着しており、両日ともに来場者数は1万人を超え、活気のあるものとなった。


 バイク、クルマとも各レースカテゴリーの今年のチーム体制、見どころを知ることができるのも春に行なわれるファン感の強み。3年ぶりに開催された2022年に続いて、2023年もモータースポーツシーズンのキックオフを告げた。


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