10年くらい前になるか。ミニベロ(小径車)が流行したとき、20インチのタイヤを履き、ダウンチューブが2本平行に走る個性的なフレームデザインで、カラーリングは白でダウンチューブに「LOUIS GARNEAU」と描かれたスポーティな小径車といえば「ああ、アレか」と思う人はいっぱいいるだろう。
読みは「ルイガノ」。ルイガノはカナダのスポーツ用品ブランドで、日本では自転車ブランドとして有名で街乗りからロードバイクまで幅広いラインナップを持っているのだが、「ルイガノ」と言われて思い出すのはやはり、白いフレームのミニベロなのだ。

たとえばコレ(下の写真)である。ああ、これかーと思った人も多いんじゃないかと思う。特徴あるフレームだからね。

今回はそのルイガノのミニベロ・e-bike版に乗りまくってみたのである。それが「EASEL INTER5E DI2」だ。せっかくなので、同じ駐輪場で同じような感じで撮ってみた。

ルイガノの「EASEL INTER5E DI2」は、同じフレームで「EASEL-E」というのもあるのだけど、せっかくなので上位モデルをお借りした。
シマノの電動アシスト&電動変速を搭載のオートマ仕様
「EASEL INTER5E DI2」は同社のミニベロ(小径車)をベースに、電動アシスト機構と電動変速機をフィーチャーしたモデルだ。価格は29万4800円。ちなみに、DI2はシマノの電動変速システムの総称。


ノンアシストのEASELシリーズはスポーティーな街乗り用のミニベロ車という位置づけ。小径なので小回りは効くし、乗り降りもしやすい。でもママチャリではなくスポーティーな味付けなので、ハンドルの位置もやや低くて乗車姿勢も少し前傾気味だ。サドルもドカっと座るママチャリ仕様ではなく、少し硬めのスポーツタイプ。ハンドルもストレートなフラットバーを採用している。


電動化のベースは日本が誇る自転車パーツブランド「シマノ」。ドライブユニットはシマノのDU-E5080を採用している。

バッテリーはダウンチューブに大きなものを搭載。バッテリーを外して充電することもできるし、自転車本体の端子を使って外さないで充電することも可能だ。フル充電したら(ちゃんとヘルメットをかぶって)走り出そう。

電源を入れた状態ではアシストはオフなので、左側のディスプレー脇のボタンを押してアシストをオンにすべし。アシストは3段階で、写真は最強にした場合だ。


漕ぎ出しはめちゃ軽い。ものすごく軽い。ペダリングをアシストするセンター駆動なので反応がいい、というのもあるけど、それ以上に「オートマだから」ってのが大きい。この「EASEL INTER5E DI2」は「内装式電動5段変速機」を後輪に備えており、デフォルトで「自動変速」、つまり「オートマ」なのだ。
停止すると自動的に一番軽いギアに落ちるので、漕ぎ出しはいつも最高に軽いのである。コントローラーにAUTOとあったらそれは自動変速。変速するたびに何速に入ったのか表示されるのも便利だ。


そしてちょっとスピードが上がると2速3速と上がっていき、比較的速く5速に達する。走りながらチェックしたところでは、17.5km/hで5速になる感じだ。ちょっと5速まで上がるのが速いよ、とは思うけど、20km/h以下で走ってるときは快適。20km/hを超えるとぐんとアシスト力が下がり、24km/hでゼロになる。そうなるとちょっと重い。ノンアシストのモデルに比べてバッテリーやモーター分の重さと、安定性を重視した太いタイヤによる抵抗の大きさだろう。
でもまあ、スポーティーではあるけどスポーツ車ではなく、オートマで快適に走る自転車なのだ。左手側についているコントローラーも車速のほかは走行距離や変速の段数、バッテリーの残量(残量そのものではなく残り何km走れるかという表示になる)くらいだ。個人的には「時計もつけてくれ」と思うけど(走りながら時刻がわかると大変便利)、まあその辺はシンプルなのである。
右手側には、変速を手動に切り替えた時用のボタンがついている。手動にしたときは、これを使って自分でコントロールする。

同じようにオートマ仕様だったVanMoofのe-bike「S3」は(まさに走るスマホ! VanMoofのe-bike「S3」はギアもオートな未来の乗り物)、専用のアプリで自動変速のカスタマイズができたのだけど、EASEL INTER5E DI2はそれがない。自分であれこれいじって楽しむよりは、もっとカジュアルな用途を想定してるのだろう。
100kmを超えても頑張ってくれたバッテリーはすごい
今回、街乗りメインということで普段使いを中心に、平日は駅との往復や買い物、休日はちょっと遠乗りをしたり坂を上ったりという乗り方をしてみた。一番いいのはちょっと遠くへ楽しく走るかってときに、すごく快適なこと。都市部では一時停止や赤信号など細かいストップ&ゴーが頻繁に発生するんだけど、それが苦にならないのだ。
まず、ブレーキがいい。前後輪にシマノの油圧式ディスクブレーキを搭載してるのだけど、これがよく効くのだ。ただ止まるだけじゃなくて、ちょっとしたレバーの加減で速度をコントロールできるのでスムーズに減速できる。ブレーキのクオリティーが高いと走っていて安心感や安定感が全然違うのだ。

続いて、オートマ。停止や減速すると自動的に変速が軽い方に落ちてくれる。すると次の漕ぎ出しが軽いギヤからはじまるので脚力をあまり使わずにすっとスタートできるのだ。ストップ&ゴーが快適なのはいいよね。とくにわたしのように面白そうなものや気になるものを見つけてはすぐ寄り道して、止まって写真を撮ってまた走り出す、なんて人には実に快適だし。小径車なので小回りが効くのもいい。
乗車姿勢がやや前傾になるので長距離走ってもあまり疲れなくて、さらにお尻も痛くなりづらい(この辺はスポーツ車に乗り慣れてるかどうかも大きいけど)のもいい。高速巡航には向かないけど、20km/hくらいのそこそこの速度で往復20kmくらいの距離を気持ちよく走るのによいのだ。
で、もちろんいつもの急坂も上る。
激坂でのアシスト力はそこそこだが
100km以上走れるタフネスに驚き!

ではいくぞ、という感じで上り始める。オートマの場合、気合いを入れすぎると速度が上がりすぎて2速3速と上がってしまってつらいので、軽いギアでのほほんとアシストさんがんばってねーくらいの感じで漕ぐのがいい。アシスト力はぐいぐい急坂を上れるほどではないけど、必死に脚力を使わなくても10km/hくらいで平和に上りきったという感じだ。
そんな感じでフル充電の状態から、ずっとバッテリーを消費し続けてきたのだけど、走行距離100kmを超えてもまだバッテリーが残ってるのにはびっくり。とくに最後の粘りがすごい。


じゃあ、どこまで走れるのか見てやろうじゃないかと無駄に走り回ってたら、あるときふとアシストが消えた。とうとう力を使い切ったか、と自転車を止めてメーターを見るとバッテリーが空になった段階で「114km」も走れてた。これはびっくり。

けっこう遠乗りしても余裕でいけそうだ。バッテリーの持ちの良さはオートマであることが関係してるんじゃないかと思う。特に大きなトルクが必要なのは(つまりバッテリーを大きく消耗するとき)、「上り坂」と「こぎ出し時」なのだけど、オートマだと漕ぎ出し時は常に一番軽いギアになっているので強いアシストが不要で、その分バッテリーの消費が少なくて済むんじゃないかと。
さて、ここで気になるのが「バッテリー残がゼロ」になったとき、電動変速は効くのか? 結果から言うと効きます。さすがに変速に必要な電力(アシストに比べれば微々たるものだろう)は残してあるわけで、「ノンアシストのオートマ小径車」として普通に走れるのであった。そこは一安心。
かくして、ルイガノの「EASEL INTER5E DI2」はハイスピードでぐいぐい走るのには向かないけど(高速巡航はつらい。20km/h前後くらいで走るのが快適)、ちょっとした長距離のポタリングに向いた1台なのだった。しかもバッテリーの持ちがすごくいい。
街乗りに快適で、のんびりと遠乗りするにもいい、そんなフルオートマミニベロなのだった。

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