「自動車もついにここまで来たか……」。ボルボとGoogleが共同開発したインフォテインメントシステムを一言で語るならストレスフリーの極致。
やっぱり言葉で操作できたほうが便利!
ボルボのインフォテイメントはスマホ感覚で操作可能

ボルボとGoogleの話をする前に、自動車のインフォテインメントシステムの現状をご紹介したいと思います。昨今はナビゲーションやエンターテインメントはもちろん、エアコンの設定、果ては車内の照明の色までも、インフォテインメント側が請け負っています。

また、メーターパネルのLCD化により、インフォテインメントシステムと連携。速度計とパワーメーター(エンジン回転計)の間にルートを表示させることも当たり前。これらはディーラーで販売する「純正ナビ」で実現します。
一方、インフォテインメントシステムのUI(ユーザーインターフェイス)はというと、ナビでスポット名を入力する時は、キーボード画面をポチポチ、エアコンの温度設定はノブをグルグルといった塩梅で、大きく変わることはありませんでした。そこで登場したのが音声認識。ハンドルから手を離すことなく操作できれば、安全面でも有益ですし、何よりラク! ですが、大抵は正しく認識できずイライラ。結局、従来通りのインターフェースで操作している方が多いと思います。


この音声認識を一気に使えるモノにしたのが、スマホと車両を接続してナビ替わりとするApple CarPlayやAndroid AUTO。「Hey,Siri」「OK,Google」で始まるスマホの音声認識技術の進化は、誰もが知るところでしょう。「ナビはスマホで十分」という意見も納得です。

UIはどちらもスマホライクですが、強いていうなら、Apple CarPlayの方が使いやすいように感じます。ですが、純正カーナビと決定的に異なるのは、メーターパネル内にルートが表示できないこと。そして「エアコン設定」など、車両に関わる操作ができないこと。
Apple CarPlay、Android Autoともにデフォルトのマップアプリだとルートに関して純正ナビと異なり、時々「これはないでしょ」というルートが出てくるところにイラっとすることがあります。というのも、純正ナビは渋滞情報のみならず、過去のビッグデータから最適な道を割り出しているから。一方でスマホナビは、地図データが無料で常に最新のものに更新されるというところでしょう。純正ナビは更新手数料がかかる場合が多いですからね。



GoogleマップとAppleのマップで最も異なるのは、見た目と検索能力とユーザーアカウントとの紐づけ。見た目はマップなのですが、Googleマップと比べてアイコンが小さく見づらいのです。
ゆえに「ワイヤレスAndroid Autoが、これからの時代のカーナビだ」というのが、個人的な想い。そしてボルボも同じ考えだったようでGoogleと提携。2017年5月に「Android Automotive OS」をリリースしました。そして2021年9月に発売したXC60のマイナーチェンジモデルではシステムを一新。特に名称はないようですが、Googleが世界で提供する各種サービスを車内利用できるという点で、インパクト大!
ドコモ回線で検索も速い
しかもメーターパネル内にナビ表示も可能!



では、シングルモーター仕様のSUVでBEV(電気自動車)の「C40」で、このシステムについてご紹介しましょう。車内に乗り込むと9インチの縦型ディスプレーが印象的。大抵のクルマのインフォテインメントシステム画面は横位置ですからね。縦位置というと、ほかにはSUBARUくらいでしょうか。

インテリアついでに驚いたのは「ボタン類が少ない」というところ。


スタート画面は、Androidのウィジットを立ち上げたような雰囲気。一見、アプリアイコンが小さいかなと思いましたが、実際に使うとまったく気になりませんでした。





では、まずはMAPから使ってみることにしましょう。使い方はカンタン。「OK,Google。東京タワーに連れてって」と、スポット名を言うだけ。2秒程度でルートが出てきて「速い!」と驚き。そしてBEVらしく、到着時のバッテリー残量も表示されます。ルートは高速道路を使う場合と使わない場合の両方を表示。「ちょっとした距離なのに首都高を使いたがる」という傾向はありますが、ちゃんと首都高を回避することもできます。
意外と縦画面のほうがナビが見やすい

最初は違和感しかなかった縦画面のマップ表示ですが、使ってみると「こっちの方がいいじゃないか?」と思うように。「何個先の交差点で、どっちに曲がるのか」という情報は、縦位置の方がはるかにわかりやすいのです。それまで深く考えたことはなかったのですが、どうしてナビ画面って横位置が多いんですかね? 不思議です。

メーターパネルを見ると、夢にまで見た「メーターパネル内にGoogleマップが表示される」ではありませんか! しかも鳥観図で! 「これを待っていたんだよ!」と、思わず喝采です。




この音声入力のデキの良さは、走行中でも使えるというところ。走行音の関係などから「うまく聞き取れませんでした」というクルマが多い中で、ほぼ百発百中で動くのだからスゴい! たとえばナビ中に、経路変更をしたい事ってありませんか? 大抵は信号待ちをしている間に、キーボード画面をポチポチすると思います。そして入力中、信号が青になり、気づかないで後続車からクラクションの嵐……。そんなことは、もはや過去のこと。さらに曖昧な検索条件でもリストが出てきます。
たとえばBEVに乗っている時、充電量が減ると不安になりますよね。そこで「OK,Google。


一方でできないことは、条件を重ねること。具体的には「フレンチがいいな」と尋ねると、フレンチレストランの候補がズラリ出てくるのですが、さらに「この中で、駐車場がある場所を教えて」というやり方です。これができるのはHonda:eのみ。そこはさすが「Power of Dreams」なのですが、システム的に「クルマのことはクルマの中で完結させる」というシステム設計で、Googleアカウントとの紐づけによるスポット共有などはできません。
クルマの中から
家のエアコンを操作できる喜び



エアコンなどのアメニティも音声入力でバッチリ動きます! さらにGoogle Nest HubなどのGoogleアカウントと紐づけできるスマートデバイスを自宅で使っていれば、クルマの中から家のエアコンの操作可能。「Android端末があればいいでしょ」と思われるでしょう。でも、やっぱりスゴい! そして試してはいないのですが、ひょっとしたらスマホやホームスピーカーから「OK,Google、クルマのエアコンをつけて」という事だってできちゃうかもしれません。スマホのアプリ操作で遠隔地からエアコン操作ができるものはありますが、音声認識で動くと感動しそうです。
音楽系サブスクでも選曲が簡単



エンターテインメントだってシームレス。YouTube Music、Spotifyなどの選曲動作や音量調整だって可能。しかも「Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)」を「髭ダン」と略称で言っても認識するのは驚きです。運転中、ふと「この音楽が聴きたい」と思った時、ハンドルから手を離さず選曲動作ができる、しかもヒット率が高い! このストレスフリーの感動は、いくら賛辞を重ねても重ねきれません。
その理由の1つがアクティビティ管理。使った情報やYouTubeの履歴などをGoogleアカウントに保存して、検索精度をアップさせているわけです。

「ハンドルから手を離さない。いちいち画面を見なくてもよい」というのは、安全性の面でも有益です。そういえば、ボルボは三点式シートベルトを世界で初めて開発した会社。安全性を考えた結果、Googleと手を組んだのかもしれません。
Androidアプリがインストールできる

Google Playから、必要なアプリの追加ができるのも魅力。普通のナビでこのような機能はありませんので、「これはホントにAndroidだよなぁ」と思った次第。たとえばラジオアプリが必要ならアプリをインストールすればいいわけですし、不要なら削除すればいい。実に合理的です。
もちろん、iPhoneもつなげられる



最後にスマホ連携について。まずはAndroidですが、サクッとBluetoothでつながりまして、端末の電話機能と音楽データが利用できます。USBケーブルを接続しないで、Android Autoが使えるという、不思議な感覚を味わいました。




iPhoneを接続すると、なんとApple CarPlayが起動! Android Autoの上でApple CarPlayが動くみたいなもので、意味はあるのか? というところはおいておいて、つながる事はつながります。ですが、一方で車のエアコン操作ができない、音声認識やルート選択のイマイチさに「こっちを使うことはないな」と思った次第。日本はiPhone王国ですが、ボルボを買ったらAndroidに機種変されることを強くオススメします。
【まとめ】クルマと家と人がシームレスに繋がる便利さ

車両にGoogleアカウントを登録し、家にホームスピーカーがあれば、クルマと家、モバイル端末がシームレスにつながる。これが真のIoTなのかと感動しきり。ゆえにこの後、様々なクルマのインフォテインメントシステムに触れる度に「ボルボの方が全然進んでいる」「ボルボのようなシステムにしてしまえばいいのに」と思うわけです。正直、このインフォテインメントシステムのためだけに、ボルボが欲しくなっているわけです。
「インフォテイメントシステムがよくても、クルマがよくないと意味ないよね」。確かにその通り! ですがボルボはクルマそのもののデキが、とんでもなくよいのです! それは別のお話にしましょう。嗚呼、ボルボが欲しい……。
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