強烈な動力性能に斬新なインテリア
EVサウンドなど驚きの連続!

 メルセデス・ベンツのEVである「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」のハンドルを握る機会を得ました。どんなクルマなのか、その走りはどうなのかをレポートします。


メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE ...の画像はこちら >>
メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+

 今回、試乗したのは「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」というEVです。

これは、メルセデス・ベンツのEV専用ブランド「メルセデスEQ」のモデルのひとつで、昨年9月29日に日本で発売となりました。基本モデルは「EQE 350+」で、「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」は、より高性能なAMGバージョンとなります。また、車格としては「メルセデスEQ」シリーズの「Eクラス」相当となります。メルセデス・ベンツはミドルセダンと呼んでいますが、日本的な目線でいえばアッパーミドルセダンと言っていいでしょう。


メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた
メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた

 ちなみに昨年9月には、同時にもうひとつ上のクラスの「EQS」も発売となりました。どちらも、メルセデス・ベンツ初のEV専用プラットフォームを採用しており、客室を前側に置いたキャブフォワードデザインと、ワン・ボウ(弓)をイメージしたフォルム、シームレスデザインの「センシュアルピュリティ」コンセプトを採用しています。そのため、まぎらわしいことに、「EQE」と「EQS」は顔つきとスタイルがそっくりなのです。


 ただし、よくよく2台を見比べてみると「EQE」の方が全長は短く、トランク部分が小さいというのが2車の違いとなります。具体的に言えば「EQS」の全長5225mmに対して、「EQE」は4955mmとなり、270mmの違いがあります。よりセダンらしい「EQS」に対して、「EQE」は5ドアセダン的なプロポーションになっています。


メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた

 そして、スタンダードの「EQE 350+」と、AMGバージョンの「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」はどう違うのか。エクステリアの違いはフロント周りのデザインとホイールなど、わずかなもの。

一方、パワートレインが大きく異なります。「EQE 350+」は1モーターの後輪駆動で最高出力215kW(292馬力)・最大トルク565Nmなのに対して、「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」は2モーターの4WDで最高出力は460kW(625馬力)・最大トルク950Nm。さらに「RACE START」モード使用すれば、最大505kW(687馬力)・最大トルク1000Nmまでのブーストが可能。スタンダードに比べて、AMGバージョンは2倍以上の出力を誇るのです。


メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた
メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた

 ただし、搭載するリチウムイオンバッテリーはスタンダードもAMGも同じ90.6kW。そのため航続距離は、スタンダードの「EQE 350+」は624km(WLTCモード)に対して、AMGバージョンの「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」は549km(WLTCモード)。パワーがある分、75kmほど航続距離が短くなっているのです。


 ちなみに価格は、「EQE 350+」が1248万円なのに対して、「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」は1922万円。十分に高額ですが、スタンダードに対してAMGの価格が2倍というわけではありません。


スペックもスゴイが中身はもっとスゴイ!
左右141cmの中に収まった巨大スクリーンの衝撃!

 スペック的に驚きの多い「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」ですが、実車に触れるとさらに驚かされました。


 まず、インテリアにびっくりします。全体のレイアウトや6本スポークのステアリングは、それほど珍しいものではありません。しかし、運転席の前からセンターコンソール、そして助手席の前まで、ダッシュボード全体が1枚のワイドスクリーンになっていました。

これはオプションとなる「MBUXハイパースクリーン」と呼ばれるもの。左右141cmのガラスの中に、12.3インチのコクピットディスプレイ、17.7インチの有機ELメディアディスプレイ、そして助手席の前に12.3インチの有機ELフロントディスプレイが備わっています。まるでコンセプトカーのようなディスプレイは圧巻の一言でしょう。


メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた
メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた
メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた

 走らせてみると、また別の驚きがあります。街中を流れに乗って走らせている分には静粛性に優れたEV、しかも上級セダンとしての上品さを感じさせます。どっしりとしており、そして穏やかな所作です。ところが、いざアクセルを深く踏み込めば、AMG版ならではの強烈な加速を見せます。460kW(625馬力)、最大トルク950Nmの加速力は尋常なものではありません。まるで遊園地のジェットコースターのよう。身構えていないと、首が痛くなりそうなほどです。


メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた
メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた
メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた

これがEVへのパラダイムシフトサウンドだ!
メルセデス流EVサウンドが流れる

 ステアリングについている丸いダイヤルでドライブモードを変更することができます。そこで「スポーツ」にして加速すると、加速にあわせて不思議なサウンドが車内に響き渡ります。これが「サウンドエクスペリエンス」というもの。

メルセデスいわく「内燃機関モデルから電気自動車へのパラダイムシフトを耳に聞こえるものとしました」とか。エンジン音ではなく、EVならではの新しい加速サウンドが楽しめるというわけです。


 強烈な加速に、ドライバーの気持ちを高めるEVサウンド。とはいえ「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」がスポーツカーかといえば、そういう印象はありません。車両重量が2540kgもある超ヘビー級ということもあり、どれだけ加速力に優れていようとも、動きそのものはセダンの範疇です。ただし、快適でゴージャスな気分に浸れる高級セダンでありながらも、その上で驚くほどの動力性能を備えている存在は稀有なもの。しかも、モダンさもあわせ持ちます。


メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた
メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた

 EVというだけでなく、驚くほどのモダンさと高級感、静粛性と高い実用性。そして驚異の動力性能。それらすべてを満たす、欲張りな1台が「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+」だったのです。


■関連サイト


筆者紹介:鈴木ケンイチ

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。

国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。


 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。



メルセデス・ベンツのEV「Mercedes-AMG EQE 53」は驚異の運動性能とモダンさを両立させた
編集部おすすめ