◆シトロエンはフランス車メーカーの一角を占める大手
フランスの自動車ブランドは大きく分けて「ルノー」「プジョー」「DS」「シトロエン」の4つ。その中で「シトロエンは乗り心地が良い」という話を耳にします。そこで今回はシトロエンのエントリーモデルにして、日本で人気のBセグメントSUV市場に乗り込んできた「C3 エアクロス」を、9月19日にシングル第8弾を発売するアイドルユニット、純情のアフィリアの寺坂ユミさん(本文ではASCII.jp自動車部のゆみちぃ部長)に試乗していただきました。
ASCII.jp自動車部はフランス車が大好き。会計係の部員S(担当編集)は、コンパクトハッチのプジョー207と208を乗り継いでいますし、雑用係の部員K(写真係で書記、配車担当)も「お金があればアルピーヌ A110が一番欲しい!」と公言してはばかりません。我らのゆみちぃ部長も例にもれず、ルノーに対して「オシャレで可愛いし、なによりご飯がおいしい」と好印象。ご飯がおいしいというのは、カングー試乗会に参加した際、昼食としてオシャレなカフェ飯(ラザニア)が出たから。つくづく胃袋をつかむことの重要性を感じた部員Kです。


冒頭でフランスには4つの自動車ブランドがあるとお話しました。そのうち「プジョー」「DS」「シトロエン」はステランティス N.V.という多国籍自動車製造グループに属しています。このステランティスN.V.には、ほかにフィアット、アルファ・ロメオ、クライスラー、ジープ、オペルなどがあり、生産台数でいえばVW、トヨタ、ルノー・日産・三菱アライアンスに次ぐ世界4位の巨大企業なのです。ちなみにN.V.はオランダ語で株式会社という意味だとか。ドイツ語で企業名の後にA.G.と書くのと似ていますね。
「同じグループなのに、プジョーとDSとシトロエンと3ブランドを擁しているんですか?」と素朴な疑問を抱く部長。もともとプジョーとシトロエンは別の会社で、経営難に陥ったシトロエンを、プジョーが1976年に傘下に収めます。
◆ミニバンっぽいけどSUVの「C3 エアクロス」




C3 エアクロスに話を移しましょう。「SUVに◯◯クロス、と名付けるのは流行っているのかなぁ」と、またもや素朴な疑問を抱く部長。言われてみると、ゆみちぃ部長と同郷の愛知県に本社を置くトヨタも、部員Kが大好きな“青山一丁目の伝説”ホンダも、コンパクトカーベースにSUVにしたモデルにクロスの名を入れていますね。
C3 エアクロスもC3というコンパクトカーをSUVスタイルにしたのかな、と思いきやC3そのものがSUVルックだったりします。ちなみに、C3とC3 エアクロスはどちらも最低地上高が160mmと高め。違いはどこかというと見た目と全高で、C3の1495mmに対してC3 エアクロスは1630mm。ですからSUVというより、ミニミニバンというか、寸詰まりのコロリンとしたプロポーションで、どこか憎めない可愛さがあります。ですが天井にキャリアを取りつけられていてSUVルック。どうしても「自分はSUVなんだ」と主張したいお年頃なのでしょう。
全体を見回し「最近、このグレーっぽい色が流行っているんですね。で、このクルマ、2トーンじゃなくて天井は白の3トーンなんですね」と、まぁ細かいところまでチェックされます。

特徴的なフロントマスク。「へ」の字を上下に並べたようなシグネチャーを上手く取り入れたグリルデザインからつながる細目のヘッドライト。どこか近未来的で、どこかファンシーという不思議な顔立ちに「嫌いじゃないですよ」と女子ウケは良さそう。

「ホイールデザインが変わってますね」と、足元のチェックは欠かさないオシャレ部長。さらにオシャレ部長はアンテナにも注目。「部員Kさんが好きなシャークフィンじゃないですよ! 折れちゃいますよ」と駐車場問題をシッカリとチェックされます。
◆SUVらしく荷室が広くて使い勝手がイイ









ゆみちぃ部長がSUV好きな理由。それは荷室が広いから。Bセグメントのコンパクトカーは足元に及ばない広さで、後席を最も前にスライドさせた状態で520リッター、後席背もたれをすべて倒した状態で1289リッターと文句ナシ。背もたれを倒した時に隙間が生まれる輸入車があったりしますが、C3 エアクロスはそんなことがなく文句ナシ。
一方、自動で開閉するパワーゲートではないこと、12Vアクセサリーソケットがないのはちょっと残念。12Vは後席に用意されているので、見た目はちょっとアレですが、引っ張ってくればいいかなと。ともあれ最近、カメラなどの取材機材がキチンと載るクルマが欲しくて仕方ない部員Kは「シトロエンやるじゃん」とニコニコです。








荷室が広いためか、後席は少し狭い様子。ですが前後スライドとリクライニングが個別にできるのはとても良いところ。サイドシルは比較的浅めですから、お年寄りでも足上げはラクかと思います。USBなどのアメニティーがないのは残念なところですが、サンシェードがあるのはいいところ。そして、お借りした車両にはオプションのパノラミックルーフがついていて開放感満点。
◆シートはソファーのようにフカフカ






運転席まわりをチェックしましょう。ダッシュボードにはシートと同じファブリックが貼られ、明るくカジュアルな雰囲気。「フランス車って、過度な装飾とかないんですね。でも素材感が安っぽくなくてオシャレ」と、ここでもガールズハートをキャッチ。



まずは助手席から。「ダッシュボードに小物トレイがあると、軽自動車っぽいですね」とズバリ。ちなみにスマホが置けるかとおもったのですが、ちょっと奥行きが足りない様子。そんな彼女が一番気になったのは足元にある発煙筒。「足にあたって邪魔です。横にしてほしいです」と、かなり気になった様子。






エアコンダクトの下にナビ画面が置かれているため、前方視界は良好。メーターパネルはオーソドックスな指針式で、中央にインフォテインメントLCDを置くタイプ。水温系、燃料計も指針式なのはイマドキ珍しいかもしれません。ダッシュボードは標準的な面積ですが、中央にスピーカーかマイクかワカラナイ物があるのですが、そこに「HIFI SYSTEM」と書かれているのは、なんかダサいなぁと思ったり。エアコンの温度設定などは、ほかのステランティス系フランス車と同じく、ナビ画面で操作。直感的な操作ができないので、信号待ちでいじるのはちょっと面倒ですね。



センターコンソールのエアコン温度設定がありそうな場所には、パッケージオプションの「グリップコントロール」が用意されていました。これは路面状況に合わせてパワートレインやブレーキを統合制御するもの。使う使わないはともかく、SUVらしい演出と受け取りました。ちなみにC3 エアクロスはFF車で、四駆の本格オフローダーではありません。
◆Apple CarPlayもAndroid Autoも使えるが大型スマホは厳しい


USBまわりをチェックしないと、会計係の部員Sから「お小遣い」が出ないので調べてみましょう。運転席側にType-Aが1つのみ。ワイヤレス充電トレイは標準装備ですが、部員K的には好ましくない横置き仕様。ちょっと小さめで、ケーブル充電すると端子がグギっとなります。




ナビは国産車や高級輸入車と比べると機能は少なめでモッサリ。Apple CarPlayに対応しているので、もっぱらそれを使っていました。ちなみにワイヤレスCarPlayには対応していないようです。AndroidAutoを試そうと思ったのですが、USB Type-Cケーブルが断線していて断念。スミマセン。

機能面もチェックしましょう。バックモニターはアラウンドビューに対応します。ですが、アラウンドビューモニターは最初、車両前方は表示されず、バックをすると次第に出てきます。日本車に慣れた身だと「え?」と思いますが、考えてみれば後ろが見えればいいので問題ありません。他にもパーキングセンサーなどイマドキの装備もキチンとあります。

バックついでに申し上げると、助手席側バックミラーには小さなミラーがついてきます。「これなんですか?」というと、バック時に白線を見るのに便利なもの。「いわれてみると、国産車にもありますよね、こういうの」と感心した様子です。


天井面には大きな室内灯を用意。パノラミックルーフのスイッチも用意されていました。オシャレな女の子はバイザー裏もチェック。跳ね上げ式のコンサバティブなタイプで、フタには駐車券を挟むのに便利なスリットが用意されていました。




エンジンは1.5リットル直4ターボ型で燃料は軽油。つまりディーゼルエンジンで、モーターアシスト等はありません。最高出力120PS/最大トルク300N・mの高出力と、6段のトルコン式ATとの組み合わせにより21.3km/Lを実現しているとのこと。動かしてみると、あまりディーゼルらしい音がせず、普通のエンジンっぽいサウンド。振動も少なめで、「これ、ホントにディーゼルエンジンなの?」とも。もっとディーゼルらしい音がするクルマはゴマンとあります。
◆路面の振動を拾いがちだが乗り心地はかなりイイ!

それでは走らせてみましょう。まずはギアのポジションをPからDに……としたいところですが、これが懐かしのゲート式で不慣れなゆみちぃ部長は四苦八苦。そしてポジションのインジケーターはスマホトレイ近くにあるため、結構見づらかったりします。ですがゲート式の方がバックとドライブの入れ間違えなどは発生しづらいと思うのでいいのかなと。

さらに苦しめたのがパーキングブレーキ。電子式に慣れてしまっているためか、ボタンを押しながら上に少しあげて……という動作を忘れてしまって「解除できません!」と半泣きでした。

悲喜こもごもの思いを乗せて、C3 エアロクロスは発進。「なんか、めちゃくちゃ乗り心地がいいですね!」と感嘆の声をあげるゆみちぃ部長。クルマの中にソファを持ち込んだ、という表現がピッタリで、ドイツ車から乗り換えると、ホッと心が和む座り心地。車内装備と相まってカジュアルリビングという言葉がピッタリ。
ですが、マジックカーペットのような乗り心地かというと、それはちょっと違っていて。盛大にロールするし、存外細かな振動は拾いがち。なかでもハイスピードなコーナーの手前にあるスピードバンプで、角張った衝撃がハンドルやペダルを通じ体に伝わってきます。その振動をシートが癒やしてくれるという雰囲気。これは高速道路を用いた長距離移動ほど効果を発揮。接地感があり、安定度の高い足だから疲れづらいのです。ちなみに風切り音やロードノイズはそれなり、といったところ。


全高の高さはアイレベルの高さにつながり、前方視界は良好。一方、Aピラーは最近の国産車と比べると太めで、それが少し気になるとは部長の弁。「それも強いて言えば、であって、まったく気にならないですよ」というように、原稿のために重箱の隅をツンツンしたら……といったレベルのこと。
ディーゼルエンジンで気になるのはメカノイズやフィーリング。これが実に調律されて、少し前のガソリンエンジンと遜色ないところに驚き。神経を尖らせれば、ゼロ発進時に少しのショックを感じましたが、走り始めたら乗用車フィールそのもの。ややモッサリとした感覚なのは、いわゆるエコモード的な燃調マップによるものと思われます。というのも、スポーツモードにしたら一気に解消されたから。これは意外と楽しいかも!

高速道路に乗ったらクルーズコントロール。欧州車の常で、右手側のステアリングホイールにはなく、指の感覚でポチポチと押すタイプ。つまりボタン配列がわからないと「これどうやって動かすの?」と迷うこと間違いナシ。で、部員Kもゆみちぃ部長も「あれ? あれれ?」で、結局よくわからないまま。


さて、気になる燃費です。今回は街乗りが1/3、残りは高速道路という感じの236.9kmを走行しました。使った軽油は18L。「イマドキ、軽油はリッター143円もするのか……」と燃料高騰に驚きながら計算すると、リッター13.161kmと判明。「おいおい、リッター20km超えという話はどうなってるんだ?」と思われそうですが、これは部員Kがスポーツモードでガンガン踏んで遊んでしまったから。燃費なんて乗る人、乗り方で変わるものです。
◆日常生活の足として最適なクルマ
ガンガン踏んで低燃費走行をした人間がいうのも何ですが、このクルマの本質は、峠を攻めるような走りではなく、日常生活圏でトコトコと走らせたり、友達と楽しくキャンプ場に行ってBBQをして帰ってくるとか、そういう用途にピッタリなのは間違いありません。シトロエンの快適な座り心地に、誰もが満足するでしょう。

普段遣いにちょうどいい車を探されている方に、C3 エアクロスは良き選択肢になりそう。「部員Kさん、相当気に入られていますね」と悪魔のような笑顔をみせるアイドル部長。そうなんです、仕事のクルマとしてC3 エアクロスは、かなり魅力的なのです。「確かにこういう車で仕事の送迎とかしてもらったらうれしいかも」とゆみちぃ部長。マネージャーさん、社用車にシトロエンのC3 エアクロス、いかがですか? 荷物も載りますよ!
最後に価格。シトロエン C3 エアクロスのシャインBlueHDiグレードで372万5000円、上位のシャイン パックBlueHDiが402万3000円。取材したクルマにはオプションが加わって440万2000円! 国産BセグSUVと比べ、プラス150万円といったところで、国産CセグSUVが視野に入る金額です。装備面で「もう少しこうしてほしい」という部分がないわけではありませんし、調べてみるとちょいちょいと値上げされているようです。
確かに「ちょっとお高いなぁ」と思うのですが「これじゃなければダメ」という魅力はしっかりあって、その魅力はプライスレス。シトロエンもいいじゃん! そんな事を思ったのでした
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寺坂ユミ(てらさかゆみ)プロフィール

1月29日愛知県名古屋市生まれ。趣味は映画鑑賞。志倉千代丸と桃井はるこがプロデュースする学院型ガールズ・ボーカルユニット「純情のアフィリア」に10期生として加入。また「カードファイト!! ヴァンガード」の大規模大会におけるアシスタント「VANGIRLS」としても活躍する。運転免許取得してから上京後は一切運転していないが、最近は自動車にも興味を抱く。こだわりが強く興味を抱くとのめりこむタイプであることから、当連載で、お気に入りの1台を探す予定。