今年春に開業した北海道ボールパークFビレッジの新球場は、電動開閉式の屋根を持っておりまして、その屋根の重量は約1万トン。東京タワーが約4000トンだそうですから大変な重さでして、それを25分ほどで開閉させるというのですから誠に大変な技術であります。


 一方、電動開閉式の屋根を持つロードスターRFの開閉時間は13秒ほど。これもオープンカーとすれば結構な速さですが、何より素晴らしいのはルーフの各パーツが動く様の美しさ。それが理由で私はハンコ持って販売店へ出かけたようなものであります。


ロードスターRF 謎の怪奇音を追え

 それと引き換えに、他にはない苦労もございます。新球場も予期せぬ雨が降ると某CS局の中継席が濡れてしまうそうで、機材保守のためクルーが傘を広げるという不思議な光景も見られたのだとか。ロードスターについては言わずもがな。


 でも屋根が開くのは、いいものです。何しろこう意味もなく、ワクワクする。それは球場もクルマも一緒。


ロードスターRF 謎の怪奇音を追え

 5年前に買ったロードスターRFの情報2023、私は四本淑三です。今回の話題の中心といたしますのは、またしても屋根のトラブル。それは納車から3年を過ぎた去年の春、距離にして3万8000キロを過ぎた頃でしょうか。


リアから聞こえてくる「怪奇音」

 ガツン!ドカン!バキン!


 すわ、ショックアブソーバーの取付ネジでも緩んだか。いや、もしかしてアクスルシャフトでもどうにかなったか。そんなヤバそうな打撃音が、路面の凹凸を越えるたび座席後方からステレオで聞こえてくるようになりました。


 足回りをチェックしても異常なし。トランクの三角表示板や工具を降ろしても止まらない。ルーフ可動部の後ろ側、リアウインドウやファストバックが浮いて叩きつけられているのかと思えば、それらしき痕跡もなし。さらには路面から受ける衝撃だけではなく、角を曲がろうとステアリングを切っても音がするようになる。原因不明。謎。何でやねん。


 だから私は長らくこれらの音を「怪奇音」と呼んでおりました。


 そのうちオープンにすると音がしないことに気付きます。ならばクローズド状態のルーフ開閉機構のどこかに音源が潜んでいるはず。

そこでルーフを開閉ながら方々を覗き込んでいるうちに、その異変を発見します。


ロードスターRF 謎の怪奇音を追え

 ロードスターのルーフトップは、ルーフ側に生えた爪が、ウインドスクリーン側のキャッチャーに入って固定する仕組み。その箇所をよーく見てみると。


ロードスターRF 謎の怪奇音を追え

 あらっ、爪の先が毛羽立っとる。


ロードスターRF 謎の怪奇音を追え

 おやっ、キャッチャー側も削れている。


 画像は助手席側ですが、運転席側も状態は同じ。削れたシートは樹脂製で、爪と同じ3本の切り込みが入っています。例えが古くて恐縮ですが、まるでアブドーラ・ザ・ブッチャーのようであります。おそらくルーフ側の爪で削れたのでしょう。そしてシートも全体的に中へ押し込まれたようです。


 見た感じこの樹脂シートの厚さは0.3mm前後。ガタを埋めるスペーサーなのか、摩擦低減目的なのかは分かりませんが、摩耗しているのは明らか。

スペーサーだとすれば、こんなものがコンマ数ミリ削れただけで、あんなドカンバキンとすごい音がするものなのでしょうか?


電動開閉式屋根を支える剛性と誤差

 首を傾げていると、当時まだ建設中だった新球場のニュースで意外な事実を知ります。


 新球場の屋根は24台の台車に乗せられ、レールの上を約130メートル走行して開閉する仕組み。1台約40トンという台車の寸法は、許容誤差は1/100ミリもないという高精度なものだそうです。誤差より小さければ他の台車に荷重がかかる。逆に大きければその台車が過大な荷重を受ける。そうしてバランスが崩れるとスムースに動かないのだとか。


ロードスターRF 謎の怪奇音を追え

 巨大な構造物なので設計精度もそれなりかと思いきや、髪の毛1本の誤差もないとは驚きです。精度を維持するために台車の剛性もすごいことになっているはず。


 顧みるにロードスターRFのルーフを支える車体剛性なんてものは、もう笑うしかないようなものであります。だからルーフの造りも大雑把なものだろう。なんて考えでいましたが、もしもコンマ数ミリの樹脂シートがスペーサーの役を果たしているのなら、その程度の差も問題になるということであります。


ロードスターRF 謎の怪奇音を追え

 大雑把なのか精密なのかよく分からなくなってきましたが、その原因を特定するために試してみました。

削れた厚みを埋める何かを。


 この怪奇音大作戦の続きはまた次回。そして、ここまで読んで貴方のロードスターにも同じことが起きているなら、まずディーラーへ。

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