昨年8月23日にフルモデルチェンジしたトヨタのミニバン「シエンタ」は、若い夫婦を中心に売れまくっているのだとか。「そういえば取材していないね」と、お借りする運びとなったのですが……。色々なことが重なり、今回は「初めて日本の道を運転する」という“超”ペーパードライバーに取材をお願いすることになりました。果たして家族に優しいクルマは、“超”ペーパードライバーにも優しいクルマなのでしょうか?
台湾で免許を取りました!
日本の道を走るの、今日が初めてです!
アイドルユニット「純情のアフィリア」の寺坂ユミさんを、ASCII.jp自動車部のゆみちぃ部長としてお迎えし、様々な車に乗っていただこうという当企画。ですが、今回は寺坂さんではなく、後輩の皐月ユナさんに出演を依頼。ゆみちぃ部長に合わせて、ゆなちぃ臨時部長のご登場となりました。
コトの発端は、当初取材を予定していた日の2週間前に寺坂さんの腰に激痛が! 診断の結果、椎間板ヘルニアとのことで出演がドクターストップとなってしまったのです。それ自体は「仕方ないよね」の話なのですが、問題は車両の手配が終わっているということ。すぐさまマネージャーさんに「メンバーで免許を持っている方をご紹介頂けませんか?」と打診。「います。大丈夫です」とご紹介いただいたのが、本稿のヒロインである皐月ユナさんです。

皐月ユナさんは、今年3月「純情のアフィリア」に加入さればかりの“超”大型新人さん。何で“超”大型かと申しますと、高校時代にK-POPデビューを夢見て韓国へ単身芸能留学された経験があるのです! 部員KはK-POPに明るくないのですが、かの国のアイドルさんたちはダンスがすごいということだけは知っています。つまり加入時点でダンスが完璧ウーマン! さらに台湾の大学を卒業されたというから驚き。日本語、韓国語、中国語が話せるだけでもすごいのに、歌って踊れるパーフェクトヒューマンなのです。これを“超”大型新人と言わずして何といいましょう。

ゆなちぃ臨時部長と「はじめまして」のごあいさつしたあと、「運転免許はお持ちですか?」と質問。「持ってます」というので、「運転経験はありますか?」と尋ねたところ、これが「日本では運転したことはありません」という想定外の答え!
「運転免許は台湾で取りました。その時に数度、運転したことはあるのですが……。帰国した時に、日本の免許に書き換えました」。確かに「メンバーで免許を持っている方」でお願いしましたし、ペーパードライバーであることは予想していました。ですがハンドルの位置も車線も反対側の国で免許を取られているというのは驚きです。
ちなみにご実家のクルマは、トヨタの「WISH」なのだそうで、ずいぶん昔からあるとのこと。WISHはシエンタのご先祖様みたいなクルマ。「最近のクルマって、自動運転とかすごいんですよね。ニュースで見ました!」という、ゆなちぃ臨時部長の言葉を聞いて、部員Kは思いました。「これは、いつも通りのクルマ試乗に加えて、イマドキのクルマの機能をシエンタで体験していただこう」と。前置きが長くなりましたが、こうして取材がスタートしたのです。
◆コンパクトなのに余裕のある車内



コンパクトミニバンであるシエンタのボディーサイズは、全長4260×全幅1695×全高1715mm。トヨタのコンパクトカー、ヤリスと全幅は同じで、長さと高さを少しストレッチしたという印象です。いわゆる「5ナンバーサイズ」のクルマですから日本の道にピッタリ。ここで部員Sが登場すると、開口一番「小さいっスね! これで本当に7人乗れるんですか?」と驚いた表情。ゆなちぃ臨時部長はというと「これでも大きいです」と不安な顔色……。

クルマは見た目が重要、ということで感想を尋ねると「優しい感じがしますね。愛着がわきますね」と好印象。クルマの印象は色によるところがあり、試乗車の色はCMやカタログで見かけるアーバンカーキ。カーキというとミリタリーな印象を受けそうですが、カーキというワリには明るめで「思ったより綺麗ですね」と笑顔をみせます。
このボディーカラーは好評のようで、無難なホワイトよりも台数が出ているのだそう。都内を走ると細かな砂ホコリで汚れるのですが、この色は汚れが目立ちにくいようです。


そのままボンネットを開けると、パワーユニットが姿を現します。シエンタにはガソリン仕様車とハイブリッド仕様車が用意され、今回試乗するのはハイブリッドZというグレード。エンジンは1.5L 直列3気筒で、最高出力91PS/5500rpmと最大トルク120N・m/3800-4800rpmを発生。ちなみに先代は74PS/111N・mですので、パワーアップしています。
これに80PSと141N・mを生み出すモーターが組み合わさって、合計したシステム最高出力も先代の100PSから116PSにアップしています。しかも燃費もさらに向上しており、試乗車の7人乗り(FWD)のWLTCモード燃費は、28.2km/Lへと大幅に引き上げられています。





ミニバンといえば荷物がどれだけ載るのか、というのが気になるところ。大きなバックドアを開けると「あれ?」というほどの狭さ。その奥行きは、スーパーハイトワゴンの軽自動車よりも狭かったりします。試しに部員Kのバックパックタイプのカメラバッグを置いたところ、はみ出ているではありませんか。



◆3列目シートの収納方法に驚き!
話を戻して。「もちろん倒せるんですよね」と部員S。ということで、ゆなちぃ臨時部長に挑戦してもらいました。まず2列目シートを前方へスライドさせ、背もたれのノブを引くと、背もたれが座面側について、さらにシート全体が前に倒れます。この時点で「なんですかコレは!」と驚いた表情をみせます。イイですね、実に新鮮です!









次に3列目シートの背もたれを倒します。そして荷室側の座面下にみえるヒモを引っ張ると、シートが2列目シートの下側に移動するではありませんか! これには誰もが「ええええ?」と驚き。そして2列目シートを元の位置に戻せばヤリスクロスも裸足で逃げ出すような広い荷室が誕生します。「普段はこの状態がイイですね。これより大きな荷物を載せる時は、2列目シートを運転席・助手席側で固定できるみたいなので、もう言うことありません!」。ゆなちぃ臨時部長、実に冴えています!
◆後席は2列目が快適、3列目は子ども向けかも




まず、3列目シートからチェックしてみましょう。乗降は先ほどのように2列目シートを前に倒して入ります。よって3列目の乗降時、2列目の人はいちいち降りなければならず、このあたりの使い勝手は仕方のないところ。ということで着座されたゆなちぃ臨時部長。「これは……」と言葉を失われます。2列目シートを思いっきり前に移動させれば、おみ足を入れることができます。「でも、これはどちらかというと、お子様向けですね」と鋭い指摘。








逆に快適なのが2列目。「シートを一番前に出しても足元が広々ですね」と大満足。さらに「運転席側の背もたれには、USBソケットがあるんですね。イイですね」と装備面でも満足。さらに「プライバシーシェードもありますね」と快適空間ぶりに更に笑顔をみせます。


さらに「普通、クルマって真ん中が盛り上がってませんか? シエンタの床、フラットなんですね」と驚いた様子。さらに「運転席と助手席の間に何もないから、車内で移動できそう!」と挑戦。「これはすごいですね。たとえば前列にお母さん、後列にお子さんという時にすごく便利かも」。さすがミニバン、家族に優しいクルマです。










窓が広く死角が少ない運転席。乗降性も良好でラクラクです。「ウインカーって、右ですか? 左ですか?」というゆなちぃ臨時部長にとって、イマドキのクルマはまさに未知数そのもの。シフトモードセレクターひとつとっても「これ、どうなっているんですか」という感じだったりします。

部員たちが驚いたのは、パーキングブレーキがフット式だったこと。最初クルマをお借りした時、電子式だと思い込んでいたところ、まさのフット式で「え? イマドキ?」と思わず口走ってしまったことを正直に申し上げます。とはいえ、ライバル車にあたるHondaのフリードもフット式だったので、このパッケージのクルマはそうなのかもしれません。

「これ何ですか?」と指した先にあるのはSOSボタン。「事故とか何かあったときに押すとお助けマンにつながるんですよ」とお伝えすると「そんなことができるんですか!」と驚いた様子。このボタンは煽り運転とかされた時に使われる方が多いと聞きますが、台湾には煽り運転とかないのかなぁ? とか思ったり。
インフォテインメントは最近のトヨタ車でよく見かけるシステムで、クラウンもレクサスも基本的には同じものが搭載されています。このシステムは日本車の中では音声認識のデキがよいものです。では、音声で目的地を入力してみましょう。ステアリングにあるマイクボタンを押して(またはヘイ、トヨタと言って)エージェントを起動。「東京タワーへ連れって」と音声入力。
するとキチンと認識してくれるではありませんか。「どうです! イマドキのクルマはすごいでしょ!」とドヤる部員Kですが、イマドキの子は「これ、スマホでもできますよね」とイマイチ反応が薄めでした。

最近のトヨタのハイブリッドカーにはAC100Vアウトレットが用意されています。「え? 家電が使えるんですか?」と、またまた驚きの声。クルマの中でドライヤーとかが使える時代なんですよ! ハンドルヒーターやシートヒーターも用意されているのですが、ボタンの位置が下すぎて使いづらいかもしれません。
◆超初心者でも運転できる懐の深さ

ナビに目的地を入力したところで、クルマを動かしてみましょう。おっかなびっくりのゆなちぃ臨時部長。言葉数少なく真剣そのものです。助手席に乗る部員Sはヒヤヒヤで、教習所の指導員気分です。
初めてクルマを運転しようとすると、車幅感覚がつかめないもの。当然車線からはみ出ます。ですがハンドルがググっと動いて戻そうとするではありませんか。「な、なんですかコレ!」と驚きの声。「でも、これなら車線をはみ出さないかも」というわけで、車線監視機能は初心者にとって実にうれしい機能のよう。「いまのクルマ、こういう機能があるんですね。台湾で乗った教習車やレンタカーにはありませんでした」と感心しきりです。
柔らかで軽快な乗り味で、その操作は軽やかの一言。運転の手応えであったり、ミニバンのノアのような接地感とは程遠いのですが、逆にそれらのクルマでは得られない機敏さが面白い! クルマが軽やかなのか、ユナさんのココロも弾んで楽しそうです。

見晴らしのよい視界もシエンタの魅力。いわゆる死角が少ないというわけで、それもまた運転しやすそう。ウインカーとワイパーを間違えながらも、キッチリと右左折。
高速道路はちょっと怖いということで、ステアリングをスタッフに交代。ユナさんは後席に座ってのくつろぎタイムです。「このクルマ、とても乗り心地がよいですね」と感嘆。後席に人を乗せることが多い人に、このクルマは適しているかも。

目的地に到着。到着したらクルマを車庫に入れなければなりません。「車庫入れできますか?」「ちょっと苦手です」というわけで、シフトレバーの横にあるハンドルマークの上にPと書かれたボタンを押してくださいと部員K。そして部員Kが画面を少しだけ操作し、「ハンドルに手を添えるようにして、ブレーキペダルから足を離してください」という指示に従うユナさん。すると……。
ハンドルがグルグルっと動き、クルマが勝手に動き始めます「なんですか! なんなんですか?」。ユナさんはこの日イチバンの驚きの声。「わわっ! わわっ!」っと奇声をあげているうちに、車庫入れは終了。「私が車庫入れするより早いし、なによりバッチリです!」。すごいのは、停止したらシフトがPポジションになっているということ。あとはパーキングブレーキを踏んでクルマの電源をオフにすれば降車できます。
「これ、楽しいです。もう1回やってもいいですか?」。というわけで車庫入れ支援にハマったユナさんは、都合4回、車庫入れをしたのでした。

「日本のクルマってすごいですね」と、改めて感嘆の声。そして「シエンタは取り回しがよいのに、荷物がいっぱい載るし、7人も乗れるし、いいですね」と感心しきり。「このクルマ、おいくらするんですか? え、300万円?」と、普段聞きなれない金額には少し驚かれていましたが、「ほかのクルマに比べるとお安いんですよね?」とニッコリ。普段、色々なクルマに触れているASCII.jp自動車部員達も「これで300万円は安いなあ。荷物を運ぶ、人を運ぶ、ということだけを考えたら、これで十分だね」というわけで、シエンタは実にお買い得なクルマといえそうです。
「運転楽しかったです。取材もすごくおもしろかったです! ユミさんはいつも、こんな取材をされているんですか? いいなぁ。私、家のWISHで練習してきます!」というように、ゆなちぃ臨時部長はやる気をみせていたのでした。ひょっとしたら、部長の座を狙っているのかも。恐ろしい子です……。

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