ASCII.jpでは、ほとんど取り上げていなかったボルボ。「名前は知っているし、見たことはあるけれど、乗ったことないんですよ」という新 唯(あらた・ゆい)さんとともに、XC60のPHEVモデル「XC60 リチャージ・アルティメット T6」を試乗しました。
数あるクルマからあえてボルボを選ぶ理由
これは筆者の周りだけかもしれませんが、ボルボに乗るカメラマンって多いような気がします。彼らにボルボを選んだ理由を尋ねると「師匠が乗っていた」とか「先輩から“ボルボに乗れたら一人前”と言われた」なのだとか。さらに口を揃えて「ボルボはぶつけられても壊れない」なのだそう。なら事故ったことがあるのか? というと「あるわけない」というわけで、この点に関しては真偽不明……。
そんなボルボは、ドイツ御三家たちと価格は大きく変わらなかったりします。ですから「ボルボでなければダメなんだ―――」という魅力があるのか? というのが、今回の取材の根幹になります。そこで、今回はボルボのラインアップの中で上位に位置するXC60のPHEVモデルをチョイスしてみました。



ボディーサイズは全長4710×全幅1915×全高1660mm、ホイールベースは2865mmで車体重1710kgと立派なラージサイズ。「大きいですね」と唯さん。扱いづらさはないのですが、これ以上大きくなると……。筆者の経験上、車幅1.95m、ホイールベース3mを超えるクルマは、日本の道には大きすぎます。

間近でボルボを見た唯さんは「上品でいいですね。無駄なラインがない」と称賛。


パワートレインは最高出力253PSの2L直4ターボエンジンと、前後モーターの組合せ。そう、フロントはエンジンとモーター、リアはモーターで駆動する四輪駆動車なのです。ちなみに最高出力はフロントモーターが52PS、リアモーターが107PSで、トランスミッションは8速ATとのこと。

気になるバッテリー容量は18.8kWhで、EVモードでの航続距離は81kmが公称値。充電はACのみで、急速充電には対応していません。このあたりは輸入車のPHEVモデルでは、ほぼ共通した仕様です。




ラゲッジをチェック。当然ながら十二分な容量があり、不満ナシ。素晴らしいのは使い勝手で、ロールスクリーンタイプのプライバシーシェードを上に上げることができるということ。ボードタイプでは当たり前なのですが、ロールスクリーンタイプでこのような機構は見たことがありませんでした。

荷室は二重床になっており、あけてみるとレスキューキットが用意されていました。



装備面に目を向けると、ポータブルバッテリーなどを充電するのに便利な12Vのアクセサリーソケットも用意されているのはうれしいところ。そして驚いたのは後輪のみ車高を下げる機構があり、大きな荷物を積載する際にはとても便利そうです。「これはすごいですね!」と唯さんも感嘆の声をあげます。




試乗車の荷室には、2つのバッグを発見。興味本位で開けてみると、1つはACの充電ケーブル。あと1つは? というと、万が一の時の救急キット。これが実にオシャレで「ボルボを買ったら絶対にコレ欲しい!」と唯さん。こういうアイテムって必要なのはわかっているのですが、無骨なデザインが多い中、さすが北欧デザインです。
ホワイトレザーで質感は最高!


後席をチェックしましょう。ホワイトレザー至上主義者の唯さん的に、「イイです……。実にイイです……」と革の質感だけで合格点。



天井には大型のグラスルーフが設けられ解放感もたっぷり。アメニティに目を向けると、シートヒーターにUSB Type-Cの充電ポートも備えられ、これまた文句はありません。「室内がすごくクリーンでシンプルで上質。とてもいいです」と太鼓判の唯さん。




運転席に目を向けると、さらに好印象。最近流行りのセンターコンソールが盛り上がったコクピット感の強いレイアウトなのですが、シンプルなデザインゆえ圧迫感やマニアックなところはありません。驚くのはボタン類が極端に少ないというところ。操作のほとんどは中央の大型タッチディスプレイで行なうという割り切りっぷりで、エアコンの温度調整もここです。


アクセルペダルはオルガン式。




センターコンソールのリッドを開くと、ドリンクホルダーとアクセサリーソケット、スマホのワイヤレス充電パッドが姿を現します。スマホは6.7型くらいのモデルまでなら、すんなり納めることができそう。アームレストを開くとUSBのType-Cが1ポート姿をあらわします。2ポートは欲しいな、というのが個人的に思いました。


インフォテインメントはGoogleと共同開発したもので、基本的にはAndroidそのものといったところ。操作性は良好ですし、なにより音声認識が、実に神がかっていますし、完成度のレベルが違いすぎます! その考えの先にあるのは、運転中にボタン操作をしなくてもよくなるということ。運転中に「OK! Google」で操作できることに感動していたのですが、唯さんはあまり興味を示してくれないようです……。


ナビゲーションはGoogleマップの縦画面表示で、まさにスマホライク。メーターパネルにもルート等が表示されるので、実に快適です。
それでは試乗してみることにしましょう。
走りの楽しさよりも安心感を重視した乗り心地

「すごくスムーズで静か。そして乗り心地がよいですね」と唯さん。素直なハンドリング、適度に柔らかな足回り、安心感を覚える剛体ボディー……。とにかく、あらゆる点で次元が高く「ボルボって、こんなにイイのか!」と感嘆しきり。特筆すべき点がない、というよりもすべてが特筆すべき、というほどの完成度の高さで、大袈裟ではなく乗用車の理想形を見たような気分。

「すごくパワフルなのですが、それをひけらかすようなことがないんですよ」というように、まさにオトナの乗り物。なんと表現すればいいのか言葉に苦しんでいるのですが、少し柔らかなBMW、というのが最も伝わりやすい表現かなと。「地面にシッカリと足がついた安心感がありますね。剛体感もすごい。とにかくイイクルマに乗っているというのが、運転していても、助手席にいても、後席にいても伝わります」。
バッテリー残量がある限り、走行のほとんどがモータードライブ。それゆえに室内は静か。
ワンペダル動作にも対応しており、完全停止までアクセルペダルでできるため、慣れればかなりスムーズでエネルギーマネジメントの高い走りが可能。「快適な室内空間に、気持ちのよい走り。すごいですねボルボって」まったくその通りです。

「ボルボって初めて乗ったのですが、ホントにイイクルマですね。これは思わぬ掘り出し物です」という唯さん。「色々なクルマに乗ってきましたけれど、これは上位に入るほどにイイと思いました」と、かなり気に入られたようでした。なんかボルボと唯さん、お似合いかも。

冒頭でボルボに乗るカメラマンの話をしました。実はカメラマンのクルマは、編集者やタレントを乗せて取材先(ロケ先)まで行く場合があります。不特定の人を乗せる時に「乗り心地がよい」「居心地のよい空間」でありながら「嫌味ではない」というのは重要な要素。確かにジャーマン・スリーは快適なクルマなのですが、一方、人によっては嫌味にとられかねないのです。
なるほど、カメラマンがボルボを選ぶ理由は、そんな「嫌味にとられず、それでいて極上の乗り心地を提供する」からなのかもしれません。
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モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添えた。