新車を買った情報2024、結婚なんて一度すれば十分だと思っている私は四本淑三です。本日の話題の中心といたしますのは自転車のサイクルコンピュータ。

略してサイコン。まったく懲りない野郎でございます。


 サイコンは自転車の走行中に計測される速度、位置情報、心拍、クランク回転数、ペダリングパワーのようなデータを示し記録する、小型の液晶付きディバイスです。特に最近のものなんかは蓄積されたデータを分析して現在のコンディションを評価し、先々のトレーニングスケジュールまで管理してくれるというのですから、まあ実に気の利いたものです。


 おまけにログはスマホ経由かWi-Fiでクラウドに自動で転送され、充電と設定以外は手間要らず。思い起こせば私が使っていた21世紀初頭頃のサイコンはRS232Cで転送、収集したデータは単に眺めるだけというものでしたから隔世の感がありますな。


 ただフルにログを取るとなると結構なお値段になってしまうのが困ったところ。コンディションの評価には、クランクやペダルに仕込んであるパワーメーター、腕や胸に巻く心拍センサーをANT+やBluetoothでつないで使う必要があって、こうしたセンサーは安くても一式5万円くらいはいたします。


 それでも効率の良い自転車のトレーニングには欠かせないものであり、日ごろのサイクリングのお供としても楽しいものであります。ただ、これには一定のアンチが存在します。


 私は自由な人間だ! データに縛られて走るなんて真っ平ごめんだ!


 はい、私がそのアンチでございました。


私はなぜサイコンを捨てたのか

 最初のうちは自身の能力向上が即座に値としてあらわれてくるから面白いんであります。データによる身体の外部化とそこから再構築される速度装置としての自分を俯瞰でとらえる悦楽。

そうした何だか自分がカッコよいものに変身したような、サイボーグ化願望とでも言えるものを満たし、次に走るモチベーションを支えてくれる。それが良いときのサイコンであります。


 ところが徐々に伸び代もなくなり、データも頭打ちになってくる。時間をかけて向上したパフォーマンスも3日も乗らなければあからさまに低下し、1ヵ月も放っておこうものなら元の木阿弥、振り出しに戻る。そんな現実を目の前に叩き付けるのも、またサイコンの所業であります。ダイエット中に食べすぎた翌朝のヘルスメーターみたいなものですな。


 高いパフォーマンスを維持するには、雨の日も風の日もローラー踏んででも乗り続けるしかない。でもそんな非人間的な努力はやってらんねえ。


 それで一度はサイコンを捨てた私ですが、昨年久々にロードバイクを購入したついでに新調したところ、ちょっと意味の違うものになっていたんですな。家まで死なずに辿り着くための安全装置。私はそう思って使っております。2度目のサイコン、決して悪くはございません。


「行きは良い良い、帰りは怖い」を防ぐリアルタイムスタミナ

ガーミンのサイコンに私の何が分かるというのか

 今回買ったのは「Edge 540」。ガーミンのサイコンEdgeシリーズ最廉価版という位置付けで、上位機種のようにタッチスクリーンもなければ液晶画面も狭小、ソーラー給電機能もなし。それでも希望小売価格は5万4800円と、さすがのガーミン価格であります。


 今時は中華ブランドで機能的にも十分なものが半額ほどで買えるというのに、それでもお高いガーミンにした理由がいくつかあります。


ガーミンのサイコンに私の何が分かるというのか

 そのうちの1つは「リアルタイムスタミナ」機能で、これは例えて言うなら自動車の燃費計のようなもの。瞬間燃費と燃料タンクの残量から航続距離を計算し、燃料が底をつきそうになるとガス欠までのカウントダウンを始める。あれと同じことを人の体力についてやってくれるわけであります。


 なぜそんな機能が必要かといえば、久しぶりのロードバイクでどこまで走れるかか不安だから。なにしろ最近のロードバイクは速いし快適です。「おっ、これはもっと行けるぞ!うははは」と調子に乗って踏んでいるうちに気がつけばヘロヘロ。これでお家に帰れるのかオレ。そんなガス欠状態に陥る前に航続距離のイメージができていれば、ペースを落としたり、途中で引き返すという判断もできるはずです。


人はハイブリッドカーに近い?

ガーミンのサイコンに私の何が分かるというのか

 そのリアルタイムスタミナ機能が示すのは「推定距離(「推定時間」の表示も可)」「スタミナ」「潜在的なスタミナ」の3つ。


 先ほどの自動車の例で言うならハイブリッドカーの燃費計に近いかもしれません。

推定距離はそのまま航続距離、スタミナは駆動用バッテリーの残量、潜在的なスタミナはタンクに入っているガソリンの残量というイメージです。


 人間は食べものを分解してエネルギーとして身体に蓄え、筋肉を伸縮させてペダルを踏む。かたやエンジンを回して発電した電力を蓄え、モーターを回して走るのがハイブリッドカー。燃料を取り出しやすいエネルギーに変換して蓄えるところ、負荷によってガソリンと電力、脂肪とグリコーゲンを使い分けるところも似ています。


ガーミンのサイコンに私の何が分かるというのか

 では実際に、パワー、心拍、ケイデンス(クランク回転数)、速度と同時にモニターしながら走ってみましょう。


 走り始めてしばらくは搭乗者の燃費でも調べているのか、推定距離は「計算中」と表示されます。そして「スタミナ」と「潜在的スタミナ」は100%からスタート。満タンの状態です。


休んでチャージするとスタミナは復活する

ガーミンのサイコンに私の何が分かるというのか

 そして計算を終えたサイコンが示した推定距離は46km。確かにガス欠にならず楽して走れる距離はこれくらい。いかにも私のトレーニング不足を物語っているわけですが仕方ありません。大人しく有酸素域の楽なペースで走っていれば「スタミナ」と「潜在的スタミナ」は同じペースで減っていきます。


ガーミンのサイコンに私の何が分かるというのか

 ところが急加速したり、無理して高い速度で走り続けると「スタミナ」はみるみる落ちてゆき、高速道路を飛ばすEVもかくやという勢いで「推定距離」も減っていきます。そして「潜在的なスタミナ」もそれまでより早いペースで減っている。


 先ほどのハイブリッドカーに例えるなら、バッテリー消費が早く充電が追いつかないため、エンジンをブン回して燃費が悪化している状態です。このペースで走り続けると、やがてスタミナは0%、推定距離も0kmを割り込んでしまいます。クルマであればスローダウン。人の場合は「もーやだ疲れた死ぬ」と息を切らしてぼやき倒すしかない状態です。


ガーミンのサイコンに私の何が分かるというのか

 そこでしばらく足を休めるか、軽く流していると「スタミナ」が徐々にチャージされ、「潜在的なスタミナ」に近い値まで復活していきます。これを繰り返しているうちに、楽して走れるペースと距離が掴めるというわけです。


 と同時に、なんとかして航続距離を伸ばしたい欲も出てくる。あと10km余計に走れたらあそこの寿司食って帰れるぞとかなんとか、具体的な的地を設定できてしまうから。おかげで金輪際やらんと誓ったトレーニングのメニューをガーミン様にお願いして立ててもらったりなんかして、まあ何というか元の木阿弥。まったく懲りない野郎でございます。


 それではまた。

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