ついにGT3マシンに乗る冨林選手
2024年のSUPER GTが4月13日、岡山国際サーキットで開幕。グランツーリスモ世界王者の冨林勇佑は今年もGT300クラスにエントリーしているが、チームは9号車「PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG」に移籍。決勝では不運なトラブルに見舞われてGT300クラス21位に終わるも、予選で速さを見せるなど、存在感あふれる走りを披露した。
昨年までマザーシャシーの86MCを使う5号車「マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号」で戦った冨林。デビューイヤーには表彰台を獲得するなど活躍を見せた。松井孝允と組んだ昨年は懸命の走りをみせるも、トラブルに泣かされることが多く、ノーポイントでシーズンを終えた。

迎えた3年目の今年は、Mercedes-AMG GT3を使う「PACIFIC RACING TEAM」に移籍。阪口亮平とコンビを組み、これまでとは違うGT3マシンでSUPER GTに臨む。車両特性は大幅に異なるものの、Mercedes-AMG GT3は冨林のルーツでもあるeスポーツ界では、様々なシミュレーターソフトに実装されているマシン。さらにスーパー耐久やGR86/BRZカップで培ってきた経験もプラスして、今シーズン中の表彰台、そして優勝を目指す。

開幕前のテストでは雨に見舞われるなど、安定したコンディションで走り込むことはできなかったが、Mercedes-AMG GT3のポテンシャルを体感し、かなり手応えを掴んでいる様子だった冨林。注目の開幕ラウンドを迎えた。
予選では会心のアタックで13番グリッドに
今回の舞台となる岡山国際サーキットは、例年雨が降るなど寒さが厳しい1戦として知られている。ところが今回は予選日から気温25度に迫る夏ようなコンディションとなった。

またSUPER GTでは、今年から予選方式が変更となり、全社が順位に関わらずQ1とQ2に出走。その合算タイムでグリッドを決める。
その中で9号車はQ1Bグループに出走。阪口がアタックを担当したが、トップ8にわずかに届かず10番手。Q2は下位グループに回されることとなった。昨年までならQ1でノックアウトとなりQ2の出番はないのだが、今年の新ルールでは全車がQ2を走ることになるため、冨林にもアタックするチャンスが巡ってくる。その状況下で、グランツーリスモ世界王者が意地をみせた。


Q2の下位グループ予選で冨林は渾身の走りを披露。見事トップタイムを記録した。これで2人合わせて2分53秒439となった。今年の新予選ルールではQ2上位グループの13~16位(下4台)とQ2下位グループの1~4位(上4台)は合算タイム順で再度順位が並べ直される。冨林の頑張りもあり、この対象8台の中でトップになったことで、9号車は下位グループで最上位の13番グリッドを勝ち取った。
なお、新方式の予選でのポールポジションは、スキのない走りで65号車「LEON PYRAMID AMG」が獲得した。


決勝レースはいきなりパンクが冨林を襲う
日曜日の決勝レースはさらに暑さが厳しい1日となった。スタート時点で気温26度、路面温度は39度まで上昇。9号車は冨林がスタートドライバーを担当し、ポイント獲得を目指してスタートを切った。

レースは1周目からGT500クラスでアクシデントが続出する波乱の展開となり、いきなりセーフティカーが導入された。その時、力なくピットに戻る9号車が画面に映し出された。右リヤタイヤがパンクし、ホイールのリムから外れしまっている状態だった。


「誰とも接触していなくて……おそらく(他車のアクシデントで飛散した)破片を踏んだんじゃないか」と冨林。
「決勝に向けてセッティングを大幅に変えたんですけど、1周目の途中から妙に砕ける動きが出ていて、セットを変えた影響かな? と思っていたんですけど、コの字(リボルバーコーナー、パイパーコーナー)を抜けたら真っ直ぐ走らなくなりました」と状況を語った。


チームはすぐにタイヤを変えて9号車を送り出す。幸いセーフティーカーが出たことで大幅なタイムロスはリセットすることができたものの、ピットレーンオープンの指示が出る前に緊急ピットインをしたこともあり、60秒のペナルティストップを受け、勝負権を失った。


それでも冨林は諦めずに周回を重ね、47周目にピットイン。最後は阪口がしっかりとゴールまでマシンを運び、トップから2周遅れの21位でチェッカーを受けた。
「すごく良くしてくれて楽しいチームですし、戦闘力も底上げされているなと感じていいます。予選では下位グループに回ってしまいましたけど、速さは示せました。決勝を含めて、今回はいろいろ試せたし、速さは証明できたと思うので、とにかく次に繋がるレースにはなったとは思います」と冨林。
すべての歯車が噛み合えばトップ争いができるというポテンシャルを感じているだけに、最後は「ちょっと悔しいですね」と本音が漏れていた。

今回は残念な結果となったが「流れが噛み合わない部分がありましたけど、シーズン中にどこかで絶対勝てるチャンスはあると思います。本当にランキングを意識できるようなチームだと思っています。僕自身もAMGに対して理解が深まった日でした」と、今後に向けて大きな収穫があったのは間違いなさそうだ。
これまでとは一味違う冨林の走りがSUPER GTで見られるだろう。

2024年の開幕戦を制したのは、終始レースを支配し独自のペースで走り続けた2号車「muta Racing GR86 GT」だった。


真夏の暑さとなった開幕戦は、au TOM'S GR Supraが圧勝!
一方、GT500クラスでは新型シビックTYPE Rをベースにした「CIVIC TYPE R-GT」が参戦を開始したほか、4人のドライバーがGT300クラスからステップアップするなど、新しい勢力図が形成されそうな予感があった。


そんな中で迎えた開幕戦は、フタを開ければ昨年のチャンピオンチームである36号車「au TOM'S GR Supra」がほかを寄せつけない走りをみせ、ポールトゥウィンを成し遂げた。

ドライバー体制面では、昨年SUPER GTとスーパーフォーミュラで二冠を達成した宮田莉朋が今年ヨーロッパを拠点に活動し、ヨーロピアン・ル・マンシリーズとFIA F2に挑戦。坪井 翔の新たな相方として山下健太を迎え入れた。

30周目を過ぎてライバルが逆転を狙ってピットストップをしたため、36号車も合わせる形で予定より早くピットイン。これにより路面温度40度を超える状況下で山下が長めのスティントを担当することになったが、前半に坪井が築いた10秒リードを活用してトップを死守。最後まで危なげない走りで、優勝を飾った。
2位には39号車「DENSO KOBELCO SARD GR Supra」(関口雄飛/中山雄一)、3位には100号車「STANLEY CIVIC TYPE R-GT」(山本尚貴/牧野任祐)が入り、ニッサン勢では23号車「MOTUL AUTECH Z」(千代勝正/ロニー・クインタレッリ)の5位が最上位となった。

今年もauがメインスポンサーを務める36号車は、昨年の第7戦オートポリスから年をまたいで3連勝という快挙。これに対して坪井は「3連勝はSUPER GTでできることじゃないので、チームと相方である山下選手とみんなの力で勝ち取った勝利だと思います。すごく良かったです。幸先いいスタートが切れて次戦では(サクセスウェイトで)重くなりますが、36号車は長いレース(第2戦富士は3時間レース)で強いので、なおさら追い風なのかなと思います。開幕2連勝を目指したいと思います」と次戦に向けても前向きなコメントをした。
山下も「本当に内容的にもいいレースで、チームにも坪井選手にも感謝しています。自分のスティントは坪井選手が10秒くらいの差を築いてくれたこともあり、わりと余裕をもって走ることができました」とレースを振り返った。
今年から名称が変わったレースアンバサダーのみなさん



















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