アイドルグループ「純情のアフィリア」の寺坂ユミさんを、ASCII.jp自動車部のゆみちぃ部長として迎えての自動車試乗企画も3年目を迎えました。最初に乗ったのは、N-BOXとeKクロスという2台の軽スーパーハイトワゴンでした(日本一売れている理由を知るために、運転初心者・寺坂ユミがHonda「N-BOX Custom」と「eKクロス スペース」に試乗)。
あの頃は「私は軽自動車で十分です」と言いながらも、「いつかはベンツに乗ってみたい」と答えていたのを、今も覚えています。というわけで、ついにその日が来ました。メルセデス・ベンツ「EQB 350 4MATIC」です。
メルセデスの電動SUVシリーズのミドルクラス「EQB」

EQBは、DセグメントのEQC、CセグメントのEQAに続く、メルセデス・ベンツの電動SUV。3列シート7人乗りのコンパクトSUV「GLB」をベースに、バッテリーEV(BEV)化したモデルです。
3年間の試乗体験で「SUV+BEV=最高」という公式を導き出したゆみちぃ部長。さらに四輪駆動車なら「マジ最高」となるわけでして、当然ながら乗る前から期待値は相当に高かったりします。しかも、乗ってみたかったというメルセデス・ベンツ!
どうしてメルセデスに乗りたいんですか? と尋ねると「運転はもちろんのこと、後席を含めて乗ったことがないんですよ」と、というのが主な理由。そして「街でよく見かけるじゃないですか」というように、日本において圧倒的なブランド力を有しているから乗ってみたいというわけです。事実、日本の輸入車のうち一番売れているのはメルセデス・ベンツで、その台数はドイツ御三家の2つ、BMWとアウディを足した台数を上回ります。



まずはエクステリアから。ボディーサイズは全長4685×全幅1835×全高1705mm。ホイールベースは2830mmで、最小回転半径は5.5mと扱いやすいサイズに収められています。


フロントボンネットを開けると、モーターなどが見えます。EQBは、FFモデルのEQB 250(822万円)と、今回試乗した4WDのEQB 350 4MATIC(906万円)の2モデルが用意されています。フロントモーターの最高出力は194PS、リアモーターの最高出力は98PSで、システム最高出力は292PS。ちなみにシステム最大トルクが520N・m(53.0kgf・m)と強力そのもの。2.1tのボディーをグングンと引っ張ります。



急速充電ポートとAC充電ポートは別の場所にあり、気になる満充電時の走行距離は468km(WLTPモード)。100kWhの急速充電器にも対応しているようです。ちなみに、相性が悪い急速充電器があったようですが、e-MOBILITY POWER(公式サイト)によると、充電器側を改修し利用できるようになったようです。
ちなみにメルセデス・ベンツ日本は、充電に関する情報を自社ウェブサイトのよくあるご質問(FAQ)内「メルセデス・ベンツのEQモデル(電気自動車)やプラグインハイブリッド車にて利用できない急速充電器はありますか」で公開しています(公式サイト)。
こういう情報は、とても重要であるにも関わらず一般公開されない場合があります。それを公開しているところに、メルセデス・ベンツ日本の誠実さを感じずにはいられません。
後部のシートを倒せば広大な収納スペースが現れる








荷室は3列目シートを出すと狭いですが、たためば大容量空間が出現。ゆみちぃ部長的に荷物がいっぱい載るから好きだいうクロカンスタイルですので、後方には結構な空間がないとバックドアは開きません。クーペSUVだと、後方のスペースは比較的少なくて済みますが、背のある荷物を大量に積載するのには向いていません。ここは好みでしょうか。




3列目シートですが、メルセデスから乗車時の安全性の観点から、身長165cm以下の乗員のみという使用制限が設けられています。足元スペースも狭いので、主にお子さん用と考えた方がよいでしょう。アメニティー的にUSB Type-Cコネクターがあるのは◎。ちなみにラゲッジスペースや2列目を含めAC100Vアウトレットはありませんでした。










2列目シートはリクライニング機能付きで、さらに140mmのスライド機構も用意。
シフトレバーが独特の位置にあるので慣れが必要













運転席に座ったゆみちぃ部長。「カッコいいですね。それに高級感がありますね」とご満悦です。ステアリングコラムからシフトレバーが伸びるのがメルセデスの特徴。そのためセンターコンソールはスッキリです。ステアリングパドルは回生量の調整で、最大にすればワンペダルに近い動作をします。ただし、完全停止はブレーキペダルを踏む必要があり、これは日産に似ています。クルーズコントロールはアダプティブで車線監視・ハンドル支援付きです。

試乗車にはオプションのパノラミックスライディングルーフ(17万6000円)が装着されていました。「いいですねーコレ」とゆみちぃ部長。一時期、この手のオプションは見かけなくなったのですが、ここ数年、復活してきたようです。




USBはType-Cで、もちろんApple CarPlay、Android AUTOにも対応します。スマホトレイは横置きタイプでワイヤレス充電に対応。結構タイトな大きさなので、USBケーブルを差し込むと置くことは難しいでしょう。ナビ検索はGoogleのシステムを使っているようですので、メルセデス的には「CarPlayは使わずナビを使いましょう。車両とスマホはBluetoothで接続しましょう」という意思を感じました。
操作はタッチパネルのほか、アームレストにあるトラックパッドでもできます。できるのですが、操作には相当な慣れが必要で、乾燥肌の部員Kは指先にパッドが反応せずイライラがウルトラマックス。
ブルメスターの高級オーディオでハイレゾを聴いてみた

メルセデスのカーオーディオシステムは、ドイツのハイエンドオーディオブランド「ブルメスター」が手掛けています。どのくらいハイエンドかというと、フラグシップのモノーラルパワーアンプ159にはペア4400万円というプライスタグがついているほど。
そこで、日本で唯一のハイエンドオーディオ雑誌「ステレオサウンド」の230号で、自宅のオーディオシステムを晒した部員Kがチェックしてみました。ちなみに部員K、元ステレオサウンド誌の編集部員だったりします。



音源として、部員Kが普段使っているストリーミングウォークマン「NW-A300」シリーズに入っているハイレゾファイル(96kHz/24ビット)を使おうと、車両とUSB接続。ですが、Android AUTOが起動するとかで上手くいかず。ならばとBluetoothで接続。品位の高いプレイバックに「なるほど」と思うものの、全般的に鮮度感が足りない様子。
また、Bluetoothではハイレゾファイルのアートワーク(ジャケ写)を送らないのか、メルセデス側が拾ってきたアートワークに代わってしまう模様。結局、ウォークマンに入っている音源をUSBメモリにコピーしての試聴となりました。



ゆみちぃ部長達が歌う「この盾に、隠れます。」を聴いてみると、見事なまでのピラミッドバランス。そこでイコライザー設定をみると、BASSがプラス2、MIDがプラス1だったので、いったんフラットに。クラシックはこれでもいいかなと思うのですが、ポップスやジャズの場合だと低域のキレに物足りなさを覚えるところ。
そこでソニーのモニターヘッドホン「MDR-M1ST」を参考にしながら帯域バランスを調整。BASSをマイナス2、HIをマイナス1としたほか、声が耳元でなっている感じがしたので、アコースティックセンターを少し前にしてみました。

ClariSの2人が、YouTubeチャンネルTHE FIRST TAKEにてオーケストラをバックに歌いあげた「コネクト」は、オフマイク気味のオーケストラとオンマイクで採られた2人の声の描き分けが見事。高解像度をひけからさないあたりがブルメスターらしいところ。実に聴きごたえのあるプレイバックで、数多あるカーオーディオの中でも、かなりレベルの高いシステムであるといえそうです。





そんなことをしているうちに、夕方に……。車内にはイルミネーションが灯り始めました。「なんですか、これ?」とゆみちぃ部長。この車内イルミネーションが実にドイツ車らしいではありませんか。デフォルトは紫っぽい色だったのですが、部長は色をいじりはじめて、選んだのはピンク。自分で選んでいながら大笑いされていました。
車内が静かすぎるのでロードノイズが思ったよりも聞こえる

「スムーズに走るあたりが、BEVらしいですね」と、ゆみちぃ部長。「ちょっとアクセルペダルを踏んだだけで、結構進む感じがあるので、そこのコントロールは難しいかも」とのこと。EQB 350 4MATICは四駆ですが、どうやらリアモーターを主として動く様子。おとなしく走るかぎりはリアモーターだけで賄えるようで、少し急な加速が必要な場面などでフロントモーターがサポートする程度。ですが「あ、今前輪が動いている」と感じることはなく、完成度の高さには驚かされます。アクセルペダルに対する反応がリニアなのも好印象。アクセルを離すと回生が働くのですが、その動きは穏やかなのもイイですね。

「視界が広く、ステアリングも適度な軽さで運転しやすいです」と見晴らしも良好。ただ「Aピラーが前寄りにあるので、右折時に視界に入りやすいかな」と気になるようでした。一方で左折時は「カーナビの画面がダッシュボードより上にはないので、見やすいですね」とも。




試乗車にはオプションの「AMGラインパッケージ」が装着されており、その中にアジャスタブルダンピングシステム(可変ダンピングコントロール)が含まれているのだとか。さらに標準より2インチアップとなる235/45R20サイズのタイヤを履いていました。AMGと聞いただけで「絶対硬いんでしょ!?」と思いますし、さらにインチアップしていることから、乗り心地の悪さを覚悟したのですが、これが真逆のマイルドさ。メルセデスらしい、しっとりしなやかな乗り味。ちなみにスポーツモードにすると、ソコソコに硬くなります。

静かであるがゆえに、今度はロードノイズや風切り音が気になる場面も。高速道路で路面状態が悪い時には、運転席と後席で会話はできない時もありました。クルマを降りて確認すると、ドアは貼り合わせガラスではない模様。個人的には高級車なので貼り合わせガラスにしてほしかったなと。

大きさも丁度良く、BEVらしい静かさと力強さ、そしてメルセデスらしい乗り心地の良さが印象的なEQB 350 4MATIC。「とてもイイクルマでした。でも、もっと静かだったらもっといいですね」と、ゆみちぃ部長。それは贅沢を知ってしまったがゆえの、さらなる贅沢というもの。叶えるにはEQS SUV(1542万円)とまではいかずとも、4桁人の諭吉さまが必要でして……。「乗りたいなぁ、EQS SUV」。ゆみちぃ部長、頑張って働いてください。
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寺坂ユミ(てらさかゆみ)プロフィール

1月29日愛知県名古屋市生まれ。趣味は映画鑑賞。志倉千代丸と桃井はるこがプロデュースする学院型ガールズ・ボーカルユニット「純情のアフィリア」に10期生として加入。また「カードファイト!! ヴァンガード」の大規模大会におけるアシスタント「VANGIRLS」としても活躍する。運転免許取得してから上京後は一切運転していないが、最近は自動車にも興味を抱く。こだわりが強く興味を抱くとのめりこむタイプであることから、当連載で、お気に入りの1台を探す予定。