現在日本唯一の24時間レース
今年も富士スピードウェイで盛大に開催

 5月24~26日に富士スピードウェイで開催された「ENEOS スーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE 第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」。通称、富士24時間レース。25日からの決勝レースでは、深夜こそうっすらと霧雨が降ったものの日中は曇りや晴れという絶好のレース観戦日和となり、富士スピードウェイの発表によると3日間の延べ来場者数は5万4700人と、過去最高を記録。


 2018年のスーパー耐久24時間レース復活から、7回目を数える今大会に至るまで大きな成長を遂げています。


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 その復活の富士24時間レースに、2018年の第1回から参戦を続けてきたのがTEAM NOPRO。スーパー耐久ではディーゼルエンジンにこだわり、エンジンの排気量1500cc未満の車両で争われる「ST-5クラス」でマツダのデミオや、後継モデルのマツダ2 SKYACTIVE-Dで参戦しており、2018年の第1回では2位表彰台、そしてコロナ禍で開催が遅れた2020年の第3回で初優勝。2022年と2023年も優勝し、連覇を果たしています。


MAZDA2の快挙! 富士24時間レースで前人未到の3連覇4勝を飾ったTEAM NOPROに密着
富士24時間

 TEAM NOPROにとっては、富士24時間レース3連覇4勝目のチャレンジとなるレースなので、勝ちに行きたいという気持ちが強いのかと思いきや、チーム代表の野上敏彦さんは「3連覇とかそういうことではなく、レースは常に勝ちに行くものです。レースは全力を尽くした結果なので全力を尽くして走り切ることに集中します」と語りました。


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 ところがフリー走行のあった木曜日から予選まで、思った以上にタイムが伸びません。今季からST-5クラスもブリヂストン製のスリックタイヤが採用となったのですが、これがどうやら相性が悪いようです。予選のタイムを見てみるとST-5クラスのコースレコードを出した88号車 村上モータースMAZDAロードスターのBドライバーと、17号車 DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2を比べると、約2秒の差がついています。


 重量バランスに優れるFR 2シータースポーツカーのMAZDAロードスターと、ただでさえフロントヘビーなFFにターボやディーゼル用の補器がついて、もっとフロントヘビーになっているMAZDA2(旧デミオ)のディーゼル。これまではそれほど差がついていなかった重量配分ですが、ブリヂストンのスリックタイヤではその差が如実に表れています。


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富士24時間
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 そして迎えた決勝。

プロドライバーが入ることが多いBドライバー同士ではタイム差が大きかったとはいえ、ジェントルマンドライバーが入るAドライバーでは西澤嗣哲選手が予選で頑張りを見せてくれたおかげで、前から5番目のグリッドを獲得できました。


 24時間レースですから、スターティンググリッドにそれほど目くじらを立てる必要もありませんが、14台もエントリーしているST-5クラスなので、なるべく前にいた方が有利であることは間違いありません。


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富士24時間
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 もう1台のエントリー、37号車 DXLワコーズ☆パワーミネラルNOPROデミオは11番目のグリッドからのスタートとなります。


序盤に順位を上げるも
徐々に後退していくMAZDA2

 15時少し前にフォーメーションラップが始まり、隊列を成して1周を回ってくると、いよいよ24時間レースのスタートです!


 スタートラップのTGR(第1)コーナーからコカ・コーラコーナーまでの間に17号車 DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2の大谷飛雄選手は、4番手スタートの前車を抜いて開帳に追い上げを見せます。4周目までになんと2番手まで順位を上げると、クラストップの65号車へも迫る勢いを見せていきます。


 しかし、その勢いも次第に弱まり1時間経過後には元の順位にまで戻ってしまうことになります。ST-5クラスの場合、タイヤ交換と燃料補給の時間的なバランスでは、燃料補給の方が早く来るというのが定説ですが、17号車の場合は先にタイヤに限界が来てしまったようでした。


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 時間経過ごとの順位を見てみると3時間後に3位、6時間後に4位、9時間後には2位となりますがトップからは2周遅れとなっています。しかし、この9時間経過後の深夜0時頃から奇跡が起こるのです。


まさに恵みの雨! 弱点が強みに代わった瞬間!

 20時頃に花火が上がると、そこから先はミッドナイトセクションとなります。深夜のサーキットは本当に何があるかわかりません。夜行性の小動物の飛び出しもある過酷な状況です。気温もぐっと下がることから雲が発生しやすく、雨も降りやすくなります。


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富士24時間
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 21時頃から風に湿り気を帯びてきた富士スピードウェイは、深夜0時を超えてから霧雨が周囲を覆います。

降り始めはスリックタイヤでも気にならない程度ですが、時間が経つにつれて路面は濡れていきます。レインタイヤを履くほどではなく、でもスリックタイヤでは少し滑る。こういう状況でのタイヤ選びの難しさはエンジニアもドライバーも頭を抱えるほど。


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富士24時間
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 この路面状況で17号車は賭けに出ます。フロントはスリックタイヤ、リアにレインタイヤというミックスを選びました。超フロントヘビーなMAZDA2ディーゼルであれば、フロントにスリックタイヤを入れても走ることができる、という判断です。


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 この賭けは見事に的中します。午前3時には2位に2周差をつけてのトップとなり、この快進撃は夜明けを超えても続きます。朝の6時には3周差、そして4周差をつけた時点で富士24時間レースの特別ルールとなる10分間のメンテナンスタイムのためにピットイン。


 この10分間のメンテナンスタイムはクラス関係なく全車に義務付けられており、この10分間を使って交換するべきパーツなどを交換していきます。17号車の場合は、前後のブレーキパッドや油脂類の交換をしていました。この10分間をいつ使うかも、戦略のひとつです。


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 メンテナンスタイム終了後もトップのままコースに復帰。朝9時の時点で、順位は2位に2周差のトップとなっていました。


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 朝から昼にかけて周囲が明るくなり気温が上がってくると、そこは最後のアクシデントタイムでもあります。どこか気が緩んでしまい、ピット作業やドライブにミスが出てきやすい時間帯なのです。しかし、今回の富士24時間レースではFCY(フルコースイエロー)は出たものの、クラッシュやアクシデントでセーフティーカーの導入や赤旗中断がなくレースが進んでいき、例年に比べると周回数が伸びていきます。


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 周回数が伸びれば、ディーゼルの強みである燃費が大いに効いてきます。朝9時頃の段階で17号車は8回、そのほかのチームは概ね12回というピット回数となっており、給油を伴ったピットであればピットインからピットアウトまで150秒(2分半)かかる計算ですから、この時点で5分も得をしているということになります。周回数に換算すると2周ちょっと。ラップタイムが遅くとも、ピットだけでこれを稼げるということが、ディーゼルの真価とも言えます。


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 快調な17号車のほかに、もう1台エントリーしている37号車 DXLワコーズ☆パワーミネラルNOPROデミオはミッショントラブルでなかなか思うような走りができず、レース後半は長い時間ピット作業に費やされてしまいました。こちらも完走を目指している以上はチェッカーを受けなくてはならず、そこに向けて修復をしていきます。


チェッカーは2台揃ってのデイトナフィニッシュ

 いよいよ24時間レースも終わろうとする中、快調に周回を重ねる17号車を追って、37号車もピットを離れていきます。

ここまでまったく寝ることなく、メカニックの陣頭指揮を執ってきた野上達也選手がフィニッシュドライバーとなります。


 モニターでは総合トップの1号車 中升 ROOKIE AMG GT3が、残り十数秒のところでファイナルラップに入ります。


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 トップがファイナルラップに入ると、各チームのメカニックやスタッフがピットプラットフォームのフェンスによじ登り、チェッカーを迎えるマシンを出迎えます。1台ずつチェッカーをくぐるたびに聞こえる大声援。2台エントリーのチームは2台並んでチェッカーをくぐる、いわゆるデイトナフィニッシュを見せてくれます。こういうところがいかにも24時間レースっぽいと感じる部分。


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 そして、コースから戻るマシンはピットロードを逆走してきます。この逆送には意味があって、全マシンが全チームのピットクルーやスタッフ、オフィシャルなどに完走の祝福を与えられるというもの。ドライバーは窓から手を出すと沿道(ピットロード)の方々がタッチしていくのです。


 また、各クラスの優勝マシンがそのチームのピットに近づけば、ドライバーが駆け寄って一斉に乗り込んでの箱乗り状態で、パルクフェルメまでのパレードとなります。


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富士24時間
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 17号車もクラス優勝として箱乗りパレードでパルクフェルメに向かいます。当初は不利な弱点となった重量配分とタイヤのマッチングですが、天候を見極めて弱点を強みに変えた素晴らしい判断力が今年の富士24時間レースを制した要因でしょう。


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 1台のみエントリーのクラスを除いて、スーパー耐久富士24時間レース史上最多の4勝を3連覇というカタチで手中に収めたTEAM NOPRO。昨年のシリーズランキングは2位だっただけに、今年はST-5クラスチャンピオンの称号も手に入れてもらいたいですね!


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