キャンプブームやワーケーション、テレワークなど、車中泊を活用するシーンは増えつつあります。そんな中、日産は2023年10月に商用ワンボックス「キャラバン」をベースに、快適な車内空間を演出した「キャラバン MYROOM」を発表しました。
今回「キャラバン MYROOM Launch edition(ローンチエディション)」で、2024年のD1グランプリ開幕戦の地、奥伊吹(関ヶ原)で一泊してきたので、レポートします。
キャラバンの最上位グレードをベースに快適化
まずお断りすることとして、ご紹介する「ローンチエディション」はすでに完売しています。ですが、すでに通常モデルが販売しているので、購入を検討される方はご安心ください。


キャラバンのカタログをみると、多彩なサイズに驚くのですが、MYROOM・ローンチエディションは「ロングボディー」「標準幅」「標準ルーフ」「低床」という最もコンパクトなボディーがベース。ボディーサイズは全長4695×全幅1695×全高1975mm、ホイールベースは2555mmと、いわゆる4ナンバーサイズに納まっています。


パッと見、街中で走るキャラバンとの違いは、リアクォーターウィンドウとバックドアに「MYROOM」というステッカーが貼られていることと、サンドベージュとホワイトの2トーンに塗り分けられているということ程度。ちなみに塗装はメーカーオプションで17万6000円です。
オートキャンプ場出使える便利なコネクター搭載



よく見ると、ボディーサイドには小さなキャップが。これは何かというと、車両に付属する専用ケーブルをキャンプ場に用意されている100Vと接続して、車内で家電を使うためのコネクター。こちらに関してはのちほど。


オシャレは足元から。ホイールはシンプルな15インチで、アウトドアテイスト満点。さらに袋ナット(ドーム状のキャップ付きナット)ではなく、普通のナットという潔さ! 「これ経年劣化で錆びてくるのかな?」と思って袋ナットにするか、そのまま味わいとして使い続けるかは人それぞれ。
燃費は実測で12.89km/Lとまずまず
エンジンもハイパワーではないけど非力でもない

エンジンは直列4気筒2.0L ガソリン「QR20DE」と直列4気筒2.4L ディーゼル「4N16」の2タイプを用意。2WD車(FR)はいずれも選択できるものの、4WD車はディーゼルエンジンのみです。


ちなみに燃料代ですが、キャラバンMYROOMで、千葉にある成田ゆめ牧場に行ったり、奥伊吹モーターパークに行ったりして1167.9㎞を走行。使った軽油の量は90.59Lでした。よって燃費は12.89km/Lを記録。ちなみに、東名用賀出入口から奥伊吹モーターパークのある関ヶ原までの通行料は、夜間の割引を使っても片道6130円でした。
バックドアが大きいので
開けるならスペース確保が必要



バックドアはとてもシンプルで、パワーゲートといった便利機能はありません。またバックドアはかなり大きく、背面に相当な空間がないとドアを開けることはできません。ミニバンに慣れた身からすると、「こんなに空間が必要なの?」と驚くところです。




バックドアを開けると白木の室内が姿を現わします。バックドア側にあるボードを取り外すと、広い床面が広がります。床の幅は80cmほど。
ベッドは簡単に出し入れができるので
どこでもすぐに寝られる


ベッドは跳ね上げ式で、中央上部のフックを外すだけでベッドが姿を現わします。ヒンジ部分にダンパーが入っているため、押さえていなくてもスムーズに下降します。



取り外したボードはスライド式のテーブルとして利用可能。



床面には収納が3ヵ所用意されています。



車内にはブラインドが用意されているほか、バックドアにはロールスクリーンが用意されています。また、フロント回りにはカーテンも設置されています。
ACコンセントも豊富で本当に車内で生活できそう




車内には数ヵ所、ACコンセントが用意されています。これは先ほどの外部給電のほか、車内にモバイル蓄電池と車両を専用ケーブルで接続すれば、延長タップのイメージで使うことができます。また、車内についたファンも動かすことができ、夏場の換気に便利です。








MYROOMの2列目シートは、自動車業界でも屈指のアイデア賞モノ! 座面と背もたれを簡単に移動することで、うしろ向きのソファ、またはフラットベッドになります。ヘッドレストは運転席や助手席のうしろ側に収めることができます。




ここでベッドの大きさを測ってみましょう。幅は120mm弱、長さは2200㎜弱とダブルベッドよりも大きなサイズ。これなら寝返りうっても平気です。



ここまで大きな面積がベッドになると、荷物はどこに置くのか? が問題に。車中泊で「荷物をどこに置くか」はとても重要です。MYROOMの場合はベッドの下がそれにあたり、高さ約25cm以下のカバンやスーツケースなら置けます。普通のスーツケースなら横にすれば納められるかも。ただ、床は滑りやすいので、滑り防止のマットを敷いたほうがいいでしょう。


「ベッドを倒したら、荷物が取り出せないじゃないか!」という方もいらっしゃるでしょう。その時は2列目シートの足元部に荷物を置けば問題ナシ。幅は30cmありますので、ボストンバッグならスッとファスナーを開けるだけで荷物を取り出すことができます。
それでは、実際に奥伊吹モーターパークへ向かってみましょう
イマドキの乗用車に慣れると
不満を覚えるところも……



東名用賀出入口近くのガソリンスタンドで給油して、410km先にある奥伊吹モーターパークへ。高速に乗ったら、あとは運転支援でラクラク……。




……の予定だったのですが、ステアリングホイール右手側に、そのスイッチはありません。日産車なのに運転支援がないことにショックを受けます。さらに言えば、ナビは小さいばかりか、USB端子すらないことにも驚き。


アクセサリーソケットはあるのですが、そのキャップはいわゆる普通のフタでなくしそう。スマホの充電などは市販のDC12V→AC100Vコンバーターを使い、そこからPCを給電し、PCのUSBポートからスマホを充電していました。DC12V→USB変換を持っていれば解決するのですが……。
ちなみにカーナビとスマホはBluetoothでつなげられますので、音楽を鳴らすことはできます。でも、キックドラムが鳴るたびに内張りが響いて何が何やら……。


乗り心地は、ショックが強めである一方、なかなか振動が収束しない印象。それは板バネゆえなのかはわかりませんが、商用車らしさを覚えるところです。


そして商用車っぽくないのが、細かな柄が入ったシート。座り心地はかなりよくてフワフワ。シートでショックを抑えているクルマ、という印象を受けます。


センターには大きなアームレストを配置。中をあけると「ただの箱」で、USBコネクターがあったりアクセサリーソケットがあるわけではありません。


ワンボックスに乗り慣れていない方だと車庫入れに不安も。ですがカメラ式ルームミラーやアラウンドビューモニターがついているので安心。このあたりは日産車の安心感があります。
6時間運転しても疲れを感じず
そのまま寝てしまえる気軽さも車中泊の魅力

そんなこんなで、渋滞を交えながら目的地に到着。なんやかんやで6時間くらい運転していましたが、あまり疲れを感じることはありませんでした。



奥伊吹モーターパークでD1を取材してから、ダウンヒルをすること30分。道の駅で一夜を明かすことに。ホテルは米原または関ヶ原の方まで走らなければならず、かなり遠いのです。車中泊のメリットは、そうした時間的制約から解放されることにあります。




ベッドを倒してテーブルをセットしたら、あっという間に書斎が完成! これが驚くほど快適なばかりか、写真だけを見たら「家?」と思われるのでは。間接照明も実にイイ感じです。
背もたれのうしろにある、着替えなどの荷物を置くスペースは本当に使い勝手がよく、この広さは相当に魅力的! また、助手席に荷物を置いてしまっていても、後席側から取り出すこともできます。



外から見ると、ブラインドやロールカーテンの隙間から光は漏れているものの、中を覗くことはできません。照明は車内に設けられたスイッチまたはリモコンで操作可能。リモコンにはマジックテープがついています。



照明は天井にもLEDがあり、室内をかなり明るく照らすことができます。写真はわかりやすいように暗くしていますが、本当はかなり明るいです。

リアシート側にもエアコン送風口があるのも美質。室内が広いものの、あっという間に適温にまで温度を下げてくれます。
このような環境で作業をして、夜0時過ぎに就寝。翌朝5時までグッスリ寝ることができました。過去さまざまなクルマで車中泊をしましたが、最も快適な夜でした。


朝起きて、テーブルをセット。朝ご飯の時間です。前夜、コンビニで購入した菓子パンをブラックコーヒーで流し込んだら、長い1日の始まり。朝が早いモータースポーツ取材の場合、ホテルに泊まってもモーニングを食べている時間はありませんから、結局はコンビニ食になりがちです。
あとは布団を適当に片づけて出発です。その後、帰宅時に寝ることも考えてしまい、結局「万年床」みたいな状態に。その点でも「MYROOM」です。

「これで車中泊は完璧!」と言いたくなるキャラバンMYROOM。一方でプロパイロットがないのは、イマドキのクルマからするとかなりの減点ポイントです。しかし、「時間と場所の制約から解放されること」と「快適な部屋が手に入る」のはかなりの魅力です。
同じような金額(680万円)でVIP系ワンボックスが購入できますが、こちらの方がはるかに快適な車中泊ができるという点で、筆者ならキャラバンMYROOMを選びます。
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