コンパクトミニバンの人気モデルとなるのが、ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」。どちらも販売ランキングで、常にベスト10入りする高い人気を誇ります。

その2台をお借りし、比較試乗をしました。


 借りたのは、どちらもハイブリッドの3列シートモデルです。フリードは「e:HEV AIR EX FF 6人乗り」(304万7000円)、シエンタは「Z ハイブリッドFF 7人乗り」(291万円)です。


デビューしたてのフリードと
発売3年目となるシエンタ

 全長約4.3mの箱形ボディーに3列シートを収め、両側スライドドアを備えた、排気量1.5Lクラスのコンパクトミニバンというのがフリードとシエンタです。その人気は高く、2024年度上半期(4~9月)の新車販売ランキング(一般社団法人日本自動車販売協会連合会調べ:軽自動車は除く)において、3位にシエンタ、6位にフリードがランクインしています。直近の2024年9月ならば、5位がシエンタ、6位にフリード。互角の人気を誇る2台と言えるでしょう。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
右がシエンタ、左がフリード

 ただし、デビュー時期は異なります。現行シエンタの発売は2022年8月。それに対して、フリードは2024年6月に発売されたばかり。逆に言えば、発売直後のピカピカの新車フリードに対して、3年も前に発売されたシエンタが良い勝負をしているということ。それだけシエンタには根強い人気があるとも言えます。


キュートなシエンタ、モダンなフリード

【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
右がシエンタ、左がフリード

 同じコンパクトなミニバンの2台ですが、そのデザインと印象は大きく異なります。シエンタは、子犬をCMキャラクターに起用するなど、丸を多用したキュートでポップなデザインが特徴です。

インテリアは、オーソドックスで、温かい茶色の差し色を使うように、リビングのようなくつろげる空間となっています。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
シエンタ

 一方フリードは、シャープでモダンなデザインです。洗練されたシンプルな「AIR(エアー)」と、アウトドアテイストの「CROSSTAR(クロスター)」という2つの異なるデザインを用意しているのも特徴です。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
フリード

 ちなみに、AIRはすべて3列シートで、CROSSTARには3列と2列が用意されています。2列シートが欲しい場合はCROSSTARしか選べません。フリードのインテリアの印象は外観と同様で、シンプルで洗練されているというものです。


 なお、シエンタのデザインは1種類で、3列と2列の両方を選ぶことができます。


人優先なのか荷物優先なのか
異なる3列シートの使い勝手

【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
左がシエンタ、右がフリード

 インテリアで異なるのはシートの使い勝手でしょう。


 フリードは、前席と2列目シートの間が空いている、ウォークスルー仕様(6人乗り)がメインとなっています。それに対して、シエンタの3列仕様は、2列目がベンチシートになる7人乗りです。この違いは、3列目シートを使うときに特に大きな特徴となります。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
シエンタ
【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
フリード

 3列目シートに座ったとき、フリードは大きな解放感を得られます。当然ウォークスルーなので、2列目シートや3列目シートへのアクセスにもフリードは優れてます。


 一方シエンタは、3列目シートがダイブダウン方式(シートを座面ごと足元に収納できる仕様)になっているのが大きな特徴です。折りたたむと、2列目シートの下に収納できるのです。そのため、荷室スペースを大きく使うことができます。2列目シートもたためば、さらに荷室スペースを拡大可能です。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
シエンタ
【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
シエンタの3列目を折りたたんだ状態

 それに対してフリードの3列目シートは、室内の両側に跳ね上げて収納します。床面を使うことはできますが、空中にシートがあるため、荷室スペースという点ではシエンタに及びません。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
フリード

乗り心地のよいフリード、一体感のあるシエンタ

 パワートレインは、どちらも1.5Lエンジンと2モーターを組み合わせたハイブリッドです。ただし、仕組みは異なります。フリードは、走行領域のほとんどをモーター駆動でまかない、エンジンの力を直接タイヤに使うのは高速走行のみ。つまり、ほとんどBEV(バッテリー電気自動車)のようなモーター駆動で走ります。シエンタは、エンジンとモーターを常に遊星ギヤ(大きなギアの周りを小さなギアが回る機構)でつなげて、エンジンとモーターをミックスして走ります。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
フリード

 そのためフリードの加速はモーター駆動らしく、非常にスムーズです。また、アクセルを深く踏み込むと4気筒エンジンが稼働しますが、その音は小気味の良い粒の揃ったもの。


 シエンタは3気筒エンジンということで、音や振動が少しガサついた印象です。とはいえ、アクセル操作に対する加減速のレスポンスの良さ、ステアリング操作に対するクルマの動きの反応の良さはシエンタが上。ドライバーとクルマの一体感を得ることができました。運転の楽しさと言えばシエンタでしょう。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
シエンタ

 フリードは、アクセル操作に対する加減速もステアリング操作に対するクルマの反応も、常に穏やか。そして足回りは全体に柔らかく、細かい路面の振動を上手にいなしてくれます。ファミリーカーとして乗り心地がよく、ゆったりと走るのならフリードの方が向いています。


キャラクターと特徴の異なる2台
家族が多いならフリード、荷物を多く載せるならシエンタ

 デザインやシートの使い勝手、走りの違いなどを比較してみれば、同じコンパクトミニバンでありながらも、フリードとシエンタは、それぞれに異なる個性を持っていることがわかります。


 家族が多く、3列目シートを常に使うような人は、乗り心地の良いフリードがオススメでしょう。3列目シートはあまり使わずに、荷物を載せることが多いというのであれば、運転も楽しいシエンタをオススメします。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
シエンタ

 また、フリードにはアウトドアテイストの強いCROSSTARというグレードが用意されています。こちらには2列シートも用意されていますので、アウトドアユースが多く、荷物を載せることが多いのであれば、フリード CROSSTARがオススメです。


【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ
ミニバン
フリード

 キュートなルックスはちょっと苦手という方も、フリード CROSSTARが良いでしょう。


 価格差は10万円ちょっとしかありませんが、それ以外の差がかなりあるので、じっくり検討してみてはいかがでしょうか?


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