「G580 with EQ Technology Edtion1」は
4輪モーターEVの驚愕のオフロード性能だった!

 マイナーチェンジで新しくなったメルセデス・ベンツの新型「Gクラス」を、オフロード専用コースで試乗することができました。注目となるのが2024年10月に追加となったBEV(バッテリーEV)バージョンとなる「G580 with EQ Technology Edtion1」。どんな走りを見せてくれたのかをレポートします。


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G580 with EQ Technology Edtion1

芸能人に大人気の「Gクラス」
その特徴とラインナップを解説

 メルセデス・ベンツのラインナップの中でも屈指の高い人気を誇るのが「Gクラス」です。軍用車にルーツを持ち、1979年のデビュー以来、ほとんど変わらないルックスを守り続ける、本格派の4WDモデルです。最近ではめったに使われなくなりましたが、道なき道をゆく「クロスカントリービークル(ゲレンデヴァーゲン)」と呼ばれてもいました。


芸能人御用達のゲレンデがEVに!  メルセデス「Gクラス」の実力をオフロードで検証!
ベンツ

 そんな「Gクラス」は2018年にフルモデルチェンジを実施しています。そして2024年7月、いわゆるマイナーチェンジとなる改良が施された新型モデルが日本で発売となりました。


 大きな変化は、全車電動化、機能性向上、エアロダイナミクス向上、そして電気自動車(BEV)バージョンの追加です。電動化とは、エンジン車にマイルドハイブリッドとなるISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と48Vシステムの採用を指します。小さなモーターを使って、減速エネルギーの回生と、モーターアシストを実施します。


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ベンツ
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 機能性の向上としては、タッチスクリーン式メディアディスプレイの「MBUX」をはじめ、キーレスゴーなどを採用しました。エアロダイナミクスは、Aピラーの形状最適化とルーフ前端へのスポイラー追加などで空力性能を高めています。そして電気自動車(BEV)バージョンとして、10月に「G580 with EQ Technology Edtion1」(以下、G580)が追加されました。


 ちなみに、現在の「Gクラス」のラインナップは、最強モデルとなる4L V8ツインターボの「AMG G63」(3080万円)、3L 直6ディーゼルの「G450d ローンチエディション」(2110万円)、そしてBEVの「G580」(2635万円)の3モデルです。


追加されたBEVの「Gクラス」は
4輪すべてにモーターが付いている

 BEVバージョンとなる「G580」の最大の特徴は、4輪すべてに個別のモーターが用意されていることです。タイヤ1輪ごとに108kW(約147馬力)のモーターを用意し、クルマ全体では4個の走行用モーターを備えます。そしてモーターに電力を供給するのは116kWhもの大容量のリチウムイオンバッテリーです。システム総合出力は432kW(587馬力)/最大トルク1164Nm。一充電あたりの最大走行距離は530km(WLTCモード)となります。


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 4輪それぞれにパワフルな専用モーターを備えており、しかも「G580」では、1輪ずつ自由に駆動させることが可能です。そのため、「G580」では、左右輪を別方向に駆動させ、その場で1回転する“信地旋回”を可能とします。これをメルセデス・ベンツでは「Gターン」と呼びます。また、片輪だけを駆動させてドリフト状態にして、急に曲がる「Gステアリング」という機能も備えているのです。


わずか数秒で1回転する「Gターン」

 新型「G580」ならではの走りが「Gターン」です。使い方は簡単です。地面が平らなオフロードであることを確認した上で、センターコンソールにある「Gターン」ボタンを押して、回りたい方向のパドルシフトを握って、アクセルを踏み込むだけ。


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ベンツ
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 すると、猛然と4輪が駆動を始めて、クルマがクルクルと、その場で回り始めます。既定の2回転半を終えるまでに10秒もかかりません。まるで戦車のよう。4輪にモーターを備えるBEVにしかできません。長くモータージャーナリストとして、いろいろなクルマに乗ってきましたが、まったくの初体験。驚愕の走りでした。


 もうひとつの「Gステアリング」は、さらに簡単です。センターコンソールの「Gステアリング」のボタンを押して、アクセルを踏んで走り出すだけ。ハンドルを切って、アクセルを踏み込めば、外側の後輪がより強く駆動して、クルマが内側に曲がり込んでいきます。よりタイトにコーナーを曲がることができるのです。オフロード専用の機能となりますが、簡単にドリフトができ、まさに痛快そのものでした。


 砂漠のようなところであれば、「Gターン」は方向転換に便利ですし、タイトに曲がれる「Gステアリング」も使う場面が多いはずです。BEVの4WDならではの機能と言えます。なお、これらの機能は街中での使用はできません。



イージーかつ強力なオフロードの走破性能

 新型「Gクラス」の試乗会は、オフロード走行を楽しむための専用コースでした。タイヤが浮いてしまうコブ路面や、急な坂道、水のたまった道、瓦礫の道など、多彩なシチュエーションが用意されています。試乗は、BEVの「G580」だけでなく、ディーゼル・エンジンを搭載する「G450d ローンチエディション」(以下「G450d」)も用意されていました。


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 厳しいオフロードコースではありましたが、2台の「Gクラス」は、それらを難なくクリアしてゆきます。基本性能の高さがわかります。強固なラダーフレームと、よく動くサスペンションの組み合わせにより、凹凸のひどい路面でも、しっかりとタイヤが路面に追従します。普通に走るだけでも、サスペンションがよく動いており、乗り心地の良さを実感できました。


 しかし、運転の簡単さでは、ディーゼル・エンジン車よりもBEVの方が1段上だったのです。3L 直6ディーゼルの「G450d」は、最高出力270kW(367馬力)/750Nmと、エンジン車としては十分にパワフルと呼べる性能を秘めています。しかし、BEVである「G580」のパワーは、432kW(587馬力)/1164Nmと、さらに上回ります。しかも、4輪が独立したモーターで制御されていますから、わずかなスリップにも即座に対応が可能。少しでもタイヤが路面にかかっていれば、簡単にクルマを前進させてしまうのです。


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 エンジン車であれば、アクセルを調整しながら走るようなところでも、BEVは雑な操作でも軽々と難所をクリアできてしまうのです。さらに「G580」の4輪モーターには、ローとハイという2速のギヤが備わっています。ローにするとギヤ比が倍になります。さらに緻密に駆動を制御することができるのです。


 また、オフロード走行時用に、一定の低速走行をするオフロードクロール機能(2km/h、8km/h、14km/hから選ぶことが可能)や、車両の前側下の路面を表示するトランスペアレントボンネット機能などの機能もあり、「G580」のオフロード走行の容易さを引き立てています。


4輪モーターを装備したオフロードBEVの可能性

 今回の試乗で、驚いたのは4輪にモーターを備えるBEVのポテンシャルの高さです。4輪をバラバラに制御することが可能となることで、オフロードの走破性が驚くほどに高まるのです。


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 また「G580」は重量が3120kgもある、超重量級モデルです。オフロード走行に重さは不利ですが、「G580」で走っているときにクルマの重さは一切感じませんでした。これはラダーフレームの強靭さと、モーターのパワフルさによるものと言えるでしょう。


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 4輪モーターとすることで、BEVはエンジン車を上まわる走破性を実現することができます。これを実証したのが「G580」の最大の魅力なのです。


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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。


 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。



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