メルセデス・ベンツのバン「Vクラス」が内外装デザインや機能装備等の大幅なアップデートを実施した。高級ミニバンとして、海外ではVIPやセレブの送迎車として使われることが多いVクラス。
ということで、同じVIP御用達ミニバン同士、どっちが快適なのかが本稿のテーマ。なお、今回はアルファードではなく、ヴェルファイヤと比較をした。
【ミニバン対決1 ラインナップと価格】
ヴェルファイアの最上位か、Vクラスのエントリーか!?

「ヴェルファイアとVクラスでは値段が違いすぎるだろ」と思うかもしれない。そのご指摘はごもっとも。事実、ヴェルファイアは670万円~1085万円、Vクラスは940万円~1370万円。価格的な差はかなりある。だが、ヴェルファイアの最上位グレードが1000万円以上するので、Vクラスのエントリーモデルならヴェルファイアより安く買える、と考えれば選択肢に入るだろう。


またVクラスの価格差は「V220d」(940万円)、「V220dロング」(975万円)、「V220dエクストラロング」(1020万円)と、名前のとおりボディーサイズの差によるところが大きい。ロングとエクストラロングには、豪華内装の「V220dエクスクルーシブ ロング プラチナムスイート」(1355万円)と「V220dエクスクルーシブ エクストラロング ブラックスイート」(1370万円)が用意されている。

「Vクラスと比較するなら、レクサスのLMだろう」という声もわかる。だがレクサスになると、1500万円(3列・6人乗り)でレクサスの方が圧倒的高価になってしまう。ちなみに、2列・4人乗りの「エグゼクティブ」グレードは2000万円というプライスタグがつく。そうなるとVクラスと比較するなら、やはりアルファードやヴェルファイアの最上位が現実的だと考えた次第。
【ミニバン対決2 ボディーサイズ】
メルセデスの方がラージサイズ






まずは「V220d」「V220dロング」「V220dエクストラロング」のボディーサイズから。3車種とも全幅1930mm、全高1880mmは共通だが、全長は4895mm、5150mm、5370mmで、ベーシックグレードとエクストラロングでは475mmも異なる。



一方、ヴェルファイアは全幅1850×全高1945×全長4995mm。よって全幅はVクラス、全高はヴェルファイア、全長はVクラスベーシックグレードよりヴェルファイアの方が長いものの、ロングからはVクラスが上回る。ヴェルファイアで狭いという人は、Vクラスのほうがいいだろう。
エクステリアに関しては、どちらも押し出しの強い印象を受ける。Vクラスはスリーポインテッドスター(メルセデスの象徴)をちりばめたグリルと、2本ルーバーを組み合わせて、ド迫力の印象だ。
スリーポインテッドスターのボンネットマスコットも装備する「V220dエクスクルーシブ ロング プラチナムスイート」「V220dエクスクルーシブ エクストラロング ブラックスイート」の2グレードは、5本ルーバーのグリルで上品な印象を受ける。
だが押しの強さはヴェルファイアが上回る。それは顔つきだけでなく、Vクラスがバンのような見た目であるのに対し、ワンボックスのようなシルエットというところもあるだろう。ともあれ、ヴェルファイアの迫力はスゴいのひとことだ。
ミニバン対決3 エンジン性能
ハイブリッドとガソリンVSディーゼル

Vクラスのパワートレインは全車共通で、最高出力163PSの2L 直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ型。「このボディーサイズでこのスペックはちょっと非力じゃない?」と思ってしまうが、走らせてみると必要にして十分という印象を受ける。燃費は12.6km/L(WLTCモード)が公称値。

ヴェルファイアは、最高出力190PSの2.5L ハイブリッドと、最高出力279PSの2.4L 直4ターボエンジンの2種類、そして最近追加されたプラグインハイブリッド(PHEV、充電できるハイブリッド)が最高出力177PS。
気になるヴェルファイアの燃費は、ハイブリッドが16.5km/L(4WD)と17.7km/L(FF)、ターボが10.2km/L(4WD)と10.3km/L(FF)、PHEVが16.7km/L。さすがに約2.2トンもの車重があるのでターボモデルは燃費が厳しい。
最高出力でヴェルファイアのターボ、燃費でヴェルファイアのハイブリッドが上回るものの、注目すべきはヴェルファイアがガソリン車であるのに対し、Vクラスが軽油であること。つまり燃料費が異なる。長距離移動で経済性を考えると、ヴェルファイアのハイブリッドとVクラスで悩みそうだ。
仮に同じターボモデルで東京→大阪を500km走ったとして、Vクラスは500÷12.6=39.7L消費、ヴェルファイアのハイブリッド(FF)の場合、500÷10.3=48.5L消費。軽油が160円として、160×39.7=6352円、レギュラーが180円として、180×48.5=8730円と、約2000円ちょっとの差が出る。ヴェルファイヤのハイブリッドモデルの場合は5000円くらいなので、そうなるとVクラスを逆転する。
また、雪国などでは四輪駆動モデルがあるという点で、ヴェルファイアが好適といえそうだ。
【ミニバン対決4 荷室の利便性】
使い勝手のヴェルファイア、シートが取り外せるVクラス


次は室内について。Vクラス(V220d)、ヴェルファイアとも、3列目シートを使った状態だと荷室はそれほど広くはない。




だが、3列目をたたんで荷室を増やしたいとなると、話が変わってくる。ヴェルファイアの3列目シートは側面に跳ね上げるだけで簡単にたためるのだが、Vクラスはシートをまるごと2列目側に倒す構造で、実際に作業するとかなり大変だった。
さらに3列目シートは取り外し可能らしいのだが、気力と体力と時間がなく断念した。そもそも取り外した3列目をどこに保管するのか、という話もある。よって個人的には「荷物を多く積むことを考えるならアルファード、人を載せるのがメインならVクラス」であると感じた。
【ミニバン対決5 車内空間】
使い勝手のヴェルファイア、シートが取り外せるVクラス






外観と同じく、マッシヴ感を覚えるヴェルファイアに対し、メルセデスはスマートという印象。最大の違いはヴェルファイアは大型センターコンソールによってコクピット感が強いのに対し、Vクラスは国産ミニバンで多く見かけるシートにアームレストを付けるタイプで解放感がある点。

また、ヴェルファイアはセンターにシフトモードセレクターを置くが、Vクラスはステアリングコラムにセレクターを置くため、センターコンソールにはインフォテインメントディスプレイの操作用タッチパッドが置かれている。ヴァルファイヤはスマホ操作に慣れていれば使いやすく、画面をあまり注視せずに操作できるという点ではVクラスが勝る。




2列目シートはどちらもラグジュアリー。オットマンもあり快適そのものだ。
【ミニバン対決5 乗り心地の良さ】
フットワークのよいVクラス、重厚なヴェルファイア

走りの面では、2台の印象は正反対といえる。どちらも快適なのだが、ハンドリングが軽快なのは意外にもメルセデスであった。一方、ヴェルファイアは安心感が得られる操作感。それは静粛性にも表れており、ヴェルファイアの方が静粛に感じた。だが、メルセデスもスピードレンジを上げてくるとシットリとした乗り味で、こちらも好印象であった。
【ミニバン対決 結論】
コスパの良さが光るトヨタ、オーラが漂うメルセデス
価格差があるがゆえ、トヨタは不利かと思ったが大健闘といえる内容だった。一方、メルセデスは期待を裏切らない質感の高さを見せつけた。特にプレミアムスイートはさすがのデキ栄えだ。
さて、どちらを選ぶか? となると、筆者は「3列目の使用頻度」によると感じた。大家族での移動が多く、3列目を多用するならVクラス、あまり3列目を使わない代わりに、荷物を載せたいという方はヴェルファイア(アルファード)をオススメしたい。
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