アメリカのクルマが売れていないそうだ。それはアメ車に魅力がないから、という人もいる。
レクサス「LX600」、トヨタ「センチュリー(SUV)」、ロールス・ロイス「カリナン」、メルセデス・マイバッハ「GLS」……などなど、数多くあるショーファー(運転手付き)SUVの中で、お気に入りの1台は? と問われたら、アメリカ流ラグジュアリーの化身、真の豊かさを味わえるビッグモンスター、キャデラック「エスカレード」をオススメしたい。その理由とエスカレードの魅力を、写真多めに紹介する。
【エスカレードが魅力的な理由 1】
公道の王者にふさわしい威風堂々の躯体



全長約5.4×全幅約2.1×全高約1.9m、重量2.7トン超という躯体を目にした者は、ほぼ全員が「デカい」と口にするだろう。それはそうだ。トヨタの高級ミニバン「アルファード」が裸足で逃げ出すようなサイズである「レンジローバー」の7人乗りよりも、ロールス・ロイスのカリナンよりも、メルセデス・マイバッハ GLSよりも大きいのだから。
特に全長はライバルたちよりも200mmも長い。これでロングボディー仕様ではないというから、偉大なるアメリカ大陸の大きさがうかがい知れる。さらに左ハンドルのみという潔さ。この巨大なボディーで左ハンドルだと、右折や高速道路の合流が非常にしにくい。


しかし、左ハンドルよりも苦労するのが駐車場選び。大抵の駐車場で駐車枠をはみ出すことは間違いない。片側に駐車枠がない場所で停めることを強くオススメしたい。さらに3mを超えるホイールベースは、まったくといってよいほど小回りが利かない。

「まったくもって、いいところないじゃないか!」と思うかもしれないが、運転した瞬間に考えが変わる。ミニバンがまるで軽ハイトワゴンに見えるような圧倒的な視界の広さ。まさにこの巨体に合った、王者の目線である。普通の道路も優雅に走れるし、車線逸脱しまくるようなこともない。もちろん下町の狭い道には行ってはいけない。
【エスカレードが魅力的な理由 2】
真に豊かなエンジン それがアメリカンV8


最高出力416馬力、最大トルク624N.mを発するエンジンは、アメリカの伝統ともいうべき自然吸気の6.2L V8 OHV型。気になる燃費は都内一般道(渋滞付き)で2.8km/L(ハイオク推奨)。さすがに環境保護団体でなくても白目をむきそうな値である。

この数値を見て、「やはりアメ車は燃費が悪い」と思うかもしれない。それは否である。高速道路を走ると燃費は一気に良くなる。写真では6.7km/Lであるが、実際は8km/Lを超えてきた。

走らせてみると、ショーファーSUVに多いターボエンジンとは異なる、真の豊かなトルクに脱帽。高速道路はもちろんのこと、一般道でもV8エンジンの心地よい響きにウットリする。10段ATと相まって、回転数は常に1500回転以下。ステアリングに伝わる振動も少なく、かといってキチンと手にインフォメーションが伝わる絶妙さ。
独特の排気音とともに「真のぜいたくはこういうものだ! さすがアメリカ」と思うことだろう。そんなエンジンも2030年には都内では販売禁止となる見込みなので、今がラストチャンスと言える。買えるうちに買っておくべきだ。
【エスカレードが魅力的な理由 3】
3列目がオマケじゃない! 超広い室内
室内に入った途端、日常の些細な悩みはすべて吹き飛ぶことだろう。というのも「エスカレードでなければ得られない」おもてなしの世界が拡がるから。シート配列は2-2-3の3列。


SUVの3列目シートは、大抵オマケみたいな扱いを受ける。だがエスカレードは違う。キチンと大人が座れるのだ。アメニティとしてはUSB Type-Cの充電端子を両サイドに配置する。驚いたのは、各席に近接したスピーカーを用いて、座席間の会話をサポートする機能も備えていること。車内がうるさいからスピーカーとマイクを使わないと会話できない、というわけではない。それくらい車内が広いクルマなのだ。








2列目のキャプテンシート(左右が独立している座席)は、ライバルのショーファーSUVと比べると質素に見える。確かにオットマンなどの快適装備はないし、シートレザーの質感も若干落ちるようにも感じた。だが、座面が広いので不満はない。
運転席・助手席のヘッドレスト反対側にはモニターがあり、HDMIをつなげれば映像やゲームが楽しめる。









運転席に座ると、4Kテレビの2倍の高精細度という湾曲型OLEDディスプレイが目に飛び込む。そのサイズなんと38インチ! 確かに綺麗な画面で実に見やすい。運転席まわりで驚いたのは極太のセンターコンソールに、冷蔵・冷凍庫を備えているところ。後席の偉い人が冷えたビールやワインを楽しむためには必須装備といえる。


ナビは輸入車に多いゼンリンの地図。日本語音声入力に対応していない、あいまい検索が弱いなど、ちょっと使いづらかったのも事実。スマホナビを利用したが、残念ながらワイヤレス接続はできないものの、きちんと動作した。




さらにアメリカの雄大さを感じさせるのは、7名すべてが乗車した状態でもラゲッジスペースは722Lの容量を確保しているということ。3列ミニバンや3列SUVで、ここまで荷室があるクルマを筆者は知らない。さらにシートをたためば2065Lというからおそれ入る。
【エスカレードが魅力的な理由 4】
「ゆとり」を覚える極上のフィール
低速域では乗り心地に粗さが見え、突き上げや横揺れを感じるが、速度域が上がるとそのような不満は解消され、ショーファードリブンらしい乗り味が待っている。さすが高速巡航がメインのクルマだ。感心したのはクルマそのもののノイズレベルが低いこと。V8エンジンに代表されるクルマ自体が発する音はほとんど聴こえず、むしろロードノイズが目立つくらいだ。
それゆえか、カーオーディオは24チャンネル36スピーカーで構成するAKG「スタジオリファレンスシステム」が搭載され、実際に活きてくる。これらのシステムはリッチな驚きを奏でたことをご報告しておきたい。

運転フィールを一言で語るなら「ゆとり」だ。走る、曲がる、止まるの動きがゆったりしていて、それが「ゆとり」と感じさせる。もちろんハイパワーに任せての走りもできるが、エスカレードには似合わない。自動車専用道で左車線をクルージングこそ本機の活きる道だ。ADAS(予防安全・運転支援システム)もシッカリ装備しているので、ロングドライブは実に快適だ。
なにより、堅牢なボディーに守られているという感覚が得られるのも特筆すべき点。驚くほどドアは分厚く、多少の段差でも車体はミシリともしない。これなら万が一の時でも安心だ。その点も含め、ショーファーSUVでなければ得られない世界が、エスカレードにはある。
【まとめ】ドライバーもパッセンジャーも満足させる
真のショーファーSUV

グローバリゼーションが進んだ現代において、クルマのお国柄を感じにくくなってきた。だがエスカレードは今のアメリカをドライバーに伝える貴重な存在。大味な部分は確かにある。だが真の豊かさ、余裕とは何だろうか。それは大きさだ。何より欧州のショーファーSUVよりも大きなサイズで、それよりも安価なエスカレードは、絶対的価格は高いとはいえ、触れれば触れるほど1800万円がバーゲンプライスに思えるから不思議だ。
このクルマは人を選ぶし、経済的に手に入れることができない人も多いかもしれないが、もし乗る機会があったら体験してみてほしい。シートに体をあずけ、目をつぶればそこはアメリカだ。
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