TOYOTA/GRヤリス“RZ“ハイパフォーマンス”(4WD/8AT)価格:533万円/テスト車:583万5450円

 今から1年以上前に行なわれた「東京オートサロン 2024」の会場で、突如発表されたGRヤリスのAT仕様車。GRヤリスそのものが2020年発売なので、AT仕様車の追加以外には変わってないだろうと思いきや、これが大幅に変わっていたりします。


 試乗の機会があったのでステアリングを握ると「これこそGRヤリスの本命」であり「日本にピッタリのクルマ」であると確信した次第。その理由とともに、後期型GRヤリスをご紹介します。


GRヤリスATが日本の道にピッタリのワケ 1
馬力アップに加えAT仕様で実践的

待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
後期型はインタークーラーに「GR-FOUR」のロゴが入る

 エクステリアはほとんど変わらず、強いて挙げるならテールランプの形状が異なるほか、フロントグリル中央のインタークーラーに「GR-FOUR」のロゴが入った程度。パッと見た時に「これが後期型」と言える人は少ないのでは?


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
1.6L 3気筒ターボエンジン

 ですが中身は一変。1.6L 3気筒ターボエンジンの最高出力は「GRカローラ」と同じ304PS/6500rpmに引き上げられ、最大トルクも400N・m/3250-4600rpmへと増強(従来型は272PSと370N・m)。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
新たに加わったATシフトレバー

 そして、コンパクトカーとしては初となる8速ATを採用。「GR-DAT(ダイレクトオートマチック)」という8速ATは、トルクコンバーター式ながら高速で変速するというから驚き。さらにモータースポーツ専用のRCグレードにも設定されています。今やモータースポーツはセミATが当たり前。しかも、レースでも使えるATということで、後期型のATこそGRヤリスの到達点。いわば実践向けのクルマといえるでしょう。


GRヤリスATが日本の道にピッタリのワケ 2
振り回しやすいコンパクトなボディー

待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 GRヤリスのボディーサイズは、全長3995×全幅1805×全高1475mm。全幅こそ1800mmをわずかに超えますが、コンパクトサイズです。高さ制限のある立体駐車場にも駐車できるサイズであるのも魅力。

さらにうれしいのは最低地上高が高いため、輪留めに気を使わなくてよいのも◎。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 このボディーサイズが峠で活きるのは言うまでもありません。6段MT車よりも20kg重いものの、1300kgという車重と相まって、実にクイックで楽しいハンドリング。前期型はどこか危うい部分を感じたのですが、後期型は安定感が増し、安心して踏めるクルマになっているように感じます。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 ドライブモードは、「スポーツ」「ノーマル」「エコ」「カスタム」の4種。スポーツを選ぶとスロットルレスポンスもシフトも「コレだよコレ!」と頬が緩む刺激的なものに。それゆえか、ATで走らせるよりもパドルを使った方が明らかに速いですし、走らせやすかったです。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 従来どおりコンソールのダイヤルでGR-FOUR(アクティブトルクスプリット4WD、前後輪のトルク配分を変える)のモードを選択できますが、ノーマル(60:40)と「グラベル」(53:47)および「トラック」(60~30:40~70の可変式)と設定値が改められています。自分でおいしいポイントを見つける楽しみができたといえるでしょう。


GRヤリスATが日本の道にピッタリのワケ 3
レーダークルーズコントロールが優秀

待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
120km/h区間でレーダークルーズコントロールを使った様子
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
クルーズコントロールを操作するステアリングリモコン

 スポーツカーでもハンドル支援系のクルーズコントロールがついて当たり前の時代となりました。当然、GRヤリスにもその機能がついています。驚いたのはその優秀さで、首都高のような複雑な道でない限り、自ら車線をはみ出して警報を鳴らすようなことはありません。高速道路で疲れるということもあり、この機能は積極的に使いたいところです。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
渋滞している時にこそ使いたいレーダークルーズコントロール
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
渋滞時でレーダークルーズコントロールを使っている様子

 都心部の高速道路には渋滞がつきものです。そんな時にこそレーダークルーズコントロールは使いたいところ。MTにもレーダークルーズコントロールが搭載されていましたが、シフトチェンジしなくてよいのは美質です。


 ですが、GRヤリスは機械式パーキングブレーキの車両ですので、完全停止まではするのですが、その後「ブレーキペダルを踏んでください」というメッセージが出ます。これをさぼるとクルマは前に進むので注意が必要。そして、ブレーキペダルを踏むとクルーズコントロール機能は解除されますので、再設定しないといけません。ちょっと手間だと思いますが、電子パーキングブレーキを搭載していないので、これは仕方のないことでしょう。


GRヤリスATが日本の道にピッタリのワケ 4
より使いやすくなった車内

待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 エクステリアは変わりませんが、インテリアは大幅にアップデート。まず目を惹くのはセンターコンソールの上側に設けられた大型のインフォテインメントディスプレイでしょう。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 トヨタ車ではおなじみのシステムですが、感心するのは音声入力の優秀さ。数年前のカーナビのようなイライラは皆無で、まるでスマホの音声認識のような使い勝手のよさ。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 後退時に鳥瞰を表示しないのは残念ですが、バックモニターは解像度が高く文句ナシ。GRヤリスのルームミラーは、ハッチバックのガラス形状から後方が見づらいので大変助かります。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 しかも、ドライブレコーダー機能なども用意されているので、追加購入しなくてよいのはお財布に優しいですね。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 このディスプレイオーディオの価格は24万3100円とのこと。しかもステアリングヒーターやJBLスピーカーなどの快適装備がついてきますので、これは付けない理由はないと思います。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 運転席で目を惹くのは、メーターパネルが指針式からフルLCD化したことでしょう。そのため、より多くのインフォメーションが表示されるようになりました。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 ペダルは当たり前ですが2ペダルに。ですが左足のフットレストは小さい印象。モータースポーツの世界では左足ブレーキが当たり前になりつつありますので、その流れなのでしょう。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス

 助手席にはUSB Type-Cインレットが新設。スマホトレイも兼ねています。この形状も新しくなりました。また、エアコンダクトの形状も楕円形から円形へと改められました。


【GRヤリスATのイマイチなところ】
高速道路で疲れやすい

 ワインディングは楽しくて速いGRヤリスのAT仕様ですが、逆に高速道路は楽しくないうえに苦行が待っていました。まず後席との会話が困難なほど、車内はロードノイズや駆動系のノイズが響きます。さらに高速道路のつなぎ目のたびに強い突き上げが、ドライバーと同乗者の体に襲いかかります。


 さらにドライバーの腕がとても疲れるというオマケまで……。これは足が硬く、ホイールベース(前後タイヤの感覚)が短いうえに、タイヤがワイドトレッドゆえ、わだちを拾いやすいことからハンドルが取られやすいように感じ、思わず力が入るというわけです。ですので高速道路では、前述のレーダークルーズコントロールを多用することをオススメします。


【まとめ】これでオプション込み583万5450円は割安

 使いやすく、それでいてコンパクトゆえ峠やワインディングなどで楽しいGRヤリスですが、車両本体価格は533万円。しかも、試乗車はオプション込みで583万円でした。


待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
シビック TYPE R
待望にして本命のGRヤリス(AT)が日本の道にピッタリな理由を伝えたい
GRヤリス
ロードスター

 正直なところ583万円は高額ですが、強いてライバルとして挙げられる「シビック TYPE R」のRACING BLACK Packageは599万8300円。2Lエンジンを搭載したロードスターの限定車にいたっては700万円後半になると言われています。それらと比べると四輪駆動で300馬力超えながら600万円を下回るのはバーゲンでは? と今回の試乗を通して思いました。


 ATだから普段乗りもできて、走りも楽しい。日本の道にピッタリの1台だと思いませんか?


■関連サイト


編集部おすすめ