フォルクスワーゲン・ジャパンは20日、都内で発表会を開催。2017年にワーゲンバスのコンセプトモデルが発表されてから8年、待望のフル電動ミニバン「ID.Buzz」の日本導入を発表しました。
「人」を中心に据えるフォルクスワーゲンのブランド戦略
発表会の冒頭、フォルクスワーゲン ジャパンのブランドディレクターであるイモー・ブッシュマン氏は、「お客様一人ひとりの生活、そして人との関係性を豊かにするブランドを目指す」フォルクスワーゲンのグローバルブランド戦略を強調しました。フォルクスワーゲンは60年以上にわたり日本市場で事業を展開しており、「人」を中心に据えるというブランド哲学は、車を単なる移動手段としてではなく、人生を共に歩むパートナーとして捉える姿勢に表れています。

これまでもフォルクスワーゲンはエンジン車からハイブリッドモデル、EVといった多種多様なモデルを展開してきました。そして今回、この「ID.Buzz」の投入をもって、「日本市場におけるフォルクスワーゲンは新たな段階へと進むことになる」とブッシュマン氏は話しました。


伝説の復活! ワーゲンバス「Type 2」から「ID. Buzz」へ
次に登壇したフォルクスワーゲン ジャパン プロダクトマネージメント シニアマネージャーの沢村武史氏は、「ID.Buzz」のルーツである「Type 2」、通称「ワーゲンバス」の歴史と、その復活への道のりを詳しく解説しました。


Type 2は1950年に生産を開始、75年以上の時を経て日本で走り出すことになります。Beetle Type 1をベースに開発されたType 2は、多人数での移動、商用バン、そしてキャンピングカーとして多岐にわたる用途で親しまれました。特に1960年代には、ヒッピー文化の象徴として自由と平和を歌う彼らの表現手段となり、熱狂的なファンを獲得しました。Type 2の生産は2013年に終了しましたが、フォルクスワーゲンはその後も、そのアイコニックなデザインを継承するコンセプトカーを複数発表し、量産化を目指してきました。

そして2022年、このコンセプトがまったく変わることなく量産モデルとしてワールドプレミアを迎え、日本市場には「ID.4」に続く第2弾のEVとして正式導入されることになったのです。
象徴的なデザインと最新テクノロジーの融合
「ID.Buzz」のエクステリアは、Type 2から受け継いだ2トーンカラー、フロントのVシェイプ、丸みを帯びたフォルムといった象徴的な要素と、現代のEVに求められる空力性能やLEDライトなどの先進技術が融合したデザインが特徴です。

本体サイズはProが全長4715×全幅1985×全高1925mm、ホイールベース2990mm、重さは2550kg。Pro Long Wheelbaseが全長4965×全幅1985×全高1925mm、ホイールベース3240mm、重さが2720kgです。
走行性能では、最高出力286PS、最大トルク560Nmのモーターを搭載し、0-100km/h加速は7.7秒を誇ります。
充電も非常にスムーズで、90kWの急速充電であれば約40分でバッテリー残量20%から80%まで充電が可能です。さらに150kWの急速充電器を使用すれば、さらに速い充電が可能となります。
フォルクスワーゲンは日本全国370拠点に及ぶ日本最大級の急速充電ネットワーク「TCA」を1年間無料で提供し、外出先での充電の不安を解消してくれるそうです。

ユーザーフレンドリーな室内空間と先進機能
インテリアは、「日々の生活を最大限に楽しむために考え抜かれた設計」がなされています。ゆとりのある3列空間に設けられたシートは、乗車人数や荷物に合わせて自由にアレンジが可能で、最大2469Lという広大な荷室スペースを実現します。3列目シートは分割可倒式で取り外しも可能であり、趣味や用途に合わせた柔軟な使い方ができます。


機能面では、パワースライドドアが標準装備され、足のジェスチャーによる開閉機能など、利便性が徹底的に追求されています。デジタルコックピットには、直感的な操作が可能な12.9インチの大型タッチスクリーンや音声で操作するボイスアシスタントなど、最先端の機能が凝縮されています。安全性能についても、トラベルアシストをはじめとする最新の運転支援技術と先進安定機能が標準搭載されており、「安全性はすべてに優先する」というフォルクスワーゲンの思想が具現化したとのこと。

日本仕様のラインナップと価格
日本市場には、ノーマルホイールベースの6人乗り仕様「Pro」と、ロングホイールベースの7人乗り仕様「Pro Long Wheelbase」の2つのボディータイプが展開されます。ロングホイールベースモデルは、ノーマルモデルと比較して全長が250mm長くなっており、より車内空間に余裕があります。

エクステリアカラーは、3色の2トーンカラーを含む全6色から選択可能で、インテリアもカラーコーディネートされたバリエーションが用意されます。

車両本体価格は、「Pro」が889万2000円、「Pro Long Wheelbase」が997万9000円です。オプションとして「アップグレードパッケージ」(70万円)にはIQ.Light LEDマトリックスヘッドライトやパワーシート、シートヒーターなどが含まれます。Pro Long Wheelbase専用の「ラグジュアリーパッケージ」(29万7000円)にはパノラマルーフやHarman Kardonサウンドシステムが設定されています。

【まとめ】新時代のワーゲンバスは人々の暮らしを豊かにする
フォルクスワーゲン「ID Buzz」の日本導入は、単に1台の新型車が発表されたという以上の意味を持っています。それは、フォルクスワーゲンが長年にわたり培ってきた「人々の生活を豊かにする」というブランド哲学を、電動化時代において新たな形で具現化したと言えるでしょう。

Type 2のアイコニックなキャラクターを受け継ぎながら、最先端のEV技術と先進機能を搭載した「ID.Buzz」は、ユーザーの多様なライフスタイルに寄り添い、個性を表現する唯一無二の存在となりそうです。価格はフォルクスワーゲンの中でもトップクラスに高価ですが、「車を通じた豊かな体験」は多くの人々にとって魅力的に映ることは間違いありません。
この「新時代のワーゲンバス」が、日本の路上を走る日を楽しみに待ちましょう。
写真で見る「ID.Buzz」












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