AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)ジャパンによる「生成AIにおける取組に関する記者説明会 Amazon Bedrock最新アップデートからAIエージェントまで」が開催されました。最近はクルマ関係でよく名前が出てくるAWS。

海外のレースでも「powered by AWS」というレース名を見かけるくらい、「クルマの影にAWSアリ」という状況です。そこで、今回の記者説明会でAWSの取り組みを取材してきたので、レポートします。結論から言うと、あまりクルマとは関係なかったのですが……。


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アマゾンが提供する生成AIサービス
「Amazon Bedrock」とは

 AWSによる「生成AIにおける取り組み」の記者説明会が実施されました。その内容はAWSによる新サービスの発表ではなく、これまでAWSが生成AIに関するサービスを提供する中でわかった、近年のトレンドや生成AIを上手に活用している企業の特徴などを説明するものでした。


これからクルマにも搭載される? AWSによる「生成AIへの取り組み」でトレンドなどを細かく解説
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長 小林正人氏

 ちなみにAWSとは、名前の通りにアマゾンが提供するウェブ・サービスを示します。クラウドを利用するサービスとしては世界ナンバーワンの存在です。また、アマゾンとしては生成AIに関して、「Amazon Bedrock」というサービスを提供しています。これはアマゾンをはじめ複数の企業がリリースする基盤モデル(FM)、いわゆる生成AIをひとつの窓口で利用できるというものです。


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 それ以外にもAWSの顧客に向けた「生成AI実用化推進プログラム(モデルカスタマイズコース/モデル活用コース/戦略プランニングコース)」や、生成AI活用を支援するチーム「AWS生成AIイノベーションセンター」「機械学習分野のAWS公式認定」制度など、さまざまな生成AI活用のためのサービスを用意しています。


生成AIのお試しから、ビジネス価値の創出へ

 「今年、2025年は生成AIによる、ビジネス価値の創出。これにお客様の注目、注力が移りつつあるのかなと思っております」という、AWSのサービス&テクノロジー事業総括本部技術本部長の小林正人さんの言葉から説明会は始まりました。


 小林さん曰く「これまでは生成AIを使うことまでがゴール」だったところ、今年は実際に生成AIを使ってビジネス的にどんな価値を生み出せるのかにフォーカスされるようになったというのです。そのうえで、実際に生成AIを利用してビジネスをスタートするプロセスが見えてきたと言います。


これからクルマにも搭載される? AWSによる「生成AIへの取り組み」でトレンドなどを細かく解説
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 その中で成功したケースは「反復的なテストと評価」「本格稼働後もテストを繰り返す」に特徴があったというのです。


 また、生成AIを活用してビジネス的価値を生み出す企業には、以下のような共通点があったとも言います。それが「ビジネス課題から逆算して、解決する課題を定める」「試行錯誤してよい範囲を明確にする」「データ戦略を定義する」「変革に組織として取り組む」の4点です。


生成AI活用はより多様に、より高度に、より広い領域へ

 そうした生成AI活用のトレンドは、より多様化し、より高度化し、より領域が拡大していると言います。多様化とは、テキストや画像などの入出力形式がより多彩になり、また用途的にも万能モデル、タスク特化型モデル、マルチモーダルモデルなど多様になっているとか。


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 高度化は、生成AIに求める要件が高度になっていることを示します。そして、簡単で価値の小さな使い方から、より難しい使い方、そして難しいだけでなくビジネス価値の大きな領域と、使う領域が拡大しているというのです。


 さらに生成AIの活用領域が拡大するのにともない、提供者が果たすべき責任も大きくなっていると説明します。そこで考慮すべきは「AIシステムの制御の仕組み」「プライバシーとセキュリティ」「安全性」「公平性」「信憑性と堅牢性」「説明可能性」「透明性」「ガバナンス」の8点。そして、それを実現するには「人材の育成」「ユースケースごとのリスク評価」「継続的な改善」「入念なテスト」が必要だというのです。


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生成AI活用のためのAWSのサービスいろいろ

 説明会の後半では、AWSによる最新の生成AIサービスの内容が説明されました。大きくAWSの生成AIサービスには3つの階層が存在します。


 それが「基盤モデルのトレーニングと推論のためのインフラストラクチャ(Amazon SageMaker AI/AWS Trainum/AWS Inferentia)」「生成AIアプリケーションを構築するための基盤モデルとツール(Amazon Bedrock)」「生産性を向上させるAIアプリケーション(Amazon Q Business/Amazon Q Developer)」といったものです。また、最新のMCP(Model Context Protocol)も対応済みだとか。


 具体的なAWSのサービス導入例としてはウェザーニュース社の「お天気エージェントのわずか1ヵ月でのリリース」や、「クラウド予算計画策定が、1週間から数時間への短縮」「バナー広告のAI作成により、顧客獲得単価を73%削減」「対話型音声AIサービスの解析速度を5倍上に高め、コストを4分の1に削減した」などが報告されました。


これからクルマにも搭載される? AWSによる「生成AIへの取り組み」でトレンドなどを細かく解説
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 最後のQ&Aでは、「AWSはお客様の求めるものを作っていく」というのを基本スタンスとし、生成AIへの取り組みを技術と自在の双方から支援していくと答えていました。


 日本における生成AIサービスが実用化されるときは、その陰にはAWSが存在しているということでしょう。


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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。


 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。



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