Honda/シビックRS(419万8700円)

 昨年、Hondaから発売された「シビックRS」。発売後しばらくしたら受注停止になったくらい人気です。

そんなシビックRSをようやく試乗したので、乗って感じた「This is サイコーに ちょうどいいHonda!」である理由を述べていきたいと思います。


「RSを出すならTYPE-Rを作れ」と思ってた時期がありました

Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
ガソリンエンジン搭載の11台目シビック

 話はシビックRSの登場前、2024年前半にさかのぼります。当時11代目のシビックのラインナップは、最上位にスポーツグレードのTYPE-R、イマドキのハイブリッド車e:HEV、そして1.5L 直4ターボエンジン車を用意していました。


 その中でガソリンエンジン車にはAT(CVT)のほかに3ペダルのMTを設定。当初、ガソリンエンジン車(TYPE-Rを除く)のうち、MTの販売比率が約35%だったそうですが、2023年には58%へと上昇。気づけば人気グレードになっていったようです。その理由はというと、新車でMT設定のある車種が少ないことと、TYPE-Rが2年近くに渡って受注停止状態だから? と想像します。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
東京オートサロン2024で発表されたシビックRS

 そんな中、2024年の東京オートサロンでシビックRSは華々しくお披露目されました。TYPE-Rグレードが出る以前、RSはHondaのスポーツグレードに付けられた名前であり、その始まりは初代シビックにまで遡るとのこと。ちなみにRSとはロードセーリングの略で、水上を帆走するように、悠々と気持ちよくハイウェイを走る、そんな想いが込められているのだとか。


 そんなこんなで世間は「シビックから久々のRSグレードが出る!」と歓待ムード。一方、天邪鬼な筆者は「それよりTYPE-Rをもっと作るべきじゃないか?」とも思ったり。


 約10ヵ月後、シビックRSが販売開始したのですが、驚いたのは価格。

なんと約420万円と、グレードによってはベース車両から70万円以上も高い値付けがされたのです。その理由はRS専用パーツのほか昨今の原価高騰云々らしいのですが……。


 しかもシビックRSの登場により、1.5L 直4ターボエンジン搭載車のMTグレードは廃止。よって3ペダルのシビックに乗りたければ、TYPE-RかRSのいずれかの選択肢しかない、というわけです。ハイブリッドの時代、MTは贅沢品になったのです。しかも、TYPE-Rの価格は約500万円(当時)。これまたRSと約80万円の価格差しかありません。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
シビックTYPE-R
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
シビックTYPE-R RACING BLACK Package

 悶々とした気持ちで今年の東京オートサロンのHondaブースに足を運ぶと、今度はTYPE-RにRACING BLACK Packageなるものを追加すると言い出したではありませんか! またまた驚いたのはそのお値段で、なんと約600万円。ここでも「専用パーツ代と物価上昇分」という理由らしいのですが、「RSとTYPE-Rの差は170万円だったらRSに価値はあるかな」と妙に納得。


 しばらくして、RACING BLACK Packageの受注が始まったと思いきや、今度はRSが受注停止に……。世の中、なかなか上手くいかないものです。なお、RSは現段階(7月下旬)で受注再開の公式アナウンスは特に見当たらないようです。


 そもそも、なんでRSを作ろうと思ったのかとHondaに尋ねてみました。すると「エンドユーザーからTYPE-Rでは乗り味がハードすぎる。普段使いしながらも走りが楽しいMT車を作ってほしい」という声があったため、とのこと。


 筆者は数回TYPE-Rを試乗しましたが、一度もTYPE-Rが苦痛だと思ったことはありませんし、そういう人のためにこそ、普通のシビックMTがあると思うのです。もしくはホンダアクセスがModuloブランドのスポーツサスペンションを作るか、シビックModulo Xを設定すればよいのでは? 筆者は、この点でもRSグレードを設定する理由がまだ理解できていませんでした。


【TYPE-RではなくRSを選ぶ理由 その1】
扱いやすさと適度なパワーと使い勝手の良さ

Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
全長4560×全幅1800×全高1410mm
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 サスペンションとブレーキが強化されているのですが、車高は標準に比べて5mm下げた程度。TYPE-Rは輪留めによってはリアバンパーが傷物になるのですが、RSは余程高い輪留めでない限り擦ることはないでしょう。また、TYPE-Rは車幅が1.9m近いのですが、RSは1.8mですので、立体駐車場でホイールを削る心配も少ないでしょう。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 最高出力182PS、最大トルク240N・mというエンジン出力は、前モデルのガソリンエンジン仕様と変わりないものの、トルクフルなセッティングのためか、街中の走行はかなりラク。発進時にアクセルを不必要に煽る必要はありません。TYPE-Rの330馬力に比べると、RSの182馬力は大人しく見えます。でも必要十分どころか、街中で全開することは、まずないでしょう。


 RSは軽量シングルマスフライホイールを採用し、レスポンスアップを図ったと謳います。

街中で軽量フライホイールの恩恵を感じることは少ないですが、ワインディングでアクセルレスポンスの向上は確かに感じることができました。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 ちなみに燃料はハイオクのみ。これはガソリンエンジンのシビックも同じです。ですが、e:HEV仕様はレギュラー対応です。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 MTの操作に慣れていないと、ガクガクしたり坂道発進でエンストしがち。ですが、レブマチックシステムと電動パーキングブレーキによるブレーキホールド機能により解決できます。しかも従来Hondaのオートブレーキホールド機能は、車両の電源をオフにすると解除されたのですが、シビックRSでは設定を保持。乗るたびに設定をする必要はありません。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 使い勝手の面で見ると、TYPE-Rの後席は2名しか着座できませんがRSは3名乗車が可能。残念ながら、後席にUSB充電端子が用意されていないのは、今までと同様です。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 ハッチバックスタイルなので、バックドアは大きく開き荷物の出し入れがかなりラク。しかもプライバシーシェードが使いやすいのもよく、普段使いとして文句はほぼありません。


【TYPE-RではなくRSを選ぶ理由 その2】
Googleアシスタントで幸せいっぱい

Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 インテリアはレーシーなTYPE-Rと異なり、落ち着いた雰囲気。その中で赤い加飾を入れてスポーツ感を演出しています。シートは適度なホールド感があり、快適さとスポーティーさを両立させています。


 ハンドルはスムースレザーで触り心地が上々、赤いステッチもスポーツ感を与えてくれます。なのですが、N-ONE RSのステッチはオレンジ、FIT RSはイエローなので、そこは統一した方がブランディングの面でよいかなと。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 高速道路巡行に便利な車線監視機能付き前走車追従クルーズコントロールも標準搭載。マニュアル車でクルーズコントロール? しかも前走車追従? と疑問に思うでしょうが、ちゃんとギアチェンジをすれば追従してくれます。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 ASCII.jpらしくインフォテインメント周りをチェック。まずUSBがType-Cに変更され、使い勝手が大幅アップ! これは実にウレシイ改良です。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 そしてアコードに続きシビックにもGoogleアシスタントをビルトイン! 音声入力で目的地入力ができるほか、エアコンの温度設定まで変更できるのですからエライ! これはこのクルマに限ったことではないのですが、本当に最高の使い心地で、スマホを繋げる必要はありません。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Apple CarPlayを使っている様子
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Android AUTOを使っている様子(しかもワイヤレス!)
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 もちろん、Apple CarPlayも使えます。しかもワイヤレス接続にも対応。なのですが、こちらはワイヤレスのAndroid AUTOにも対応! それまで国内販売車でワイヤレスAndroid AUTOに対応する車種は少なかった(というより皆無に等しい)ので、Appleの方が……と思わなくもなかったのですが、ワイヤレスAndroid AUTO対応によりiPhoneでもAndroidスマホでも繋げられるようになったのは、最高の進化です。


【TYPE-RではなくRSを選ぶ理由 その3】
良い意味で古典的な乗り味

 筆者は幾度かシビックTYPE-Rの公道試乗をしたことがありますが、車両に羽根がついているためか、走っていると高い確率で、黒と白のツートンカラーの乗り物に目を付けられます。ですがRSは見た目が大人しいためか、そのような事はありませんでした(もちろんとんでもない速度で走っていたら目を付けられます)。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由
シビックRS

 さて「エンドユーザーからTYPE-Rでは乗り味がハードすぎる、普段使いできながらも走りが楽しいMT車を作ってほしい」という声を受けて作られたというシビックRSですが、一般道では結構突き上げが強い印象。TYPE-Rの方が乗り心地がよい気が……。というのも、TYPE-Rは電子制御式のアクティブダンパーシステムを採用しているから。乗り心地と言う点ではTYPE-Rよりハードという印象を受けました。


 排気音やメカニカルノイズなどはTYPE-Rよりは静か。それでも太くて力強いエキゾーストノートをシッカリと聴かせてくれます。気になるのは、高速道路でロードノイズが盛大に車内に聞こえてくるところ。後席の人と会話をする際は、ちょっと大きめな声で話をする必要があると思います。


 引き締まった乗り味は、速度を上げるに従い良い方向へと印象が変わります。高速道路の段差なども、硬いながらもスグに振動が収まりますし、ワインディングでの高速S字の切り返しなどは、TYPE-Rより楽しい! 良い意味で古典的スポーツセダンで、クルマを操っているという感覚はTYPE-Rよりも上回っているように感じるから不思議なものです。


Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 古典的スポーツセダンゆえか、ステアフィールは重ためでズッシリとした手応え。

クラッチは適度な重さで、シフトレバーはショートタイプながらも、こちらも剛性感のある印象。乗り味と相まって、TYPE-Rよりも楽しいと思わせる生理的心地よさ、クルマを操る面白さがあるように感じます。


 そして1.4トンという重量ながらも、どこかライトウェイトスポーツのような身のこなしにも好感。昨今、2トン越えの電気自動車に乗ることが多かったためか「クルマは軽い方が楽しい」と、改めて思った次第です。


【まとめ】プアマンズTYPE-Rではない!
RSしかない魅力がたくさんある

Honda「シビックRS」が「This is サイコーに楽しいHonda!」である3つの理由

 乗る前まで「RSを買うなら、追金で赤バッジ(TYPE-R)……」と思っていました。ですが乗ってみると、これが浅はかで誤りであることに気づかされました。RSはある意味においてTYPE-Rよりも手強く、操る楽しみを味わえるクルマ。ヤンチャだった人がオトナになって、それでもちょっとは運転を楽しみたい……という人にピッタリです。


 決してプアマンズTYPE-Rではなく、今サイコーに楽しいHonda! の1台と断言できそうです。やっぱりHondaは走りが楽しめないとね。


■関連サイト


編集部おすすめ