「ありかも、BYD!」などと悠長なことは言っていられない。
SUVなので荷室も広い! 使い勝手のいいEV



まず「シーライオン7」という、ちょっと変わった名前から説明しよう。シーライオンはともかく、7とはどういう意味なのだろう。担当者に聞いたところ、BMWでいうところの「1シリーズ」や「7シリーズ」のように、BYDラインアップの中での大きさを示しているのだという。
そして、7は同社の中ではかなり大型のモデルにあたるとのことで、ボディーサイズは全長4830×全幅1925×全高1620mm/車重2340kgと、日産「アリア」よりも大きいのだ。さらにカタログ航続距離は590kmと日産アリアB6の470kmを上回るにも関わらず、シーライオン7の方が164万円も安い! これを価格破壊王と言わずして、何と言おうか……。





電動テールゲートを開けて、荷室から見てみよう。容積はBセグメントSUVとは違うところをみせつける500リットルと大容量。しかも床は二重床になっており、充電ケーブルなどを入れておくのに便利だ。側面にはサブウーファーを搭載。
なぜデンマークブランドなのかというと、創業者であるウィルフリード・エーレンホルツ元CEOが2014年、中国のGoerTek(ゴアテック)に所有する株を売り渡したから。GoerTek社はiPhoneやAirPodsなど、Appleの主要製品を生産するかたわら、音響部品や自動車部品なども手掛けている。BYDからしたら、国内に有名ブランドがあったというわけだ。





後席ドアを開けると革張りの上質な室内が拡がっていた。フラットな床面は電気自動車ならでは。ちなみに床下にはBYDのお家芸である、リン酸鉄リチウムイオンによるブレードバッテリー(総電力量82.56kWh)が敷き詰められている。
寒冷地のためにバッテリーが温められるよう進化した
シール(SEAL)から進化した点として、バッテリーを温める機能が設けられたとのこと。寒冷地で充電する際に、より多くの電力が蓄えられるようになった。センターにはエアコンの吹き出し口のほか、シートヒーター、そしてUSB Type-Cのサービスレセプタクルが用意されていた。




運転席も「これで本当に495万円?」と何度もプライスリストを見直したほどの上質空間。しっかり電動パワーシートだし、センターディスプレイだって大きい。メーターパネルはフル液晶だし、ステアリングの質感もシットリとした手触りだ。

そのメーターパネルの画面だが、字が小さいうえに、アイコンが何を意味しているのか、パッと見た際に分かりづらい印象。正直、老眼には辛かった……。



大型モデルということもあり、センターコンソールの幅はかなり広め。驚いたのはスマホトレイで、ワイヤレス充電の出力50Wもさることながら、充電中のスマホを冷やすためのクーリングファンが設けられているのだ。さすがバッテリー屋だと感心した。
そしてドリンクホルダーは、なんと深さが変えられるようになっているのだ。これはほかのメーカーも見習ってほしいところ。

一方、使いづらいのがUSBまわり。Type-Aは車両との接続用、Type-Cは充電用なのだが、センターコンソールの下段の奥まった場所に、しかもType-Aであるから、年老いた体ではケーブルを差し込むのに一苦労。もっとも一度ケーブルを差し込んだら、あとはつなげっぱなしだからいい、という割り切りなのだろう。





ナビやオーディオはもちろんのこと、エアコン操作、チャイルドロックの施錠/解錠や各種シート機能の操作、窓やガラスルーフのシェードの開閉まで、すべて15.6インチのタッチディスプレイで行なう。驚いたのはアニメーションがグリグリ動くこと。
画面上で指をなぞるだけで、グラスルーフ越しに青空が見えるのは感動したものの、「その操作をしている間、ナビが見えないんだけど」とも。エアコン操作も同様だ。ボタンを少なくすれば、コストは安くなるのは理解できても、エアコン操作くらいはボタン式の方がいいような気がした。

ディスプレイは縦方向にも回転可能。ナビを観るなら、こちらの方が使いやすいだろう。


フロントボンネットを開けると、まるでポルシェ911のような収納スペースが姿を現わした。
まだ粗い部分もある走行性能
今後のアップデートに期待



走行モードは雪、エコ、ノーマル、スポーツの4種類。さらにメニュー画面からパワステの応力とブレーキのフィール、そして回生量の調整もできる。シンプルに2段階なのは好印象。確かにすべてわかりやすい変化であった。

モーター最高出力312馬力、最大トルク38.7kgf・mというスペック通り、EVらしい瞬発力で車体を引っ張っていく。
ただ、峠の下りなど強めにブレーキを踏んだ際、油圧ブレーキと回生ブレーキの協調に違和感を覚える場面があったり、赤信号などで完全停止する際に少しブレーキを抜いてもカックンになりやすいように感じた。とはいえ、これらは重箱の隅をつつくような話で、ソフトウェア制御で直りそうだ。
だが、ソフトウェアで直らない部分もある。足が柔らかいのに、路面の凹凸による突き上げが強いのだ。ブレーキをかけると盛大にノーズダイブするにも関わらず、コーナーではロール量が少ないことから、おそらくバネは柔らかくスタビライザーは固めのセッティングで、ダンパーが振動を吸収しきれていないのだろう。
この挙動はシール(セダン)でもドルフィン(SUV)でも感じた。また、高速道路の車線維持が他社の同機能と比べて弱い印象も受けた。中国の道は日本よりも整備され綺麗なのかもしれない。
しかし前述のとおり、ほかの部分のデキがイイのも事実。なにより同クラスのEVと比べると安い! 「ありかも、BYD!」という言葉に頷きつつも、なぜか焦りを覚えた。
■関連サイト