今や超希少なMT車スズキ「スイフト」
自動車教習ではATが基本となるなど、今やMT車は超希少な存在に。愛車選びにおいても、特に実用車となれば、MTは貴重な存在となってしまいました。そんな時代に、MTを選べるのが、スズキのコンパクトハッチ「スイフト」です。
見た目じゃ分かりませんが、MT車のスズキスイフトです
スイフトMT仕様といえば、国産でも貴重となったホットハッチのスイフトスポーツを思い出しがちですが、歴代の標準車でもしっかりとMT車が設定されています。2023年12月にフルモデルチェンジを受けた現行型ですが、さすがにニーズが限定されるからか、3グレードから構成されるCVT車とは異なり、中間グレード「ハイブリッドMX」のみに。しかも、前輪駆動車に限定され、価格は192万2800円。そう、自由に選べるのはボディーカラーだけというストイックさなのです。

スイフトMTはマイルドハイブリッド仕様で燃費良し
中間グレードなので、一部の装備や華やかな装飾が省かれますが、性能面は上級車と同等で、1.2L 直列3気筒DOHCにISG(モーター機能付き発電機)を組み合わせたマイルドハイブリッド仕様(モーターがエンジンのアシストを主とする)です。エンジン性能は、最高出力82ps/5700rpm、最大トルク108N・m/4500rpmを発揮。モーター性能は、最高出力3.1ps、最大トルク60Nmでアシストしてくれます。
このパワーユニットに、5速MTが組み合わされます。MT車のスペック上の優位点は、やはり燃費でしょう。WLTCモードでは、CVT車より0.9km/Lアップの25.4km/Lとなり、もちろん現行モデル最高値。そして、モデル内で唯一のエコカー減税100%対象となるので、購入時に重量税が免除になるという、お財布にやさしいグレードでもあるのです。

コクピットは、他モデルとほぼ同じ。最上位「ハイブリッドMZ」の電動パーキングブレーキが採用されないかわりに、安定のハンドタイプのサイドブレーキを装備。さらに5速のMTシフトレバーに加え、足元にはクラッチも合わせた3ペダルを装備します。



クラッチを踏まないとエンジンがかかりません!
それでは、ドライブに連れ出すために始動しましょう。その際にはひとつの儀式が必要です! そうクラッチペダルを踏み込むこと。MT車には、クラッチスタートシステムが装備されているため、AT車で行なう安全のためのブレーキペダルの踏み込みに加え、クラッチペダルも同様の操作が必要なのです。クラッチを踏み忘れると、エンジンは始動しません。


MT乗りには常識となっていますが、今や知らない人も多いはず。ちなみに、クラッチスタートシステムは、始動時の誤発進の安全対策として、1999年以降の生産車より順次採用され、今ではすべてのMT車に標準化が義務化されています。
エンジン始動時はエンジンスターターを使いますが、マイルドハイブリッド仕様のスイフトなので、エンジンの再始動はISGによるベルトドライブとなるので振動が少なく、静かなのがうれしいところ。
クラッチペダルやシフトの操作は、軽やかでスムーズ。アナログ2眼式メーターパネルなので、エンジン回転数も分かりやすくなっています。MTは各ギアの守備範囲も広い5速なので、一般道では、3速や4速を多用したモノグサ運転も可能です。


残念ながら(?)スポーティーさはナシ
スイフトのMTというと、スイフトスポーツをイメージするかもしれませんが、期待されるスポーツ性は、正直まったくなし。エンジン音やシフトフィールに官能的な部分もありません。極めて基本に忠実なMT車なのです。一気に5速までシフトアップすると、多少の加速と巡航ならばそのままでOKという感じ。個人的には、6速化でもうちょっと加速重視の設定とし、エンジンとの対話を楽しみたいところ。でも、これこそがスイフトMTの狙いなのです。
MTの運転が苦にならないように、操作系は扱いやすさを重視。さらにシフト操作を必要最小限とするべく、あえての5速を選択しているのです。その意図を汲めば、確かに街中でも高速でもMT操作のわずらわしさは感じにくくなっています。しっかり、ヒルホールドコントロール(坂道発進のアシスト機能)も装備されていますから。
スポーツモデルの継承に期待!
すでに高齢ドライバーの多くがAT車が当たり前となった今、ベテランドライバーでもMT派は少数となってきています。それでもMTを設定し続けることに、ユーザー想いのスズキのこだわりが表れています。


しかし、新型スイフトの素性が良いだけに、伝統のスポーツモデル(スイフトスポーツ)の継承に期待してしまうのも本音。現行となる先代ベースのスイフトスポーツは、特別仕様車だけとなり、在庫もわずかと聞きます。一人のクルマ好きとしては、新型のニュースが待ち遠しばかり。でもスズキからは、スイスポに関する情報は一切ありません……。
もし新型が出ない、時間がかかるようならば、先代同様、限られたパワーを欧州仕込みの足回りで楽しむ「RS」の設定をお願いしたいと切に願います。
そして、直接的なライバルとなるトヨタ「ヤリス」は、なんと1.5Lエンジンで6速MT。軽さと燃費の良さは、スイフトの勝ちですが、近しい存在だけに、いつかライバル対決も試みたいと思います。

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