スマホを使い充電を行なうユビ電の集合住宅向け充電サービス

 集合住宅向け充電サービスを展開するWeCharge(ユビ電)は、八王子市にある集合住宅「グレーシアパーク八王子みなみ野」の274駐車区画に、EV充電コンセントを設置。充電サービスを開始しました。


 その様子や話を聞き、日本における自動車電動化への課題を感じたのでレポートします。


築25年の集合住宅に最新の充電設備274口を設置した

築25年の集合住宅に274口のEV充電設備を一斉導入! 将来6kWhにも拡張可能で住民の満足もアップ
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グレーシアパーク八王子みなみ野のエントランス
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グレーシアパーク八王子みなみ野の駐車場(の一部)
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グレーシアパーク八王子みなみ野の駐車場(の一部)
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駐車場に設けられた200V出力コンセント
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充電コンセントの下には、大電流に対応できるケーブルが設けられている
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コンセントのために設置した電柱
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充電専用の変電施設
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配電盤

 グレーシアパーク八王子みなみ野は、2000年11月に建てられた、総戸数225戸の集合住宅です。最寄り駅はJR横浜線「八王子みなみ野」から徒歩15分の場所にあります。駐車場が274区画と住居数よりも多いのが特徴で、1世帯に2台所有というニーズにも対応しています。ユビ電はこの全駐車区画に200Vコンセントを設置。現状は車両に付属(またはオプションとして販売する)するケーブルによる3kWh充電のみの対応ですが、6kWh充電にまで対応できる配線工事を施しているとのことです。


築25年の集合住宅に274口のEV充電設備を一斉導入! 将来6kWhにも拡張可能で住民の満足もアップ
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充電中の様子

 では、なぜグレーシアパーク八王子はユビ電のサービスを導入することになったのでしょうか。管理組合では、2017年頃からEV対応について住民にアンケートなどを取ってきたそうです。そして2023年、東京都環境公社 東京都地球環境温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)を通じて充電サービス事業者5社によるプレゼンテーションを実施し、検討の結果、ユビ電を選んだとのこと。


築25年の集合住宅に274口のEV充電設備を一斉導入! 将来6kWhにも拡張可能で住民の満足もアップ
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 ユビ電に選ばれた理由を尋ねると「我々の強みは管理組合さまの要望に基づき、最適解を提案できること」だといいます。同社では輪番充電といったコントロール技術のほか、過去の実績などから誰もが満足できるソリューションが提案できるといいます。今回は、将来を見据えての6kWh充電に対応できる配線の導入を提案。それに伴い電柱の追加などもしたそうです。


 気になるのは住民の利用料。電気自動車利用者には月の駐車場料金に加えて、1000円~2000円の充電設備利用料を管理組合に納付、利用した分の電気代はユビ電に支払うとのこと。設備利用料は積み立てられ、将来の保守費用や6kWh充電に切り替える際の設備投資費などに充てるそうです。


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築25年の集合住宅に274口のEV充電設備を一斉導入! 将来6kWhにも拡張可能で住民の満足もアップ
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 9月6日には、トヨタモビリティ東京、ホンダモビリティ南関東、ボルボ・カー・ジャパンの3社が、住民向け電気自動車試乗会を開催。住民の1人は「充電の不安から、縁遠かったEVが選択肢に入ってきた」「EVの静粛さを体験すると、ガソリン車に戻れない」と笑顔をみせていました。


築25年の集合住宅に274口のEV充電設備を一斉導入! 将来6kWhにも拡張可能で住民の満足もアップ
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築25年の集合住宅に274口のEV充電設備を一斉導入! 将来6kWhにも拡張可能で住民の満足もアップ
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 また、電気自動車購入時の補助金などを担当しているクール・ネット東京も出展。補助金についての相談コーナーを設け、電気自動車の購入相談などを行っていました。


 気になる274口の工事費総額は、1億3324万円とのこと。そのうち東京都からの補助金は1億1298万円と、実に84%に及びます。よって管理組合の実質負担額は2026万円。管理組合は積み立てなどを切り崩して支払ったとのことでした。


国の補助金ナシでは大規模設置は難しいのが現状

 「そんなに補助金が出るのか!」「だったら俺の駐車場も」と考えがちですが、これは東京都だけの話。

隣の神奈川県や埼玉県になると、補助金の金額は大きく異なるとユビ電の担当者は語ります。「国の補助金のみですと、補助金は設置工事の半額までです」とのこと。


築25年の集合住宅に274口のEV充電設備を一斉導入! 将来6kWhにも拡張可能で住民の満足もアップ
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 さらに「補助が出るのは最高で30駐車区画までです」と、コンセントが30個までしか補助が出ないようです。「ですから今回のような大規模集合住宅の設置工事のハードルが高いのが実情です。たとえば30口に納めるよう、隣の駐車枠と共用化している集合住宅もあります。今は電気自動車の普及率が低いので問題ありませんが、増えてきたら困るかもしれません」。


 神奈川や埼玉といったベッドタウンには、大規模集合住宅が数多くあります。当然、駐車場の数も多いわけです。でも、何億円もかかる工事費を住民負担で進めるのは難しい話。結局のところ補助金が出ない限り設置するのは難しいと言わざるを得ません。


 日本政府(と環境省)は、2050年までにカーボンニュートラル実現に向けて取り組んでおり、その実現には自動車の電動化が不可欠と言われています。日本の電気自動車普及率は現在0.8%程度といいますが、WeChargeを導入した駐車場では平均5%にまで上り、設置から4年目には15.5%にまで増えているとのこと。

電気自動車普及には、自宅駐車場での充電は絶対条件といえるでしょう。


 また、電気自動車そのものに対しても、地域により行政と住民の関心度が異なるといいます。というのも、電気自動車は高額であることから、普及しているのは所得の多い大都市圏が中心。地方ではそこまで普及していないことから、車両購入時や駐車場に対する補助も少ないといいます。その一方で、カーボンニュートラルに対しては1182の自治体が賛同しています。「お金は出したくないけれど、国が進めるカーボンニュートラルには賛同する」というのが、多くの自治体の実情でしょう。


 2023年末時点で日本には約700万戸の分譲マンションがあると言われています。そのすべてに駐車場があるわけではありませんが、これらに電源を付けない限り、2050年のカーボンニュートラルの実現は難しいでしょう。すでに宣言しているのだから、実現してほしいですね。


 そして都民の方は、このチャンスを逃さず、積極的に充電設備を設けた方がよいでしょう。というのも補助金は単年度予算。来年度も実施するという保証はどこにもないのです。


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