ポルシェディーラーからの案内によると、SUVのマカンは年内にガソリン仕様車の受注を停止し、電気自動車(BEV)に一本化するようだ。となると「速いガソリンエンジンのSUVがなくなってしまう!」という気持ちになるが、安心してもらいたい。
そもそも「マセラティ」とは?
ミステリアスな名門ブランドの正体
とはいえ、マセラティはどこかミステリアスなブランドであるのも確かだ。まず街で見かけることが少なく、試乗記事も少ない。まずはマセラティの現在から話を進めたい。
マセラティは現在、ステランティス傘下の高級スポーツカーブランドという位置づけだ。創業は1914年(大正3年)とメルセデス・ベンツよりも古く、その昔レーシングカーのコンストラクターとして、アルファ・ロメオと戦うなどで名を馳せた。
フィアット傘下に加わったのは1993年。以後、一時フェラーリの子会社になるものの、現在は元の鞘に納まり、ステランティス傘下のラグジュアリースポーツカーブランドとして今に至る。当然、ライバルは同じ高級スポーツカーブランドのポルシェであることに異論をはさむ余地はないだろう。
マカンと競合する完成度
ボディーサイズで選ばれる理由
グレカーレはサイズからいってマカンのライバルにあたる。寸法は全長4845×全幅1980×全高1670mmと、マカンのEVよりちょっとだけ大きい程度。レクサス「RX」やトヨタ「ハリヤー」と同じくらいだ。街乗りをする際「これ以上大きくなると、ちょっと取り回しが面倒」と思えるサイズに納められている。マカンもRXもハリヤーも人気を集めるのは、このボディーサイズに依るところが大きい。
グレカーレのパワートレインは、最高出力330馬力の2L 直4ターボに「eBooster」(電動コンプレッサー)と、48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わせられる。電動コンプレッサーとは何かというと、ターボチャージャーが動き出す前に圧縮空気をターボのコンプレッサー部に送り込み、初期の加給をアシストするもの。
ちなみに、ポルシェのガソリンエンジンは? というと、2L 直4エンジンのマカンTが265馬力。「よーいドン」をしたら、おそらくグレカーレの方が速いだろう。
「そんなハイパワーだと粗雑なエンジンでは?」と思われそうだが、eBoosterの効果か実にトルキーでスムーズ。渋滞でギクシャクするようなこともない。実に扱いやすいことに驚いた。
テーラーメイドで理想の1台を
“フォーリセリエ”の世界
ポルシェはオプションで自分好みの1台が作れるのだが、マセラティはさらに上を行く“フォーリセリエ”がある。これは専属デザイナーとともに、豊富なエクステリアカラー、リバリー(塗装・外装カラーの配色)、ブレーキキャリパー、ホイール、そしてインテリアの組み合わせから自分だけの理想の1台を作り上げるというもの。
写真のローズピンクにストライプのグレカーレ・モデナもそれにあたる。ちなみに外装だけで「FIAT 1台はラクに買える」金額(数百万)らしいが……。
インテリアもオーダーメイドということもあって、このクラスのSUVとは思えないほど。最近は何かにつけてカーボンパネルが使われるが、丁寧に縫製されたレザークッションにウットリさせられる。
クラストップの快適性と実用性
内外装の仕上がり
後席もしっかり広さが確保されている。サイドウィンドウが小さいのが気になるけれど、身長180cmの筆者でも足元は狭くないし、ヘッドルームも確保されている。記憶の中の話で恐縮だけれど、ポルシェ・マカンより広いのではないか。
荷室が通常時535リッターと、マカンTの488リッターを超えるのも美質。後席背もたれを倒すと、さらに拡充するのはもちろん、ほぼフルフラットになるのも良い。「マセラティって、こんなにも実用的なのか?」と驚かされた。
さらに驚いたのは高級車の証ともいえるダッシュボード上の時計も含め、メーターやセンターコンソールまで液晶パネルが使われていたこと。そして、走行モードセレクターがボタン式で、センターコンソールがとてもスッキリしている。
一方、CarPlayやAndroid AUTOには少しクセがある模様。ワイヤレスではつながらないし、Androidは認識するまで時間がかかった。
モダンと伝統が融合
先進装備と古き良き「走り」の魅力
走行プログラムは柔らかい「COMFORT」、ノーマルモードにあたる「GT」、そしてハンドリングが楽しめる「SPORT」の3種類を用意。可変ダンパーなので、乗り味はシッカリと変わり、一般道ではCOMFORTにすれば滑らかな走りで快適そのもの。
ただ、柔らかすぎる部分もあり、速い速度でコーナーを曲がれば盛大にロールするし、ブレーキを踏めば思いのほかノーズダイブする。景気よく運転すると、後席の人は酔ってしまうので、このモードではジェントルな運転を心掛けたい。
マセラティらしさが出てくるのは、やはりGTモードから。良い意味で古典的で、木綿のシャツを着た時のようなザックリとした肌合いに、イタリアのダンディズムを感じた。そしてクルマがしなりながら走るかのような、剛のポルシェにはない、柔の良さがある。
SPORTモードはラテンの楽しさに溢れている。これもポルシェにはない部分だ。ポルシェはどこか運転手が冷静になる部分があるけれど、マセラティはそうした面が薄く、血が騒ぐ。
とはいえ、ギブリ・トロフェオのような愚かな血が沸騰するところまではいかない。そこはスポーツモデルで楽しんでほしいというところなのだろう。それはマカンでも同じだ。ポルシェのフレーバーは感じられても、神髄を堪能するまではいかない。
【まとめ】これからもガソリン車を!
エンスージアストに贈る1台
ポルシェ・マカンの例に漏れず、今後、自動車のBEV化は進み、ガソリンエンジン搭載車の選択肢は減っていくことだろう。もちろんガソリンエンジン車が絶滅するとは思わないが。
だが、選択肢は減らしてほしくないのだ。マセラティも本国ではBEVを作っているようだが、このグレカーレのようにガソリン車も作っていることに拍手を贈りたい。ラグジュアリーな室内、楽しい走り、マセラティは素晴らしいと素直に心がときめいた。
■関連サイト









![日清食品 ラーメン山岡家 醤油ラーメン [濃厚豚骨スープの旨みが広がる] カップ麺 117g ×12個](https://m.media-amazon.com/images/I/51YlvYcaKyL._SL500_.jpg)

