BYD/ATTO 3(418万円~)

 BYDが日本に上陸して早くも3年が経ちます。その初期導入モデルだったSUVの「ATTO 3」をASCII.jpで紹介したことがないので、今回は長距離ドライブをしながらどのようなクルマなのか試してみました。


CセグSUVとしては十分すぎる航続距離470km

 ATTO 3は、いわゆるCセグメント(全長4.2~4.6m程度の中型車)のSUVに属するクルマ。WLTCモードで470kmという航続距離を誇るBEV(バッテリー電気自動車)です。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 ボディーサイズは全長4455×全幅1875×全高1615mm。導入初期はリアに「Build Your Dreams」というロゴがあったのですが、気づけば「BYD」に変更されていました。そう、ATTO 3は2024年に商品改良していたのです。


 1.9m以下という車幅は、コインパーキングの枠にピッタリと収まります。幅が収まると何がよいって、隣にクルマが停まっている時にドアパンチしづらい(されづらい)のと、車庫枠ギリギリを狙っていたらロック板にホイールをガリガリっとしてしまうリスクが減ること。都心部では車幅の狭い車庫って本当に多いんですよね……。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 荷室容量は440リットルとCセグメントSUVとしては標準的。後席の背もたれを倒すと、ほぼフラットになるのは美質ですが、背もたれを倒す際に後席ヘッドレスト近くの紐を引っ張らなければならず、いちいち後席に回らなければならないのは、ちょっと面倒だったりします。荷室の床下にはタイヤ修理キットなどがありました。


V2H対応で「走る蓄電池」にもなる

正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 フロントに積まれる駆動用モーターは最高出力204馬力を発生し、前輪に伝えます。電気自動車というと、フロントにもラゲッジスペースがあったりしますが、ATTO 3にはありません。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 充電ポートは車両右リアタイヤ近傍に配置。

駆動用のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーの容量は58.56kWhで、一充電走行距離は470km(WLTCモード)が公称値。電力を住宅などに活用できるV2H(Vehicle to Home)にも対応しています。


初見は戸惑うけど、慣れるとクセになる内装

正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 インテリアはちょっと独特。言い方を変えると、かなりクセが強く、初見時は何が起きたのかと驚くこと間違いナシ。ですが使い込んでいくと「コレは結構考えられているなぁ」と感心したりもします。シート表皮は人工皮革で、ヒーターや電動調整機能も用意されています。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 クセが強いデザインはドアにも表れており、たとえばツイーターユニットの上にドアノブを配置したり、ラゲッジスペースのゴム紐は指ではじくと「ド・ミ・ソ」みたいな音が出ます。子どもはきっと喜ぶだろうなぁと思いながら使ってみると、これが意外と使い勝手がよかったりするから不思議です。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 センターコンソールに置かれたドライブモードセレクターも「この形は……」と思うのですが、触ると「意外と使い勝手がいいかも」と。エアコンの送風口も独特のデザインですが、これまた「あれ?」と思ったりも。「これがチャイナデザインなのか?」と思いきや、実はアウディグループに在籍していたデザイナーのヴォルフガング・エッガー氏が関わっているというから驚きです。


日本車とは逆の操作系に戸惑いも
だが回転する大画面は想像以上に便利

正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 ハンドル回りをみてみましょう。ステアリングリモコンは欧州車でみかける左手側がクルーズコントロール、右手側がマルチメディアという配列。つまり日本車とは逆です。

なのですがワイパーは右手側と、JIS規格に準拠。メーターはフルLCDなのですが、これがとても小さいという印象で、アイコンが小さくて「何の表示だろう?」と老眼には厳しめでした。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 一方、中央のタッチスクリーンは15.6インチとかなり大型。ちなみに日本導入当初は12.8インチでした。文字も大きく、これは使いやすいと思う反面、エアコンを操作しようとするとナビが見えないのはちょっと不親切かなとも。ここらへんは最近のクルマあるあるなので、BYDに限らずエアコンなどは物理ボタンを残してほしいですね。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 驚いたのは音声アシスタントが用意されていること。「ハイ! BYD」で起動し、住所やエアコンの操作ができます。しかも、日本語にもキチンと対応しているため、使い勝手は良好。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 タッチスクリーンが90度回転する機構を設けているのもBYDの特徴。これはナビ画面を見る時にかなり便利です。回転はステアリング側からも出来るのも美質です。

意外と便利なのが車庫に入庫する時などのバックカメラ表示時。縦位置の方が見やすいように思いました。


CarPlay対応だがUSB周りは惜しい

正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 スマホ周りはAndroid AUTO、Apple CarPlayに対応。ですがスマホとの接続する際のUSB端子がセンターコンソールの下段にあり、Type-Aを使っていることもあって、かなり使いづらいと感じました。ちなみに、縦位置でのCarPlay表示はできませんでした。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 後席はフラットな床面と広い足元で快適そのもの。USBはType-AとType-Cの2系統が用意されていました。


東京から福島へ。「470km」は伊達じゃない

正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 今回はATTO 3で、都内から郡山まで遊びに行ってみることにしました。東北自動車道・浦和料金所を通過した段階で、バッテリー残量が69%。果たしてどこまで走れるのでしょうか?


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 高速道路はかなり快適。思ったよりもフラットライドで、変な柔らかさや硬さを感じることはありません。また静粛性も高く、BEVということもあってワンランク上のクルマという印象を受けます。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 運転支援任せで、ひたすら北へ走行。充電ナシで郡山中央スマートICまで行けそうなのですが、降りてから充電場所を探すより高速道路で充電した方がいいと思い、バッテリー残量は19%を残した状態で安積PAで充電することにしました。走行距離としては約200km。50%分の電力を消費したということで、満充電で470㎞走行可能という話は、大袈裟な話ではなさそうです。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 90kW級の急速充電器と車両をつなげて30分充電。90kW近い電力で充電したら、残量が68%まで回復しました。これだけ電力があれば市内で充電する必要はなさそうです。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 郡山中央スマートICを出て郡山駅東口に到着。バッテリー残量は63%で、まだ余裕がありました。ここで前乗りしている人と待ち合わせ。


地方で突きつけられる充電インフラの現実

正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 その後、郡山駅から下道を走って、二本松という場所にある岳温泉へ。温泉を堪能して、バッテリー残量が45%になっていたことから「これは充電しておこう」と近くの道の駅で充電しようとしたら、機械が壊れていることが発覚! というより、午前9時から午後5時30分までしか使えないという事実に唖然……。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 翌日は東北サファリパークにお邪魔。

この時点でバッテリー残量は33%。どこかで充電しなければ東京に戻ることはできません。とりあえず東北自動車道・二本松ICに乗ります。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった
正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 安達太良SAに到着し充電開始。バッテリー残量は31%で、人間もその間に食事。なのですが、入店から注文、到着して食べて決済し、クルマに戻るまで30分というのは意外とせわしなく。せっかくハンバーグとエビフライという美味しそうなメニューを頼み、事実美味しかったのに、せわしなく食べたのは心残りでした。


 車両は80%まで充電でき、残り400km走れる状態になり、これなら都内の我が家(約260km)までは楽勝! と思いきや……。


正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 帰りは上り坂メインだったからなのかわかりませんが、帰ってみたら残り18%と意外と減ったという印象。翌日、日産系ディーラーで充電したのでした。


【まとめ】BYDの仕上がりはかなり良い
あとはインフラ。課題はクルマ以外にある

正直ナメてた……BYDの「ATTO 3」で長距離を走ったら、想像以上に“使えるEV”だった

 このように、都内から福島県なら1回の途中充電で行けるということがわかったとともに、長時間乗りながら「BYDって、失礼だけど意外とマトモ」と感心しきり。

サイズ感も良いですし、なにより418万円からというプライスタグは「ガソリンエンジン車と変わらない」わけで、電気自動車は割高という時代は終わりつつあるように思いました。


 一方、壊れた充電器を見て「インフラって大事だなぁ」とも。電気自動車の普及を考えるなら、充電器を設置したら終わりではなく、保守についても考えなければ意味はないように思いました。


■関連サイト


編集部おすすめ