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令和6年(2024年)に開催したオープン・ラボの様子
近畿大学先端技術総合研究所(和歌山県海南市)は、令和7年(2025年)8月30日(土)、一般の方を対象とした「近畿大学先端技術総合研究所 オープン・ラボ 2025」を和歌山県看護研修センター(和歌山県海南市)にて開催します。
【本件のポイント】
●先端技術総合研究所で行っている最先端の研究活動を一般の方に分かりやすく紹介
●教員による講演や体験コーナーのほか、大学院生による研究成果の発表も
●講演・体験・展示などを通して科学技術の楽しさや魅力に触れていただく機会を創出
【本件の内容】
近畿大学先端技術総合研究所は、海南インテリジェントパーク内の「生物工学技術研究センター」「植物センター」、近畿大学和歌山キャンパス内の「高圧力蛋白質研究センター」の3センターにて、さまざまな研究に取り組んでいます。
「オープン・ラボ」は平成12年(2000年)から一般の方を対象に開催しており、今回で26回目の開催となります。近畿大学先端技術総合研究所および近畿大学生物理工学部の教員による講演や体験・展示コーナー、大学院生によるポスターセッションなどを通して、さまざまな最先端の研究活動を一般の方にわかりやすくご紹介し、科学技術の楽しさや魅力に触れていただくことを目的としています。
【開催概要】
日時 :令和7年(2025年)8月30日(土)13:00~16:00
場所 :和歌山県看護研修センター
(和歌山県海南市南赤坂17番地、JRきのくに線「海南駅」からバス約10分)
対象 :一般の方(学生含む)
(1部・2部各定員90名、入場無料、要事前申込、先着順)
申込方法:WEBサイトから申込み
https://kouza.wbs.co.jp/
申込締切:8月22日(金)23:59
後援 :和歌山県教育委員会、海南市教育委員会
お問合せ:和歌山放送内 近畿大学生物理工学部公開講座係 TEL(073)428-1431
【プログラム】
<第1部>講演
13:00~14:20 開会・挨拶・講演
近畿大学先端技術総合研究所長・近畿大学大学院部長 松本和也
14:20~14:30 質疑応答
<第2部>サイエンスツアー
14:30~14:35 挨拶
近畿大学先端技術総合研究所 生物工学技術研究センター長 三谷匡
14:35~16:00 展示・体験コーナー、大学院生によるポスターセッション
【講演内容】
「大学の研究者は、どのような研究活動を選択するのか」
講師:近畿大学先端技術総合研究所長・近畿大学大学院部長 松本和也
内容:研究とは、「学術研究」と「基礎研究・応用研究」に大別されます。大学の研究者は、学問体系に基づいてこれらを選択して研究活動をしています。本講演では、講演者のこれまでの研究活動をふまえ、具体的な事例を挙げてそれらの内容を紹介します。学術研究に関しては分子生物学・分子発生学から科学的思考の理解を紹介し、基礎研究・応用研究に関しては大学発のスタートアップ起業の話題を取り上げます。
【展示・体験】
①「AIと最先端測定技術連携によるアロステリック薬剤の研究開発」
講師:先端技術総合研究所 高圧力蛋白質研究センター 教授 米澤康滋、准教授 櫻井一正
内容:私たちの体内では数多くのタンパク質が連携して生命活動を維持していますが、特定のタンパク質の機能異常がガンなどの重篤な病的状態を引き起こすと知られています。私たちはタンパク質の機能異常による病気を克服する新規アロステリック薬剤を開発し、健康社会実現に貢献する事を目指しています。具体的には、ガン特有の糖代謝に関わるNTPDaseという酵素に対して、薬剤開発の基盤となる構造ダイナミクスと機能制御機構を計算科学(シミュレーション・AI)と実験的手法(NMR)を統合して解明し、その知見を基に有効な新規アロステリック薬を開発します。本展示では、その研究背景と現在の取り組みについて解説・紹介します。
②「オオハシ、エミューおよびペリカンの性判別」
講師:先端技術総合研究所 生物工学技術研究センター 教授 加藤博己
内容:現在、急激な環境変化や人類の活動による生息域の減少など、野生動物を取巻く環境は悪化の一途をたどっており、多くの動物種で野生個体は減少しています。そのため、動物園・水族館における展示動物は、現在の個体が死亡しても新たに野生個体を捕獲して展示するのではなく、既に動物園・水族館で展示されている飼育個体から繁殖した個体を展示するようになってきました。
③「動物繁殖に向けた生殖細胞の不思議を探る」
講師:先端技術総合研究所 生物工学技術研究センター 教授 安齋政幸
内容:生殖細胞は、私たちの体の中で新しい命を作るためにとても大切な細胞です。具体的には、精子や卵子と呼ばれる細胞があり、これらが結びつくことでさまざまな動物で新しい生命が誕生します。私たちの研究室では動物繁殖研究の課題として遺伝資源を後代に保存するため、生殖細胞の形態や妊娠に向けた働きを調べています。今回、連携している動物園や水族館との最近の繁殖研究や技術について紹介し、実際の器具や体験型の展示を通じて、生殖細胞の不思議な世界を楽しんでいただける機会を提供します。
④「生殖細胞・受精卵・多能性幹細胞の研究から生物多様性の保全へ」
講師:先端技術総合研究所 生物工学技術研究センター 准教授 黒坂哲
内容:生物多様性の保全は現在の地球における重要な課題であり、当研究所では動物の生殖細胞・受精卵・多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)についての基礎研究を人工繁殖技術につなげることで、生物多様性の保全へ貢献することを目指しています。
この展示では、これらの細胞の基礎知識の解説や実物の観察を通じて、当研究所が進めているプロジェクトへの理解を深めていただくことを目的としています。
⑤「モデル動物としてのサシバエ:発生研究から家畜伝染病への展開」
講師:生物理工学部食品安全工学科 准教授 白木琢磨、先端技術総合研究所 植物センター 准教授 瀧川義浩、先端技術総合研究所 生物工学技術研究センター 講師 松橋珠子
内容:これまで研究現場ではショウジョウバエがモデル動物として活躍してきましたが、それは発生学、遺伝学などごく限られた分野でのみ活用されてきました。今回我々は、新たに吸血昆虫サシバエをモデル動物として確立しました。サシバエは家畜伝染病の伝播を媒介するため、畜産現場では大変な問題となっております。
【大学院生によるポスターセッション】
①「善玉腸内細菌Akkermansia mucinhiphila 由来の糖質加水分解酵素α-ガラクトシダーゼの機能解析」
学生:大学院生物理工学研究科 生物工学専攻 博士後期課程 3年 川﨑淳矢
内容:腸内細菌はヒトの健康に密接に関わっており、その中でもAkkermansia muciniphilaは成人の腸内細菌叢において肥満や糖尿病患者での生息数が少ない一方で、長寿者では多く生息することから次世代の善玉菌として着目されています。実際に、本菌のヒト投与試験で肥満や高血圧・肝臓障害の改善効果が報告されています。当研究室では、A. muciniphilaが腸内で生育する際に重要な働きをすると考えられる本菌由来の糖質加水分解酵素の機能解析を行っています。本発表では、宿主であるヒトが摂食した植物由来のオリゴ糖の分解に関与していると推測される本菌由来のα-ガラクトシダーゼの解析結果について報告します。
②「胚培養環境がマウス初期胚発生や産仔に与える影響」
学生:大学院生物理工学研究科 生物工学専攻 博士前期課程 1年 田中温人
内容:近年、生殖補助医療で産まれている子どもの数は令和4年(2022年)時点で9人に1人と、爆発的に増加しています。一方で、生殖補助医療は子どもの出生体重や代謝などの形質に影響を与える可能性が報告され始めています。要因の一つとして、胚培養液中の栄養基質濃度が母体環境と異なるために、胚の代謝に影響を及ぼしていることが考えられていますが、詳細は明らかでありません。本研究ではマウスの初期胚を用いて培養液中の栄養基質の量を操作し、胚の成長や発生過程の変化を詳細に観察することで、胚培養環境と胚や産仔の形質との関連性を解析しています。将来的には、よりよい培養液の開発など、生殖補助医療への貢献を目指します。
③「生殖補助医療の成功率アップをめざして 受精卵をやさしく観察する新技術」
学生:大学院生物理工学研究科 生物工学専攻 博士前期課程 1年 中園晴香
内容:日本における生殖補助医療の治療件数は年々増加していますが、妊娠成功率は約10~20%と依然として低い水準にとどまっています。要因はさまざまですが、中でも母体に移植する受精卵の選別法が侵襲的であることや、胚培養士の経験に依存した主観的な評価方法であることが一因と考えられます。
④「同じ設計図から異なる細胞へと変化する仕組み」
学生:大学院生物理工学研究科 生物工学専攻 博士前期課程 1年 片桐紗規子
内容:ヒトは約37兆個の細胞をもっています。ヒトには、筋肉や神経などさまざまな異なる機能をもつ細胞がありますが、DNAと呼ばれる設計図セットはどの細胞でも同じものを持っています。同じDNAを持っているにも関わらず、なぜ異なる機能や特徴をもつ細胞になるのでしょうか。これにはエピジェネティクスというDNA上のどの設計図を使うか決めるスイッチのような機能が関係しています。そこで、我々は、このスイッチの一つである「DNAメチル化」に着目し、特に受精卵の段階での働きを明らかにすることを目的としています。
⑤「スタッガードダブルラップ治具を用いた横弾性係数計測法開発」
学生:大学院生物理工学研究科 生体システム工学専攻 博士前期課程 2年 田中暉純
内容:横弾性係数とはせん断力に対する変形のしにくさを表す材料固有値です。複合材料の横弾性係数を取得する方法にはイオシペスク法等があります。この手法は、直交異方性体のある主応力方向に対して試験片加工の問題等があります。本研究では、クリアランスを与えたダブルラップ継手試験にてせん断変形を与えることで、新規横弾性係数測定法を提案しました。
⑥「実大津波避難シェルターのon-axis荷重-変位関係におよぼす桁断面アスペクト比の影響」
学生:大学院生物理工学研究科 生体システム工学専攻 博士前期課程 2年 河井優衣
内容:地震による津波発生時には身近な高台への避難が有効とされていますが、高台がない場合には津波シェルターなどの一時避難設備が有効です。既存の津波シェルターは高価であるため、天然繊維複合材料(GC)を使用することで低コスト化を実現し、津波シェルターの普及が期待できると考えました。先行研究ではGCを使用した桁構造津波シェルターを提案し、直径190mmのラボスケールで圧縮試験および圧縮解析を行い、桁断面アスペクト比0.08で、グローバル座屈が起こることが示唆されました。本研究では、直径500mmのセミラボスケール、直径190mmの実大サイズで圧縮解析を行い、グローバル座屈が起こらない桁厚・桁幅の検討、桁断面アスペクト比が圧縮挙動に及ぼす影響について評価しました。
⑦「CFRP桁接合試験片における新規モードIII型せん断はく離試験法のモード比改善」
学生:大学院生物理工学研究科 生体システム工学専攻 博士前期課程 1年 山下大輝
内容:本研究では、新たなモードⅢ型せん断はく離試験法を提案しており、CFRPを用いて桁接合角度が90°、36°、20°における試験および解析を実施しました。しかし、そのまま接着した試験片では、はく離が発生する際にモードⅢ以外の破壊(混合モード)が生じる課題がありました。そこで、予き裂を導入して接合面積を一定に保つことで、接合面端部の応力集中を低減し、混合モード成分の抑制を図りました。その結果、混合モードの影響は軽減されましたが、完全には排除できませんでした。そこで、試験片の幅を拡大し、接合部と桁端との距離を確保することで、モードⅡの影響をさらに抑制できると仮定し、解析によりモードⅢ比率の改善を検証しました。
【関連リンク】
生物理工学部 遺伝子工学科 教授 三谷匡(ミタニタスク)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/489-mitani-tasuku.html
生物理工学部 遺伝子工学科 教授 松本和也(マツモトカズヤ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/488-matsumoto-kazuya.html
先端技術総合研究所 教授 加藤博己(カトウヒロミ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/884-katou-hiromi.html
先端技術総合研究所 教授 安齋政幸(アンザイマサユキ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/502-anzai-masayuki.html
先端技術総合研究所 准教授 櫻井一正(サクライカズマサ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/310-sakurai-kazumasa.html
先端技術総合研究所 准教授 黒坂哲(クロサカサトシ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/1421-kurosaka-satoshi.html
先端技術総合研究所 准教授 瀧川義浩(タキカワヨシヒロ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/166-takikawa-yoshihiro.html
先端技術総合研究所 講師 松橋珠子(マツハシタマコ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/1422-matsuhashi-tamako.html
先端技術総合研究所
https://www.kindai.ac.jp/bost/about/advanced-technology/
大学院
https://www.kindai.ac.jp/graduate/
生物理工学部
https://www.kindai.ac.jp/bost/