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周南征氏
「S.T.M.翔藍首席経営顧問」「中山大学客員研究員」「広東盛和塾発起人」「ボアオ儒商フォーラム副理事長」「清華大学特任講師」……。
周氏は、これまでに3,000社以上の中小企業、6,000人を超える経営・管理分野の受講生に、先駆的な「戦略(Strategy)×理念(Total)×管理(Management)」の経営理論を説き、中小企業の安定成長を後押ししてきた。力学を学んだ秀才は、現代の兵法「借力打力」(外部の力を利用して目的を達成する)をどう実践してきたのか。先ごろ、広東翔藍企業管理顧問有限公司創業者の周南征氏に中国の百年企業を育てる構想について伺った。
■百年企業は社会の礎
日本は長寿国として知られるが、企業の寿命はさらに長い。日経BPが2022年に発表したデータによると、日本には37,085社の百年企業が存在し、さらに、200年以上続く企業も1,388社を数える。いずれも世界一だ。こうした百年企業が、日本経済を支えているとの見方もある。ここでいう「百年企業」とは長く存続する企業全般を指す。民間経済が誕生して半世紀近くになる中国で、長寿企業を育てられないか――周氏が長年探求してきた課題である。
1989年、中山大学の応用力学課程を修了した周氏は、企業の管理職に就いた。当時の中国市場は転換期にあり、粗放な成長の影に多くのリスクを抱えていた。
しかし、企業の経営理念を明確にし、企業文化や制度の監督体制をしっかり築かなければ、会社は根無し草のようなもので、長くは続かないだろうと考えた周氏は、昇進の誘いを断り、日本の北海道大学経営学修士課程に進んだ。大学院在学中、「企業のグループ経営」と「工業化住宅モデル」という二つのテーマに取り組み、前者の研究成果は、文部科学省主催のイベントで注目を集め、特別研究費の支援を受けた。
北海道大学修士課程修了後は、日本のS.T.M.グループに入社。同社の創業者である小野洋祐氏は、日本の戦略経営コンサルタントでは10指に入り、著書『超本社』『超競争の経営』は経営者のバイブルとされる。日本のS.T.M.で勤務していた期間、小野氏は、あらゆる場面に通用する経営原理・原則を体系化した「経営管理会計」を周氏に伝授し、さらにノウハウに関するシリーズ書籍の編集も指導した。
小野氏のもとで行動を共にした周氏は、日本の製造業や流通業の大手企業に対する製品開発・ブランドプロモーション・経営管理の全過程に深く関わり、さらに、40以上の子会社を擁するサンエーインターナショナルの運営管理にも携わり、パナソニック、ソニー、村田製作所といった日本を代表する企業や、東京都中小企業振興公社などの公的機関とも安定した信頼関係を築いた。
21世紀に入ると、中国の民間経済は旺盛な活力を帯び、WTO加盟によって、市場経済の大きなチャンスを掴む一方、厳しい競争にも直面した。中国の民営企業家が、いかに短期間・小規模な投資で国際市場に打って出られるか――これは、日本にいた周氏にとって重要なテーマであった。その答えを形にするため、2003年、周氏は広州で「広東翔藍企業管理顧問有限公司」(略称:広東S.T.M.翔藍)を設立した。広東S.T.M.翔藍は、珠江デルタを拠点に全国へ事業を展開し、中小企業経営者に対し、「敬天愛人」(道理を尊び、人を大切にする)の価値観や社会的使命感、長期的視点に立った経営思考などについて、経営診断・指導・日本の伝統企業を訪問サービスを提供した。
2010年、横浜盛和塾での学びを終えて帰国した周氏は、志を同じくする7人の企業家とともに「広東盛和塾」を設立。翌2011年には、稲盛和夫氏を招き、「稲盛哲学報告会」を開催。会場は2,500人以上を超える聴衆で満員となり、熱気に包まれた。
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稲盛和夫氏を招き、「稲盛哲学報告会」を開催
広東盛和塾は創立以来、「社会に奉仕する学びの場」という理念を貫き、15年間で約5,000人の塾生を経済界に送り出してきた。塾生の企業の総売り上げは1,000億元(約2兆円)以上に達し、従業員数は延べ80万人を超え、そこから生まれた社会的価値は計り知れない。
■「オンリーワン」で「コアコンピタンス」へ
21世紀に入ると、日本は「サプライチェーンの上流を押さえ、中流を制し、下流を解放する」産業調整によって、新たな産業の優位性を築き、バブル経済の後遺症を克服していった。2005年、周氏の主導で「理念の旅・日本経済経営視察」が正式にスタートし、中国の中小企業経営者を組織して、京セラ、シャープ、オムロン、村田製作所など日本の伝統企業を訪問し、経済交流を促進してきた。
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企業代表団を率いて視察を行う様子
新型コロナウイルスのパンデミックは、世界の産業チェーンを一変させた。度重なるエネルギー危機は新エネルギー技術の発展を加速させ、地域協力の重要性を浮き彫りにした。この「理念の旅」プログラムを基盤として、翔藍は中小企業を日本やタイ、シンガポールやマレーシアなど「一帯一路」沿線国へと組織化し、相互訪問のプラットフォームを構築。大循環型サプライチェーンの整備を支援し、企業の生産・販売、研究開発、ブランドの海外展開に的確な指導を行っている。
日本は「失われた30年」を経て、海外に新たな市場を構築した。日本の成功体験は、「双循環戦略」(国内循環を主体とし、国内と国際の2つの循環が相互に促進する新たな発展戦略)の下で海外展開を標榜する中国企業の参考とするところである。日本と中国は、成長曲線や人口構造、ビジネス倫理などの面で、山と谷が重なり合うような傾向が見られるものの、日本の経験や理論を盲目的に踏襲すれば、容易に行き詰まってしまうだろう。そこで周氏は「オンリーワン」理論を中小企業のビジネスモデルに導入し、「戦略(S)×理念(T)×管理(M)」の現代経営理論を提唱。企業は一本の樹のようなものであり、いわゆる「道法自然」の理――自然の摂理や物事の本来の流れに沿って成長するのが望ましい。
戦略は企業という樹の高さ、すなわち「強くする」ことを決め、経営はその幅、すなわち「大きくする」ことを決め、理念はその深さ、すなわち「長く続ける」ことを決める。「オンリーワン」の理念に基づき、人の心を根本に据えて市場環境の変化を洞察し、企業の発展段階に応じて、「長く続けるための基盤設計 × 強くするための頂層設計 × 大きくするための枠組み設計」を行い、革新的な戦略と精緻な経営体系を策定する。こうして、中国民営経済にふさわしい長寿企業への道を切り拓くのである。
「生き残り」から「海外進出」へ――翔藍の指導や支援を受けた企業の中には、上場を果たした企業もあれば、業界で独自の存在感を放ち、唯一無二の「小巨人企業」に成長したところもある。その一つが、零一生命科技有限責任公司だ。中国科学院出身の1990年代生まれの若者が創業した企業である。テクノロジー企業としてスタートした零一生命は、設立後すぐに販売に苦戦したが、幸いなことに、独自技術によって資金援助を受けることができた。
現在は「遺伝子検査」「化粧品開発」「新薬開発」の三本柱で事業を展開し、時価総額は2億元(約40億円)から15億元(約300億円)へと急成長し、ナスダック上場も視野に入れている。
■社会的責任を果たす「新儒商」
日本資本主義の父・渋沢栄一の「論語と算盤」理論、経営の神様・松下幸之助が唱えた「企業の社会貢献」理念、日本を代表する経営者・稲盛和夫が提唱した「利他のこころ」――これらはいずれも、義を先にして利を後にし、義と利を一致させ、誠実と信義を重んじる「儒商」の精神は、日本の商業倫理の中で一貫して息づき、その価値を輝かせてきた。
コンサルティング会社である翔藍は、ビジネストレーニングや現状分析だけでなく、さらにビジネス倫理の構築や社会的責任の意義向上にも力を注ぐ。2024年には第3回全国新儒商大会を主催し、「儒で商を促し、商をもって国に報いる」という理念を徹底して実践している。周氏は、「新儒商」を象徴する存在ともなった。
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第3回全国新儒商大会で講演を行う様子
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2024年には第3回全国新儒商大会を主催
翔藍は、企業文化の基礎づくりや、経営者の社会的責任意識の向上を最重要視している。500年の歴史を誇る日本の清酒メーカー・剣菱酒造の事業承継事例をもとに、翔藍の「理念経営」「戦略経営」講座は、1980年創業のマレーシア・元生グループ(ACTION GROUP)の林春発一族の事業承継を成功に導いた。元生集団は低価格競争から脱し、「中高級車オーナーから最も信頼される自動車メンテナンスブランド」という経営目標を掲げ、元生基金会を設立し、多様な形態の公益活動を通じて社会に還元してきた。そして、「ブルードルフィン」などの中高級ブランドを立ち上げた。中国本土を含む世界16か国・地域へと市場を拡大し、百年企業への道を力強く歩んでいる。
広州を拠点とするグループ企業・科盈は、サプライチェーンを完備する化粧品メーカーであるが、コア技術や商品のポジショニングが不明確で、低価格競争に苦戦を強いられていた。翔藍の「理念経営」シリーズ研修と指導は経営者の視野を広げ、思い切った決断を促し、OEM受託生産からODM企画提案へと転換し、受け身の受注から主体的な経営へと移行させた。これにより、技術的優位性とマーケティング上の強みを打ち出すことに成功した。
現在、同社は「植物ナノ技術」や「超分子再合成技術」、そして、「中草薬リポソーム技術」といった研究開発成果を軸に、「アジア男性向けオイリー肌ソリューション専門家」というブランドポジショニングを明確に打ち出し、積極的に研究開発を担っている。こうして科盈グループの業績は着実に向上し、消費者から大きな期待を寄せられている。
■取材後記
社会的責任を担う優れた企業家の育成は、社会の発展を促し、課題を解決するための大きな原動力となる。
「戦略(S)×理念(T)×管理(M)」という三位一体の現代経営理論に基づき、百年に一度ともいえる大変革には「百年企業の経営」で臨み、「長く続ける」ことを目的に、「強くする」ことを手段とし、「大きくする」ことを結果として位置づける。
現代的な企業家精神、百年企業としての企業文化、そしてオンリーワンの革新力――この三つが合わさることで、民営経済を力強く前進させる推進力が生まれる。それは、応用力学を専門とする秀才・周南征が一貫して実践してきた信念でもある。