公益財団法人 武田科学振興財団(理事長:飯澤 祐史、所在地:大阪市中央区)は、2025年度「武田医学賞」を下記の2氏に贈呈することを決定しました。
贈呈式を2025年11月12日(水)午後6時よりオークラ東京において開催し、受賞者には賞状、賞牌、楯ならびに1件につき副賞3,000万円を贈呈します。

武田医学賞は、我が国で最も伝統のある医学賞の一つであり、医学界で顕著な業績を挙げ、医学ならびに医療に優れた貢献を果たされた研究者に贈呈されます。1954年に武田薬品工業株式会社の創業170周年記念事業の一つとして設けられ、1963年の当財団設立とともに財団事業として継承し、本年度で創設71年目を迎えます。武田医学賞の受賞者数は、本年度を含めて143名となります。


■片桐 秀樹 博士 (かたぎり ひでき)
東北大学 教授(63歳)
受賞テーマ:臓器間ネットワークによる個体レベルでの代謝制御機構の解明

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/542905/LL_img_542905_1.jpg
2025武田医学賞受賞者 片桐 秀樹博士

■佐藤 俊朗 博士 (さとう としろう)
慶應義塾大学 教授(52歳)
受賞テーマ:微小環境ニッチによる組織幹細胞制御機構の理解と応用

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/542905/LL_img_542905_2.jpg
2025武田医学賞受賞者 佐藤 俊朗博士

■片桐 秀樹 博士
<学歴・職歴>
1987年3月 東京大学医学部医学科 卒業
1987年6月 東京大学医学部附属病院 内科研修医
1988年6月 東芝中央病院 内科研修医
1989年6月 朝日生命成人病研究所附属丸の内病院 勤務
1990年7月 東京大学医学部附属病院第三内科 医員
2001年9月 東北大学医学部附属病院糖尿病代謝科 医員
2001年12月 東北大学医学部附属病院糖尿病代謝科 助手
2003年1月 東北大学大学院医学系研究科創生応用医学研究センター 教授
2013年4月 東北大学医学部附属病院糖尿病代謝科
(2023年4月より糖尿病代謝・内分泌内科) 科長
2013年5月 東北大学大学院医学系研究科 糖尿病代謝内科学分野
(2024年より糖尿病代謝・内分泌内科学分野) 教授(現在に至る)

その他役職
2004年10月 東北大学21世紀COEプログラム CRESCENDO サブリーダー
2010年12月 東北大学グローバルCOEプログラム Network Medicine創生拠点 サブリーダー
2012年8月 科学技術振興機構(2015年AMEDへ移管) 恒常性CREST研究代表
2015年4月 東北大学大学院医学系研究科 医科学専攻長
2017年4月 東北大学大学院医学系研究科 副研究科長
2017年10月 日本医療研究開発機構(AMED)
「老化メカニズムの解明・制御プロジェクト」個体・臓器老化研究拠点 拠点長
2020年4月 東北大学大学院医学系研究科 創生応用医学研究センター長(現在に至る)
2020年12月 内閣府「ムーンショット型研究開発事業」ムーンショット目標2
「恒常性の理解と制御による糖尿病および併発疾患の克服」
プロジェクトマネージャー(現在に至る)
2025年4月 東北大学 副理事(現在に至る)
2025年4月 東北大学SiRIUS(医学イノベーション研究所) 所長(現在に至る)
2025年6月 日本医療研究開発機構(AMED) 疾患領域コーディネーター(現在に至る)

<受賞歴>
1994年 日本内科学会研究奨励賞
2006年 日本学術振興会賞
2007年 日本糖尿病学会賞(リリー賞)
2007年 日本内分泌学会研究奨励賞
2007年 日本医師会医学研究助成費(医学研究奨励賞)
2014年 文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)
2020年 日本糖尿病学会賞(ハーゲドーン賞)
2024年 日本肥満学会賞

<研究業績>
受賞テーマ:臓器間ネットワークによる個体レベルでの代謝制御機構の解明

片桐 秀樹博士は、一貫して個体レベルでの代謝制御機構の研究を進め、そのメカニズムとして神経系を介した臓器連関の仕組みを次々と発見し、臓器間ネットワークの概念を構築した。脂肪組織からの食欲を制御する求心性神経シグナルの発見を皮切りに、肝臓からの基礎代謝・適応熱産生・脂質代謝・飢餓時のエネルギー消費を制御する肝‐脳‐脂肪組織の臓器連関機構をそれぞれ発見し、個体レベルの代謝恒常性に関わる神経系を介した臓器間ネットワークの重要性を明らかにした。一方、これらの仕組みがメタボリックシンドロームの諸徴候にも関与するという臨床的意義をも解明した。さらに特筆すべきは、膵β細胞増殖につながる肝からの神経ネットワークの研究である。
この仕組みの発見を端緒とし、膵β細胞増殖の分子機序や組織選択性を規定する解剖学的機序を解明し、膵に投射する迷走神経を選択的刺激することにより膵β細胞を増殖させることにも成功した。これはヒトの体内での膵β細胞増量に向けた臨床試験につながり、糖尿病根治療法の開発が期待されている。これらの先駆的・独創的な成果は新たな学術領域を開拓し、生命科学全般での臓器連関研究の隆盛へとつながっている。


■佐藤 俊朗 博士
<学歴・職歴>
1997年3月 慶應義塾大学医学部 卒業
1997年4月 慶應義塾大学病院 内科研修医
1999年4月 慶應義塾大学大学院 医学研究科入学
2003年3月 慶應義塾大学大学院 医学研究科 単位取得退学
2003年4月 慶應義塾大学病院 消化器内科 専修医
2004年9月 慶應義塾大学医学部 COE特別研究員
2005年9月 東京電力病院 消化器内科 医員
2006年4月 Stowers研究所(米国)博士研究員
2007年7月 Hubrecht研究所(オランダ)博士研究員
2011年4月 慶應義塾大学医学部 内科学(消化器) 特任助教
2011年7月 慶應義塾大学医学部 内科学(消化器) 特任講師
2013年4月 慶應義塾大学医学部 内科学(消化器) 特任准教授
2016年4月 慶應義塾大学医学部 内科学(消化器) 准教授
2018年11月 慶應義塾大学医学部 坂口光洋記念講座(オルガノイド医学) 教授
2023年4月 慶應義塾大学医学部 医化学 教授(現在に至る)
2023年10月 独立行政法人 科学振興機構
ERATO 佐藤オルガノイドデザインプロジェクト 研究総括 (現在に至る)

<受賞歴>
2012年 文部科学大臣表彰 若手科学者賞
2016年 日本医師会医学研究奨励賞
2017年 井上学術賞
2018年 日本学術振興会賞
2018年 日本学士院学術奨励賞
2020年 持田記念学術賞
2023年 小林賞
2019-24年 Highly Cited Researchers (Clarivate Analytics社)

<研究業績>
受賞テーマ:微小環境ニッチによる組織幹細胞制御機構の理解と応用

佐藤 俊朗博士は、組織幹細胞の自己複製をin vitroで再構成する「オルガノイド技術」を確立し、基礎から応用まで幅広い領域に革新をもたらした。佐藤博士は腸管上皮幹細胞のニッチ因子を同定し、単離幹細胞からのオルガノイド培養に成功、その後は胃・大腸・肝臓・膵臓へと展開し、同分野の世界的勃興を牽引した。
大腸オルガノイドにドライバー遺伝子変異を導入することで、幹細胞ニッチ依存性の制御を示し、ヒト発がんモデルを樹立したことは特筆される。さらに、炎症性腸疾患における体細胞変異の炎症環境適応や、大腸がん幹細胞が保持するニッチ依存性と自己再生・休眠状態の制御を報告し、がん進展の生物学的理解を刷新した。
加えて、腸管移植モデルにより大腸を小腸に機能転換させる治療コンセプトを提示し、再生医療への応用可能性を示した。近年は、肝細胞オルガノイド技術を確立し、これまで培養困難であった組織研究を可能にし、創薬・再生医療における新しいパラダイムを提示している。


■FAQ
Q. 候補対象者について
A. 日本国内で主な業績を有し、医学の基礎および臨床の分野で顕著な業績を挙げ、医学界に優れた貢献をされた研究者を対象としています。国籍は問いません。

Q. 武田医学賞の選考方法について
A. 財団の理事、評議員、名誉顧問、武田医学賞受賞者ほか財団が定めた推薦者からの推薦をもとに、選考委員会で審議・決定します。選考委員長は自治医科大学 永井 良三 学長にお願いしています。その他の選考委員については公表しておりません。

Q. 武田科学振興財団について
A. 当財団は、科学技術の研究を助成振興し、我が国の科学技術および文化の向上発展に寄与することを目的とし、武田薬品工業株式会社からの寄附を基金として1963年に設立されました。武田医学賞(褒賞事業)のほか、研究助成、奨学助成(外国人留学助成、医学部博士課程奨学助成、海外研究留学助成)、国際シンポジウムの開催、杏雨書屋(きょううしょおく、本草医書・東洋学を中心とした図書資料館)の運営、出版物の刊行を行っています。

公益財団法人 武田科学振興財団 公式サイト: https://www.takeda-sci.or.jp/
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