本イベントでは、社会やテクノロジーの急速な変化を背景に、「個が輝く働き方」と「地域との新しい関係性」をテーマに、多様な分野で活躍する実践者を迎えたトークセッションを実施しました。
■Introduction 上川町東京事務所 三谷氏より上川町の紹介
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上川町の説明をする、三谷氏
イベントの冒頭では、上川町東京事務所の三谷氏より、上川町の概要とこれまでの取り組みについて紹介がありました。北海道のほぼ中央、大雪山国立公園の麓に位置する上川町は、人口約3,000人の小さな町でありながら、豊かな自然環境と林業・観光を基盤に、独自のまちづくりを進めてきました。
近年、上川町が重視しているのは、定住人口の増減だけに依存しない地域経営です。「住む人」だけでなく、「関わる人」を含めた多様な関係性を地域の力として捉え、町外に暮らしながらも上川町と関わり続ける人を増やす取り組みを進めています。その象徴が、都市部に拠点を構える上川町東京事務所です。
三谷氏は、「上川町は完成された町ではなく、成長を続ける町。関わり方に正解はなく、働き方や暮らし方の延長線上で、誰もがバッターボックスにたてる余白がある」と語り、本イベントがその入口となることを参加者に呼びかけました。
■Key Talk「まちの再定義から読み解く、未来の働き方」
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トークセッションの様子(左から、平原氏、伊藤氏、小知井氏、黒井氏)
<モデレーター>
黒井理恵(NPO法人ミラツク 理事)
<スピーカー>
平原依文(HI合同会社 代表)
小学2年生から単身で中国、カナダ、メキシコ、スペインに留学。東日本大震災をきっかけに帰国し、早稲田大学国際教養学部に入学。新卒でジョンソン・エンド・ジョンソングループのヤンセンファーマ株式会社に入社し、デジタルマーケティングを担当。その後、組織開発コンサルへ転職し、CMOとしてマーケティングを牽引しながら、広報とブランドコンサルティングを推進。
伊藤慎之介(株式会社デジタルレシピCEO)
防衛特化の行動予測AIを開発運営。それ以外にも会員数11万人のAIマーケティングツール「Catchy」、パワポをwebサイトにする「Slideflow」、AIノーコードツール「Sphere」などのAIツールを運営。2013年株式会社ラフテックを創業し、「笑うメディア クレイジー」を1,200万UUまで成長させ、同社を株式会社ベクトルへ売却。2018年に株式会社デジタルレシピを創業。
小知井和彦(北海道上川町 地域魅力創造課 課長補佐)
地元上川高校を卒業後、1997年に上川町役場に入職。一般事務職から森林専門職に転向後、再度一般事務職に転向し、地方創生を中心としたさまざまな新規プロジェクトの企画開発・事業推進に従事。新しい働き方プロジェクト「カミカワーク」、交流型市民大学「大雪山大学」、地域DMC設立、都市圏企業や道外自治体との未来共創パートナーシップ、民間副業人材導入、自治体ワークスタイル変革、自治体フロントヤード改革などを進め、総務省ふるさとづくり大賞やグッドデザイン賞などを受賞。「感動人口1億人」をスローガンに定住人口に左右されない越境共創型まちづくりを目指し奮闘中。
セッション前半では、小知井氏より、上川町が実践してきた具体的な取り組みについて説明しました。
セッション後半では、「社会はどこへ向かっているのか」という根源的な問いを起点に、未来の働き方と地域の在り方について議論が展開されました。高度に情報化された現代社会では、効率性や合理性が重視される一方で、人が本来持つ感情や身体性、偶発的な出会いの価値が見えにくくなっているのではないかという問題提起がなされました。AIをはじめとするテクノロジーは仕事を奪う存在として語られがちですが、本セッションでは、人が人であることに集中するための補助線としてどう活用するかが重要であると共有されました。
また、町内会や地域コミュニティといった一見すると煩わしさを伴う関係性が、実は人の孤立を防ぎ、社会との接点を持ち続けるための重要な装置であるという視点も提示されました。「都市に暮らす人ほど、半ば強制的に関わらざるを得ない“おせっかいなコミュニティ”を内心では求めているのではないか」という投げかけや、ゲストの平原氏が幼少期に体験した、中国など海外で自然発生的に助け合うコミュニティの事例が紹介され、地域が果たす役割が改めて問い直されました。
■Talk Session1 「枠を超えた新しい働き方の実践者たち」
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トークセッションの様子(左から、高橋氏、和田氏、久保氏)
<モデレーター>
久保匠(株式会社すくらむ 代表取締役)
1993年北海道旭川市生まれ。大学卒業後、愛知県知多半島に拠点を置く福祉系NPO法人に就職し、障害者支援、地域包括ケアシステム構築に携わる。その中で、「制度の狭間」のニーズに応えるためにファンドレイザーへの道を志す。その後、日本ファンドレイジング協会に参画し、法人向けのファンドレイジング力向上プログラムを担当する。 2022年1月より独立し、NPO、ソーシャルビジネス向けのコンサルティングを行っている。
<スピーカー>
高橋恭文(株式会社感動経済社 代表取締役)
1978年静岡県沼津市生まれ。生活者向けサービスの実業家。労働・育児・保育・産業振興・地域課題を主に扱う。趣味はハンドボールを通じたコミュニティ活動。神奈川大学体育会監督を17年務める他、女子社会人チームSUNFINITY TOKYOを立ち上げ、代表を務める。元日本ハンドボールリーグ審判員、元静岡県国体代表。
和田花織(宮崎県高原町役場 事業共創専門官)
2012年に株式会社リクルートへ中途入社。住宅領域で地域・行政と連携し、社会課題解決を主導。多数の表彰を受ける。マネジメントを経て、経営戦略に基づく、社会価値指標設計や全社横断の共創体制構築、AI活用による利益創出を推進。現在は、IMA株式会社にて、大企業×スタートアップの共創カンファレンス「START CAMP」の企画運営をリード。2025年4月より、宮崎県高原町役場の事業共創専門官として従事。
本セッションでは、副業や複業を含めた「枠を超える働き方」について、実践者ならではの視点から議論が交わされました。中心となったのは、所属先や行動にとらわれず、「どんなテーマに向き合うか」を起点に働き方を組み立てていくという考え方です。肩書きや雇用形態に自分を当てはめるのではなく、解きたい問いや関心を軸に行動することで、結果として複数の役割や仕事が立ち上がってくるというプロセスが語られました。
また、本セッションの後半では、副業や複業といった働き方を切り口にしながら、「枠を超える」という表現そのものを問い直す議論が展開されました。議論の中心にあったのは、あらかじめ会社員/副業人材/フリーランスといった枠を設定するからこそ、人はその内側に自分を閉じ込めてしまうのではないか、という問題提起です。そもそも枠をつくらなければ、「超える」という発想自体が必要なくなる。働き方を制度や肩書きから定義するのではなく、関心やテーマを起点に据えることで、自然と複数の役割や関わり方が立ち上がってくるという考え方が共有されました。
行動そのものに執着するのではなく、向き合うテーマに集中することで、形を変えることも自然に受け入れられる。枠に合わせて自分を調整するのではなく、自分の関心に合わせて仕事との関係性を組み替えていく姿勢こそが、変化の激しい時代における持続可能な働き方につながる、というメッセージが参加者に強く残るセッションとなりました。
■Talk Session2 「いま注目されるゼブラな働き方から未来を描く」
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トークセッションの様子(左から、米田氏、藤村氏、清光氏、久保氏)
<モデレーター>
久保匠(株式会社すくらむ 代表取締役)
1993年北海道旭川市生まれ。大学卒業後、愛知県知多半島に拠点を置く福祉系NPO法人に就職し、障害者支援、地域包括ケアシステム構築に携わる。その中で、「制度の狭間」のニーズに応えるためにファンドレイザーへの道を志す。
<スピーカー>
藤村忠寿(北海道テレビ放送株式会社 コンテンツビジネス局クリエイティブフェロー)
HTB所属ディレクターとして『水曜どうでしょう』を手掛け道内外のファンから人気を博す。現場主義の仕事論をベースにした著書やトークが評判で、働き方のロールモデルとして注目される。役者としての出演も多く、軽妙な語り口で視聴者を魅了している。
清光隆典(北海道上川町 地域魅力創造課 魅力創造グループ係長)
2025春、上川町を舞台にした短編SF小説「万華鏡」発表。北海道上川町出身。大学卒業後、教育産業に4年間従事。2012年に上川町にUターン移住し上川町役場に入庁。現在は地方創生や官民連携を担当。総務省が提唱する「関係人口」に熱量を上乗せした「感動人口」への変容を目指す。
米田真依(株式会社グッドパッチ UXデザイナー/デザインリサーチャー)
パナソニック・P&Gを経て、デザイン会社Goodpatchに入社。
本セッションでは、「ゼブラな働き方」を切り口に、地域と関わることの本質や、仕事観そのものについて議論が深められました。藤村忠寿氏の著書『仕事論』を題材に、「組織人であること」「常識を守るだけでは100点には届かない」といった仕事観が紹介され、まだやっていないことや、結果がどうなるか分からないことにあえて挑戦する姿勢こそが、人との関係性や仕事の面白さを生むという考え方が共有されました。
また、藤村氏は、テレビ局での経験を通じて感じた人とのつながりの重要性についても語りました。「何千人、何万人を受け入れるよりも、意味のある5~6人との関係性を大切にしたい」「上川町に関わった人はすでに町の人格の一部になっている」という言葉が象徴するように、数ではなく質を重視した関わり方が示されました。
さらに、「登壇者の考えるゼブラとは?」というテーマでトークが展開され、急成長や規模拡大を目的とするのではなく、関係性を育て、持続的に価値を生み出していく存在こそがゼブラであるという認識が共有されました。米田氏が地域活性化起業人として関わり、やがて移住に至ったプロセスも交えながら、ゼブラな働き方が個人と地域双方の未来を変えていくことが語られました。
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盛り上がる登壇者(左から、米田氏、藤村氏、清光氏)
本イベントを通じて浮かび上がったのは、働く場所や肩書きに縛られず、「誰と、何に向き合うか」を自ら選び続けることの重要性です。北海道上川町は今後も、越境的な人の関わりを通じて、個と地域がともに成長する新しい働き方を発信していきます。
■開催概要
名称 :WORK SHIFT LOCAL 2050@札幌~個の新しい働き方が、未来を刺激する~
開催日時 :2025年12月9日(火)14:00 - 16:45
開催場所 :Deep-Tech CORE SAPPORO
(北海道札幌市中央区北5条西5丁目1-5 JR55SAPPOROビル 8F)
参加人数 :40名(※登壇者含む)
参加費 :無料
■北海道上川町について
上川町は、北海道のほぼ中央に広がる日本最大の山岳自然公園「大雪山国立公園」の北方部に位置し、大雪山連峰と北海道第一の河川、石狩川の清流に恵まれた自然豊かな町。大雪山系の一つ、黒岳への登山口には北海道有数の温泉地である層雲峡温泉があり、秋には「日本一早い紅葉」が見られる。通年型山岳リゾートタウン構想を掲げ、自然や四季を生かして年間を通した観光客の受け入れを目指すとともに、大雪山の自然と共存する暮らし・関係人口の関わり方に挑戦している。
近年は、上川町での新しい働き方をテーマに移住者や関係人口の創出を図る「カミカワークプロジェクト( https://www.kamikawork.jp/ )」を実施。本年より上川町東京事務所を設立、都市部の企業との連携事業の実施など先駆的な地方創生プロジェクトに数多く取り組んでいる。
https://www.town.hokkaido-kamikawa.lg.jp